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「心をつかむ超言葉術」刊行のコピーライター 阿部広太郎が教える相手の心が動く「伝わる企画書」の贈り方(全1記事)

提案に“色よい返事”がないのは、何かが足りないから? 阿部広太郎氏が教える、伝わる企画書の「3つの要件」

大人の学びに役立つ知識が無料で学べる生放送コミュニティ「Schoo(スクー)」。働き方やテクノロジー、ITスキルといった、最先端のノウハウが身につくオンライン授業を数多く配信しています。そんな「Schoo」で放送された授業に、コピーライターの阿部広太郎氏が登壇。阿部氏が作成した企画書の事例を出しながら、作成の流れや相手に伝えるために必要な姿勢などをレクチャーしています。 ※このログはSchooの記事を転載したものに、ログミー編集部でタイトルなどを追加して作成しています。 ※動画コンテンツはこちら(※動画の閲覧には会員登録が必要です)

企画とは「幸福に向かう意志」のこと

徳田葵氏(以下、徳田):阿部先生、相手の心が動く「伝わる企画書」はどう作るのでしょうか?

阿部広太郎氏(以下、阿部):はい。その前に、「そもそも企画書ってなんだろう?」。ここから考えたいと思います。「企画書」とは、漢字を見ての通り、「企画」+「書」ですよね。ここで言う企画とは、「幸福に向かう意志」であると僕は定義しています。

今自分はここにいるけれども、もっとこうなったらハッピーだよね、楽しくなるよね、ウキウキするよね、という幸福に向かうための振る舞いや言葉、プロジェクトを作る、「幸福に向かう意志」こそが企画だと思います。

簡単な図式にすると、A→Bですね。今いるA地点を把握して、ここからB地点に行くのが企画で、企画書というのは「わたしはこのような矢印を考えています。ぜひあなたもどうですか?」を共有する書類だと考えています。

自分一人で完結するのなら企画書なんて書く必要はなくて、自分の頭の中にあることを実行すれば良いだけですよね。そうではなく、企画書というのは相手と共有して仲間を作って、わたしとあなた、みんなでやろうという時に必要となる書類です。そのために思考回路を共有するのが企画書で大事なことだと思っています。

徳田:なるほど、自分の頭の中にある考えに共感してもらい、協力を得ることが企画書の目的なんですね。ここを意識しないとついつい自分よがりな企画書になってしまいますよね。

伝わる企画書の3つ要件

阿部:次に企画書の流れをご紹介しますね。いくつもの企画書を作る中で、企画書の基本形をこのように整理しました。

最初にまず挨拶。その後に、「自分はこのような経験をしました」、「こんなことを思いました」という経験を伝えます。次に着眼点。「自分の目のつけどころはここです」という企画の本質の部分があり、それをもとに「だから自分はこんなことができると思う」という部分が企画になります。最後に「これを自分と一緒にやりませんか」ということを伝える。これが僕の考える基本の流れです。

徳田:相手に伝えるためには一貫とした流れが大切ということですね。

阿部:それでは「伝わる企画書とは何か?」を考えていきます。そのために以下の3つの要件を満たしていく必要があります。

①あなたは本気?
②相手は喜ぶ?
③ほんとにできる?

1つ目は、自分が本気ではない言葉は、相手にバレます。自分自身が目の前のことにどれだけ本気で、思いを持って取り組んでいるか。本気の文章が無視されることはひとまずないと思います。2つ目は、相手が喜ぶものになっているかどうか。たとえ熱量が高くても、相手の負担になったら本末転倒ですよね。相手が欲していることが含まれていれば企画書はひとり歩きしていきます。

3つ目が、「ほんとにできる?」ということ。できもしない夢物語を書いてしまっては信頼を失います。最後まで責任を持って遂行できることを書きましょう。この3つが伝わる企画書を作る上で大切なポイントです。

ニーズをつかむために、相手のことを調べ・考え・想像する

阿部:相手に伝えるために大切だと思う「姿勢」についてお話しします。僕は自分目線と相手目線の輪っかが重なるところに「伝わる」があると思っています。

こちらの円を見てもらえたらと思うのですが、自分目線で「伝える」はスタート地点です。相手のことを調べて、調べて、想像した上で、「伝わる」を目指していく。よく企画には愛と熱が大切だという話があります。自分のパッションやあふれる熱を持ちつつ、相手をきちんと調べたり考えたり想像する愛があってこそ伝わる企画になっていくんですね。

このことを念頭に置きながら、具体例を紹介します。企画書には手紙のような形式で文章を書いていくものと、まるで紙芝居のようにスライドを構成するものがあります。今回紹介するのは「紙芝居形式」の企画書です。

