2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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ソニックガーデンの代表・倉貫義人氏と仲山考材の仲山進也氏が、毎月さまざまなゲストを迎えて「雑な相談」をするポッドキャスト『ザッソウラジオ』。 今回は雑草の専門家である稲垣栄洋氏をゲストに迎え、雑談・相談の「ザッソウ」と、植物の「雑草」の共通点などに迫ります。本記事では、整理することのデメリットや、雑草がチャレンジ・変化を続ける理由について語られました。
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仲山進也氏(以下、仲山):稲垣さん、最近考えていることって、どんなことがありますか?
稲垣栄洋氏(以下、稲垣):「雑」って何かというのは、すごく考えるテーマですよね。研究しているのは雑草ですけど、「雑草」という言葉だったり、「雑」って何だろうというのはけっこう考えますよね。
倉貫義人氏(以下、倉貫):草を超えて。
稲垣:そうですね。草を超えてですよね。「雑」という言葉の持つもの。「雑」はすごく大切なものだけど、人間にとっては扱いにくい部分もあるので、「雑」をどうするべきかみたいなのは考えますよね。
倉貫:そうなんですよね。扱いにくいけど、扱いにくいモヤモヤした状態というか。
稲垣:そうですね。モヤモヤした状態ですよね。
倉貫:はっきりしない状態。はっきりしないやつをはっきりさせるとか、スッキリさせるのを「問題解決」と言って、それはそれですごく大事な能力なんだけど。でもそうすることで削ぎ落されたり、本来生まれるべきものが生まれなかったりする。ある程度のカオスな状態なのか、モヤモヤした状態なのか、その「雑」な状態を維持する。
その状態を保てる状態のための能力が、最近ちょっと言われている「ネガティブ・ケイパビリティ」なんだろうなという。「雑」をそのまま維持するというか、「雑」なまま受け止めきる、耐えれるみたいなことが「ネガティブ・ケイパビリティ」に通じるところがある感じはしましたけどね。
稲垣:整理するとわかった気になるんですよね。整理するとわかりやすいし、わかった気になるんだけど、実は本質はわかってないということがけっこういっぱいあって。
僕らみたいに例えば研究する人間からすると、わかった気にならないというのはすごく大事なので。さっきの雑草で言うと、「そもそも何で立ち上がらなきゃいけないの?」とか、「そもそも上に伸びなきゃいけない?」みたいな、「そもそも」って1回立ち止まれるかどうかみたいなのは大事かなと思いますよね。
仲山:倉貫さんもよく言う。「そもそも」。
倉貫:いやぁ、今日も何回も「それ本当に必要ですか」みたいな。よく言うやつだと思って。
(一同笑)
倉貫:理解したいので、理解するためにはっきりきれいに言葉にしようとしちゃうんだけど。
稲垣:それは大事ですよね。
倉貫:でも、そうすることで、落ちてしまうものがたくさんあるので。もちろんわかったものについてはわかったものでいいんだけど、わからないものもすべてわかるようにしていかないほうが、あとから何かできるかもしれないし、より深い理解ができるかもしれないという。
倉貫:その能力は、僕は本当に最近必要だったなというか。どうしてもエンジニアなのでいろいろわかるように、きれいに分解したがるんだけど、きれいに分解し過ぎると、会社は固くなってくるんですね。
僕も今、会社を12年くらいやっていますけど、10年くらい経ってくると、だんだん会社の中でも正解が見つかってきた部分は正解が見つかるし。これはもうルール的なものを作らなくても暗黙的にルールになっていくし、ちゃんとした会社になっていくんですよね。
創業期の頃はグチャグチャだったし、グチャグチャだったからエネルギーがいっぱいあった。立派な会社になるのはいいんだけど、全部整理しきったら、これ以上発展しなくなっちゃうなという気がしていて。
一定カオスな状態とかフワフワした状態も残しておきたいし、残したほうがいいんじゃないかと何となく経営しながら思っていて。「現場でゴチャゴチャしてんな」というのを耐える力、ネガティブ・ケイパビリティを鍛えれば、一定の余白がある状態になって、会社も成長し続けられるし、変化し続けられるなとか。
仲山:会社の環境を整えすぎると、それこそ変化の小さい環境になったりして、社内で競争が起こり始めて、競争に強いやつが勝つみたいな組織になっちゃうとかありそうですね。
倉貫:ぜんぜん雑草が生きない、雑草が生きられない環境になってしまうという。
仲山:そうそう。あと、今の話を聞きながら、そういえばアオアシ本(『アオアシに学ぶ「考える葦」の育ち方』)のサブタイトルが、『カオスな環境に強い「頭のよさ」とは』となっていたので、今回の雑草の話ともめっちゃ通じている気がする。
倉貫:通じてる。「カオスな環境」って言ってますからね。
仲山:(笑)。
倉貫:カオスな環境のほうが雑草が生きるので。
仲山:雑草の出番。
倉貫:雑草的な生き方を学ぶために、稲垣さんの雑草の本と、アオアシ本と、私の『ザッソウ』と並べて読んでもらうと、何かヒントが見つかるかもしれないですね。
稲垣:でもアオアシ本は本当にめっちゃおもしろくて、本当に「雑草と同じだな」と思って読んでいましたけど。
仲山:ありがとうございます。
稲垣:おもしろかったですね。
稲垣:でも雑草って、小さなチャレンジを自ら繰り返している部分があって。植物って大きくて強い種を少し残すか、たくさんのちっちゃい種を残すかという大きく二方向の戦略があるんですけど。
先が見えないとか変化が起こる時にどうするかというと、より小さく、よりたくさんの種なんですよね。雑草も間違いなく小さな種で。なんでかと言えば、何が正解かわからない時は小さいチャレンジを繰り返すと。
