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体験者と医師によるシンポジウム 「ギャンブル依存症とはどんな病気なのか?」(全4記事)

貴闘力「ギャンブルしなけりゃ、横綱なれた」 536万人のギャンブル依存者を減らすために

11月28日、「ギャンブル依存症対策推進フォーラム」が開催されました。調査によると、国内のギャンブル依存症患者は推定536万人。自身のギャンブル体験を語った貴闘力氏、そしてギャンブル依存に詳しい医師3者が登壇し、「病気」という視点で依存症の問題についてのシンポジウムを行いました。日本はまだ調査研究が遅れています。しっかりと対策をするためには、まず、現状の把握が必要です。

元アスリートはギャンブル依存になりやすい?

田中紀子氏(以下、田中):もう1つスライドを御覧ください。

海外の論文なんですけれど、特に引退したアスリートは、ギャンブル依存症になりやすいというデータがあるんです。私としては、1つのことにのめり込めるということがあるのかなと思ったんですけど。

こういうデータ、日本はあまり研究が進んでないんですけれど、こういうことをもっと認知してもらうっていうことが必要かと思うんです。

私たちも支援に携わっていて、「昔インターハイに出てました」「インカレでました」「スポーツをやってました」。それこそ「ドラフト4位でした」とかいう人たちが、結構多いんです。ところがギャンブルというイメージで、スポーツなんか全然やらないだろうというイメージがあって、「(ギャンブルをやめるために)スポーツをやれ」とか言われたりするんですけど。

こういうこともあると思うので、やはり高校とか大学とかを出るとき、引退するときに、きちんとこういう情報を提供することが社会の教育の上でも必要じゃないかなと思ってるんです。卒業生に向けて。

どうですか、蒲生先生。アスリートにこういうギャンブル依存症になりやすいみたいな、嫌そうな顔してますけど(笑)。個人的な見解として、それはありだと思いますか?

蒲生裕司氏(以下、蒲生):このデータを見ると、ここだけですよね。

田中:そうです。スポーツギャンブルに特に引退したアスリートがいる。要するに日本の野球賭博みたいなものに賭けている。あとはTOTOとかですよね、多分。

勝ち負けにこだわる人がハマりやすい傾向も

蒲生:解釈が難しいですけどね。やっぱりスポーツに自信があった方々ですから、スポーツに関連するもので、なおかつ、勝ち負けがはっきりしているというところで、これを選んだのかなっていう感じですけど。

皆さんがこうなるわけじゃないので、傾向があるかなっていう程度かもしれないですね。これに関しては解釈が難しいと思いますけどね。明らかにほかのものに比べるとここだけ高いのは事実なので、何らかのそういった要因というものがあると認識したほうがいいと思います。

田中:ありがとうございます。勝ち負けにこだわるっていうのはすごくあると思うんです、ギャンブラーって。どうですか? 貴闘力さん。子供の頃から結構勝ち負けにこだわる性格じゃなかったですか?

貴闘力忠茂氏(以下、貴闘力):そうかもしれませんね(笑)。勝ったときは……。相撲で1万人いるなかで土俵に上がった時の緊張感とか、そういうのとはまた違った、なかなか味わえないことがあるんですね。

上がってドキドキ感というかその感覚と。ギャンブルで1,000円2,000円勝っても全然嬉しくないじゃないですか。それが自分の給料以上のものをポンッと張って、その緊張感が似たようなものがあるんですね。

そのときに勝ったときの嬉しさとか、そういうのがあるからやっぱりスポーツ選手は、はまると依存症になりやすいかもしれないですね。

田中:ありがとうございます。私もすごく勝ち負けにこだわる性格なので、そうかなと。

ギャンブルは遺伝する?

それからもう1つ、時間が無くなってきたので押せ押せで行きます。次のスライドをお願いします。

貴闘力さんが「小さい頃から家にギャンブルがあった」って仰っていたんですけれども、私も家庭環境のなかにすごくギャンブルがあったんですね。

これは森田先生と一緒に調査した結果なんですけれども。先生、手短に(笑)、「18歳に引き下げろ」みたいな議論もありましたけど、やはり開始年齢が早いと依存症になりやすいというリスクが高まるということですかね?

