2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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君島朋子氏(以下、君島):みなさん、こんにちは。5セッション目になりますが、まだまだ元気ですか? ばっちり大丈夫そうですね。今日はリアルで会って、きっとハイになっているのではないかなと思います。
このセッションは、まさに「プロフェッショナル」というキャリアをお持ちのすばらしいパネリストのみなさんに来ていただいていますので、とってもお得なセッションではないかと思います。
パンデミックがやってきて、インフレが起こって、爆速経営をしなくちゃいけなくてと、「なんか大変な世の中だなあ」ということを、今日は昼からいろんなセッションでうかがってきたのではないかと思います。
きっとみんな「ああ、大変だ。僕たちがんばらなきゃ」と、志を新たにしておられると思いますが、とはいえ「不安だよね。どうやって生き抜いたらいいのかな?」という気持ちの方も多いのではないでしょうか。
今日はこのすばらしいパネリストのみなさんに、3つのことを聞いていきたいと思います。1つは、プロフェッショナルなキャリアをどんなふうにお作りになったのか、パーソナルなことも絡めて聞いてみたいと思います。これが目当ての方もいらっしゃいますよね。
そして、「プロって何だと思いますか?」「プロって、いったいどういうスキルやマインドを持ったらいいの?」ということも、うかがってみたいと思います。
最後に、今日は冒頭から変化の話ばかりなので、「この変化の中を生き抜くにはどうしたらいいの?」ということも聞いてみたいと思います。最後に質疑応答の時間がありますので、ぜひたくさんご質問いただけるように、頭の中に用意しながら聞いていただければなと思います。
君島:では、まずは「プロって何?」というところから、うかがっていきたいなと思います。このセッションは「プロフェッショナルとしてのキャリア」というお題ですが、みなさんはプロですか? 今、ドキッとしましたね。あ、そうでもない? 自覚がありますか? ある方もない方もいると思います。
私もプロかと言われると、やはり悩んじゃうところがあって。プロと言えるキャリアをいったいどうやって築くのかを、ぜひうかがってみましょう。
まずは柳沢さまから。さっきご紹介がありましたが、柳沢さまはゴールドマン・サックスで、いかにも金融のプロという感じのキャリアの方ですが、どんなふうにキャリアを築いてこられたか、どんな時にプロと自覚されたのかをぜひ教えてください。
柳沢正和氏(以下、柳沢):いかにも「金融のプロ」って感じがしますでしょうか(笑)。
(会場笑)
柳沢:実は私は、ずっと金融しかやっておりません。大学を卒業して入った会社がメリルリンチという会社で、新入社員研修で名刺の渡し方を学びました。そういったセッションをやる中で、その会社には花形エコノミストがいらっしゃいました。それがJesper Koll(イェスパー・コール)さんという方なんですけれども。
(会場笑)
柳沢:「こんなふうになれたらいいな」と思っていた、入社したウン十年前を思い出すと、本当に感慨深い。
Jesper Koll氏(以下、Koll):40年前!?
柳沢:そんなことないです。ウン十年前ね。
(会場笑)
柳沢:すみませんね。僕たちの掛け合いの時間じゃないので。
(会場笑)
柳沢:あすか会議も何度も来させていただいていて、本当に大好きなんですが、最初は社会起業や社会貢献といったセッションにいることが多かったんです。後々、いろいろお話しできればと思います。
本当に小さい、奥のほうの誰も行かないような部屋で細々とセッションをやるケースが多いんですが、今日は2階席まで人がいるのを見て、さすがグロービスの学生さんはキャリア形成に食いつくんだなと感動しております。
柳沢:本題のプロフェッショナルですが、最初に入ったメリルリンチという会社が2008年のリーマンショックの時に実質破綻して、バンク・オブ・アメリカに救済されるというイベントがありました。
新卒で入った会社で愛着もありましたが、会社がなくなっていくさまを間近に見ていて、内部ではみんな「これはやばいよね」とわかっていたんです。
「業績発表のタイミングで少しずつ損失を開示しているけど、もっとひどいものがいっぱいあるよね」ということが、もうわかっているわけですよ。その中でポロポロと人が辞めていくわけですが、私は愛着もあったし、よく考えていなかったというのもありました。
今でも忘れません。「リーマンブラザーズという会社が破綻するらしいよ。大変だね」と、9月の3連休前の金曜日に言って退社をしたら、土曜日に「いやいや、やばいのはリーマンブラザーズじゃなくてうちだよね」という話になって、日曜日には「どうやらうちの会社がなくなるらしい」みたいな話が出てきたわけです。
最終的にバンク・オブ・アメリカに買ってもらって、なんとか生き延びたわけですが、火曜日に会社に行ったら「あなたのチームはありません」と言われました。
よく外資系企業が破綻した時の話で、「会社に行くとIDカードが使えなくなっていた」とか、リーマンの前に段ボールを抱えて出てきた人がいましたよね。まさにあれでした。「おおー! こんなことが自分に起きるんだ」と思って。
その部署は戦略的にあまり大切でないと見なされた、バランスシートをすごく使う仕事だったので、「みなさん考えてください」と言われて、チームごとドイツ銀行に移りました。
柳沢:やはりその時が、キャリアについて考えるすごく大きな機会になりました。ある意味今までレールに乗ってきたけれども、今後どういうふうにやっていこうかを考える機会があったんですね。チームが行き先を探している中で、空白の2週間ぐらいがあって、毎日会社に行っても特にやることがないわけです。
何もやることがないことがバレないように、Eメールを1つ10分ぐらいかけながら、デリートしていくというすごく寂しい作業をしていく中で、何人かの尊敬する部署の人たちと話をして。その時に言われた言葉が、一番ピンときました。「何かやるにしても、あなたはその世界の世界一になりなさい」と言われたんです。
定義も難しいんですけれども、「世界一の金融マン」って超絶難しくて、ちょっとピンと来なかったわけです。だけど、その人は野球に例えてくれたんですね。
「世界一の野球選手になるのは難しいけれども、『西武ライオンズのショートだったらお前だ』『バレーボールの東レだったらあなただ』『セッターだったらあなただ』みたいな、そういう世界一はあるだろう」と。
自分が次の会社で何かのポジションをする時に、「その仕事はあの人にしかできないから、他をリプレイスしない。その人をリテインするために、会社がお金を払い続けるような人材になりなさい」と言われました。私は、替えのきかない人材がプロフェッショナルだと思っています。
君島:ありがとうございます。今の話を聞いて「なるほど」と思ったんですが、プロとは替えのきかない人材ということですね。ちなみに柳沢さまは、いつ頃自分が替えのきかない人材になったなとご自覚されたんですか?