企画書作成の経緯をご説明します。今から4年前の企画書ですね。僕は東京の恵比寿に住んでいまして、「恵比寿新聞」というWebメディアの編集長である高橋ケンジさんから連絡を受けたことがきっかけでした。恵比寿にこども食堂をつくりたいと思っていて、その名前を相談したいということで、僕が考え、企画書を作りました。

ご覧いただいているのはWordで作った企画書です。自分の好きなフォントを使うようにしています。そして、表紙から心をつかみにいくつもりで「ぼくらの恵比寿に”こども食堂を”」というタイトルにしました。

「最初に感じたことがあります」という一文から始まります。僕は疑問を抱きました。

どうしてネーミングをそのまま「恵比寿新聞 こども食堂」にせずに、新たに考えようとしているのだろう?と。

相手の真意に対する「自分の思い」をまとめる

阿部:僕はいつも一緒にお仕事をされる相手の方のSNS、Facebookなどを見てどういう投稿をされているのかをチェックするようにしています。編集長の高橋さん、そして、つくりたい!と考えた末岡さんのSNSの投稿を見てわかったことがありました。それは、こども食堂の新しいイメージをここ恵比寿から作ろうとされている、ということです。

こども食堂には子どもたちの孤食をなくすために、安価で栄養たっぷりのごはんを食べられるように、という願いから大田区で始まったという経緯があります。ただそれが話題になっていったからこそ、貧困や孤食のイメージも紐付いてしまった部分もあります。

恵比寿から新しく作りたいイメージは、「21世紀型のご近所付き合い」。「そもそも子どもも大人も集まって食卓を囲むと楽しいし、人と人とがつながれるよね」と。

その部分に光を当てたいということが分かりました。こども食堂はますます各地に広がっています。それなら、恵比寿から世界がうらやむような新しいこども食堂の在り方を伝えていこうよと。

「こども」を中心に人が集まって笑顔になっていく。こども食堂って街の救世主とも言えるんじゃないかな、と思いました。その時に感じた自分の思いをまずコピー的に整えました。

「この街に赤の他人なんていない。ぼくらは同じ空気を吸って、ぼくらは同じ街で生きている。もう縁があるのだから、きっかけさえあればつながれる。こんなことあったよって、たくさん地元の話をしながら。食卓を囲んでわいわい話せば、もう仲間だ。おなかを満たすのではなく、こころを満たすための食堂を。世界の孤独をなくすのは人の笑顔なんだと思う。ここ恵比寿から、新しいこども食堂を」。

考えをまとめて、こういうことですよねと見てもらいました。その上でネーミングの候補を4つ作り、見てもらいました。

1つ目が「えびすがお食堂」という、えびす様のように、にこにこの笑顔が集まる食堂。2つ目が「こころ食堂」という、お腹だけでなく、みんなのこころを満たす食堂。3つ目が「むすぶ食堂」という、おにぎりを結ぶとも言いますが人と人を結ぶ食堂。最後に「じもと食堂」。「おかえりなさい。恵比寿はあなたの地元です。」というコピーを添えて提案をしました。

その結果、「これだ!」と、「じもと食堂」という名前に決まりました。企画書を書いた後に案が決まり、恵比寿じもと食堂の思いをステートメント文章にして、アートディレクターの高橋理さんと一緒に仕上げたものがこちらのビジュアルです。

企画書作成の4つのポイント

阿部:最後に事例から企画書を作る上でのポイントをご紹介します。まず1つ目は「疑問は調べる」ということです。なぜそれをやろうと思ったのか。今回の事例で言うと「どうしてわざわざ名前を新たに考えるんだろう」という疑問が沸き起こったら、それを調べるのが重要です。

2つ目に「相手を知ろう」ということ。相手が何を考えているのか? 今であればいろんな人がSNSやnoteなどで自分の思いを発信しているので、それらを全部読みたいですね。3つ目に、「目のつけどころ」を持つということ。相手のことをよく知るということが本当に大事で。その中で、「お、この部分こそが相手が伝えたいことなのかな」という目のつけどころを自分の中に持つということが大切です。

4つ目が「幹から枝葉を導く」ということ。もちろんパッと瞬間的にコピーとかネーミングを思いついたとしても構わないんですけど、相手にポンポンポンと見せても、「どうしてそれが良いと思うのか」の言葉を自分の中に持っておかないと「これだから良いんです」という説明ができないんですね。

こう考えたというプロセスが大きな幹となって、コピー案とかネーミング案が枝葉になります。もし枝葉であるネーミングがちょっと違ったとしても、幹に戻って議論できる。思考の幹を相手と共有しましょうということです。

徳田:ありがとうございます。まさに疑問から始まった企画書でしたね。受講生から「先生の言葉が温かくて泣けてくる」というコメントをいただいています。

阿部:うれしいです。ありがとうございます!

徳田:みなさんも企画書を作る際に、阿部先生の「伝わる企画書」のポイントを参考にしてみてください!

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