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香山リカのアベ政治徹底分析(全5記事)

その組織は、必ず破綻する--「傲慢症候群」の特徴とその危険性を香山氏が解説

共産党が時々の情勢や関心事をテーマに、ざっくばらんにトークを行う番組「とことん共産党」。10月29日放送回のゲストは精神科医の香山リカ氏です。「香山リカのアベ政治徹底分析」と題し、精神科医の立場からも現政権について考えます。本パートでは、イギリスの政治家・デビット・オーエン氏が提唱する、「傲慢症候群(ヒューブリスシンドローム)」という考え方について説明がされています。

日本にとって意義ある運動である

小池晃氏(以下、小池):今回の(「国民連合政府」という)僕らの提起は「戦争反対」っていう1点で。立憲主義を破壊する、今の政治を元に戻す。その1点で暫定政権、期間限定。それが終われば解散して、新たにそれぞれの党が、それぞれの政策を掲げて選挙戦っていくと。

ただ、僕は1回こういう政治を元に戻すという経験を日本の運動がやるということで、すごく希望が出るんじゃないかなと(思っていて)。「やればできるじゃないか」「やられっぱなしじゃないじゃない」と。

香山リカ氏(以下、香山):一度民主党政権になった時に、自民党政治を。

小池:民主党政権のときって、運動があったわけじゃないじゃないですか。

なんであんなふうになっちゃったのかっていうと、やっぱり運動みたいなのがあって出てきたものじゃないから。今回は、そういう意味では、これだけの歴史的な戦いのなかで生まれてきて。

今だって、国会のなかで僕らもいろいろと議論して、きちっと受け止めてもらってると思うんだけど、民主党なんかの議論だと、やっぱり運動に影響されてますよね。

今すごくいいなと思っているのは、運動団体と野党の協議が始まったんですよ。民主党が呼びかけて始まったんだけど。あれはすごくいい動きだと思っていて。そういうなかで政党も(動いていかなければいけない)。

香山:それは、私今日聞いてよかった。どうしてかっていうと、あれ(民主党の)枝野さんが呼びかけてるんですよね。私は、共産党が「最近やられた」みたいにね(思ってるのかと)(笑)。

小池:また〜、そんなこと思ってない!(笑)。あれはすごくよかった。枝野さんの呼びかけで、団体と野党が集まって。

香山:何が決まったんですか、そこで。

小池:これから続けていくということは決まった、まずは。ただそこでも率直に意見出して、「野党が一緒になってほしい」という意見はいっぱい出た。

共産党は自らの“手柄”にしないの?

香山:「イニシアチブを共産党は取ろうとしているのかな?」って思っちゃうわけですよ。

朝岡晶子氏(以下、朝岡):すぐ出したから。

香山:これが実現した暁には、「共産党がやりました!」みたいなことになってしまうのではと。

小池:そうなったらおしまいですよ。それは絶対やっちゃいけないと僕ら思ってる。この間も、民主党がこういったことを呼びかけたことは、率直に評価。集会も民主党にイニシアチブをあげたいということは挨拶で言っている。

この間、宮城の県知事選挙があったんだけど、野党のなかでも批判はやらないようになって。野党で力を合わせると。自民党を過半数割れに追い込もうじゃないかということを訴えている。

このなかで「共産党が伸びよう」なんて、そんなことは思っていません。思ってないし、実際の行動のなかでも、そんなことはやっていません。

朝岡:昨日の赤旗で。

小池:細かいからあれなんだけど、戦争法の国会の審議を。2回前のこの「とことん共産党」で、志位さんがこういうの作るって言ってたら、「こういうの作ってください、見開きで!」って、小林節さんが言っちゃったんで見開きで作ることになった(笑)。

共に闘うという意思

でも、これ見てもらうと、民主党議員の質問なんかも取り上げてやってるんですよ。そういう意味では、僕らもちょっと脱皮してるというか。だいぶ変わってますよ。

香山:立憲主義を戻すってことに、そこに集まっているんですよね。

小池:そうですよね。立憲か非立憲かって言ったときに、今までの対立軸よりも、ちょっと広がった。

香山:よく言われるのは、立憲主義のなかには改憲派もいるわけじゃないですか。今回の戦争法って、もちろん戦争法そのものに反対していたりとか危険を訴える人もいるけど、手続きに反対して「そんな手続きをする安倍政権は信用できない」っていう人たちもいるから。

