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施策の全体設計図となるカスタマージャーニーの作り方セミナー~基軸はパーセプションチェンジ~(全3記事)

常に行動データを追うデジタルマーケターの弱み コンバージョンを増やす施策を打つために必要な視点

クロスメディアグループが主催した「カスタマージャーニーの作り方」セミナーに、『マーケティングオートメーションに落とせるカスタマージャーニーの書き方』の著者である小川共和氏が登壇。本記事では、マーケターが施策を考える時に必要な要素や、マーケティングの真理について語られました。

前回の記事はこちら

常に行動データを追うデジタルマーケターの弱み

小川共和氏:ここからは第3章です。(スライドに)「行程は『行動』と『心理』両面で規定」「パーセプションが鍵」とあります。

デジタルマーケティングでは、GoogleAnalytics(GA)、マーケティングオートメーション(MA)、CRM、プライベートDMP、Customer Engagement Platformなど……いろいろツールがあり、それぞれがどんどん進化しても、見ているデータは基本的には行動データです。たまに属性データがありますけど、心理のデータは見ていない。

行動データは、ある程度リアルタイムに明解に数字で出てくるので、どうしてもそれを追いかけることになります。そのデータを見て「何が課題か」「こういう手を打とう」「その成果はどうだったのか」というPDCAを回します。間違いではなく、これは正しいんですけど、「それだけで本当によかったっけ?」と。

「広告を見て欲しいと思い、さっそく店で買った」「今まで買わなかった商品だけど、知人の話を聞いて初めて買った」「送られてきたメールに紹介されているセミナーに興味が湧き、参加を申し込んだ」「Webサイトの某コンテンツについて詳しく知りたくなったので、資料をダウンロードした」……要するに、マーケターにとって望ましい行動をしてくれたわけです。

じゃあこの行動がなぜ起きたのか。当然条件反射や脊髄反射ではない。なんらかの情報に刺激されて、新しい気持ち・欲求が生まれた。もしくは気持ちや意識が変化した結果、新しい行動を起こしたんですね。

基本中の基本ですけど、行動とはあくまでも心理変化の結果にすぎない。だから行動しか見ていないと非常に表層的になります。そこからコンテンツを作ると、どうしても定石的・定型的なコンテンツになります。もっと言いますと、それではダメなんです。

最終的には行動が欲しい。「資料をダウンロードした」「セミナーに申し込んだ」「買った」「リピートした」という行動が欲しいんですけど、行動をいくら見ていても答えは出てこない。この行動はどこからきたのか、それを起こしている心理は何か、ここにさかのぼらなきゃいけないんです。

逆にどういう心理になると新しい行動に移るのか。「欲しい」「獲得したい」は、行動ではなく心理です。心理を見て、心理を刺激するんです。その結果として行動が出てくる。一見当たり前ですけど、デジタルマーケティングをやっていると、決して当たり前ではないと思います。

施策を考える時に必要なのは客の「心理」

「なんらかの刺激・体験」には2つあります。1つは「客の自然な情報収集・体験」。これだけでいっちゃえば楽でいいですけど、そんな楽にはいかないですよね。当然、2つ目の企業側からのなんらかの仕掛けとしての「施策」が必要になります。

これ(スライド)は1つの構造です。

常に行動と心理はセットで考え、マーケターがプランニングする時に見なきゃいけないのは、心理です。行動は結果だから、うまくいったかどうかの成果はチェックしますけど、施策を考える時に必要なのは心理です。逆に心理までさかのぼらないと、打ち手はかなりありきたりの定型的な施策になります。

心理を変える、そのために企業としてのなんらかの打ち手を実行する。これが1つのユニットです。私が作るカスタマージャーニーは、これが数珠つなぎになっています。ずっとつながって、1回のステップではなく、何回もステップがあってゴールがある、その1つのユニットがここにあります。

これもBtoBの例で考えてみましょう。「せっかく資料を作ったんだけど、なかなかダウンロードしてもらえない。もっとダウンロードしてもらいたい、どうしようか」という例です。

ダウンロードしていない人に聞いてみると「その商品は課題Xの解決ツールなんでしょ」と。その会社の課題はXではなくYだから、「うちの会社の課題であるYには使えない。うちでは使えないツールだな」と捉えられている。これじゃあダメですね。

「実はうちの商品サービスAは、課題Xだけじゃなく課題Yも解決するんだよ」と伝えたり。「今の弊社の課題解決にも使えるのでは?」という認識に変えるためには、どうしたらいいか。

これはあくまで例ですが、サービスAを使い倒している顧客にどう使っているかを聞いてみる。実は意外と「課題Xより課題Yの解決に価値を見出していた」ことがわかったりします。

顧客アンケートや顧客へのヒアリング、顧客体験談、いろいろなかたちでわかったことや事実は、Webサイトやメールなどで伝えていく。これは1つの打ち手ですよね。

パーセプションの重要性

BtoCも考えていきましょう。化粧品の場合、やはり大事なコンバージョン、MQLに変わるアクションは、試供品請求・商品サンプル請求です。「なんとかここにもっていきたい」「これによって個人情報を獲得したい」ということはありますよね。でもなかなか試供品の請求がされない。

