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世界目線で考える。- 渋谷の未来編(全3記事)

スクランブル交差点を歩行者天国に 長谷部区長が考える“渋谷人”のためのまちづくり

11月、「MOSHI MOSHI NIPPON FESTIVAL 2015 in TOKYO」とのコラボレーションで開催されたエンタテイメントの未来を考えるトークイベント「THE BIG PARADE」。タイムアウト東京主催のスペシャルセッション「世界目線で考える。—渋谷の未来編」は、来場者から多くの注目を集めました。ゲストとして招かれたのは、渋谷区区長・長谷部健氏のほか、クールジャパン戦略で知られるA.T.カーニー日本法人会長・梅澤高明氏、原宿から世界にKAWAiiカルチャーを送り出すアソビシステム株式会社代表取締役社長・中川悠介氏の3名。本パートでは、長谷部氏が、コミュニティの活性化に向けてFMを復活させることや、カルチャーを生み出す土壌作りなど、行政側からのアプローチについて話しました。

住む人と訪れる人、ストリート発と行政の仕掛け、両面から渋谷を考える

伏谷博之氏(以下、伏谷):それではお三方のお話を伺いましたので、これからメインのセッションに入っていきたいなと思います。

柴田玲氏(以下、柴田):何せ話題が「渋谷の未来を考える、イコール東京の未来を考える」っていう、すごく大きいテーマですので、今日はまず長谷部区長の政策から抽出しましたキーワードを。

伏谷:勝手に抽出しちゃったんですけど、それをお見せしていいですか?

長谷部健氏(以下、長谷部):はい。

柴田:では伏谷さん、東京的に気になるキーワードというのは?

伏谷:長谷部さんの政策というか、マニフェストというか、ウェブサイトに掲載されているものを読ませていただいて、この政策はこういうキーワードかなというのを、ここにバーッと書かせていただきました。

今日はちょっと時間が短いので、私のほうでキーワードを読ませていただき、この2軸だとおもしろいトークセッションになるかなというのがありますので、最初にお話ししておきたいんです。1つは、やっぱり渋谷って住んでる方がいらっしゃいますよね?

長谷部:22万人です。

伏谷:ですよね。沢山いらっしゃるので、最近インバウンドとかグローバル化っていうので、訪ねてくる人のことを中心に考えてるトピックが多いんですけれども。

柴田:そうですね、外に向けた顔。

伏谷:ただ長谷部さんの立場だと住んでる方々にとって、どういう街を作っていくのかっていうのと、訪れる人たちにとって、どういう街を作っていくのか、この2つのテーマがあって、これらの最大公約数のところを、どう模索していくかということで、多分、苦労されてるんだと思うんですけれども。そういう軸があるよねっていうのが1つ。

もう1つは、今日せっかく中川さんみたいにストリートから文化を作るというか、ムーブメントを作っていくようなプロデューサーがいるので。行政が、例えばここにシェアオフィスを作って、スタートアップを集めてましょうみたいな、行政側からの仕掛けと、中川さんたちがアソビシステムでやってきたみたいな、ストリートから自然に生まれてくるもの。

渋谷っていうと、やっぱり路地裏からいろんなカルチャーが生まれてきたよねっていうイメージがあるんですが、行政が作っていくいろんなファシリティ、インフラっていうのと、ストリートから勝手に生まれてくるものっていうのが、どういうバランスで培われているのか。そういったところに2軸を置きながら、この後のトークをできればというふうに思っています。

防災、育児、高齢化……、さまざまな問題をコミュニティで助け合う

長谷部さん的にはキーワードについて何かありますか? 僕はすごく、すべてにコミュニティっていうのを意識されてるんだな、っていうのを感じたんですが。

長谷部:それはやっぱり基本だと思うんですよ。そういうコミュニティがあるから、いろんな問題が解決できるんですよ。

例えば、防災の面では当然コミュニティで助け合いが必要だし、子育ての面だって、初めてのお母さんはどうしていいか分からないと思うんですね。コミュニティがあれば、そこで解決するだろうし。もちろん高齢者は独居老人含めて、認知症とかいろんな問題がありますね。でもそれはやっぱり、近くのコミュニティがうまく。

