2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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年間350件以上のAIプロジェクトを推進する株式会社エクサウィザーズ主催のセミナーに、同社の人事責任者と採用担当者が登壇。「人事業務の効率化に本当に使えた ChatGPTのプロンプト20選」と題して、「AIに聞く」ことで得られるメリットや、GPT活用による“効率化の体感値”などが語られました。
半田頼敬氏(以下、半田):では次の採用広報に関しても、遠藤さん、お願いします。
遠藤魁氏(以下、遠藤):リクルートにいた時、非常に多くの記事を作りましたが、各記事の作成にはかなりの時間が必要でした。それが、生成AIを用いて特定の制約条件を設定することで、約30分のインタビューテキストがわずか約1分で5,000字の記事になります。
そして、記事の内容を要約すればタイトル生成も可能になる。コンテンツ作成の工数削減や、大量にコンテンツを作る仕組みにも活用できると思います。
半田:特に採用広報の文脈で、各企業が「デジタルトランスフォーメーション(DX)を進める」などとアピールしていた内容とは違う内容をアピールする場面がけっこうあると思うんです。そういう繰り返し説明しないとなかなか難しい内容のものは、一定量のコンテンツが必要になります。
今までだと「体制を張らなきゃしんどい」「そこにかかるコストに関する決裁がとれるのか」という課題がありましたが、こういった技術を使えばコンテンツを生成するのは生成AIなので、採用担当が1人でも生成数を増やせる。このあたりはけっこう使えるのではないかという実感があります。
記事を作って出す前には広報チェックやコンプラチェック(コンプライアンスチェック)が頻繁に発生すると思いますが、ここは遠藤さんから説明をお願いします。
遠藤:採用広報の炎上リスクやコンプライアンスチェックにも使えます。一定のルールをインプットするだけで、炎上リスクや「ここをこういう表現に変えたほうがいいよ」と代替案も出してくれます。
やはりコンテンツを作り続けると広報の人たちへの負担がかかるんです。そこを生成AIを使うことで採用部内である程度まで完結でき、現場の工数をあまり使わずにコンテンツを大量生産するところにもつながります。
半田:採用担当はいろいろな職種の方やステークホルダーとお仕事することが多い。ある程度のクオリティになってから渡さないと、相手に迷惑をかけてしまうので人事内で時間がかかってしまうシーンがあると思うんです。
生成AIを使えば、必ずしも100点満点でなくても、80点や70点程度の品質の作品を作り上げ、そこから精度を上げることができるようになります。
半田:自分はわりと表形式の出力が好きで、わかりやすくておすすめです。あとはちょっと細かいTips系として、あまり詳しくない現場のマネージャーにお願いをしなくてはいけない場合、マニュアルを作るか迷うシーンがあると思います。
わざわざマニュアルを作るほどではないんだけど、「完全に任せるのは怖いかも」という場合にも生成AIを活用することで、漏れなくダブりもない一般的なマニュアルを作ることができます。
例えば、採用のオンラインイベントなどで現場の人に登壇してもらうことがあると思います。しゃべり慣れている人だと問題ないのですけど、意外と緊張したりマイクトラブルがあったりします。
事前にマニュアルを渡して「こういうチェックリストがあるんで、事前にやっておいてくださいね」というだけで、大きな事故を防ぐことにつながる。マニュアル作成は数分でできるので、工数削減プラスアウトカムの最大化という意味で、生産性向上に効いてくるかなと紹介させていただきました。
ここからは面接の部分ですね。面接のやり方は、スタートアップと大企業、担当されている職種など、すみ分けによってだいぶ違うと思います。なので、一概にどこまで使えるかはわかりませんがお伝えします。
