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商品を「買わせる」文章力 ~文章のクオリティを決めるポイント~(全5記事)

わかりやすい説明ができる人の“言い換え”の視点 相手が自分ごと化してくれる言葉選びのポイント

令和時代の必須スキル「情報発信術」。本イベントでは、起業やセールスで役立つ、SNSなどの情報発信のポイントが語られました。本記事では、『ブログ飯 個性を収入に変える生き方』など著作多数、企業や地方自治体のIT(集客・PR)アドバイザーとしても活躍する染谷昌利氏が、相手にわかりやすい説明をするためのコツを解説します。

前回の記事はこちら

相手の興味を引きつけるテクニック

染谷昌利氏:僕は謎掛けもよくやるんです。この『天才と凡人を分ける要素』ってタイトル、人は「はてそれは何かな?」と思うじゃないですか。今回のセミナーの案内文も、こういう要素を入れているんです。

先ほどの青汁と化学調味料も、「なんだそれ」って思うじゃないですか。そうすると、人はちょっと前のめりになるんですよね。聞く態勢とか読む態勢になったりするので、そういう謎掛けを入れてあげることも、1つのユーモア、読ませるテクニックだったりします。「〇〇とかけて〇〇と読む。その心は」で、人の気持ちに残ります。

僕は今日のスライドも、全部謎掛け型にしています。「なんだろう」と思わせて、僕が種明かしをしていくかたちを取っています。だから、文章だけではないんですよね。話し方とか発表とか、いろいろなところに使えるかたちです。

音楽の歌詞から学ぶ言葉の遊び方

これはすごく難しいテクニックなので、一生のうちに1個見つかれば「一生それ使ってください」みたいな感じなんですけど......みなさん、見る、聴く、嗅ぐ、感じる、味わうという、五感ってありますよね。実は文章で、その五感を刺激することができるんです。

例えば、夏目漱石の『吾輩は猫である』という有名な話がありますが、ここに書かれている文章で、「呑気と見える人々も、心の底を叩いてみると、どこか悲しい音がする」というフレーズがあります。

また、スピッツの『楓』という曲で、世代が一緒の人はわかると思うんですけど(笑)。元気がいい時は、僕も多少は歌っていましたが、恥ずかしくて人前では歌えないので読みます(笑)。

「さよなら 君の声を抱いて歩いて行く」。これは、どういうことを感じるかわかりますかね。この後答え合わせをしますが......心の底って、叩けますか? そして、叩いたら音がしますか? しないですよね。声って、抱けますか? 

これは、見えるところが「触れるところ=触覚」に、そして「音がする=聴覚」に来ているんです。すごく趣深い文章で、「声を抱く=聴覚」が触覚に変わっています。

これを五感を動かさずに書くと、「呑気に見える人々も、心の底をのぞいてみると、どこか悲しいところがある」という文章になります。ちょっと僕の主観が入っていますが、「そうだよね」と(なります)。

あるいは、「さよなら 君の声を耳に残して歩いて行く」。文章としてはおかしくないんだけど、上のほうがぜんぜん趣深いですよね。

これが、天才たちです(笑)。天才たちはこれが自然にできるんですけど、こういうことに気づいたら、メモっておいて自分のストックにしておくことが重要です。そして何かしら自分の表現が見つかったら、自分のセミナーや文章の中で一生使ってください。僕はこの表現を見つけた時に、このスライドを一生使おうと思いました(笑)。

アプローチしたい客層に合わせて言葉を選ぶ

(こうやって)得意なパターンを1つ見つけておきます。伝える力、あるいは気づける力があるといいと思います。人って指摘されると「なるほど」と思うので、気づけるようになるんですよね。なので、こういうところも意識しておきます。特に音楽の歌詞にはよくあります。比喩というか韻というか、言葉の遊び方はすごく役に立つと思っています。

そういったものを含めた上で、読み手あるいは伝える人に寄り添った言葉を選んでいく必要があるんです。何回か(僕のセミナーに)来ている人は同じスライドを見ていますが、上のほうが偉くて下のほうが偉くないと言っているわけではありません。純粋に、三角形の上のほうの人が少なくて、下のほうの人が多いということです。

もう1つ言うと、上のほうであればあるほど、短い言葉で伝わります。専門用語も一発でOKです。でも、下のほうである初心者、初学者であればあるほど、手を変え品を変え伝えていかなければなりません。

僕は最初に、「今日のセミナーは2行で終わります」と言いましたよね。でも、(人に伝えるには)自分がいい文章にたくさん触れて、がんばらないとダメなんです。それを僕はスライド50枚、90分かけて説明しているわけです。

上に行けば行くほど抽象的で、同じ環境であれば「あれ」とか「これ」でも通じるんです。具体的になればなるほど、事例や3つの観点を入れたり、いろいろなことによって文章の量が増えていきます。

抽象的・具体的という言葉がありますが、抽象的は難しく感じます。「おいしい」も人によっては抽象的です。例えば彦摩呂さんがおいしいと言ったら、「もっと詳しく教えてよ」みたいな話になるわけですね。だから、簡単な言葉でも抽象的な言葉があるし、より具体的にすればするほど、人には伝わりやすくなっていきます。

