2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
西松眞子氏インタビュー(全1記事)
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──最新刊は「ハンカチ2枚を持つ」という、なかなか興味深いタイトルです。本書はどういった背景から生まれたのですか?
西松眞子氏(以下、西松):「ハンカチ」は本書のテーマである「気くばり」をあらわすモチーフです。
「ハンカチを2枚持つ」意味は、自分のための予備としてではなく、ハンカチがなくて困っている人に差し出す用にもう1枚持っておく、ということです。
わたし自身が、困っていたときに見知らぬ方(しかも男性!)にハンカチを差し出していただいたことがあり、とても印象に残りました。わたしもそういう気くばりができる人になりたいと思って、それ以来、ハンカチは2枚持つようにしています。
実際には、ハンカチを誰かに差し出す機会はめったにありません。でも、仕事ができる人、周囲から一目置かれる人は、「常に準備を怠らない」ものなんです。
習慣が人をつくる、といいます。ですから、ハンカチという「気くばり」をいつも携帯することから始めてみてほしい、という思いが本書にはあります。
──たしかに、さりげない気くばりができる人は誰でも好感を持ちますよね。
西松:リーダーやトップに立つ人は、かならずといっていいほど、みなさん「気くばり」の達人です。
そういう方々は、ありふれた会話の中にも、ワンフレーズで気くばりを見せますし、おつきあいの席でも相手に気をくばるセンスが光ります。それに、立ち居振る舞いや装いの気くばりでステイタスを感じさせたりしています。
「この人、できるな」「こいつには仕事を任せられるな」といった評価をされるかされないかというのは、じつはちょっとした「気くばり」の差であることが多いんです。
また、さりげない、というのもポイントです。ポイントねらいの見えすいた媚びやへつらいはかえって逆効果ですからね。
──西松さんのお仕事はイメージコンサルタントですが、具体的にはどういったことをなさるのですか?
西松:経営者や経営幹部など企業のエグゼクティブの方々、トップセールスの方、接客業の方など、立場や影響力のある方や人と接するお仕事の方々に対して、効果的な印象をつくり、力強いメッセージを社内外に出したり、カリスマ性をより強く出したり、相手から信頼を得たりするお手伝いをしています。
具体的いうと、身につけるスーツやシャツ、ヘアスタイルなど外見の印象から、立ち方、座り方、歩き方、そしてもちろん話し方や声の出し方などまで、さまざまな印象づくりを戦略的にアドバイスします。ベースとなっているのは心理学や色彩学の考え方です。
──そこまで細かな指導をなさるんですね!
西松:アメリカやヨーロッパなどの海外では、政治家や経営者などは必ずといっていいほど、イメージコンサルタントがついています。
演説のとき、大統領は何色のネクタイをつけると支持率が上がるか、大衆に手を振るときはどの角度がいいかなど、科学的な根拠をもとにコンサルタントがアドバイスすることはよく知られていますよね。日本では外資系企業のトップが中心でしたが、日本企業にもずいぶん浸透してきました。
最近では、若手のビジネスパーソンの方のパーソナルイメージコンサルタントも増えています。その人の特徴、個性などを見て、プレゼンではどう話し、どう手を動かすかなどをアドバイスします。
たとえば、本文の「49. プレゼンの成功はへそより上で決まる」でも述べましたが、プレゼンのとき、手の位置は常にへそより上をキープします。だらりと手を下げては、聞いている人の目線が下がるからです。そして、顔のすぐそばで手に動きをつけて説明すると、注目をぐっと集めることができます。資料なども顔のすぐそばで掲げると、相手の印象に強く残ります。
こうしたアドバイスの後、プレゼンや会議で周囲の評価がガラリと変わり、成約をどんどん得られるようになったりして、驚かれる方もいらっしゃいます。
西松:印象って、それくらいものごとを左右するものなんですよ。わたしたちは「自己演出」と呼んでいます。
自分のイメージを変えてビジネスで生かしたいなら、「自己演出」をとりいれてみてください。あなたのイメージは本当に文字どおり、ガラリと変わります。
──ビジネスに「自己演出」は必要でしょうか?
