2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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ケリー・マクゴニガル氏(以下ケリー):さて、それでは最後の介入です。健康に特に問題のない方は是非ご一緒に。ただ気を失ったりしてほしくないので、無理はなさらないでくださいね。
さあ、ではもしよろしければ15秒ほど息を止めていただきたいんです。時計に秒針あります? ありがとうございます、では時間を計っていてください。さあ、やりたくない方は参加しなくても構いませんからね。息を深く吸って。秒針、見ていてくださいね。
息を吐いて。もっと吐いて、もっと吐いて、さあ息を止めてください。時間計ってくださいね。
もし息を吸いたくなったらいつでも吸っていいですからね。感覚を味わっていただきたいだけですので。3、2、1、さあ息を吸ってください。さて、息を止めるのも当然ちょっとした意志力チャレンジですよね。2分くらい息を止めていないとチャレンジにならない、という方もいらっしゃるとは思いますが、気を失ってしまう方が出てしまうと困りますのでこの程度にしておきました。
さて、この息を止める力についてなんですが、このことから皆さんが難しい目標を達成する力をかなり正確に推測できるとご存知でした? なかなかおもしろいですよね。心理学者からは「苦悩の許容」と呼ばれています。不愉快な出来事を耐え抜く力ですね。
これからまたちょっとした介入についてお話ししますね。これは息を止めることと少し似ていまして、身体的な不快感をどう乗り切るか、に関するものなんです。ふたつ研究をご紹介しますが、どちらも同じテクニックが使われていますので、ご自分に合ったほうの意志力チャレンジを選んでくださいね。
さあ1つ目です。わたしはこちらを「拷問部屋」と呼んでいまして、禁煙しようと思っているもののうまくいっていない人たちを対象としたものです。調査者たちはこの研究のなかで、まず参加者に24時間喫煙を我慢するようにお願いするんですね。これが1つ目のチャレンジです。
その後、対象者の一番好きなタバコブランドのパックを未開封で持ってくるようにお願いするわけです。ですので、実験対象の皆さんはタバコを持って、タバコを吸いたくてたまらない状態でやってきます。ちゃんと喫煙を我慢してきたかどうか確認するために一酸化炭素試験も受けた上でですね。もうタバコのことしか頭にないような状態です。
それで長机に着席してもらって、気が散るようなものは全部片付けるように言われるんですね。机に残るのはライターかマッチとタバコだけ。
(会場笑)
とにかくたくさん喫煙者がいて、皆さんタバコが吸いたくて仕方ない状態です。それで実験者たちは段階を追って参加者にタバコを吸ってもらうようするんですね。そして、そちらにあるようなマイクを通して「タバコのパッケージを出してください」とアナウンスをします。当然皆さん喜ぶわけですが、今度はストップをかける。
2分間待つように指示されて、その間許されるのはタバコのパックを見ることだけ。
(会場笑)
「ビニールをとって!」
「やっとか、よかった!」
「ストップ!」
それでまた2分待つ。「パックを開けて」という指示もありましたね……私は喫煙者ではないので順序がわからなくなってしまいました、ビニールを開けて、パックを開けるステップもあるんです。それで、ビニールをとると次のアナウンスは「タバコを出してください」です。
「やっとだ!」
「ストップ!」
またここで2分。これがずっと続きます。この2分の間は、どれだけ自分がタバコを欲しているかを紙に書いてもらいます。ですがそれ以外は何もしてはいけません。
「タバコを出してください」
「ストップ!」
そして、2分。
「タバコを見てください」
「ストップ!」
また2分。
「タバコの臭いを嗅いでください」
「ストップ!」
また2分です。
(会場笑)
「タバコを口に入れてください」
「ストップ!」
そして2分。
「ライターを出して、見てください」
「ストップ!」
さらに2分。こんな調子で1時間以上続くんです。
(会場笑)
結局誰もタバコに火をつけて吸わせてもらえないんです。
さて、介入について具体的にお話ししてませんでしたね。この実験の前、参加者の半分は「衝動をやり過ごす」技術を教わるんです。その中で、何かを欲しいと感じるときの身体的な不快感に注目してもらうんですね。
その衝動に神経を集中させて、この身体的な感覚を自分は許容できる、辛抱すれば消えるはずだと考えるんです。ゆっくり息をして待てば、どんな欲求も、どんな感情もいずれは消える。衝動や感情全てに対応しなくてもいいんだ、と。
そんなわけで、参加者は今お話ししたテクニックを使って衝動をやりすごし、自分が感じている欲求を波として捉えるようにするんです。深呼吸して、波と同じようにいずれは終わる感覚なんだという認識を持つというわけです。
この研究の結果をお話しする前に、食べ物の実験についてもお話ししますね。これはまた別のアプローチで、食べ物に関するセルフコントロールに悩んでいる人たち、特にお菓子ですけれども、こうした人たちにハーシーズのキスチョコレートが入った透明の容器を渡したんです。
それで彼らにはその入れ物を48時間持ち歩いてもらうんですね、中身はひとつも食べないように指示して。どれもピンにつけた小さなマークがあるので、もし参加者が中身を食べて補充してもわかるようにしてあるんです。こちらの実験でも参加者は欲求の扱い方を教わるんですね。衝動をどうやり過ごすか、そしてこの欲求を認識したうえで、何もしなくともいずれこの欲求は消えていくんだと認識するんです。
さて、それでは結果です。先ほどの1時間の拷問試験のなかで衝動のやり過ごしかたを習った喫煙者はですね、翌週には喫煙量を4割減らすことに成功したんです。しかも自発的に。