例えば、100歩譲って「集団的自衛権は必要かもしれない」と。だけども「あの決め方はないだろう」という人もいると思うんですよね。

そういう意味では、立憲主義まで引いてそこで共闘するっていうのは、すごくいいことだなと思います。

小池:それこそ、この「国民連合政府」に自民党のなかでも入ってくる人がいてもいいくらい。古賀誠さんなんて、立憲主義の立場で発言されてますよね。古賀さんがどうのこうのって話でもないけど。

そういった人も含めて一致できるような、そういう政府を作ろうというのが我々の提案。

香山:なるほどなるほど。

小池:この間なんて、農協の幹部とか、元町長さんとか、地方行くとかなり支持してくれる。

香山:今回一応、学者とかSEALDsとか学生とか。弁護士、日弁連とか、いわゆる知的な層っていうか、反知性主義というのがあったので、そこから立ち上がったんだけれど。ママの会みたいな女性とか、本当にいろいろな職業の方とか、いろいろな立場の方で、同じ思いの方がたくさんいるので。その方たちも一緒にやっていけたらなとすごく思います。

精神科医の立場から安倍政権を考える

朝岡:今、「国民連合政府」のことでお話が進んできましたが。

香山さんは精神科医ということで、今日のテーマ「アベ政治徹底分析」。

香山:これも一言、言いたいんですけど。

さっきから、「精神科医が政治語るなよ」とか(コメントが)来てるんだけど、精神科医とか心理学者とか精神分析家とかが、自分の知識を使って社会を分析するっていうのは、これは日本でも前からやってきたことだし、世界的にもそういう人たくさんいるんです。

別に、それは病気扱いとか、“何とか病”だって言うんじゃなくて、状況とか政権の権力でしょ。別に、一般の人もそこにたくさんいるけれども、「あなた、何とか病ですよ」とか言うのと全然違うんですよ。

公人の人の言動を、「この人は不安が後ろにある」とかいうのは、これは医師として何ら倫理違反とかじゃないと思うんです。

小池:しかも、公人だしね。

香山:でも、それを、今ちょっとでも言うと……。

朝岡:そういう批判が。

香山:「それを言うのは、何とか違反だ!」とか、とんちんかんなこと言う人がいて。

そこで逆にメディアも「頼みづらい」とか言ってくるから、これこそ自己規制って言うか。萎縮だなと思って。

小池:まだ言ってる人がいる! 「精神科医がなんで政治を語るの」って。

朝岡:でも、「香山さんに救われました」って言う人もいたし。

ヒューブリスシンドロームとは

お読みになった方もいらっしゃるかもしれませんが、『現代思想』の「安全保案を問う」っていうのが、読み応えがあったんです。

現代思想 2015年10月臨時増刊号 総特集◎安保法案を問う

このなかで香山さんも書いていらっしゃることについて、今日パネルも使いながらご説明くださるということで。

香山:これまたショッキングな名前なんですけども。

イギリスの政治家で、大臣経験者もあって、小池さんと同じ医師でもある、デビット・オーエンという人が、何年か前に、自分が仕えてきた、側で見てきたイギリスの首相経験者を分析して、ヒューブリスシンドローム、「傲慢症候群」にかかっている人がいるというおもしろい本を書いたんですね。

これが、非常におもしろくて。本当に傲慢になってしまって、「ヒューブリス」っていう神の領域みたいになっちゃって、自分のことを神と同一視みたいに考えちゃうってことなんだけれど。

元々威張っている人じゃなくて、元々は平凡というか健康の普通な人が、権力を取ったときに、これになってしまうことがある。

オーエンってすごくおもしろいことを言っていて、元々奇人変人みたいな人は、別に権力が手に入っても変わらないって言うんですよ(笑)。

それで、歴史上の首相経験者や、アメリカの大統領経験者を分けているのね。

オーエンはズバッといろいろ言っていて、例えば、本のなかには、イギリスのトニー・ブレアと、アメリカのジョージ・ブッシュがこれだと。つまり、自分が見てきたと。側で。

彼らは、最初はとても穏やかで、謙虚な人だったのが、途中から本当に変わっていってしまって、すごい万能感に溢れたようなことを言うようになってしまったと。それは、その例だと言ったんですね。

どんなふうになるかと言うと、「自己陶酔的で、『この世は自分が権力をふるって栄光をめざす劇場なのだ』と思ってしまう」と。「話しているうちに気がたかぶり、我を失うこともある」。

小池:なんか、予算委員会が思い出されますけどねぇ。

自己を国と同一視し始めてしまう

香山:「自分のことを『国』と重ね合わせるようになり」、例えば、「我々は」って言葉をよく使うようになるって言うんですよね。

「わたしはこう思う」じゃなくて、「我々としては」と。「私と国」と、自分の考えが国と同じなんだというような。「私が国そのものなんです」みたいな。「我々が守ります」みたいなことを言うとかですね。