西松:わたしは企業に出向いて「自己演出」の研修やセミナーをすることも多いのですが、そうした機会にも、「タレントでも俳優でもない一般のビジネスパーソンに『演出』など必要か?」と疑問に思う方が少なからずいます。
「ビジネスの場では仕事をすればいいのであって、印象をアップしたりするのは余計なことではないか」と、考えてらっしゃるんですね。
仕事をきちんとすることは、もちろん必要です。印象ばかりアップしたところで中身が伴わなければ本末転倒ですからね。
ただ、ビジネスの重要な、そして大きな部分は「対人コミュニケーション」です。いかにすばらしく、非の打ち所のないビジネスプランでも、提案のしかたがまずければうまくいきません。
提案を受ける側も、論理的に、合理的に判断するのが原則ですが、最後の決め手になるのは「心を動かされたか」であったり、相手を「信頼できるか」だったりします。「この人となら一緒にビジネスをやってみたい」「この人からなら保険を買ってみよう」と。
ですから、ビジネスには人の心を動かし、気持ちを通わせることが不可欠です。
人間は機械ではありません。好印象を与えるしぐさ振る舞い、信頼を得る言葉などを身につけることは、決算書を読めるようになることと同じくらいに必要なことなのです。キャリアを重ねた方、人の上に立つ方ほど、このことの重要性に気づいていらっしゃいます。
──西松さんが実際にコンサルタントなさっているエグゼクティブの方々の印象を聞かせてください。
西松:若いころ、経営者や重役など、いわゆるエグゼクティブの方々って、厳しくてコワイ方が多いのでは、と思っていました。でも、実際にお仕事させていただくと、印象は真逆でした。
そして、のべ3000人以上のエグゼクティブと出会ってきて、わかったことは、「立場が上になればなるほど、気くばりをする」ということです。
みなさん、とても相手の気持ちにセンシティブです。だからこそ、何百、何千という人を動かす立場にいらっしゃるのだなあ、と納得します。
本書でご紹介している数々の「気くばりのコツ」もエグゼクティブの方たちから教えてもらったものです。
──すぐに実践できることを何かご紹介してくださいますか?
西松:そうですね、とても日常的なことを一つ挙げてみましょう。これは、ある業界のトップセールスの方に教えてもらったのですが、缶コーヒーなどを人に渡すときは「プルタブを開けてから渡す」のだそうです。
女性にとってはとくに、缶飲料のプルタブを開けるのは、意外に力が必要です。ネイルをしていたら、傷つけたくない、という気持ちもあるので、開けてから渡されるととってもうれしいものです。
ウソだと思うなら、周囲の女性に聞いてみるか、試してみてください。かならず感動されますから。飲むために手渡すのだから、ひと手間をこちらが負担する、相手が飲みやすくする、という気くばりです。
小さなことですが、この精神は他でも生かせます。「書類を渡すときは読みやすい方向に向けて渡す」「相手が話しやすいペースで会話を進める」などです。
成功している方ほど、相手を立てる、相手を敬うことを大切に守っているのです。そうした姿勢は、人が見ていないときの振る舞いや、お礼や労いを伝える短いメールににじみ出るものです。
ちょっとした差が評価を大きく左右するのをよくご存知なのでしょう。
──そういえば、本書が出来上がってから、うれしい連絡が入ったそうですね。
西松:そうなんですよ。長くお世話になっている、ある経営者の方に新刊を上梓したご報告をしたところ、「ぼくもいつもハンカチ2枚、持ってる!」とご連絡くださったんです。
「ハンカチ2枚持つ」は成功者のリトマス試験紙になるのではないかと、本当に思えてきました(笑)。
──どういった方に本書を届けたいですか?
西松:マネジャークラスの方はもちろんですが、最近、部下を持つようになった方、あるいはチームのリーダーを任されるようになった方など、ワーキングステージが上がった方にぜひ読んでいただきたいです。
立場が変わるときは「自己演出」のチャンスですし、効果が大きくなります。本書のメイン読者は男性を想定していますが、じつは女性にも参考になることがたくさんあります。
立場が変わるとケアしなくてはならない要素が多いのは女性のほうともいえます。ワンランク上の自己演出をぜひ役立ててください。
ステキな大人が増えると、ビジネスシーンが、大きなことをいうと、日本が活性化すると思うんです。男性陣には「女性にモテるため」のかっこよさだけではなく、本当の大人のかっこよさを身につけてほしいと思います。
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