文章力・会話力を伸ばす秘訣

具体例を少し話します。抽象化されたものは共通因数です。言い換えると、共通の言語化です。僕は文系なので、「抽象化されたもの≒共通因数(共通言語)」という式も正しいのかどうかあまりわかっていませんが、(スライドの)「5x」のところに山のような記号「^」がありますよね。

「5x^3」は3乗を示していて、この記号は〇乗を意味しています。この式を言い換えると、「f(x)=5x^3+4x^2=x(5x^2+4x^+1)」ですが、こんな式はどうでもいいんです。

今日、僕と参加してくれたみなさんに出来上がった共通因数(共通言語)は、「この山(^)って乗を表す言葉なんだ」ということですよね。だから僕がこの式を出せば、みなさんに「あれは何乗ということなんだ」とわかってもらえます。

だから、共通言語を持っていれば持っているほど、説明は省略できます。でも、ないのであれば、しっかり説明していかなければ人は理解できません。

学者同士は専門用語でも済みます。でも、僕が文章術あるいはマーケティングをこの場の人に話す時に、専門用語でいきなり話しても伝わらないから、分解して説明していく必要があるということです。それは僕とみなさんだけではなくて、みなさんが誰かに伝える時も一緒です。

この短さと長さを、よりいろいろな状態で移動させることができるようになるといいですよね。今、語彙力が一瞬なくなったんですけど(笑)。要はそれができるようになったら、説明がすごく上達したということです。

「この人に向けてはこの言葉でいいんだ」というのを理解した上で伝えることもできるし、「この人はたぶん(このことを)まったく聞いたことがないだろうから、もっと細かく説明していかなければならないな」という、自分の中での強弱をつけることが、文章力あるいは会話力を伸ばしていく秘訣です。

抽象的な言葉を説明する難しさ

3年から4年くらい前に、小池都知事がアウフヘーベンという言葉をよく使っていましたが、覚えている人はいますか? あまりいないと思うんですけど、これは哲学用語です。日本語で書くと「止揚(しよう)」です。たぶん2回くらい生まれ変わっても使わないような言葉で表されています。

僕はこの言葉を100回くらい使っているんですけど、みなさんの中では、アウフヘーベンって、「なんだそれ」という話じゃないですか。これを理解してもらうために、分解していく練習をします。

Wikipediaで検索すると、「らせん的発展」という言葉で表されます。これはドイツの哲学者のヘーゲルが言っていた言葉で、1つの主張(テーゼ)です。あとは反証=アンチです。アンチって聞いたことありますよね。アンチテーゼです。

要は「Aがいいよ」という人と「Bがいいよ」という人がいて、これを戦わせて、よりよいCになることが、平たく言えばアウフヘーベンです。そうすると、らせん的によりよくなっていきます。それが「らせん的発展」という言葉を促しているんだろうなと思います。

これは任天堂が言っているわけではないので、怒られたらごめんなさいなんですけど、昔、「ニンテンドーDS」という携帯用ゲーム機がありました。僕が勝手に言っているだけですけど、例えば「ゲームは、持ち運んでどこでもできてみんなでワイワイガヤガヤやるものだ」という主張があったとして、もう一方の反証(アンチテーゼ)は「Wii(ウィー)」というゲーム機です。

これは家庭用にテレビにつないでやるゲーム機なんですけど、「ゲームは自宅の大画面で集中してやるべきだろう」という反証があったとします。

そしてその戦いの中で、「やっぱり持ち運びだよね」「家で大画面だよね」と言っていた結果が、今の「Nintendo Switch(ニンテンドースイッチ)」という、家でもできるし、持ち運びもできるゲーム機です。任天堂がそう思って作ったかどうかは別問題ですが、この(反証を)踏まえて乗り越える、よりよくしていくことがアウフヘーベンです。

アウフヘーベン自体の話はどうでもよくて、これが具体的と抽象的ということです。アウフヘーベンはすごく抽象的な言葉なんだけれども、具体的に話していくと、これだけ時間がかかるということです。この感覚を掴んでもらえればいいかなと(思います)。

文章力を上げる“言い換え”の視点

まったくわからない人に向けて、ちょっとわかるようになってもらえるきっかけとして、日本語を分解する・翻訳するという言葉を僕はよく使っています。これも文章力や説明能力を上げていく1つの練習になります。「ほかの言い方はできないかな?」といったかたちですね。

あとは視点を変えていきます。これはすごく難しいです。僕ら発信者は、書き手・伝え手という、こっち(相手から見ると反対)の目線なんですよ。聞いているほうは、他人ごとなんです。それを自分ごとに変えていくことによって、また自分の中の印象が大きく変わってきます。

読んでくれた人、聞いてくれた人が、「自分のことだ」と思ってくれると、行動に大きく差が出てきます。これもセールスレターの一番最後に入れていると思います。

この最後の文章で、「これからライティングの重要性について話そうと思います」とか、「このセミナーでは文章を書けることの重要性について話そうと思います」で締めようと思ったんですけど、これは視点が(自分と)まったく一緒だと思って。

みなさんに送っている文章は、「今日、このセミナーを聞くことでみなさんはライティングの重要性を肌感覚で理解できるでしょう」と。僕ではなく、みなさんの気持ちになって書いているんですよ。違いはなんとなくわかりますか? 一方的に言われているのと、「理解できるかもしれない」という自分ごとになっている感覚です。

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