行政ができることって、僕が言ったら怒られちゃうかもしれないけど、やっぱり限界があるんですよ。だけど、その曖昧な部分とか、手の届かない部分っていうのは、やっぱり自分たちがやらなきゃいけないし、お上に頼ってても全然だめっていったら言い過ぎかもしれませんけど。

大きく意識を変えなきゃいけないのは、個人個人が行政っていうか、この国や地域を支えてるんですよね。国や地域が自分を支えてくれてるんじゃないんです。

だからそこをもう1回、ちゃんと厳しいけど踏み台、踏み石にして、自分たちが生き生きと暮らしていける、楽しく子育てするとか、生き生きと年老いていくとか、それにはやはりコミュニティっていうのが必要だと思うんです。

コミュニティFM復活! 地域のスターを輩出したい

伏谷:なるほど。コミュニティをどんどん活性化するために、長谷部さんが今こういうことを仕掛けてみたいとか、構想されてらっしゃること、もし今お話しできることがあれば。

長谷部:いっぱいあるんですけど、来年の4月から、これはほぼ決まってきましたけど、コミュニティFMをもう1度渋谷で復活させようと思ってるんです。

伏谷:かつてSHIBUYA-FMがありましたね。

長谷部:ありました。ちょっといろんな事情があってなくなってしまったんですけど。やっぱりラジオのよさってあるんですね。

行政からすると防災の面で、大震災とか起きてネット繋がりにくかったり、電話繋がりにくいっていう時に、やっぱりFMって強いんですよ。そういった意味では非常に有効なもので、それは有事の際ですけれども。普段ももっといろんな使い方があるんじゃないかと。

音楽流してたり、有名なパーソナリティがしゃべってたりとか。それも当然いいんだけれど、コミュニティって大体小さい範囲で聞いてるわけですから、もっと皆が顔見知りになれるチャンスがあると思ってて。

渋谷区にはユニークな人がたくさん住んでるし、働いてるんですよ。だから僕は区長という立場ですけど、プロデューサーとして、地域のスターをいっぱい作りたいんです。だから、このラーメン屋のおじさん、しゃべるとすごいおもしろいっていう人がいたら、しゃべってもらうのもいいし。

シニアクラブっていうコミュニティがあるんですね。おじいちゃん、おばあちゃんたちが集まってて、いろんな地域であるんですけど。そこでカラオケ大会っていうの、よくやってるんですよ、お年寄りの方。

招待されて行くんですけど、みんな自分のプログラムができてて、ビッと着替えて来て、気合入れて歌って、NHKで見てる歌合戦のようなクオリティで、うまい人もいれば、おもしろい人もいたりして。

こういうのをラジオで流してあげたり、それが同時にネットで見れるようにすると、その地域の人の友達も見るし、そのコミュニティにもっとポジティブに参加して楽しもうっていう人も出ると思うんですけど。例えばそういうことをしたりとか。

ラジオを使って、ディープな渋谷を掘り起こす

後、みんなの知らないおいしいお店ってけっこうあるんですよ。渋谷区っていうと、北は笹塚っていう京王線の駅から、南は広尾、真ん中に代々木公園とかがある感じで、結構広いんですね。それぞれの街でちょっとずつ文化が違うんです。でも、それがまたおもしろかったり。

幡ヶ谷、本町なんて、多分みんな聞いたことがない街があるかもしれないけど、昔ながら商店街とか、都心にありながらいい感じのものも残っていて。外国の友達とか連れてくると、表参道とかの写真を撮るっていうより、むしろ路地裏に入ると急にパシャパシャ写真撮りだしたり。

僕らが日本人として東京人として、住んでる人では分からない価値っていうのがまた新たに発見できたりして、そういったものをラジオを使って掘り起こしていくと。要は、まだ言えないですけど、本当にすごい人が出てしゃべるっていうのが。

渋谷っていう街だったら、僕やってみたい、私やってみたいって言ってくれるタレントの人がいて、そういうことをやりながら、今までにない渋谷っていうブランドをそこで作って、コミュニティを活性化するとか。そんなことをやってみたいと思っています。

伏谷:わかりました。楽しみですね。来年の春?

