2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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東京・立川を拠点に起業に関連したさまざまなイベントを開催しているStartup Hub Tokyo TAMA。本記事では、『秒で使えるパワポ術』『秒で伝わるパワポ術』の著者で、シリョサク株式会社代表の豊間根青地氏が登壇したイベントの様子をお届けします。今回は、スライドの本質や、スライドを見やすくするポイントについて語られました。
豊間根青地氏(以下、豊間根):あと2つですね。「構造を図解にする」という話をしていきます。ここでお話しするのは、要はタイトルとキーメッセージが作れましたと。そのスライドで答えは決まったんだけど、じゃあその根拠・理由をどう作るかというところの考え方をお話しします。
いわゆるスライドの中に載せるコンテンツ、図表の話をしていくわけですが、最初に意識いただきたいのは、みなさんがパワポのスライドをどういうイメージで捉えるかという話です。
パワポのスライドは自由帳やキャンバスみたいに真っ白な場所があって、そこにペタペタとものを載っけていくイメージで捉えている方が多いと思うんですけど、そうじゃなくて、スライドは切ってください。スライドは切り分けるものです。
スライドって四角いので、四角を直交した直線で切り分けると、四角が並ぶわけですね。
このように整然と並んだ四角形によって意味のある構造を作ると、情報同士の関係性がぱっと見てわかりやすくなります。
「意味のある構造」とはどういうことか。例えばさっき「生活スタイルが変化します」というスライドがあったんですけど、このスライドの構造は、要はこれです。
「今まではこうだったけど、これからはこうなります」ということを、ざっくり横長に半分に切って示しているわけですね。
「今まではこう」「これからはこう」という前後の関係を持っているのが、このスライドの本質です。
「『今まではこうだったけど、これからはこうだ』と言っているな」と見た瞬間にわかる。これも一種の2階の情報です。
それをするためには、図解もあくまで構造なので、構造だけではなくて文字によってちゃんと言いたいことを補完する必要があります。
「今までどうだったの?」というと、「『その日暮らし』だったよね」と。「これからは『生活をデザイン』になる。だからいいんだよ」ということを文字によってちゃんと説明する必要がありますが、常に本質は構造です。
構造と文字が図解の本質なので、別に色をなくしても伝わるわけですね。さっきこれは下がピンクだったんですけど、別にピンクじゃなくても意味は通じますよね。
さらに言うと、四角をなくしても通じるわけです。四角をなくしても、上の固まりと下の固まりという関係性は残るので、意味は伝わります。もちろんワンちゃんのアイコンを消しても伝わります。
スライドの本質は、常にざっくりの構造と、そこに書かれた文字にあります。色やアイコンは常に後からついてくるものです。とはいえ、色やアイコンがあったほうがわかりやすいので入れるべきなんですけど、常に文字と構造だけで伝わるかどうかを意識してください。
図解を作るステップは大きく4つあります。
先に言っておくと、よく「これだけでスライドの図解は完璧! 頻出図解パターン9選」みたいな記事があったりするんですが、僕はああいうのには基本的にちょっと懐疑的です。ああいうパターンに当てはめると、あまり本質的じゃない図解ができます。
そうじゃなくて、今からお話しするような表ですね。表を作ることを意識したほうが、スライドはわかりやすくなります。意味のある表を作るということです。要素を1列に並べて、行または列を増やして、要素同士の関係性を示して、最後に文字で説明を書き込む。これを順番にやるとわかりやすい図解が作れます。
具体的に言うと、プランの説明のスライドがありましたよね。あれって超ざっくり言うと、「プランが2つありますよ」ということが言いたいスライドだったわけです。何度も言いますが、こんな感じの「超ざっくり言うと何が言いたいか」というのを、最初にスライドを切り分けて示すのがすごく重要です。
これは2つしかないのでわかりづらいんですけど、2つのプランを縦に並べているんですね。これが要素を1列に並べるということです。
ここに、行または列を足していきます。このプラン2つに対して、それぞれ「どんな動物におすすめなの?」という情報を足していくわけですね。
これは要素を足しているパターンで、それだけじゃなくて、タイトルを足すというパターンもあります。「これを書いている人って、何の情報を書いているの?」というと、「こういうおすすめの動物さまに関する情報を書いているんだよ」というタイトルを足すわけですね。
