2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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AIとテクノロジーが発達する中で、なぜ私たちが学び続ける必要があるのか。本イベントでは、ICTエバンジェリストの若宮正子氏、グロービス ファカルティ本部 テクノベートFG ナレッジリーダー/グロービスAI経営教育研究所(GAiMERi)研究員の八尾麻理氏、東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構教授の横山広美氏がゲストとして登壇。本記事では、世界最高齢のプログラマーである若宮正子氏が、AI時代の学びについてお話しします。
岡田友和氏(以下、岡田):横山さんと八尾さんから、共通してパッションの話が出てきましたが、いわゆる「熱意」ですね。「確かに、AIにはパッションがないもんな」と思いながら聞いていました。今、若宮さんも89歳で日々勉強しているとお話しされていましたが、何が若宮さんの熱意やパッションになっているのでしょうか?
若宮正子氏(以下、若宮):私は知りたがり屋で物好きで、おもしろがり屋なので、その1つがたまたま勉強だったんです。今勉強していて、ありがたいなと思うのは、我々でも人工知能が使えるようになったこと。お友だちに話すようにごく普通の話し言葉で(質問)するだけで、(AIが)答えてくれることです。
それから、いろいろな条件に対応してくれているわけですが、昔は「7歳の子どもでもわかるように教えてください」というのがありました。おもしろいのが、この頃は「リスキリングとはどういうことか、70代の人にもわかるように教えてください」という質問にも答えてくれます。
そう聞いたら、「人工知能を使って、そういうことを知りたい人に教えるのが、すなわちリスキリングです」と書いてあったんです。「なるほどな」と思ったのですが、条件をいろいろ入れると、それに合った教え方をしてくれます。「人工知能さんに手伝っていただいて、勉強する時代が来たんだな」と思います。
岡田:なるほど。「7歳じゃなくて、70歳にわかるように説明しよう」というのはおもしろいですね(笑)。みなさん、アップデートして0を1個つけていただくよう、お願いします。
僕個人としては、今のお話で「おもしろがり屋」というキーワードがすごくかわいらしくて。「若宮さんらしいな。それって重要だな」と思いました。「知的好奇心」というキーワードのほうが腹落ちする方がいるかもしれませんが、そういう原動力があるのかなと思います。
岡田:今のお話を聞いて、八尾さん、何かコメントはありますか?
八尾麻理氏(以下、八尾):私自身は、知的好奇心に突き動かされて、今も大学院で学んでいるような人間です。もちろん、母の闘病で垣間見た病院の現状や、がんばっているのになかなか、手が届かないでいる日本の医療従事者の方々を目の当たりにしたことがきっかけになっています。
私も団塊ジュニア世代ですが、「後期高齢者の中で、2こぶ目の山になっていく私たちが負の遺産になってはいけない」という思いで学んできました。
それが最初のきっかけではあるのですが、学び始めたらワクワクが止まらないんですね。私は3人の息子のうち2人が大学生なのですが、彼らにはいつも、「お母さんのほうが勉強しているよね」と言われています(笑)。私も、息子と同じくらいの学生さんと机を並べて、今も学びを楽しんでいます。
岡田:ありがとうございます。では、テーマを進めさせていただきます。「学び続けた先に待つものは何だろう?」というテーマです。若宮さん、90代の方を見て、学び続けた先に何が待っていると思いますか?
若宮:学び続けてこられた方は、いくつになってもしっかりしています。(90代になると)「認知症っぽい人」とかいろいろ言われますが、そうじゃないんですね。「メロウ倶楽部」の元会長さんは、今98歳ですが、自分のところに来たメールが悪質メールかどうかをいろいろ調べて、「限りなく怪しいから、これ以上調べるのはやめる」と言っていて、すごく論理的なんですね。
98歳になってもそういうことができるので、学び続けている人はきっと、認知症になりにくいんじゃないかと思いました。
岡田:なるほど。ありがとうございます。ちなみに、そういう意味では横山さんもある種、これからも学び続けていくのかなと、お話を聞いていて思いました。その先に、何を求めているのでしょうか? 打算的というと表現が違うかもしれませんが、そこに何があると思いますか?