長谷部:春から。

伏谷:でしたら、スタジオのサテライトみたいな感じで、街にも。

長谷部:そうですね。ちょうど渋谷駅の南口のほうに貸しビルを借りて。

今、区役所って実は建て直してるんです。大きく言わなきゃ。間違って前の区役所に行っちゃう人って結構いるんですよ。で、建て直し終わった時に、もしかしたら、そこにそういうFM入れてもいいかもしれないし、近所に入れてもいいかもしれないなと、そんなことも思ってます。

伏谷:なるほど。

もう1度、カウンターカルチャーを生み出すハブ空間としての渋谷を

梅澤高明氏(以下、梅澤):いいですか?

伏谷:はい、どうぞ。

梅澤:長谷部さんに1つお願いがあるんですけど。コミュニティで、今住んでるシニアを中心とする人たちの絆を強めていきましょう、そのために、彼らにいろんなものを仕掛けていきましょう。これは当然やらなければいけないことだとわかります。

でも、それに加えて、もう1回渋谷から、特に若い人のカウンターカルチャーがどんどん生まれてくるような仕掛けもしてほしいです。

やっぱりFM局っていう話でいうと、J-WAVEができたことで、六本木がカルチャーのハブになったんですよね。90年代、同じころ渋谷系が流行って、タワーレコードやHMVがコミュニティハブとなり、かつ文化を強力に発信していた時代がある。

原宿は今、中川さんのおかげで元気になってきた。でもやっぱり原宿と渋谷はテイスト全然違うと思うし、原宿とは違う渋谷を作らなきゃいけないと思うんですよね。そのためにはFM局も使い、いろんなタレントも引き込みながら、渋谷発の、もう1回音楽も紐付いてるような新しい文化をぜひ作ってほしいなと思います。

ビルの狭間から生まれてきた、これまでの渋谷カルチャー

長谷部:僕、渋谷、原宿のカウンターカルチャーに揉まれて育ってきたんですよね。小学生の頃は竹の子族、ロカビリー族、中学の時はDCブランドブームとか、タレントショップがちょっと出てきたりして、高校からアメカジ、渋カジ、音楽は渋谷系で、ずっとそうしてきて。

でも実は、渋谷がちょっと薄れてきた時期があったんですよね。久しぶりにきゃりーちゃんとか出てきて、カワイイ系とか、そういうのもすごく大切だと思うんですよね。

やっぱり開発ってしていくと失われるものも実はあるんですけど、大きいビルはしょうがないから、便利だし必要だと思うんだけど、そこを繋ぐところにたぶんカウンターカルチャーって生まれてきたと思うんです。

さっき言ってた円山町みたいな、ああいうの大賛成だし、むしろあの辺に柳とか植えたいなと思うんですけれども、もう少し隠微な感じって言いすぎかもしれないですけど。そういうのってカルチュアルだと思うし、行政ができることっていうのは、そうやってやっていこうと思います。

ただ、カルチャー作っていくのって、やっぱり民間なんですよね。だから行政がやろうっていうと、なんかもうバレちゃって、格好いいカルチャー生まれないんで。

梅澤:いや、中川さんみたいな人が、やりたい放題やり散らかせる渋谷を、一部分でもいいから。

中川悠介氏(以下、中川):だいぶやり散らかしてるんだけど(笑)。

梅澤:中川さんは、原宿ですでにやり散らかしているんだけど、中川さんのスタイルとまた違う渋谷発のものが、もう1つあってもいいと思うんですよ。

カルチャーが生まれる基盤を行政がバックアップ

長谷部:それでいうと歩行者天国が1つきっかけになるかなと思ってて。もともと表参道も、代々木公園もいろんなカルチャーが生まれましたよね。もちろんそこも復活させたいけど、渋谷駅がこれから大きく開発されていく時に、スクランブル交差点っていうのは渋谷にとって非常に大きな資産だと思ってるんです。

梅澤:世界一の来場者でしょ。

長谷部:1日で横断歩道渡る(人数)の世界一と言われていて。あそこって、実は宮益坂から明治通りに下りてずっと来て、道玄坂を上がって246出るまでは、旧大山街道っていう街道だったんですよ。