ということを繰り返すと、こんな感じで表が作れます。2つのプランが「誰におすすめなの?」「基本はいくつなの?」「プラスだんごはいくつなの?」「最大いくつなの?」という表ができるわけですね。これがマトリクス表です。
次にするのは、関係性を示す。
これは四角形同士の関係性を示すということですが、右側のプラスだんごと最大だんごって「4個または2個」「9個または7個」と要素が2つあるんですよね。
でも要素が2つあることは、文字をちゃんと読み込んで、「『4個または2個』ということは、これは2つの要素なんだな」という意味を解釈しないといけなくて、これはわかりづらいです。どうするかというと、四角形を切り分けるんですね。四角形を切り分けると、左側の基本だんご5個に4個と2個がひもづいているということが見た瞬間にわかります。
ここも小さな2階の情報ができているわけです。「見た瞬間にわかる」が作れます。要素をくっつける、もしくは切り離すことによって、どの四角形の中にどの四角形が含まれるかを目でわかるようにしてあげるわけです。
今回の場合は、「5+4=9」という四則演算の関係性があったので記号を書いてあげていますし、ビジネスモデルであれば矢印でつないでもいいですね。
記号とかで要素同士の関係性を示してあげて、最後に説明を書き込む。
今回のプラン表はそんなに書くべき説明がないですが、例えば、フルコミットプラン全体を囲んで、「おすすめのプランはこちら」と書いてもいいですね。全体の構造を示して満足せずに、その構造を見せて何が言いたいのかをちゃんと書いてあげることをしてあげるのがポイントです。
何度も言いますが、注意してほしいのは、縦・横の構造を守って表を作ることです。例えばバリューチェーンのスライドがありましたよね。
左から「栽培」「製造」「調整」「給付」と4つ並んでいる。並べた要素に対して情報を足す時に、ペタペタ無作為に足していくと、せっかく作った軸が無駄になっちゃうわけです。
これをやると、結局どこにどんな情報があるのかがわからなくなって、意味がわからなくなります。
必ず「この高さにはこういう情報を書く。この高さにはこういう情報を書く」というふうに、ちゃんと表として見出しがつけられる状態にする。
「この高さって何の情報を書いているの?」というのが説明できる状態を作っていくと、整然と整備されたわかりやすいスライドが作れるはずです。ということで、図解は常にマトリクスで考えてください。
表をちゃんと縦・横の軸で切って情報の定義をしたわかりやすいマトリクスが作れないうちに、ベン図やピラミッドとかフローチャートみたいな図解のパターンに飛びつくと、絶対にわかりやすいスライドは作れないので、まずは表をちゃんと作ることを必ず意識してください。
スライドに要素を載せるのではなくて、「要素は切るもの」だと考えてください。スライドの本質は常に構造にあります。図解のパターンに飛びつく前に、マトリクスでまず表をちゃんと作りきることを考えてください。先ほどの4つのステップで、ロジカルな図解を誰でも作ることができますよというお話でした。
最後です。最後は「デザインする」と書いているんですが、ここはいわゆるスライドデザイン的な話です。文字と色と画像の話をしていきます。いわゆるスライドを見やすくするためのポイント的な話ですね。
まず色の話から、ここも桃太郎パワポを引き合いに出します。
先ほどなんとなく切り分けたバリューチェーンのスライドがありましたよね。これをよりメッセージが伝わりやすくなるように、メリハリをつけています。
このままでも情報としてはほぼ成立しているんですけど、どこが重要なのかわからなくて見づらいわけです。色をうまく使って、これにメリハリをつけていくことを考えます。
スライドデザインの色を考えるという話をすると、「ああ、赤がいいのかな」とか「青のほうがいいのかな」という話が出るとみなさん想像されていると思うんですが、そうではないです。
みなさんに意識していただきたいのはこれですね。
「塗りつぶされた図形」は「枠線」より目立ちます。「濃い色」は「薄い色」より目立つんですね。これをまず意識してください。
これが何を意味するかというと、こんな感じでちっちゃくしても、見た瞬間に塗りつぶしと濃い色のほうが、ぱっと目に飛び込んでくるわけです。見た瞬間に右側の図形のほうがぱっと目に入ってきますよね。この感覚が重要です。これはなぜ重要かというと、情報に優先順位をつけられるんですね。
例えば、さっきプラン表のスライドがありました。このスライドって、見た瞬間になんか見やすいですね。
このスライドだけを見ると、それがなぜ見やすいかって言語化しづらいんですけど、もしこのスライドがこんな感じで全部の要素が同じような色で塗りつぶされていたら、めちゃくちゃ見づらいわけです。どこから見ていいかわからないからですね。