例えば、自分は最終面接を担当してるんですが、現場の面接官からの申し送り事項として、候補者に関してこの部分までは面接で確認ができているが、この部分が確認できていない」というかたちで面接を担当することがあります。そういった場面の質問項目を考える場合、それは検索のしようがない。
面接に慣れているとそれなりに準備もできると思うんですけど。わからない職種、あまり解像度が高くないコンピテンシー(行動特性)を見る時、何を聞いたらいいかわからないことがあるかなと。そんな時にも生成AIは使えます。
ポイントは、当然個人情報は入れずに、概要や面接評価を入れた上で「今回こういう面接で、このコンピテンシーを確認したいです」と生成します。
そこに対する質問と判断基準を叩きでいいから作る。面接は時間も限られており、聞けるトピックの数も限られています。1個の質問を間違えちゃうと本当に知りたかったことが知れなかったりします。
半田:次はちょっと採用から離れて、労務のお題になります。経営層から労務リーダーへの抽象的な質問として、「年間でどんなことをやりますか」「どういうゴールを目指しますか」「法改正や市場トレンドを考慮し、喫緊でやるべきことがあるか?」などがあります。
これを1個1個調べるとけっこう時間がかかる。良いミーティングにしようと思うと事前の準備が必要だったりします。
そんな時、「いったん思考を止めてGPTに聞いてみる」がポイントかなと思っていて(笑)。こういったプロンプトを使って、今の企業の概要やキーワードになりそうなことを入れ、優先度や起こり得るリスク、アクション、そこに関連する法律などをいったんバーッと出してみる。
例えば上司に、(スライドのような)テキストベースのものを見せて「クイックにこんなかたちでまとめているんですけど、ほかに抜けている観点はありますか?」とワンストローク入れるだけで、ミーティングの質が上がる。たたき台をベースに深めることができて、手戻りが減るかなと思います。
スタートアップなど人事のメンバーが潤沢にいない組織で、現場の未経験メンバーにお願いをする時、「例えばこういう観点で」といったんGPTで作った上で、現場の人たちとすり合わせをすることにも使えるかなと思います。
一定以上の経験のある労務の方だと「まぁこれはわかるよ」という話かもしれませんが、労災認定に効く判断は状況によって違ったりする。あと「これは社労士さんに確認しよう」「法務や専門家に確認しよう」という時に、「何を聞いておかなきゃいけないんだっけ?」なども、事前にGPTにさっと聞いておけば、確認の時間を有意義に使うことができます。
「この観点で漏れていないかな」「チェック漏れしていないかな」というやり取りの回数が減って自分の生産性が向上するし、相手の時間も奪わないので相手の生産性も向上するかなと思います。
半田:(スライドの)これは人事企画の部分ですね。社内FAQ、よくある質問みたいなもの。
例えば「交通費の精算はどうやってやるんですか」といった同じような質問に延々と対応するということは、あるあるだと思うんです(笑)。だからいろいろな会社さんでFAQは取り組まれていると思います。
ただ「よくある質問を出すのが、まず面倒くさい」というのがけっこうある。そのよくある質問を生成AIで「いったん全部出して」とダーッと出して、その答えもいったん作ってもらう。
それを見て「これは違うね」「これはうちに合わないな」「このリンクを読んでおいて」などとやれば、数時間かかったFAQの最初のページが、本当にすぐできたり。
応用編で、例えば「質問を100個出して、その回答も100個出して」ということもAIならできる。今我々がやろうとしているんですが、「PDFの資料や採用のWebページを参照してAを答えて」と質問すると、ある程度情報の質が担保された回答が生成されます。出てきたものを見て「これはちょっとまだ使えないな」と精査するだけで使えるんじゃないかなと。
ちょっと自社サービスの宣伝になってしまうんですけど、社内規程などのPDFを読み込ませて即席のFAQを作ることも可能です。人事業務以外でも、例えば、法務や経理業務であれば、関連する法律を読み込ませておいて、知りたい内容をGPTに質問すれば参照元と一緒に情報を得ることができます。
会計基準の内容の参照がどこにあるのかわからず、「そこに書かれてあることだけは、なんとなくわかっている」という時などにも使ったらいいんじゃないかと思っています。