横山広美氏(以下、横山):研究者という立場では、学び続けることが、ある種、仕事にもつながっていて、本当にありがたい立場にあるなと感謝しています。
「生み出す知に責任を持つ」と言いますか、我々研究者としては、そこがとても大事だと思います。社会の中でみなさんに使っていただく科学技術を生み出していく時に、大学や研究者が率先して、みなさんが使いやすい、あるいは気をつけなければならないルール作りをしていく必要があるとも思っています。
当然のことながら、大学の中でできることに限りませんので、みなさんと一緒に現場の知見を学びながらやっていきたいと思っています。
やはり、「信頼」「責任」という言葉がとても重要だと思います。そこにかかわっている開発者の方や、提供する企業のみなさま、すべての方の信頼が積み重なって、「みんなが安心して使える状態」にたどり着くわけですね。その各ルートの信頼をどうやってつなぎ止めるかが、私の関心事の1つです。
当然、東京都や政府の信頼もかかわってきます。そのような信頼をうまく紡ぎ出せるエコシステムを作りたいと思っています。そのすべてのプロセスには学びが必要ですので、「日々学びながら」という状況ですね。
岡田:ありがとうございます。お話を聞いていると、あらためて「学びって抽象度の高い話だな」と思いつつ、何をするにしても、すべて学びだなと思います。
「(学び続けた先に)何が待つんだろう?」というテーマについて、私も考えました。横山さんの場合は、「学ぶことが仕事になる」というお話で、目的が学ぶことに直結するのでわかりやすいと思います。一方で社会人になると、「自分が営業職だから、営業につながるために営業の勉強をする」ということが多く、「目的のためじゃなければ学んではいけないのかな」と思うんです。
岡田:八尾さんの考えをお聞きしたいのですが、グロービスは、ビジネスパーソンが大学院に入るケースが多いと思うのですが、目的がなければ学ばないものですか? それとも、目的がなくても学び続ける方もいらっしゃるのでしょうか?
八尾:私どもの大学院に来るきっかけは、みなさんさまざまです。先ほどお話ししたとおり、今の時代、AIに代替される職業が増えてきています。ですので、これからの自分の付加価値の付け方を模索される方が増えてきているのは事実です。
ただ、大学院は2年あって、1年目に経営の理論をたくさん学びます。いろんなケースを読んで、あらゆる状況の中で切磋琢磨して、解を出す方法を学びます。でも、「法律一辺倒でいいのか」と、だんだん疑問が出てくるのですね。そこで多面的に物事を見て、「一番リスクが少ない選択肢が、本当に正しいのか」とロジカルに考える。
実は2年目になると、サステナビリティに関連する授業も受けるようになります。そうすると、「世の中というのは、本当に複雑なシステムでできている」と気づくのですね。自分が正義だと信じていたことが、ガラガラと音を立てて崩れるような経験をします。
そういった時に、例えば天然水を扱っている事業があったとします。「天然水はみんなの健康にもよさそうだから、マーケティングに使っていきたい」という思いが企業にあって、法的にはちゃんと整備されている。ただ、NPOと地元の方からすると、「何十年もの間に水位が下がってきて、環境破壊が起こっている」ということで、訴えられるのですね。
「自分たちは法的に正しいことをしていて、水資源を守る活動もしている。でもそれでいいのか」と、突きつけられるわけなんです。その時に、「自身はどんなことにモヤモヤしているのか」「会社としてや法的には正しいけど、個人としての意志はどこにあるのか」と、自分自身の心に帰っていくんですね。それがまた、学びの原動力になっていくわけです。
このような経験をすると、自身の信念に基づいて、「世の中をもっとよくしていきたい」「地球環境と合わせて、自分自身の生活をより豊かなものにしていきたい」と(考えるようになります)。その原動力が、生涯の学びになっていく方が非常に多いと思います。
岡田:なるほど。あまり目的がなかったとしても、どこかでそういう仕組みに気づいて、結果的に目的につながることもあり得ると、よくわかりました。ありがとうございます。
岡田:話を進めながら、「規定どおりに進めるのもあまりおもしろくないな」と思いました。ですので、あらためて今回のテーマ「AI時代の学び なぜ私たちが学び続けるのか」というところで、それぞれの持論をお聞きしたいのですが。
AIに指示さえ出せば答えが出る時代に、なぜ学び続けるのか? まず、若宮さんからお聞きしたいと思いますが、お願いできますか?
