2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
第768回 ビジネスWikipedia『過去美化バイアス』(全1記事)
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三井敬二氏:今回お話するのは「過去美化バイアス」です。ついつい人が持ちがちな思考の癖、そしてそれが何かを変えていく時の妨げとなりかねないものですので、ぜひ参考にしていただけるとうれしいです。
「過去美化バイアス」とはその名のとおり「昔はよかった」と感じてしまう思考の癖のことを言います。
もう少し具体的に言うと、このバイアスは過去のことを当時感じていたよりも美化して思い出すことです。ほとんどの人に心当たりがあるんじゃないかなと思います。
この過去美化バイアスが生じる理由としては3つあります。1つ目は、人間の脳は過去の悪い出来事のほうを相対的に早く忘れるため、良い印象の記憶が残りやすい。その結果、良いことと悪いことが同時に現在進行形で起きている現在と比べると、過去が良いことに満ちたように感じます。
続いて2つ目は、人間は自分の若い頃に憧れる癖があります。若さそのものと若い頃に遭遇した環境を混同してしまって、自分のあの頃は良かったなぁと錯覚してしまいます。
そして最後3つ目、人は自分のしてきた選択や意思決定を否定されたくないので、過去のことを良いほうに意味付けしてしまいがちです。これらが過去美化バイアスが生じる理由として挙げられています。
いずれも、人がこの自然界で生き残る過程で生じた、ストレスを減らすための動物的な本能と言えます。そしてこの過去美化バイアスは、しばしば会社の変革を妨げることにもつながります。
例えば、「昔会社が小さかった頃は面倒な稟議なんて必要なかった。いっそのこと稟議などは廃止してしまおう」と社長が考えたらどうなるでしょうか? もちろん実際に当時のほうが良い面もあったと思いますが、すべてがそうかと言えばそんなことはないはずです。
例えば稟議が必要なかったのは、単に会社が小さくてコミュニケーションに要する時間がそれほどなかったからかもしれませんし、そもそもそれほど大きな金額の案件がなかったからかもしれません。
そういった前提条件の変化を忘れてしまって良かったことだけを思い出すのは、時として間違った方向に組織を導いてしまいます。過去を必要以上に美化して、「原点回帰で昔のあの時のやり方を復活させよう」などと安易に言い出すのは、やっぱりまずいということです。
ということで、今回は過去美化バイアスというものについてお話ししました。思い出はついつい美化されがち。そう気を付けて、何かを考える時の参考にしていただけるととてもうれしいです。
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