もう一方のグループのほうは全く喫煙量が減少しませんでした。さらに興味深いのはですね、衝動をやり過ごせるようになった人たちは、心理ストレスと喫煙の間のつながりがなくなったんです。
禁煙しようとしている方にとってはこのつながりが一番の問題点ですよね。ストレスを感じて、不安になって、それでタバコが欲しくなってしまうわけですから。介入を受けたほうのグループはストレスから誘惑に屈してしまう、ここの関連性を断つことができたんです。
強い感情をうまくコントロールできるようなツールを得たからですね。お話した研究の中で、セルフコントロールがうまくできていなかった人たちもですね、衝動のやり過ごし方を教わった場合、48時間以内にハーシーズのチョコを食べた人は誰もいませんでした。
ところが他の対処法を学んだほうの人たち、例えば気を紛らわせるとかですけれども、こうした人たちは結局誘惑に屈したり、あるいは誘惑に負けたことに対してストレスを感じていたんですね。
さて、ご紹介した2つの例から、衝動をやり過ごすと意志力を得ることができるということがわかりました。よく「いい習慣を作るのが大事だ」と言う人がいますけれども、実際に必要なのは困難なことをやり遂げる力ですよね。
タバコやドーナッツが欲しいときに実物を見ても吸いたくならない、食べたくならない、なんて習慣ありませんから。あるいは不安に思っているものを避けるための習慣ですとかね。どれも実際にみなさんが体感している衝動、そして向き合う必要のある感情です。
そしてこれを受け入れる力が、実はこの厄介な感情や欲求と向き合うのに一番いい方法のようなんですね。この感情を追いやろうとしてもかえって逆効果。ですがうまくやり過ごして、いずれは消えるものなんだ、別に立ち向かう必要はないんだ、と捉えるだけでかなりいろいろな意志力チャレンジに対応できるようになるんですね。
例えばやるべきことをやらない、というのもひとつです。意識があちこちへいってしまう、これも大変な意志力チャレンジです。意識というものはときに望んでいないところまでいってしまいますから。記憶、想像、自分や他人に対するネガティブな気持ちですとかね。こうしたものに対しても、先ほど話したのと同じように「やり過ごす」ことで対応できると研究から明らかになっています。
さらには減量にもいい影響が。お話してきた、自分の欲求を受け入れる方法で、一般的なダイエットのプログラムに入っていた人の1年間における減量の成功率が実に3倍にまで上がった、という数字も出ています。
薬物乱用や、統合失調症の人たちの助けになっていますね。意志力チャレンジは、例えば頭のなかで声がしている、とも捉えられます。声がしていてそこから逃げられない。普通に生活して、社会と普通に関わっていきたいのにその声のせいで何かをしてしまう、あるいは逆にできなかったりするわけです。
それで、研究によりますと統合失調症を患っている方が、自分の不安定な思考、幻覚、あるいは妄想を欲求と同じように受け入れるとですね……つまりこれは現実ではないんだ、やり過ごせばいい、しばらくはそこにあるけれども、いずれは消えるんだ、と認識できるようになると、入院する必要もなくなったり、普通に生活できるようになるんです。このテクニックを教わらなかった方とは対照的にですね。
さて、それではこのテクニックをご自分の意志力チャレンジに活用させたければ、次にご紹介するようなちょっとした介入を行ってみてください。
お話したふたつの研究の中で、参加者が教わったのはこちらの内容です。ひとつは自分が感じていること、考えていることを意識する、というもの。そしてそこから逃げるのではなく、逆に寄り添うということ。
つまりお腹が空いているとしたら、それがどんな感覚なのか意識するんです。あるいは不安な気持ちがあるとしたら、それを今どんなふうに自分が感じているのか、探ってみるんですね。
そうしたら深呼吸です。気持ちを安定させるために呼吸をうまく使いましょう。自分の感情を意識して、深呼吸を何回かする。意識を広げて、もう一度自分の目標へと戻るチャンスを探るんです。
これがタバコとチョコの研究で、いい結果が出た方の参加者に伝えられた内容です。実際に実践できるテクニックですし、30秒ほどしかかからないので、どんな意志力チャレンジにも使えるものですよ。
さて、それではまとめとして5つ意志力のルールをリストにしました。今日私が話した内容で皆さん自身の意志力チャレンジにも活用できそうなものがあればご自分で挑戦してみていただいて、どんな結果が出るか試していただければ、私としても本望です。まさに私が授業や本を通して目指していたことですからね。ご自分でいわば意志力の研究者になっていただきたいんです。ご紹介した研究をもとにご自分でいろいろ試してください。仮説をたてて、うまくいくかどうか見てみましょう。ご自身でデータを集めるんです。
さて、5つの戦略ですが、まずは意志力の生理的な部分を鍛えること。これは瞑想、睡眠、運動、そしてエネルギーを保てるような食事をとることで達成できますね。
次に、意志力の挫折を経験したとしても自分を責めないこと。
そして「未来の自分」といい関係をもつことですね、未来のことをもう少し現実味を持ってとらえる。
さらに、成功を想像するのは確かに気分が良いことですけれども、失敗についても考えるということ。自分がどのようなプロセスを踏んで失敗するのかよく考えることですね。
そして最後に、誘惑に襲われたときはその衝動をやり過ごすことです。
ありがとうございました、みなさん最後まで聞いてくださって、なかなか意志力の強さをみせてくださいましたね。
(会場笑)
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