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日本のハードウェア:現状と将来のかたち(全2記事)

堀江貴文氏が語る、日本のハードウェアの現状と将来の課題とは

2015年9月7日に開催された「Tech in Asia Tokyo 2015」に堀江貴文氏が登壇。East Ventures・松山大河氏とともに「日本のハードウェア:現状と将来のかたち」をテーマに意見を交わし合いました。堀江氏は自身が運営するオウンドメディア「HORIEMON.com」のインタビュー取材で見た日本のハードウェアやバイオテクノロジー分野の技術力の高さを紹介。それらの技術力がビジネスに活かしきれていない現状をファイナンスの観点から解説しました。

日本のハードウェアの現状と将来の課題

堀江貴文氏(以下、堀江):こんにちは。

松山大河氏(以下、松山):堀江さん、今日はどうもありがとうございます。East Venturesの松山太河と申します。

我々East VenturesはTech in Asiaに投資をさせてもらっていて、今回は登壇者の選定にあたり、「ぜひ堀江さんに出てもらえないか」っていうのをイベントの代表をやっているデビットから言われまして、堀江さんにお願いして来ていただきました。ありがとうございます。

堀江:こちらこそありがとうございます。

松山:今回、初めのTech in Asiaから提案したテーマが「投資について」ということだったんですけど、それじゃないほうがいいっていうことで、堀江さんが日本のハードウェアというか、製造というか、わりとそういう堅いところを話したいということで、テーマがそっちのほうに変わっています。

たぶん、堀江さんが言いたいことがそこにあるのかなと思いまして、まずはそこらへんのところをお話しいただければと思います。

テック系のメディアに対する不満

堀江:そうですね。僕今、「HORIEMON.com」っていう自分のオウンドメディアをやっていて、わりと真面目に運用はしてるんだけど、PVを売ったりとかはあんまりしていないので、そんなにメジャーじゃないんですけど。

たぶん僕のTwitterアカウントとかFacebookとかからしか、飛んでくる人がいないと思うんですけど、それでも月間100万PVくらいのちっちゃなサイトをやっています。

そこで僕が前からやりたかった、テクノロジー系のベンチャーのインタビューみたいなことをやっていて……なんでそんなことをやっているかっていうと、ちょっと不満だったんですよね。

テック系のメディアってWebメディアでも紙の雑誌でもあるんですけど、インタビューする人がそのテクノロジーに関してあんまり詳しくなかったりとかして、インタビューされている側がイライラしているのがすごくわかるんですよ。

「何だよ、1から説明しなきゃいけねーのかよ!」っていうことをグッと我慢して、懇切丁寧に説明してるんですよね。

本当に初歩の初歩から説明しているから、一番おもしろい最先端の今、研究していることとか、そういう核心に迫れていないんですよ。

だから、なんかつまんないなと思ったんです。僕だったらこういうこと聞きたいのになって。

だったら自分でオウンドメディアをつくって自分で聞きに行ったらいいんだと思って、聞きに行き始めたら……。それもニュースソースはキュレーションアプリみたいな、グノシーとかから見つけてきてるんですよ。

松山:堀江さんがここおもしろいなっていうところに、インタビューに行って?

堀江:そうですね。うちのスタッフが依頼に行って、あるいは、そういうインタビューした人に「なんかおもしろい人いませんか?」って言って聞いて、その人づてで聞きに行ったりとかしてるんですけど、これがまたおもしろいんですよ。7、8割はおもしろいですよ。

松山:それは会社に行くんですか? それとも、大学の研究室とか?

堀江:それは全然会社にも行くし、研究室にも行くし、ということで。まあ、たまにEast Venturesの投資先だったりもするんだけど。

松山:ありがとうございます(笑)。

日本のベンチャーや研究室の技術

堀江:そういうこともあるんですけど、誰も注目してなかったりすることもあります。そこに行って、自分も投資したいなと思って投資をしようとしたりとか、そういうことももちろんやってるんですけど。

そこで見えてきた問題点っていうのは、日本のハードウェアとか、バイオテクノロジーとか、その辺のベンチャーって……なんだろう、みんなすごい低予算でやってますよね? 結構びっくりして、「こんな予算で(やってるのかと)」。

例えば金沢大学だっけな。自動運転車の技術を開発している人がいるんですけど、たぶん15年くらいやっているとか言ってたかな。僕と同い年くらいの教授で、公道の実験をしているんです。

松山:はい。

堀江:石川県で自動運転車の公道実験をしてるんですね。僕は自動運転車に乗っけてもらったんですけど。

松山:へえ、もう完全に?