(スライドの)これは人事企画の制度説明をする場面です。従業員向けに新しい制度の説明会をする時に必ず事前準備をやると思います。「どんな質問をされてどんな答えを返そうかな」と準備をすると思うんですけど。
実際には、ギリギリまで議論したり、細かい部分を詰めたりして、Q&Aのクオリテイを上げるところまで手が回らないこともあると思うんです。ここでAIに「盲点になっている観点がないか」「モチベーションが下がらないための伝え方として気をつけるべきことはあるか」をいったんざっと聞いてみる。「あ、この観点が抜けていたな」とAIが気づかせてくれることもあります。
企画担当がなかなか気づかないところや、これまでほかの人にフィードバックをもらわないと盲点になっていた部分もAIが代替してくれるようになります。
発展編として、例えば今回の説明会のPDFを読み込ませます。「この内容に対して出てきそうな質問と答えを生成してください」ということもできるので、これによって事前準備にかかる工数が削減されます。
(スライドの)これも業務の引き継ぎ系です。未経験の業務を引き継ぐ時に、実際にやってみると解像度が上がり、いろいろな論点が出てくることは未経験業務の時にあるかと思います。
その引き継ぎの前に、「業務の中でどこがポイントか」「うまくいかない場合の落とし穴は何?」と生成AIに聞いておく。「こういう業務なんだな」「こういう落とし穴があるんだな」と先回りして知っておくだけで、引き継ぎのタイミングで具体的に「この観点はどうなんですかね」「これは過去にどう検討されてました?」と聞くことができます。
これによって「時間を何分ぐらい削減できるんですか?」と言われるとけっこう難しかったりするんですけど、引き継がれる側も手戻りを減らしたり、自分が気づいていない観点に気づくことができたりします。特に人事系の採用以外の業務だと「ミスしたらまずい」業務が多いと思うんです。ミスらないための観点の洗い出しとしても使えますね。
半田:(スライドの)これもTipsシリーズですが、現場マネージャーにアドバイスするシーンでも使えます。
例えば「評価が厳しい場合にどうやってフィードバックすればいいですか」「実際にロープレしてみましょう」と全部ロープレをやるのは難しいと思うんです。
一般的にどういう注意点があって、どういうスタンスで臨めばいいのか。人事のプロと言っても経験値がないことを回答しなきゃいけないシーンもある。その際に、人事の上司に聞くのも1個の手段ですけど、上司に聞く前にまず生成AIに聞いてみる。
未経験の若手だと、これがあるかないかによって振る舞いや信頼の勝ち取り方も変わってくると思います。
(スライドの)これはオンボーディング(新入社員を早期に戦力化する施策)系で、自分の盲点に気づくために使えます。
「新入社員は実際に何を知っていて、何を知らないんだっけ?」というのは、業務に慣れている人間だとわからなくなったり、相手にとって良い説明をするのが難しくなったりするシーンがあると思います。
盲点を防ぐ意味で、「実際にどういうことを聞くんだっけ?」「どういう状態になっていればいいんだっけ?」をあらかじめ(生成AIに)聞いておく。これをベースに資料を作ってもいいし、実際に作ったら「ここは足りなかったな」とさらに生成AIに出してもらうのもありだと思います。
あと要約系では、イベントのレポート、全社アンケートや定性アンケートの修正などがあります。例えば自由回答をコピペして、「あとは要約しておいて」と。「8割の意見を吸い上げて」「具体のポジティブ/ネガティブをここで出してください」とやるだけ。実際にレポートの30分ぐらいの報告が1回で終わる使い方もできるんじゃないかと思います。
応用編では「採用のレポートを作るコードを書いてください」と、コードを生成する。エンジニアはわりともうGitHub Copilotを使ってコードを書いていて、生成AIをかなり使いまくっています。
人事でもスプレッドシートや関数を組んで分析したり、データ分析の前処理として「そもそも分析手法にはどういうものがあるんだっけ?」「データを整理する時の観点は何だっけ?」と専門家に聞いたりします。
