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【“ズラし”て勝つ】成功する新規事業を生む「リフレーミング」とは?(全3記事)

ユーザーの中にある「法則」を見つけるための3つのポイント 事業開発における「リフレーミング」の活用法

大企業の新規事業やサービス開発を行うデザインコンサルティング会社株式会社NEWhが主催するセミナーに、同社執行役員の石塚賢氏が登壇。「成功する新規事業を生む『リフレーミング』とは?」と題して、ユーザーの中にある「法則」を見つけるための3つのポイントや、ユーザーの困りごとを発見するための「抽象化」と「概念化」についてが語られました。

ユーザーの中にある「法則」を見つけるための3つのポイント

石塚賢氏(以下、石塚):「確信」を獲得するステップは、大きく2つあります。まずは、今回のタイトルにもなっているリフレーミングです。読んで字のごとく、「フレームをし直す」という意味合いがあります。フレームをし直すためには、まずはフレームを見つけないといけません。

そのために、しっかりと調査・観察をして、ユーザーの中にある法則(フレーム)を見つけていきます。お客さまの行動や評価から、ユーザーインサイトと言われるユーザーの本質的な課題、習性、価値観を見つけることが、法則(フレーム)の発見です。

法則を発見したあとに、しっかりと価値の発見、捉え直しを行う。法則を活用(リフレ―ム)して、発見した法則を起点にお客さまの求める価値や体験を捉え直していく。このステップが確信の獲得に必要です。

次に、2ステップのうち、法則(フレーム)の発見についてご説明します。先ほど申し上げたところと重複しますが、ユーザーの行動や評価からインサイト・習性・価値観を見つけるという営みです。

法則を発見するためには、3つの発見が必要と言われています。1つ目が、例えばユーザーインタビューなどで、どのお客さまも言っている「共通点」を見つけること。2つ目が、顧客課題の構造を把握するために、それぞれの情報の「関係性」を発見すること。3つ目が共通点や関係性の発見をした上で、顧客課題の捉え直しのための「概念」を発見することです。

大枠の顧客課題を可視化する「共通点の発見」

では、3つの発見を細かく見ていきます。まずは「共通点の発見」。これは非常にシンプルで、インタビューなどの検証で得られた情報の中から共通の事実を見つけていきます。

例えば、「リカレント教育の時流に乗り、働くお母さん向けの学習ビジネスを行いたい」とする。学習したいと考える働くお母さんは増加する一方で、実際に行動に移せている人は少ない。このギャップを埋められればビジネスになると検討し、対象となる3人のターゲット顧客にユーザーインタビューを行うとします。

それぞれ微妙に異なる部分もありますが、「働くお母さん」というターゲットユーザーとして、一致する方々です。

インタビューの結果として、こんな情報が流れてきました。少しの間インタビュー結果をじっくり眺めてみてください。

このようにユーザーインタビューを実施して、ユーザーの声の情報が出てきた際に、まず、インタビューで出たファクト、事実の中から共通点を見つていきます。

共通の状態、共通の行動、共通の発言、共通の出来事、共通の属性、共通の目的・ゴールなど。インタビューの事実の中からそれらを抽出してグループ化します。共通点を見つけた上で、グループにラベルをつけることが非常に大事です。そうすることで、インタビューの中に出てきた大枠の顧客課題を可視化できます。

このインタビューの対象者の3名は、それぞれ組織や役割は違いますが、「最新の経営学に関する考え方や知識を身につけたい」「経営視点の知識を持って会話できるようになりたい」「体系的に新規事業の方法論を教えてもらいたい」。これらは「スキルアップやキャリアアップの新たな知識やノウハウを身につけたい」という目的が共通しています。

共通点でグループを作る際、まず共通して出現する言葉を見ていくとグループ化しやすいです。また、共通の事実がない情報は、今の段階で強引にグループ化しなくても大丈夫です。いったん同じことを言っているものをつなげていくことが重要です。

「新しい知識を身に着けたい」という目的が共通な場合もあれば、「日々の業務が忙しく、やらないといけないことに追われている」という行動が共通している場合もあります。また「自分の学習時間を確保することが難しい」という状態が共通していたりとか。

あとは、自分の時間を確保したいが今以上の夫のサポートは期待できないという状態も同じグループとしてまとめることができるかなと思います。

共通点を発見し、数ある情報の中から共通の事実を抽出して、情報をフィルタリングすることで、構造や関係性の発見に向けた情報整理の土台を作ります。

アイデア出しのヒントにつながる「関係性の発見」

関係性の発見は、共通した事実やその他の情報の中にある関係性を見つけていきます。例えば因果関係がある、相反関係がある、大小関係があるなど「関係」という言葉が入るような複数の情報の間にある関係の有り様や状態を指します。