若宮:AIは何でも達者ですが、例えば、私が飛行機の機長さんで、AIが副操縦士じゃないかと思うんですね。機長さんが少し居眠りしていても、副操縦士がどんどんやってくれることもあると思うんです。でも、何かがあった時には、機長さんが操縦桿を持たなければなりません。ですので、AIはすごく有能な副操縦士、コパイロットじゃないかと。
コパイロットにいろいろ頼むためには、機長さんが何でも知っていないと、どのタイミングで、何を頼めばいいかわからないと思うんですね。だから、自分自身も勉強して、有能な副操縦士が活躍できるようにしてあげないとダメなんじゃないかなと思います。
岡田:ありがとうございます。すごくわかりやすい例えだと思いました。もしかしたら、自分はAIによって楽ができるんじゃないかと思っている方もいるかもしれません。「機長は自分」と、あらためてご認識いただければと思います。あえて同じ質問をお聞きしたいと思います。横山さんはいかがでしょうか?
横山:ChatGPTが出てきて、大学で大きな問題になっているのは、例えば「卒業論文や修士論文、博士論文は、どこまでこの学生さんが本気で考えて書いたのだろうか?」ということです。そういう現実が、すでに始まっています。
審査していると、「これは滑らかすぎるので、ChatGPTが書いたんじゃないか?」と疑ってしまうような文章に、時々出会います。もちろん、大学としては「新しい技術は上手に使いましょう」と、使うことを推奨していますし、「学生の判断できちんと使えばいい」と思っています。しかしながら、自分ならではのオリジナリティは、ネット上に溢れた情報ではなくその人から生まれてくるものだと思っているんです。
オリジナリティを磨くのに、AIは副操縦士としてとても役立つと思います。しかし、核となる概念や、それが歴史的にどのような深みを持って、なぜ今大事なのかという主体的な説明は、本人の口からぜひ聞きたいものなんですね。
ということで、若宮さんと同じなのですが、「やっぱり操縦士は学生、人なんだよ」と、常々感じながら使ってほしいと思います。
一方で、先ほど八尾さんがおっしゃったように、私も日々ChatGPTを使いながら過ごしていますが、とても便利なんですね。特に、英語の校正をするのにものすごく便利です。そういう意味では、今まで校正会社に依頼していたものが、ChatGPTで直せるようになって、どんどん経済的にも動いているんだなと実感します。
今言ったようなことで、学生にはAIを上手に使ってほしいのですが、「あなたのオリジナリティは何?」といった時に、「ネット上にはないはずのオリジナリティを、ぜひ生み出してほしい」と思っています。
岡田:「あなたのオリジナリティはネット上にはない」、すごく素敵な言葉でしたね。ありがとうございます。逆に、「生産性をとにかく上げなさい」と言われるビジネスマンと相対することが多い八尾さんからも、同じ質問に回答いただければと思います。いかがでしょうか?
八尾:私は今、医学部でも学び始めて、気づいたことが1つあります。みなさんが知っているようで知らないこととして、「平均寿命」があります。この「平均寿命」は、よくお聞きになると思います。男性で81歳、女性で87歳と、今日本は世界最高レベルにまで来ています。
みなさん、お亡くなりになる年齢が一番多いのは何歳か、想像したことはありますか? 実は男性が85歳、女性が92歳なんです。この年齢でお亡くなりになる方が、今一番多いんですね。それくらい、ピークは後ろにずれてきています。
私は今、団塊ジュニア世代です。「さらに40年くらい、このまま漫然と生きていられますか?」。私はこれを、自分に問いたいと思いました。40年という、人生をもう一度繰り返すかのような長い時代を考えた時に、「ずっと学び続けることは、もしかすると自分のウェルネスにつながってくるんじゃないかな」と思ったんですね。
経営大学院でみなさんに教育の機会を与えることと、健康リテラシーを上げていくこと、その両輪を回すことで、私は今、日本の超ウルトラ高齢化社会を体現しようとしています。こういったところをソフトランディングして乗り越えていけるのが、健康と教育なんじゃないかなと考えています。
岡田:ありがとうございます。若宮さん、横山さん、八尾さんのそれぞれの立場で先ほどの問いに答えていただきました。
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