森田:はっきりそこまで言い切るまでは出てないんですけど。早いということについて非常に驚きましたし。家にギャンブルがあったような人とか、ギャンブルではないけど家庭環境があんまりうまくいかなかった人もいるのかと思いました。

だんだん染まっていくというよりも、かなり早い時期からお金に関して、借金とかが割りと平気になっていって、そういう準備状態のものがあったところで、大学生ぐらいのときから本格的に始まっていって……。

ある意味、世代間伝達みたいなあまりよくない状況が、次の世代に。昔ギャンブルで苦労したのに、また次の世代もいつの間にか染まってしまうというような流れになるというのは、家族のなかの考え方っていうのも1つだし。家族のなかのストレスとか、あまりうまくいってないところでギャンブルにはまり込んでしまうことで、普通の家庭よりも逸脱しても平気というような感覚に早いうちからなってしまっているのかなと。

さっきの自己治療説じゃないですけど、それも関係すると思いますが、そういうリスクがある人たちもいるということははっきり示していると思います。

調査研究グループが発足

田中:本当に先生方と見たときにも、ギャンブルを開始している年齢って依存症になる人はすごく早いんだなって、感想としてはあります。もう本当に時間が無くなったので、次のスライドともう一枚いってください。

今、この先生方を巻き込みまして、ギャンブル依存症問題を考える会の内部に調査研究グループを作りました。いろいろな研究を進めてて、ギャンブル依存症にどういうものが有効なのか、また家族の人たちにどんな対応が有効なのかということを調査していきたいと思っています。

最後にギャンブル依存症の治療に関わっていただいている先生方に、ひと言ずつ、これだけは伝えたいということを教えていただきたいなと思うので、佐藤先生からお願いします。

佐藤拓氏(以下、佐藤):ギャンブルの問題に対するリスクというか、危険性というか、そういうことに対する啓発というのは、だいぶん浸透してきた感じがするんですけど。

治療とか回復支援とか、そういったことに対する安心感というんですかね。先ほど、貴闘力関からお話がありましたが、強制施設に収容という話はあれはもちろん冗談だし、笑い話なんですけど。結構、自分がギャンブルの問題を起こしている人は、自分に起きている問題がすごく大きな問題だと気付きつつも、この問題を解消することは、絶対不可能なんじゃないかと思っていて。本当にそういう収容施設に入らないと、治らないんじゃないかと思っている人も結構いらっしゃる。

ご家族もそういった絶望感にとらわれている方が多くいらっしゃって、治療者のなかにもまだ理解できていない人は、そういった感覚の方がいらっしゃると思うんですね。

そうじゃなくて、やはり治療とか、回復支援っていうのはすごく安心できるものだと。自分のなかにある不安を解消できる、そういったかたちで相談すること自体がすごく安心して受けれるものだということを、是非ここで皆さんにご理解していただければなということが、私の気持ちです。

必ず回復できるという視点を

田中:ありがとうございます。では蒲生先生、ひと言お願いします。

蒲生:非常にギャンブル依存症は難しい病気ですけど。病気という側面もあるし、生活上の困難さという側面もあって。そこら辺をうまく個別というか、その人に合った適切な回復の仕方さえ見つけられれば、必ず回復できるものだと私は信じております

時間はかかるかもしれませんけど、そこのところをうまくやっていけば、必ず回復できるということで、皆さんにそのような視点を持っていただければ、いいかなと思っております。

田中:ありがとうございます。必ず回復できるという病気だということですね。森田先生、どうですか?

