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中小企業発の看板ヒット商品を生み出し続ける仕掛け人の「建築思考」とは?(全5記事)

企業のイメージや思いを具体化する「看板商品」の強み 大ヒット商品を生み出すビジネスデザイナーの“こだわり”

ローンディール主催の連続起業家との対談イベントより、ビジネスデザイナーの今井裕平氏をゲストに迎えた回をお届けします。大ヒットを記録したウェアラブルメモ「wemo」など、会社の強みを活用して看板商品やサービスを生み出し続けている同氏。「建築思考」をテーマに、新しいビジネスを生み出す思考法について解説されました。本記事では、今井氏の「ビジネスデザイン」の考え方が語られました。

ヒット商品開発の裏側から迫る「ビジネスセンス」とは

村上静香氏(以下、村上):今日は質問があればぜひ、チャットやQ&Aの欄にどんどん書き込んでください。みなさまからの質問もいただきながら、インタラクティブに進められればと思っております。

細野真悟氏(以下、細野):はい、よろしくお願いします。

今井裕平氏(以下、今井):よろしくお願いします。

細野:簡単に自己紹介をさせてください。細野真悟といいまして、今ローンディールの最高戦略責任者をしています。17年ほどリクルートキャリアという、今はリクルートと統合した人材系の会社に勤めていまして、最後は執行役員をしていました。

そのあと転職し、ベンチャーで2年半ほどCOOを務めて、今はローンディールのCSOをしながら、フリーのビジネスデザイナーとしても、複数のベンチャーや大企業の新規事業のメンタリングをさせていただいております。よろしくお願いします。

ビジネスが大好きですので、今日は今井さんの話を聞けるのがすごく楽しみです。みなさんも楽しんでください。

今日の進め方なんですが、今井さんから自己紹介や、どんなプロダクトをやってきたかをご紹介いただいたあと、私から簡単に「ビジネスセンスって何なんだろうか」という定義をさせていただいた上で、「今井さんのヒット商品はどうやって考えたのか」といった、ふだん語られていない裏側の話をいろいろと聞いていきたいと思います。

そして、そんな今井さんが「どうやって今の今井さんになってきたのか」といった、ご本人も認識していないところを僕がガンガンと掘って、みなさんに提示できたらおもしろいんじゃないでしょうか。今日はそんな流れで進めていきたいと思います。

さっそくですが、今井さん、10分ほどで自己紹介をお願いします。

今井:あらためまして、kenmaの今井と申します。よろしくお願いします。

細野:よろしくお願いします、わー。

今井:うれしい(笑)。

細野:少ない人数で盛り上がっているので、みなさん、チャット欄に「パチパチ」とか打っていただいてぜんぜん大丈夫です。そういうカジュアルなイベントなので、ご協力よろしくお願いします。

デザインセンスが優れている人には勝てなかった

今井:自己紹介は持ってきたスライドそれにしたがってお話しさせてください。細野さん、さびしいんで突っ込んでください。

細野:バンバン突っ込みます。

今井:お願いします。自己紹介ですが、僕は建築学科にいて、もともと建築家になろうと思っていたんです。でも、建築設計事務所に就職して2年働いたあとに、「やっぱり、ここで戦うと分が悪いな」と思ったんです。

細野:分が悪い?

今井:はい。「いや、これは勝てないな」と。やはりデザインセンスが優れている人には勝てないと思って、経営コンサルの道に行くことにしたんです。最終的には、電通が作った電通コンサルティング会社に6年在籍していました。

今、僕はkenmaというデザインの会社をやっているんですけれども、これ自体は大学を卒業したときに仲の良い後輩たちとやっていたサークル活動みたいなことがきっかけです。主にコンペに出す活動をしていました。

細野:すごいですね、「荒稼ぎしよう」みたいな感じですかね。

今井:そんなに稼げなかったですけどね(笑)。でも、「こんなことをやっている」と話して、名刺やロゴを作ったりしているうちに、だんだんとお金をもらえるようになっていきました。

この会社は2人で創業したんですけど、相方が先に辞め、僕はまだ電通コンサル時代の法人化でした。2016年に僕も(電通を)辞めて今に至るというキャリアになっています。

「ビジネスデザイン」の2つの意味

今井:今の話をざっくりまとめると、デザインをずっとやっていたことと、もう1つはビジネスコンサルの経験が10年以上あるので、その両方ができることが得意ですね。特にビジネスのほうからデザインを考えることが得意です。