そこをもう1回整備し直そうかなと思ってまして。歩行者天国ができる前提で、例えば柵のところにパラソルが立てられるようにしたりとか、ちょっとしたステージをいっぱい作るとか、行政はそういう仕掛けまでして、そこで自由にみんなが歌ったり発表したり。

後は、これはちょっと夢でなかなか実現しないんだけど、夜も人がいたほうがいいと思ってるんです。安心、安全だし。それで桜ヶ丘は今、人が住もうとしてる開発をすごく応援したいと思ってるし。

それと、地下鉄の入り口って、夜になると閉めちゃうじゃないですか、当然。上と地下に入る所を閉めると、だいたい階段が(手で階段の形を示しながら)こうなってますよね。なんか、ちょっとしたステージになるんじゃないかと思ったりして、演劇の人とか練習する場所がないっていうなら、そこでやってもらっても構わないし。イベントもやってもらったりすると、そこにまた体温が生まれて。ただで使えるわけですから。

そんなことを仕掛けたりとか、そういう箱を多くプロデュースすること、用意すること、地面を開放するとか。そういうことをやっていくことで、カウンターカルチャーが生まれないかなと考えています。

渋谷区民ではなく、渋谷人。渋谷にシティプライドを持つ人を集めて

伏谷:ちょっと豆トピックスなんですけど、実は私前職タワーレコードにいたんですけど、タワーレコードの「NO MUSIC,NO LIFE」っていうコピーあるじゃないですか。全国知らない人いないよね、っていうコピーなんですけど、あの「NO MUSIC,NO LIFE」っていうのは長谷部さんがいないと生まれなかったんですよ。

長谷部:いやいや、それまで大げさなことじゃない(笑)。

柴田:それはどういうことなんですか?

長谷部:僕が担当した時はもう生まれてましたけど。

伏谷:その後ね。

長谷部:広告を一緒にやってたんですけど。

伏谷:はい、やってたんですよね。

柴田:前職?

長谷部:広告代理店の時に担当してて、伏谷さんと一緒にやってて、クライアントの偉い人だったんですよ(笑)。

伏谷:すみません(笑)。

柴田:それが今こういう。

伏谷:ちょっとスライドを変えてみたんですけれども、今の話からの繋がりで、僕は梅澤さんがおっしゃってたみたいな懸念っていうんですか、住んでる人とか、高齢者とか、そういうところを中心に考えていくと、どうしても、いわゆる住みやすい街は作っていけるんだけれども、プラスサムシングの部分がなかなか見えてこない面があると思うんです。

ただ、長谷部さんの取組みの中で、企業と上手く付き合いながら、あるいはさっきの「NO MUSIC,NO LIFE」じゃないですけども、マーケティングとか、そういうブランディング的なコミュニケーション手法をどんどん積極的に取り入れて、街を活性化していこうみたいなことをやってらっしゃると思うんですけれども、その辺りは何か?

長谷部:もちろん、これから。何ていうか、税金だけでいろんなこと(をするとき)、区政っていうと住民の人に向いちゃうんですよ、それは投票者だから。

伏谷:それはそうですよね。

長谷部:当然そうなるんだけど、渋谷区を考えた時に、やはり住んでる人だけじゃなくて、この街で働きたい人。若い子たちとかそうですよね。

原宿だから会社作りたい、原宿に作りたいって来てくれてる人とか、あとは渋谷に遊びに来たい人とか、いっぱいいるわけですよ。だから区民っていうよりは、「渋谷人」っていう考え方をしようと思ったり。

柴田:ああ、渋谷人なんですね。

長谷部:その代り渋谷人っていう人は年間1万円くらい寄付していただけないかな、とか。

(登壇者一同笑)

長谷部:そうしてくれた人はバンド作ってあげたりとか、そういうこともいいかもしれないし。シティプライドを渋谷に持ってくれてる人たちは、みんな仲間って思いたいなあと思ってるんですよ。

渋谷にはいろんな価値があって。原宿含めて、恵比寿もそう、代々木もそう、実は新宿の甲州街道の内側の高島屋もそうなんです。なので、渋谷区にシティプライド持ってる人たちをいっぱい集めて街作りしたいなと思ってます。

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