柳沢:私は行く会社、行く会社で、破綻とかそういうものがありまして。
(会場笑)
柳沢:ドイツ銀行も2019年に「株式部門を閉鎖する」という発表がありまして、自分はどうしたらいいんだろう、次を考えなきゃいけないと思った瞬間に、LinkedInで「私たちゴールドマン・サックスは世界一の金融機関です。ぜひあなたに来ていただきたい」とメッセージが来ました。その時に、ある程度プロとしては認められるようになったのかなと思いました。
君島:どうもありがとうございます。我々から見るとちょっとホッとするお話だったかなと思うんですが、柳沢さんみたいに我々が見たら「プロだよね」という方でも、けっこう迷っていらっしゃった。しかも、それも最近の話ですよね。3年前に「自分は替えのきかない人材だ」と思われたということで、勇気づけられるお話をありがとうございます。
君島:続いて、同じように、プロってどんなものなのか、いつどうやってプロになられたのか、山口さんにうかがってみたいと思います。みなさん、スタディサプリはご存じですかね? 山口さんは、あのスタディサプリを立ち上げた方ですね。
我々グロービスでは「創造と変革」と言っていますが、まさに事業創造をなされた方です。そんなキャリアをどうやって築いてプロになられたか、ぜひお話を聞きしたいです。
山口文洋氏(以下、山口)みなさん、こんにちは。「プロって何?」という言葉に対して今まで語ったことがないので、ちょっとアドリブでいきますね。「プロ」というのは「プロフェッショナル」という言葉なので、もしかしたら単純に「何かしらのスキルを極めた人」と、捉えるかもしれません。
今まで僕自身がいろんな機会を経て、チャレンジしてきた一番のバックボーンは、実はスキル以上に「25歳までの人生のいろいろな寄り道」なんです。小学校から大学まで出て、ニートの時間まで、山あり谷ありだったんですが、いわゆるスキルに近い認知能力やIQといった、詰め込みの正解あるところではほぼ勉強しなかったです。
それよりは、非認知能力とかEQ。英語で言うと「non-cognitive ability」。数値では測定できないので、どれだけ高いかと言われるとなかなか説明しがたいんですが、意欲、協調性、粘り強さ、忍耐力、計画性、自制心、創造性、コミュニケーション能力を培ってきました。
私は神奈川県のド田舎で育ったんですが、そんなダイバーシティ&インクルージョンの中で、「いろんな人と喧嘩したあとに、仲良くもなれる」と思って。ベーシックで非認知能力やEQがあることがプロとして大前提で、レバレッジが効く力なんじゃないかなと最近思っていて。特に、リーダーシップとアントレプレナーシップになる。
25歳まで回り道したんだけど、44歳になって振り返ってみると、そこが運良くついていたのかなぁと思います。
山口:僕は社会に出るのが遅かったんですよ。守・破・離という言葉もありますが、25歳まで遅れた分だけ急いでスキルをつけなきゃということで、20代の中盤から後半にかけて、とあるITスタートアップに入れていただきました。
エンジニアから始めて、インターネットサービスをゼロから作るとはどういうことか、3〜4年必死に学びました。それが、僕のスペシャリティの1つです。
2つ目は「インターネットサービスを作る」ことじゃなくて、リクルートに入って、インターネットサービスの事業戦略や事業計画など、上流の仕事を3〜4年やっていました。
そのあとスタディサプリを立ち上げる機会とともに、組織を作っていく、マネジメントしていく力を、この直近15年くらいでつけられた。従業員数5人の組織から、今はリタリコという会社で3,500人を率いるところまで、けっこういろんな組織の規模をうまくマネージする経験を積めたのかな。
直近の15年は供給業界で働いていたので、教育というドメインに対する専門知識もつけた。だから社会に出るのは25歳まで遅れちゃったんだけど、44歳の今はベースの非認知能力がけっこうついているのかなと思います。そして、インターネットのサービスをつくる力。事業を考える力。組織を作る力、そして最後に教育業界の専門知識。
裏番組でやっている藤原和博さんの、あの世界ナンバーワンには僕はなれないんだけど、その部門の100分の1にはなれているのかなと思います。100分の1掛ける100分の1掛ける100分の1で、ナンバーワンではないオンリーワンのプロになり始めたかもなと、最近思っています。これが、僕にとってのプロですね。
君島:ありがとうございます。山口さんの「プロ」って、いろんなタグの掛け算でできているわけですね。さっきは「世界一の」というお話だったんですが、掛け算によって世界一になる。
おそらく今、MBAに来てくださっているみなさんも、掛け算のタグの1個を増やしにいらっしゃっているんじゃないかなと思います。すごく参考になるお話ありがとうございます。
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