朝岡:めんどうくさい。

香山:あと、これ、じゃじゃ〜ん。

これ、別に、この本に書いてあるんですよ。

(会場笑)

私がA氏を分析したわけじゃなく。オーエンの本に書いてあるんです。

「自分の判断には大きすぎる自信があるが、ほかの人の助言や批判は見下してしまう」。

小池:なるほどね。

朝岡:本当にそうだ。

「私がやろうとしていることはいつも正しい」

香山:「『私には無限に近い力がある』と思う」とか。

小池:笑っちゃいますね。

香山:最後にこれ。

「私がやろうとしていることは道義的に正しいので、実用性や結果について検討する必要はない」。「私は、正しいんですから!」「最高権力者ですから!」みたいな。

「別にこれをつぶさに検討する余地はない」とか。

小池:こういうふうに言いましたね、あの人。某日本の総理大臣は。まさにこういう答弁をしましたね。

香山:「自分の正しさは、歴史が証明してくれる」と。

小池:それはもういつも言ってるじゃないですか! 自分のおじいちゃんのことも。

傲慢症候群がもたらす危機

香山:オーエンはどう言ってるかというと、これは企業のCEOとかにもそういう人がいると。政権権力者にもいるんだけど。「その組織は、必ず破綻する」と言ってるんですよ。

小池:なるほど。

香山:それは非常に危険だと。その人が威張っててむかつくっていうだけじゃなくて、そういった組織は「必ず破綻していく運命にある」って言うんですね。企業の例なんかも出していて。

今、イギリスでは、ヒューブリスシンドローム研究会みたいな学会もあって。それはつまり、そこにいる人たちは、CEOがそういうのに陥っている人は、その人がつぶれていまったら、何万人もの従業員が共倒れしちゃうから、とにかくこうなっている人を探して、専門のコンサルタントを付けて、その人に助言をするという。死活問題になっているんで、学会みたいなのがあるんです。

そうなっちゃえば、なっちゃっただけ、聞く耳持たなくなってしまうので。

とにかく、その人たちに必要なのは優秀な側近。ご意見番ですよね。「この人の言うことなら聞く」っていうね。そういう人を早いうちに付けるということが大事と言われているんですけど。

小池:でも、他の人の助言や批判は見下しちゃったら。

香山:だから、恩師とか、「この人の言うことだったら」っていう。一番いいのは、配偶者とかね。

小池:あ、あっきーさん!

香山:あっ! 言っちゃった!(笑)。

だけど、どうなんでしょう。奥様はいろいろ原発のことにも発言されたりとか、お互い自由にしているとよく聞くじゃないですか。話し合って決めるっていうんじゃなくて。だから、助言とかするんですかね?

小池:いやいや、よくわからないけど(笑)。

女性軽視の発言が気になる

香山:別に、総理大臣だけじゃなくても、政権のなかの人でも、みんな思うんですけど。

小池:安倍政権破綻するのは別にいいけど、日本が破綻したら迷惑……っていうか、国民が被害受けるわけでしょ?

香山:それをね、この著者は何度も言っていて。トップがそういうのに陥ってしまうと、その組織が壊滅的な何かクライシスに陥ってしまうので。

特に、それが政治権力者である場合は、被害が甚大であると。だから、何としてでもそうなりそうな人に、まずはこういうことがあるっていうことで、助言をするとか。

あるいは、なってしまったら、そこにはそこまで書いていないけど、例えば交代してもらうとかね。しないと、単純に迷惑とかむかつくとか、そういうだけじゃないという話をよくしていて。

小池:安倍首相がこの診断に合うかどうかっていうのは置いておいて。でもね、今の安倍首相は、予算委員会で野次るじゃないですか。

朝岡:「日教組!」とかね。

小池:辻本さんとか女性議員に対して。みずほさんとか、蓮舫さんとかに。

朝岡:そうですよね。

小池:ああいう人、今までいなかったですよね。ちょっとあれは異常だなって思う。

香山:小池さんなんかが質問された時は、結構聞いているといいますか。

小池:聞いているかわからないけど、野次ったりはしないよね。

香山:だから、「女性活躍」とかあそこまでおっしゃっているのに、女性を尊重しないって。

小池:いや、全然!

朝岡:女性蔑視の現れですよね。

小池:ああいう総理大臣って、今までいなかった。

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