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牛窪恵トークイベント(全5記事)

「親が喜ぶ相手じゃないと恋愛したくない」 牛窪恵氏が若者の結婚観を分析

現代の若者の恋愛観、結婚観についてマーケティングライターの牛窪恵氏とディスカヴァー・トゥエンティワン社長 干場弓子氏が語り合いました。20代前半で結婚する人の特徴として、牛窪氏は「妊活の影響もありますし、やっぱり親を喜ばせたいんです」と、親孝行を重視する現代の若者の傾向を語りました。また、結婚式を挙げるカップルの最大の理由は「親に感謝を示すため」というデータもあります。その結果「親が喜ぶ相手じゃないと恋愛したくない」と考える若者も見られるようになりました。果たして、親子関係を中心に恋愛相手・結婚相手を決めることは幸福に繋がるのでしょうか?

世界中で増える草食系男子

牛窪恵氏(以下、牛窪):草食系男子の本を書いたときに私、世界中のメディアから取材を受けたんですが、イタリアぐらいだったんですよ。記者が「うちの国にはいないけど」って言ったの。他の国は本当に、特に「9.11」以降のアメリカも含めて、草食系男子が増えてるみたいなんですよね。

干場弓子氏(以下、干場):文学とか芸術は言うまでもなく、例えば人文やサイエンスなど学術であれなんであれ、動機付けは恋愛にあると思うんですよ。そのリビドーっていうか、モチベーションが薄くなるとどうなっちゃうんだろうって、私は心配なんです。

牛窪:そうなんですよね、人間が賢くなりすぎたというか。恋に落ちたときに放出されるドーパミンっていう物質は、自分をバカにさせるものなので、そこをコントロールできるようになっちゃうと、突き抜けた感情っていうのは、なかなか起きにくい感じはしますよね。

干場:何かねえ。

牛窪:じゃあ干場さんって、恋愛と結婚は切り離すべきだけど、恋愛はやっぱりしたほうがっていいと?

干場:今はもちろん結婚して子どももいて安定した状態だからいいんだけど。でも、結婚と恋愛とどっちかを選ばなくちゃいけないとしたら……。

今の人は恋愛と結婚のどちらかを選ばないといけないとしたら、結婚を選びたいと思ってるわけですよね。私はもちろん恋愛を選びたいです(笑)。

牛窪:あー、それは今の時代に生まれてもやっぱりそうだろうなっていう。

干場:そうですね。

牛窪:そうか、でも、私は恋愛しないかもしれないですね。

干場:どうして?

牛窪:リスクが大きい。今までこの本(『恋愛しない若者たち』)の取材を受けてきて、なんでこの結論に至ったかって聞かれること多いんです。「おひとりさまを、牛窪さんは提唱してたはずじゃないですか。なんで恋愛と結婚を切り離してまで結婚を勧めるんですか」って。

でも、私自身は本当に周りの方に支えられてきました。出版社を辞めてストーカーにあって殺されそうになって傷ついても、やっぱりバブル世代なんで、つねに「何とかなるかな」って希望があって。

私たちの世代はおひとりさまでも、何とかやっていけるんですね。精神的に。でも今の若い人たちはそうじゃないんで。本当にひとりが怖いんですよ。

干場:怖いんだ。

牛窪:「この子たちをひとりにはさせられないな」っていう老婆心的な想いがあって。そのためには恋愛より結婚のほうが契約なので、「相手が裏切らない」っていう安心感は得られますよね。

恋愛の場合は「いつか裏切られるかもしれない」って戦々恐々としなきゃいけない。彼らの世代にどっちが向いてるかっていったら、やっぱりリスクが少なくてある程度確証が得られる結婚のほうかなって思います。

私も今の時代だったら、脳天気に「何とかなる」みたいな全く根拠のない自信を持ち続けてはいられなかったかなと思うので。やはり恋愛より、結婚のほうを選んでたかなという気がしますね。

結婚式を挙げる理由は「親を喜ばせたいから」

干場:半径50メートルで判断しちゃいけないんですけど、うちの社員数十名のうち半分が20代なんですけど、若い人から結婚していく気がするんですけど。一時期よりは確かに、皆ハードル下げてさっさと結婚する。そんなこと言ったら怒られちゃう(笑)。

(会場笑)

干場:今の30代前半の子たちのほうが、選り好みしてた気がする。今の若い子たち、20代前半の子たちって、さっさと結婚を決めてる気がする。

牛窪:それはもちろん妊活の影響もありますし、やっぱり親を喜ばせたいんですよ。

干場:親を喜ばせたい!

牛窪:今はそうで、本にも書いたんですけど、結婚式を挙げるカップルって6割しかいなくて、4割は挙げないんですけど。挙げるカップルの最大の、ダントツの理由は「親に感謝を示すため」「親孝行のため」っていうデータもあります。実に74パーセント!

だから恋愛も、親が喜ぶ相手とじゃないとしたくないんですね。親が嫌だっていう相手は、最初っから連れてかないって彼らは言うので。親との繋がりがものっすごく大事ですね。だから干場さんもある日突然、息子さんの彼女が……(笑)。

干場:それはないけど(笑)。

牛窪:そこが大きいのかなと思う。でも、親と仲良いのは悪いことではないので、ここを取っ払っちゃうと、彼らはもうハシゴを外されちゃう感じなんですよね。

それだけ逆に、彼らに「親が最後の砦」っていう社会を強いてきたんだなっていうのが、今回の取材後の反省です。何とか彼らが選べるものを、選択肢をもっと増やしてあげたいっていうところがすごくあるんですけれども。

牛窪:東日本大震災の直後、私たちが親孝行意識を調査したとき、親が思う一番の親孝行が「息子や娘自身が幸せそうにしていること」でした。

親御さんとしても、もしわが子の恋愛相手が気に入らなくても、さっき干場さん仰ったように、幸せそうな様子を見せてくれれば、わが子の真意をわかってくれるんじゃないかなって気がします。

やっぱり私たちも親御さん世代に言っていかないといけないなって。婚活ブームのときも、親御さんたちにセミナーをして、「今は結婚しないのが当たり前の時代なんですよ」って言うと、私の前で泣く親御さんもいらっしゃったんですね。

「これまで、うちの子だけがおかしいんだと思ってた」って。だから今の時代そうじゃないっていうのを、声を大にして言っていくのも大事かなって思います。

干場:ということでまだまだ尽きませんが、そろそろ時間ということで。どうも、本日はありがとうございました。

牛窪:ありがとうございます。

恋愛しない若者たち コンビニ化する性とコスパ化する結婚 (ディスカヴァー携書)

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