森田展彰氏(以下、森田):両先生と同じですが、回復に繋がる仕組みとか、早く見つける仕組みをやはり作って欲しいなと思います。そのためにも実態調査をすることがすごく大事で、カジノについても賛否両論ありますが、こうなるはずだとか、別に危険じゃないと思いたいとか、そういうのはもっと楽だとか、あるんだと思いますけれども、やっぱりちゃんと実態を調査して、すでにパチンコの問題もあるわけですから。

パチンコは遊びで賭けごとじゃないとか、そういう言葉遊びみたいなことはどうでもいいので。実際にいろいろな問題が起きているわけで、それは「遊び依存」でもなんでもいいですから、何らかの問題が起きていることを否定しない。

それこそ本人も否認しますけど、社会が否認していて、最初のデータでもこんなに出ているということについて、スクリーニングテストがあまり役に立ってないんじゃないかって話がしきりに出ましたけども。ああいうふうに結局調査をしても、そうやってできるだけ「問題がない」って言いたい人は、一生懸命に言い張るのであれば、ちゃんとした対応をしないんじゃないかと、すごく疑いますし。

誰かが依存症になっちゃうのは、本人の問題で、なっちゃう人がおかしい。大半の人にはそれがないんだからうまくいくんだっていうような話をしてるっていうのは、本当に依存症の人の言葉を聞いているような感じもするので。

やっぱりちゃんとそれをやめて、そうなった人もちゃんと戻れるような仕組みを真面目に作っていただければいいと思います。

ギャンブルをしていなかった頃に戻りたい

田中:ありがとうございます。ここでお時間になってしまったんですが、貴闘力さん、最後に今日このシンポジウム参加いただいたりとか、ご自身の体験談を初めて話していただいたということで、本当に私たちは感謝の言葉でいっぱいなんですけれど。

今日はどうですか、こういうギャンブル依存症の関係者の前でたくさん話されて、ご自身のギャンブル体験を振り返られて、何か感想があったらひと言。

貴闘力:もう1回、15歳に戻りたいなと(笑)。

(会場笑)

もう1回真面目にやっていれば、横綱になれるんと違うかなと思いますけれど。しょうがないけど。今、巷でカジノをやれとか言ってる人がいっぱいいるけど、やったら必ずいいことはないですからね。間違いなく。

ギャンブルをして誰が儲かるのかっていうことですよね。自分たち、やる方は必ず損して地獄に落ちますからね。それをできるだけそういうのをなくすような方面に持っていくように。

あとはそれにはまった人間を……、はまった人間が偉そうに言うことじゃないですけど、うまくケアできれば一番いいかなと思います。

やらない人間は、ある程度そういう人間から絞るだけ絞って、それを福祉にいっぱい回せばいいなと思いますけど。

でも負けてる人間は、周りに身内もいれば、親もいれば、奥さんもいれば、子供がいるわけだから。そこを何とかうまく、それにはまらない人間を、536万人が100万人ぐらいになるように、皆で落としていくのが一番ベストかなと思います。

田中:本当に536万人が100万人ぐらいになればいいなって、私もギャンブル産業自体を否定するものではないので、そういうふうに思っています。1つ、貴闘力さんに最後にお願いです。このように依存症者が自身の経験をカミングアウトする、しかも有名人でそれをやってくださったっていうことは、本当に稀に見るレアケースじゃないかなと思ってるんです。

貴闘力:自分でもまだ依存症だと思ってないですけど(笑)。思ってないんだけど、なんか皆に言われたら依存症なのかなと思っちゃいます。自分では全然、思ってないんですよ。

(会場笑)

田中:では本当に今日の赤裸々な正直なお話が、私たちにすごい示唆されるものがたくさんあったなぁと、共感できるところがたくさんあったなぁと思うんですね。海外ではエリック・クラプトンが薬物依存症を告白してとか、たくさんそういう事例がありますよね。でもその最初の事例を今回付けていただいたのではないかなぁと思っております。

私は貴闘力関に期待しているので、是非この福祉の分野に貢献していただくという意味で、お願いできたらなと思います。

では、これでシンポジウム1を終了したいと思います。ありがとうございました。

(会場拍手)

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