もともとのスライドがなぜ見やすかったかと言うと、要するに、フルコミットプラン90とカジュアルプラン50という2つのプランに関して、おすすめの動物、基本だんご、プラスだんご、最大だんごという4つの項目で整理して、「最終的にこのくらいの数が受け取れるんですよ」と、一番見てほしい部分が濃い色で塗りつぶされているから、そこが目に入って全体像がわかるわけですね。だから見やすかったわけです。
情報の優先順位がないと、どこから見ていいかがわからなくて、すごく見づらいわけですね。なので、塗りつぶしや濃い色をスライドにおける一番見てほしい大枠や主役になる情報に使ってあげると、スライドは見やすくなります。
このスライドであれば、例えば「誰がやるの?」という主体の部分だけを塗りつぶしてあげて、かつ「ピーチボーイが最後は責任を持つよ」という部分だけを濃くしてあげるとメリハリがついて、どこを見ていいかがわかりやすくなるわけです。
というのが、色における一番大事なところです。赤がいいとか青がいいというのは、極論どうでもいいです。「塗りつぶすかどうか」「色が濃いかどうか」をまず考えてください。
とはいえ、色も使ったほうがいいよねということで、色はどうしたらいいかというと、むやみに使わないことが大事です。
ここに嫌なPDCAサイクルの図解がある。
「Plan」「Delay」「Cancel」「Apologize」のうちで「Apologize」が一番大事だいうことを伝えたくても、「P」「D」「C」がすでにカラフルに塗られてしまっていると、がんばって赤枠をつけたり、がんばって赤丸をつけて強調しても、いまいち目立たないわけです。
どうするかというと、まずグレーで作ってください。白・黒・グレーだけで全体を作って、その上で見てほしい部分だけに色を与えるわけですね。というふうにすると、我々人間は白・黒・グレーみたいな無彩色よりも、色がついている有彩色のほうに目が行く性質があるので、自然と目が行きます。
これは言い換えると、「何かを強調するためには、何かを強調するよりも、何かを強調しないほうが大事だよ」ということです。
あるいは「何色を使うか」ではなくて、「どこに色を使うか」と考えてください。基本、もう色は使わないと。白・黒・グレーで一回全部作って、見てほしい部分だけに色を使うというふうにすると、注目ポイントが明確になります。
ということで、さっきの「PeachBoy」もこんな感じで「PeachBoy」の部分だけ色をつけてあげてもいいですし、使わなくてもOKです。
以上の話にのっとると、桃太郎パワポはこんな感じで、濃い塗りつぶしに白い文字、薄い塗りつぶしに濃い文字、濃い枠線に濃い文字、もしくは濃い文字だけ、もしくはそれのピンクパターンの8種類でほぼ構成されています。
桃太郎パワポの全体をざっと流すと、こんな感じでほぼ白・黒・グレーとピンクしか使っていないんですね。
桃太郎パワポを見て、「なんか色が少なくて寂しいな」という印象はほぼなかったと思います。
きちんと白・黒・グレーで全体を作って、見てほしい部分だけに色を使えば、寂しい印象も与えず、見てほしい部分だけが強調できる、非常に見やすいスライドが作れます。
厳密に言うと2色使ってもいいんです。桃太郎パワポもごく一部に緑色を使っているんですね。使っていてもいいんですけど、みなさんは慣れないうちは、本当に1色だけに決めたほうが良いスライドを作れるはずです。
文字もさらっといきますが。先ほどのお客さまからの声のスライドを使って考えていきたいと思います。
犬養さんや猿飛さんとかから、いろいろうれしいお声をいただいている。一応情報としては載っているんだけども、これだけだと、またどこを見ていいかわからない。メリハリがなくて見づらいですよね。これにメリハリをつけることを考えていきます。
ちなみに、文字にメリハリをつけて見やすくするというのは、スライド作りにおいてすごく重要です。
我々がスライドを作る時って、ついつい色がどうとか画像がどうとかに気持ちを持っていかれがちなんですけど、我々が作るスライドって、なんだかんだけっこうな割合を文字が占めていますね。だから文字が見やすくなると、スライドってめちゃくちゃ見やすくなります。
文字を見やすくすることを考える上で、いくつか非常に重要な教材がありまして、それは紙の新聞です。みなさんが紙の新聞を読む時って、見出しから見ますよね。1面をぱんと開いて、一番ぶっとく大きく書いてある見出しを読んで、その日あったニュースの全体像を知るわけです。
「ああ、パンダが逃げ出したんだ」ということを知った上で、次に小見出しを見るわけですね。もう少し太めに大きめに書いてある小見出しを読んで、「鍵の閉め忘れ?」と興味を持ったら、初めて一番細くちっちゃく書いてある本文を読み始めるわけです。