細野:すごいですね。普通、今の経歴だと逆方向にいきそうですが、ビジネス側からデザインにとなっているのが、かなり特徴的だと思います。

今井:言われてみればそうですね。あまりちゃんと考えてなかったな(笑)。

細野:後々聞いていきます。

今井:細野さんもビジネスデザイナーと名乗られているので、お声がけいただけてうれしくて。僕もビジネスデザイナーと名乗ってやっているんですけど。

細野:最高です。

今井:(笑)。ビジネスデザインをどんな意味で使っているかということで、ちょっと2つお伝えします。

1つは業務範囲ですね。よくゼロイチのフェーズとかを細野さんも使われていると思うんですが、創る、立ち上げる、広げる、といったニュアンスで使っています。ゼロイチのところって、わりとデザイナーが活躍できることが多いんですね。企画するとか、構想するとか、あとは実際にデザインして具体化するとか。

そのあと立ち上げて拡大していくとなると、どんどんビジネスフェーズになっていきます。デザインとビジネスをそんなふうに分けていますが、僕の場合は全部するので「ビジネスデザイン」と呼んでいいかなと思って、そう呼んでいますね。

特にビジネスフェーズでは、デザイナーがやらないことをいっぱいやっています。

細野:ぜんぜんデザイナーのやることじゃないですね(笑)。

今井:(笑)。プロダクトをデザインしたら、そのあとに収支計画を作って、セットで報告したり、そのプロダクトがどうやったら認知を取れるかという時に「メディアの出方って恐らくこうなります」みたいなPRを考えたりですね。

場合によっては企業との提携などの話を先につけてきて、「もうこの企業さんが一緒にやるって言っているんで、あとは話してください」という場合がありますね。なんかそんなこともやっているのが業務範囲の話ですね。

企業の新しい看板商品を作る

今井:もう1つはゴールについて、「何をゴールにデザインするか」というところです。ざっくりとお話しすると、僕もそうなんですが、デザイナーの方ってやはり完成度の高いもの、かっこいいものを作りたいんですね。

でも、ビジネスでやる以上、やはり成果が求められます。それで、デザイナーの多くが完成度を目指すのであれば、僕は徹底的に成果を出すことを目指したいなと思って。それもあって、ビジネスデザインと言っています。

これはたぶん日本で唯一だと思うんですが、「成果を数字で語るデザイン会社」というのを標榜しています。

細野:いいですね。

今井:ということで「ビジネスデザインをやっています」って言っています。

もう1つ、僕の会社では「フラグシップを作る」というコンセプトを掲げています。このフラグシップは、ざっくりというと、企業の新しい看板商品という意味で使っています。

世の中にあるわかりやすい例で言うと、「とらやの羊羹」みたいなものです。そういうものを各企業でデザインしたいなと思っています。例えば、Microsoftでいう「Surface」みたいな。昔は「Windows」しかない中で、「Appleがかっこよくて使いやすい」となっていたところに「Surface」が出てきた頃から、だんだんと「Microsoftも意外とやるぞ」みたいな。

細野:空気が変わってきましたね。

今井:そうですね。そういうのって、フラグシップとか、具体的なプロダクトやサービスの力なのかなと思っています。

あと、僕が本当にすごいなと思っていたのは、ZOZOスーツですね。下着やジーンズを出して、たぶんユニクロとどう戦うかを考えられたと思うんですが、その時にサイズの概念を変えるために、テクノロジーを使ってやっていたところです。すごくZOZOらしさもあったし、先進性もあったし、実際ユーザーにとってもすごく良い企画だったので、僕はすごいなと思っています。

それから、僕はやはり建築出身なので、施設や空間のビジネスデザインも得意なのですが、その代表例といえるのが、代官山のT-⁠SITE、蔦屋書店ですね。僕らの昔の「TSUTAYA」のイメージって、青色と黄色のレンタルショップだったので。

細野:本当にそう(笑)。こういうやつですね。

今井:そうそう。いつの間にか漢字4文字のおしゃれライフスタイルショップとして、大型商業施設にこぞって入っているようなお店になっていました。

これを実現できたのは、やはり代官山のあの一等地に、具体的な空間で「自分たちが何をやりたいのか」ということを最初に示せたからこそです。それによって、漢字4文字の蔦屋書店を一般生活者に「あっ、こういうことなのか」と知らしめられたのかなと思っています。

あと、僕は中小企業の、特にもの作りの企業さんとよくお仕事をするんですね。その代表例として僕がすごいなと思っているのが、このマスキングテープです。マスキングテープって本当はマスクするテープなんで、別におしゃれでもなんでもなかったものを、「マスキングテープ=おしゃれテープ」みたいにしていたんで、本当にすごいなと思っていて。