相反関係の発見で言うと「キャリアアップやスキルアップのために新たな知識、ノウハウを身につけたいけど、学習の時間を確保することが難しい」というのは、状態が相反していますよね。

相反しているものは、ユーザーに対して障壁になる問題である可能性が非常に高いです。関係性を見つけることで、「じゃあ、自分の学習時間を確保するためには、どうしたらいいんだろう」というアイデア出しのヒントにつながります。

相反関係から、学習時間の確保が難しいことが明らかになってきたと。さらに因果関係を整理すると、この人は日々の業務も忙しく、やらないといけないことに追われていると。家庭では家事・育児に忙しい。

この因果関係の整理をすることで、ユーザーの抱える問題の原因や解決すべき課題が明らかになる。この人たちの場合は、日々の業務も忙しく、家庭では家事・育児に忙しい状態が見えてきます。

さらに共通の事実の関係性を図示、明確にすることも重要です。顧客の局所的な課題だけでなく、ここから因果関係がつながる場合もあります。

例えば、「家事・育児に忙しい」につながる情報として「旦那さんが家事・育児のタスクを十分に把握していない」は、各ご家庭でよくあることかなと思います。

お母さんは「子どもが怪我しないように」「部屋を汚さないように」としっかりコントロールをすることも含めて「子どもを見ていてね」と言ったのに、旦那さんは「ただ子どもの様子を見てるだけでOKだと思ってた」という認識の差もお母さんの忙しさを生み出す原因の一端にある。

「自分の時間を確保したいけど、旦那さんも仕事で忙しいし、今以上の家族のサポートは期待できなさそう」などが、さらに分析して深掘っていくと明らかになったりします。

この関係性の整理をすることで、顧客課題の本質的な構造が明らかになります。お客さまの本質的な課題の法則を発見するためには、特に因果関係はヒントになるので、しっかりと関係性を見つける必要があります。

インサイトの深掘りやインタビューの失敗例としては、表層的な問題しか見つけられず、根本的な問題が見つからないことがよくあると思います。根本的な課題を見つけるためには、お客さまの表層的な課題から深掘ってインタビューをしたり分析をする必要があります。

「なぜこの人は時間確保が難しいんだっけ?」をインタビューや分析で明らかにすることで、「日々の業務が忙しく学習の時間確保ができない」「家事・育児に忙く学習をしている暇がない」という原因がわかり、プロダクトやサービスで解決していくべきポイントを明らかにすることができます。

これが関係性を明らかにすることの効果・効能です。図示をすることで一定の効果がありますが、図が苦手という方は、明らかになった課題を構造的に理解するために、一度文章化するのも効果的です。

その時に誰がターゲットユーザーで、ユーザーインサイトは何なのか。どういった問題があって、問題の原因は何なのか。(スライドの)こんなフレームで表現できると、お客さまの課題が構造的に理解できている状態だと思います。

お客様の課題が構造的に理解できている基準の1つとして、自分自身が、お客様になったかのうようにお客さまの課題やインサイトをすらすらとストーリーテリングできる、しゃべることができる状態が、確信が獲得できている状態ということも言えるかなと考えています。

構造整理をしていくと、日々の業務や家事の忙しさが原因だとわかり、「なんで、この忙しさが起こっているんだっけ?」とさらなる疑問が浮かぶ可能性があります。これを深掘ることでさらに良いアイデアや事実の獲得にもつながっていく。

時間の制約もあると思いますが、ユーザーインタビューも1回やって終わりではなく、課題の構造整理をして関係性を見出した上で、さらに深掘りするためにインタビューできるといいのかなと思います。

我々は、よくユーザーインタビューの結果の分析も行いますが、仮説をリストアップして終わりではなく、仮説で出てきた情報の関係性の整理をすることで、仮説としてより深掘っていけるポイントを見つけることにも関係性整理を使っています。

事実や関係性を捉え直す「概念の発見」

共通の課題が見えてきた。課題同士の関係性が明らかになり、「ユーザーはこんなことに困っているよね」も明確になってきた。

最後は明確になった関係性や共通点も含めて、いろいろな概念にラベルをつけることで、課題仮説を捉え直せる状態を作る。これが「概念の発見」になります。

まずは発見した共通の事実や関係性から特徴的な要素を抽出する。これを抽象化と呼んでいます。抽出した要素に基づいて、事実や関係性を捉え直す。これを概念化と言います。

要は似たような関係性や事実は、共通化、グループ化していると思うので、ラベルをつけて捉え直しを行うというステップですね。

「抽象化」では、共通の事実や関係性の中から、特徴点、共通する要素や抽象的な要素を見つけていきます。

例えば、この因果関係の中で、「自分の時間を確保することが難しい」という事実に対して2つの要因があったと思います。日々の業務に追われていることと、家庭では家事・育児に忙しいこと。