さっきの表の話と一緒で、新聞も読むべき情報の順番とその具体度が分けられているんですね。
我々は新聞を無意識に読んでいるんですが、新聞を作っている人は、一番大きく太い見出しでざっくりこういう話で全体観をつかんでもらった上で、ちょっと太め・大きめの小見出しで記事の導入を示して、最後に細く小さな文字でより詳しい情報を話す。
これも一種の2階建ての説明です。読む順番、優先順位をデザインしてあるから、新聞って読みやすいんですね。ちなみに今のこの記事は、私が適当に作った架空の記事です(笑)。
もし新聞がこんな感じで、全部の文字がほっそく小さい辞書みたいな文字で書いてあったら、その日にどんなニュースがあったのかって全部読み込まないとわからないから、めちゃくちゃ読みづらいわけです。
スライドも一緒で、ちゃんと文字を強調して、どこから読んでほしいのか、全体像はどうで、一番重要な情報は何かを示してあげることが大事になります。なんですけど、「あ、なるほど。文字を強調したらいいんだな」と思って、けっこうやっちゃいがちなのが、赤字と赤枠ですね。
我々はついつい、パワポの文字をすぐに赤枠で囲んだり赤字にすることで強調した気持ちになりがちですが、新聞はモノクロ印刷でもあれだけ文字の強調ができているわけです。我々のパワポも、色なんか使わなくても文字の強調はできるはずです。
そのために必要なのが「太さ」と「大きさ」です。
太さと大きさによって文字を強調すれば、無駄な要素を増やさずとも、きちんと強調することができます。紙の新聞を見習って、モノクロ印刷でも伝わる強調をしてください。
太さと大きさによる強調をするために、1個重要になるのがフォント選びです。世の中には、「太字にできるフォント」「できないフォント」があります。
太字にできないフォントは、例えば創英角ゴシックというフォント。太字にすると文字の周りに黒い線、縁取り線を書いているんですね。要は文字を太らしているわけです。なので、あんまり太く見えないし、かつ、見た目がちょっと潰れて汚く見えるんですね。今、左の「あ」のほうが太字になっているんですけど、あまり太字に見えないですよね。
一方で、游ゴシックみたいな太字にできるフォントは、もともとパソコンに細いフォントと太いフォントが両方用意されています。太字にすると、太らしているんじゃなくて、違うフォントになっているんですね。専門用語で「ウエイト」と言うんですけど。なので、きちんと太く見えるし、かつ、きれいなわけです。このような、ちゃんと太字にできるフォントを使うことが重要です。
具体的におすすめは「Yu Gothic UI」と「Meiryo UI」です。日本語の游ゴシックやメイリオでもいいんですが、Yu Gothic UIはややかっちりめ、Meiryo UIはややポップめな印象を与える。游ゴシック(またはYu Gothic UI)かメイリオ(またはMeiryo UI)にすると覚えておけば、基本的にはOKです。桃太郎パワポは游ゴシックを使っています。
もう1個、文字の話があります。さっきメリハリをつけました。お客さまの声で「猿飛五里助さんからもらいました」ということもばんと示して、そこが目に入ってくるようにはなったと。
なんだけど、五里助さんからもらったコメントが「もともと趣味で鬼退治をしていたのですが、こちらのサービスですと一緒にこれこれができますよね」と6行くらい書いてあるんですけど、読まないんですよね。
人間はパワポの資料に文字が3行以上書いてあると読まないという法律があるので、だいたい読まないんですよね。なので、どうするかというと、これも新聞と一緒で見出しをつけてください。いろいろごちゃごちゃ言っているんだけど、要するに「『仲間と共に退治するのが楽しいです』と言っています」ということを、短く・太く・大きく書いてあげるわけですね。
これをすると、拾い読みができるわけです。これはまさに新聞の見出しと一緒です。もともとは右側の文章を全部読まないと主題がわからなかったものが、ここさえ食べれば全体像がわかるという、一番おいしいところが出てくると食べやすくなるわけですね。
これを作ってあげると非常に見やすくなります。これは「文章の大トロを抽出」と言ったりもするんですけども、おいしいところだけをつまみ食いできるようにしてあげるのが、聴き手の読みやすさを作ります。
あと、「どうしても短くしなきゃいけない」というわけでは必ずしもなくて、元の文章を残しておいてもいいです。消しちゃうと、「どういうコメントをもらったの? 本当にインタビューしているの?」みたいになっちゃうので、細く小さく、読みたい人だけ読めるような状態で残しておくと説得力が出ます。そこはケースバイケースです。というのが文字の話ですね。
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