僕自身もそんなフラグシップを企業に作ることを支援したいなと思ってやっています。

企業のシンボル商品を作る「シンボル×具体」の考え方

今井:もうちょっとだけお伝えすると、僕はフラグシップを「シンボル×具体」と考えています。

企業によってシンボルは異なると思います。イメージとかテクノロジーとかビジョンとか。それを具体的なもので作ることにこだわっています。それはなぜかというと、このシンボル系のプロジェクトって、抽象的なアウトプットでやりがちなんです。例えば、ロゴとかキャッチコピーとか、ムービーとか。

僕は電通グループにいたので、広告代理店がどんなことをするかをずっと横で見ていたんですが、やはり抽象でやるとわかりやすい売上や利益のようなビジネスの成果がなかなか出ないんですよ。電通コンサル時代には「これを具体でやるとけっこういいんじゃないか」ってずっと思っていました。それを今、kenmaでやっているところです。

事例でいいますと、先ほどご紹介いただきました、この「wemo」は、中小企業の機能性フィルムの会社の技術を使って作ったものですね。こちらはとうとうミリオンセラーになりました。

細野:やった、超えましたね。すごいですね、ロングヒット。

今井:5年かかりました。でも、人生でミリオンセラーを1個ぐらいはやりたいなと、目標には思っていたので。

細野:100万ってすごいですね。

今井:これは印刷会社さんの金属調印刷というフェイクの印刷技術を使ってマテリアルにして、ビジネスにしたというやつです。家電メーカーと自動車メーカーのトップ10といった、国内外の超大手企業のほとんどから、この中小企業の会社に問い合わせが来たりとかして。

海外からも、みなさんもご存知のITプラットフォームの会社とか、家電、車のメーカーなどからも、わざわざこの板橋区の会社に問い合わせが来たり、場合によってはお越しいただいたり。「ちょっとした板橋の奇跡」って呼んでいます。

細野:(笑)。「ちょっとした板橋の奇跡」ってすごいパワーワードですね。

今井:中小企業が大企業と取引するって、むちゃくちゃハードルが高いじゃないですか。ドアを叩いてもなかなかレスがなかったりとか。

細野:いや、そうですよね。

今井:あとは、口座を開くのもすごくハードルが高いので。

細野:審査が厳しいですもんね。

今井:そうなんです。そういう意味では、ビジネスの成果をちゃんと作れたかなと思っています。そして、これはスポンジメーカーの吸水スポンジを使ってタオルを作ったというやつです。

あとは、D2Cブランドとして、インフルエンサーの料理研究会のものも手掛けました。ご夫婦がD2Cブランドをやるというもので、これはほぼクリエイティブのところをサポートしたものになります。けっこう露出しているので、ひょっとしたら目にしたことがある方もいらっしゃるんじゃないかなと思います。

また、これは『がっちりマンデー!!』に取り上げていただいた、名古屋の日本茶カフェですね。コロナ禍に売上が3分の1になったお店を立て直し、コロナ前の売上の1.8倍にしました。

細野:すごいですよね。

今井:これは5年、6年前のものですが、羽田空港のショップで、あと半年で撤退という所から売上を3倍にしました。

細野:サクッと言っていますけど、すごいですね。

今井:ありがとうございます。「社会課題をどう解決するか」ということは、ビジネスを考えていくと必然的にそういうテーマに当たるなと思っていて。その1つがいわゆるフェムテック領域です。「専門商社に何ができるか」と考えて、防災のレディースキットを作ったりしました。

細野:防災のレディースキットか、そういうことか。

今井:あとは、オールジェンダーのトイレのコンセプトモデルを作ったほか、どうやったら中小企業で女性の活躍・推進の考えやアクションが取れるかを商社としてサポートするサービスを立ち上げました。

最後に、一応「中小企業がメインです」と言っているんですが、実は大企業もけっこうやっています。今、表に出ているものでいうと、コクヨさんの「コクヨ初の住宅事業」をやっています。これは9月に戸越にオープンするんですが、今絶賛入居者募集中です。

そんなこともやっているのでけっこうジャンルは幅広いですね。以前はコンサタントとして、いろいろなジャンルをやっていたこともあって、基本的に「フラグシップを作りたい」というご要望がある企業さんとはやらせていただくため、今もこんな(幅広い)なジャンルでやっています。

すみません、ちょっと長くなりましたが、ここまでが自己紹介となります。

細野:ありがとうございます。今のスライドだけで、いろいろと突っ込むと1時間しゃべれちゃうんじゃないかと思ってドキドキしています。

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