例えば自分が正解したとしても、あえて違う種をまく。まったく変わってしまうとリスクが大きいので、ちょっとずつ変えた種をいっぱいまいて、どこかでは芽が出るでしょうみたいな。
そういう小さいチャレンジとか小さい変化を常に自分のほうで起こしていくというのはあるかもしれませんね。大きな環境の変化があった時に、どれかが成功するというような。そういうのは雑草の基本戦略ですね。リスクの少ない小さい種を数多くまいておくという。
倉貫:リスクの小さいチャレンジをいっぱいやっておくという。
稲垣:そうですね。やっぱり大きなチャレンジはリスクが大きいので。
倉貫:イチかバチかになっちゃいますからね。
稲垣:雑草って新しい環境ができた時に、すぐそこに生えるじゃないですか。それはチャレンジをしているからなんですよね。
倉貫:で、うまくいったやつだけまた残して、そこからまたちょっと変えて、みたいな。
稲垣:そうですね。雑草って成功したところで成功しているとか、強いところに生えていますとか言ったけど、それって結果じゃないですか。植物って動けないので、選んで強みのあるところに行っているわけじゃないんですよね。
植物は動けないので、たくさんの種をまいて、結果として強みのあるところで生きている、成功しているという。僕らは成功しているところしか見ていないけど、実はたくさんの種は失敗しているんですよね。
倉貫:小さい失敗をいっぱいしているってことですよね。
稲垣:そう、小さい失敗をたくさんしていて、その中の1個のすごく成功しているやつを僕らは見て、「雑草すげえな」と言っているんですね。
倉貫:それだけ見ると、けっこう百発百中みたいに見えるけど、ぜんぜんそんなことなく。
稲垣:そうそう、ほとんど失敗しているので。チャレンジの数はものすごいということですよね。
倉貫:一見成功したみたいな状態になったとしても、まだずっと変化し続けようとするとか。
稲垣:そうなんです、変化し続けるんですよね。
倉貫:試行錯誤し続けている。試行錯誤し続けていれば、それが変化に強い状態になるという。
稲垣:そうです。正解がわからないから、とにかくチャレンジを繰り返すんですよね。正解がわかっていればそっちへ向かえばいいんですけど、正解がわからないので。雑草が生える場所は変化し続ける場所だから、自分たちも変化し続けるしかないんですよ。
仲山:そういう意味で言うと、いわゆる大企業とかが新規事業のアイデアコンテスト、ビジネスプランコンテストとかで、「種はでかくしろ」ってやりがちじゃないですか(笑)。
倉貫:やりがちですね。
仲山:「1個すげえ立派な種を設計しろ」みたいな。
倉貫:「市場規模はあるのか?」「どれぐらいあるんだ?」って言われちゃうやつですけど、「わかんないから、まずちょっと小さく始めませんか?」って言いたいやつですね。
稲垣:そうですね。
倉貫:いや、おもしろいな。
稲垣:そうですね。わからなくてもチャレンジはするってことですよね。小さなチャレンジを。
倉貫:そう。「変化し続ける」みたいなところが、それも会社のカルチャーだなという。大きな種に行くとかもカルチャーかもしれないけど、「小さいチャレンジをいっぱいしましょう」みたいなカルチャーがあったほうが、今の時代においてはわりとサステナブルな選択で。
稲垣:そうですね。
倉貫:でも、「小さい試行錯誤をいっぱいやりましょう」というのは、もしかしたらあまり変化のない時代でやろうとしたら、「いやいや、そんなのでうまくいくわけないよ」という。何か絶対の正解があるわけではなく、時代、時代に応じて優位か優位じゃないというのがあるだけで。
今の時代だから、雑草的な生き方とか働き方とかあり方みたいなのが、けっこう優位になる可能性が出る環境になってきたのかなという感じですよね。
稲垣:そうですね。雑草もおもしろくて、「小さなチャレンジをやっています」と言ったんですけど、安定した環境だと比較的種を大きくしていくんですよ。だからそこもフレキシブルというか。「安定した環境ってどこ?」っていうと、実は田んぼなんですけど。
水を入れられたりとか、草取りされたりとか、田んぼってすごく変化しているんですけど。でも、毎年同じ時期に水を入れて、同じ時期に田植えをするじゃないですか。予測可能な変化なので。
仲山:なるほど。
稲垣:そういう点では、「同じような変化が起こります」という安定をしているんですよ。そうすると、田んぼの雑草って種を大きくするんですよね。そんなチャレンジしなくても、「どうせ来年も一緒でしょ」みたいな(笑)。
倉貫:(笑)。
稲垣:だから、「小さくなきゃいけないんだ」というのも決まっているわけじゃない。
倉貫:正解があるわけじゃない。
稲垣:正解があるわけではないというか。
倉貫:「予測可能な変化」と「予測不可能な変化」というのがあるってことですね。
稲垣:そういうことですね。例えば植物だったら、「秋の後には冬が来て」というのは絶対予測可能な変化じゃないですか。それがどんなに厳しい冬であっても、冬が来るのはわかっているし、その後には春が来るのがわかっていますよね。そういうのは予測可能な変化です。耕されるとか草取りされるとかはいつやられるかわからないという、予測不能ですね。
仲山:おもしろ、おもしろ。
稲垣:雑草は、それに合わせて戦略を変えているということですね。
倉貫:なるほど。
稲垣:本当に捉えどころがないんですよ。本当に何でもアリなので(笑)。「雑草はこうあるべきだ」というのもすでに間違いで……。
倉貫:「べき論」がぜんぜんないですね。
稲垣:そうなんですよね。「別にその時に良ければ」というか、それこそ「目的が達成できればそれでいいじゃん」という自由さがすごくありますよね。
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