「別の部署のデータサイエンティストに聞くのはちょっと気が引けるな」ということも、生成AIに軽く聞いてみると回答が返ってくる。採用担当で完結できるようになり、ほかの部署を巻き込む時の依頼の質も上がるので、生成AIを使うといいかなと思っています。
ざっと20選挙げさせてもらいました。やはり検索はみなさん使われると思うんですけど、この上側(たたき台の作成、壁打ちなど)でかなり使える感覚があります。
では、残りの時間で質問に答えていきたいと思います。まず「どれくらいの効率化が図れたのか」。これはけっこう難しいんですよね。
例えば「こういう落し穴にはまっていたから、手戻り感がなくなりました」という場合、実際に効率化を算出するのは難しいと思うんです。「1ミーティングが不要になった」「1ミーティングの準備時間が減った」などでいくと、体感として10パーセントから15パーセントぐらいは削減できるという感覚です。
削減したらすぐ帰るかというと、別の新しい仕事をしたりするのでそうはいかない。ビフォーアフターでどれくらいかはあまり精緻に測っていません。
「工数対効果はどうですか」でいくとけっこう難しいと思うんですけど、実際プロンプトを叩いて「使えないな」と判断するまでにかかる時間はせいぜい5分から15分ぐらいだと思います。その投資をしてみて、「使えなさそうだな」と思ったら引き返してくるスタンスはけっこう大事かなと思っています。
次の質問は「最近のGPT3.5はバカになっていると聞きますが、返ってきた内容が確かかを判断するにはどうしたらいいでしょうか」。これもやはり人間とそうじゃない部分のすみ分けが必要かなと思っていまして。
「確かかどうか」ですが、一定の裏をとる作業は最後まで必要だろうなと思っています。完結させるよりは、確かかどうかを別の人に聞く。ここで人が出てくる。経験者や専門家に聞いてみるのがいいんじゃないかなと思っていますね。
次の質問で「新卒採用での活用、他社の動きを把握するということでしたが、最新の情報はどのように取得されているでしょうか。ChatGPT Plusでは最新のWeb情報の取得は難しいと思いますが、ほかのツールをお使いなのでしょうか」。
遠藤:そうですね。プラグインを使って会社さんのURLなどを読み込ませたら、そこのイベント情報などを参考にして回答が出てきます。自分たちの競合他社などに制限してインプットして回答させるのが、今できている感じですかね。
「コンプライアンスチェックにおいて一定のルールのインプットはどのように実現していくのでしょうか」。(スライドの)このルールの詳細についてですかね。炎上するリスクの内容が回答になっているかなと思います。
半田:続いて「GPTの回答はたまに誤っている場合があると思いますが、その観点で何かチェックをされていますか」。同じ話になってしまうんですけど、専門家やマネージャーに最後に確認してもらうのがポイントかなと。意思決定する前に裏をとる。リサーチしたり経験者に聞いたりするのは、一定必要ですね。
「法務や経理でのルール確認の事例について、仕組みを詳しく知りたいです」。PDFやファイル形式のものを読み込ませて「ここを参照して答えてください」というのが使われているものになります。
これはLangChainという技術です。「オープンになっているWeb情報から答えてください」ではなく、「ここから答えてね」というものを読み込ませて答えてもらいます。
「応募者の職務経歴書がAIで作成されているかを見極めたい。そんなプロンプトはありますか」。うーん……これはたまに聞かれるんですけど、我々はあまりやっていないです(笑)。職務経歴書の作成は正直、生成AIを使うことをよしとするか、禁止するかは会社の生成AIに対するスタンスによって違うと思います。
逆に我々みたいな会社だと、誤字脱字のチェックに生成AIを使っていると業務の効率化で使いこなしているという意味でポジティブに捉えるとは思います。
司会者:半田さん、遠藤さん、ありがとうございました。
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