いろいろ聞いてみると「よく知らないけどなんかダサい感じしない? 私は好きじゃないな」……こんなイメージを持たれている。だから商品サンプルなんて請求してこない。もしこれが「商品Bって、実はかなりイケてるじゃん」となれば「がぜん興味が湧いた」となるのではないか。

やるべきことは心理を変えることです。どう変えるのか。これもあくまで例ですが、ターゲットの客層に人気のある「カリスマ美容師Sさんと共同開発した商品です」という事実や、Sさんの商品Bに対する熱い思いを動画コンテンツにする。

例えばYouTube動画にして公式チャンネルに載せたり、動画広告をやることで、試供品の申し込みページに誘導する。これが施策ですね。けっこう化粧品はこういうことをやりますよね。

(スライドの)パーセプションですが、言葉の定義は大丈夫でしょうか? パーセプションとは、人が対象物(人)に抱く認識の内容です。漠然としたイメージや印象のこともあれば、もうちょっと理性的な解釈やモノの捉え方という場合もあります。単なる感情としての好き嫌いもあります。なんでもありです。

ある行動を獲得したい。そのために今のあまりうれしくないパーセプションを、うれしいパーセプションに変える。それが大事です。狙うのはここです。各種の行動だけを見ていてもダメ。もちろん成果を客観的に把握するのは行動ですよ。でも何をしたらいいかを考える時には、まず心理を考えなきゃダメということです。

BtoBのカスタマージャーニーは「遷移指標」から作る

私のジャーニーは、パーセプションと遷移指標の2つの要素で骨組みを作ります。さっきの心理と行動を縦長にするとこう(スライド)なります。「どっちを先に作ったらいいの?」とよく聞かれるんですけど、結論から言うと「やりやすいほうでやってください」なんです。

パーセプションが先のほうがスムーズだという方もいらっしゃいますし、遷移指標のほうがやりやすいという方もいらっしゃいます。

実際にBtoBのカスタマージャーニーを作ってみると、遷移指標は8割がた共通しています。でもBtoCだと違います。BtoBはどれもわりと似ているので、特にデジタルマーケティングをやっている方はこっちのほうがやりやすいかもしれない。

全部それぞれの行程のKPIになっているので、遷移指標を決めてから「さて、その時の心理は何だっけ?」とさかのぼるほうがやりやすいと思うんですね。この骨組みを決めたあとで打ち手として実行するためのコンテンツや手法を考える。これが私がやっているカスタマージャーニーです。

世の中のカスタマージャーニーを見ると、パーセプションで書いてあるところはほとんどないですね。認知、理解、比較、購入意向、購入という概念で書いたり。

またはビジター数、リード数、MQLの行動データなどで捉えていることが多いですよね。世の中にそういうカスタマージャーニーはいっぱい出ていますけど、私のカスタマージャニーは違うんです。基本的にパーセプション、生身の人間の心理変化が一番大事ということです。

マーケティングとは何か?

「心理」でカスタマージャーニーを描くと圧倒的にリアリティが湧きます。概念で書いても何を言っているかわからなくなって、リアリティが湧きません。パーセプションは実際に客が口にするような言葉ですから、「確かに客はそんな気持ちになるよね。でもそういう気持ちって、こういう気持ちに変わることがあるよね」と非常にリアリティがある。

だからその変化も、わりとリアリティを持って描きます。

あと常日頃から客の行動や心理をウォッチして深く考えているマーケターであれば、パーセプションのほうが描きやすいと思います。実際企業のブランドマネージャーやプロダクトマネージャーは、パーセプションですぐ描いちゃいます。

彼らはいつも客のインタビューや調査を見ていますから、客の心理の変化がだいたい頭の中に入っているんです。だからパーセプションのほうがやりやすい。

何回も言っていますが、いつも行動しか見ないデジタルマーケターの方は、パーセプションは苦手です。「パーセプション」と言った瞬間にけっこう引いちゃいます。「そんな抽象的なことを言わないで、もうちょっとカチッとしたもの、コンピュータでもわかることで言ってちょうだい」となっちゃうんですね。

ひどい人なんかは、「パーセプションなんて言葉遊びだ。そんな情緒的なことを言って、マーケティングの結果が良くなるか」と言われます。私は間違っていると思います。

自分の商品の客が常日頃「何を考えて」「どんな行動をし」、最終的に顧客になり、それが続くか離れるか。客の行動と心理を常に観察することは、マーケターの基本動作だと思うんです。これができていれば、パーセプションのほうがむしろ描きやすいと思いますね。

あと実は一番大きなところは、コンテンツの企画がパーセプションだとやりやすいんです。これは次の章のテーマになります。

そのテーマの前に、ドン・E・シュルツ先生を知っていますか? アメリカの超有名な先生ですけど、30年近く前に彼はIMC(統合マーケティングコミュニケーション)革命で「マーケティングとはつまるところ、パーセプションチェンジである」と言っています。

私はこれを今でも真理だと思っています。「今はデジタルマーケの時代になったから、もう時代遅れだ」なんてことはぜんぜんない。中には違うという人もいるかもしれないですけど、私は真実だと思いますね。

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