この2つをよーく見てみると職場と家庭の違いはありますが、2つの要素から働くお母さんが抱えるタスクという共通点が見つかります。

この発見した特徴点と各要素のひもづけから、働くお母さんがタスクに追われ、タスクが超過している状態が、このグループのラベルとして貼れるようになります。

グループのラベルでひもづけに違和感がないか。名前・ラベルのつけ方に違和感がないか。チームで確認しながらやっていくと、グループ間の共通点や違いに関する共通認識を作ることができます。

1つの要素から1つの特徴点を見出すのではなく、視点を変えて、できる限り複数の特徴点を見出すことが必要です。

先ほどの例だと、日々の業務が忙しく自分の学習時間を確保することが難しいと。一方で、キャリアアップやスキルアップのための新たな知識・ノウハウを身につけたい。

「業務に関する学習の時間は業務とされない」という特徴的な状況に基づいて、「バッファのない業務アサイン」という特徴点にラベルをつけたりします。1個出したら終わりではなく、見方を変えていろいろと切り口を出してみるのが重要です。

じゃあその見方をどう変えていくのか。抽象化で担保すべき視点はけっこうさまざまですが、(スライドの)以下のような視点のガイドを持つと実務運用で便利かなと思います。

例えば、色や形、テクスチャーで際立つポイントは何か(物理・表面)。あとは、関係性で際立っているポイントは何か(関係性)。

主となるユーザー、ステイクホルダーを変えた時に際立つポイントは何か(主体)。視座をミクロの視点・マクロの視点でちょっと分けて考えてみよう(視座)。それから、まとまっている状態の中での行動や意思決定で際立つポイントは何か(状態)。それらが置かれた環境で際立つポイントは何か(環境)とかですね。

これらの視点を持って「さっきは関係性で見たから今度は主体で変えてみようか」「期間が短い・長いで、ちょっとグループを作ってみようか」ということができると、新たな抽象化のポイントが見つかります。

ユーザーの困りごとを発見するための「抽象化」と「概念化」

次に、特徴点を抽出し、共通の事実の関係性を整理して、関係性や構造の捉え直しを単純化するのが、概念化になります。

先ほど出てきたタスクの超過や時間の不足でも、グループがいくつか作れると思いますが、抽象化した各要素の因果関係、相互関係、大小関係の構造整理を行っていきます。

例えば時間の不足では、まずタスク超過が要因としてあって、タスクの認識の不一致、学習のバッファのない業務アサインや家庭での可処分時間がないことが原因だったりする。この構造を整理して明らかにするのが、概念化のファーストステップですね。

この単純化した要素と新たにできた関係性にラベルをつける。これを概念化と呼んでいます。関係性の発見で実施したような文章化をしてもOKです。

例えば、時間の不足やタスクの超過、タスクの不一致は、総じて言うと、夫婦間のタスク認識の不一致によるタスクの超過です。これが課題で、これがインサイトだという結論になると思います。

時間の不足は学習のバッファのないアサインによるもので、立ち向かっていく課題や解決しなければいけない要素が明らかになってきます。これも一度グループ化をして関係性を明記し、その関係性にもう一度ラベルづけをして単純化することで、課題の構造が明らかになります。

シンプルに「ユーザーは何に一番困っているか?」を見つけやすくする。抽象化・概念化することで、複数の視点から顧客課題の捉え直しが可能になってくると思います。

ユーザーの課題やインタビューの結果を個別最適として見ると、情報量が多すぎて、複数視点での顧客課題の捉え直しは非常に難しい。抽象化・概念化して、操作可能な情報量に絞ってインサイトを明らかにしていくことが重要なポイントです。

ただし、スライドには書いていないんですが、重要なポイントとして、抽象化しすぎると、議論ができなくなったり、インタビューデータがリアリティのある情報にならなくなる。冒頭でもお伝えしたように、グループ化は無理やりしないほうがいいかなと思います。

こうやって発見した法則を、自社にとっての重要性と競争環境にとっての新しさで評価すると、競合優位性を担保したサービスアイデアの発見にもつながります。

先ほどの「夫婦間のタスク認識の不一致によるタスクの超過」の課題も、競争環境にいる他の企業がアプローチしているかを見て、「これは他の企業がアプローチしていない領域である」となれば、まだ競合相手が提供できていない価値や開拓できていない領域であるため、新しいビジネスチャンスになる可能性がでてきます。

これはわりと早期の段階でできる競合優位性の検証です。早い段階で競合優位性の芽を伸ばしたり、相手の芽をつぶしたりできる要素になると思います。ここまでが、法則の発見のお話です。

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