堀江:それは大学の構内で乗せてもらったんですけど、わりと高度に動いてるんですよ。

それなんかも、使っている部品とかは一緒なんですよね。プリウスを改造して、プリウスってドライブ・バイ・ワイヤ(注:アクセルペダル操作を物理的なケーブルではなく、センサーによって電子的に制御するシステム)になってるんで。

要は自動運転車のテクノロジーってメカじゃなくて、センシングとその画像映像処理なんですね。だからGoogleみたいな会社が得意なんですよね。

それでそのセンサーからインプットしたデータを処理、あるいは予測して、「2秒後こうなってる」とか「0.5秒後こうなってる」みたいな予測をして、自動車の挙動を操作するみたいな感じなんですけど。

たぶん、Googleが使ってる予算の100分の1以下でやってますよね。100分の1もないかもしれない。だけど同じくらいのことができてるっていう。驚くべきことなんじゃないかな(笑)。

日本のVCや投資家はパワープレイができてない

松山:我々はベンチャーキャピタルなんで、そういう日本のいい技術が、できれば実業化というか、ビジネス化に大きく進んでほしいと思っているんですけど、そういう事業化になかなかいかない壁があるような気もするんですけど、それはどこだと思いますか?

堀江:それはドカッとお金を使う……ファイナンスに関する考え方が違うということかなあ。

松山:そのファイナンスってのは、要するに予算みたいな?

堀江:予算じゃなくて、資金調達とか。つまりパワープレイですよね。アメリカ型のパワープレイ。アメリカとか中国が今やってる、最近はインドもそうですけど。

要は、設立間もない資本金1000万円もないようなベンチャー企業に、いきなり「10億投資します」みたいな。

松山:ははは(笑)。

堀江:そういう感じのパワープレイが全然できてない。それに尽きるのかなっていう。「えっ!こんなんに10億も入れちゃうの?!」みたいな。それも20%で10億とか、そういうような投資を受け入れない。

松山:すいません。20%で10億円もらいましたと。要するに、初めのバリュエーションが50億からスタートするってことですよね。

堀江:みたいな感じですね。

松山:なるほどね。それはなかなか……。

日本のいわゆるスタートアップのシード・アーリーステージの考え方からすると、ちょっとスケール感が……。投資家はそこまで(リスクは取れないかと)。もちろんそれは投資家が取るべきリスクだとは思うんですけど。

ハードウェアのベンチャーって難しくて。僕もいくつか投資してるんですけど、やっぱりお金がどんどんかかっちゃうんですよ。

お金がどんどんかかっちゃうと、その後どんどん増資が必要になっちゃって、そうすると初めにリスクを取っても、どんどんダイリューション(注:1株あたりの価値が希薄化すること)していってしまうっていう。

堀江:それはだから、投資先が良くないんだよ!

松山:ははは(笑)。がんばります。

(会場笑)

堀江:良くないとは言わないけど、あまり良くない。

松山:はい(笑)。まあ、でもいいのもあるんですよ。

堀江:いいのももちろんあるんだけど、僕はもう本当に「もう10億ほしいなあ」みたいなのがすごいありますよ。

「10億、100億あったらなあ。あったら俺、絶対投資するのにな」って思うし。だけど、その投資も受け入れないんですよね。

松山:でも確かに、投資を受け入れたくないっていうのは、特にやっぱり僕も大学の研究室とかにアプローチすることがあるんですけど、ちょっといけないところもあって。

日本って科研費っていうのがあって、大学にこもっていると、最低限のいわゆるちょっとした研究費みたいなのは、紙をたくさん書けばある程度もらえちゃうんですよ。しかもそれが、1億とか2億までもらえるんですよ。

堀江:まあ、わかるわかる。

松山:そうすると、5000万とかファイナンスを受けて、株式会社にして、リスクも負って、自分の教授っていうプライドもかけてやろうっていう気になかなかならないのかな、みたいなのが見てて思ったんですけど。

堀江:だから、相当粘り強く説得しなきゃいけないのかなとは思いますね。しつこくしつこく、孫さんみたいに。一晩膝を突き合わせて……直談判みたいな。

松山:うん(笑)。僕はだからできれば、そういう科研費とか研究費に頼るんではなくて、いわゆる直接ファイナンスをベンチャーキャピタリストにプレゼンして、資金調達していって、まずはそのプロトタイプをつくって、プロダクトをつくってみたいな方向になってくれればすごい投資先が増えていいな、とは思うんですけどね。

堀江:そこでやっぱり、アメリカの会社とかの競争に負けちゃいますよね。実際、負けてるよね。

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