2024.10.10
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川下和彦氏 インタビュー(全1記事)
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――川下さんは、2018年に『ざんねんな努力』、2021年に『がんばらない戦略』という著書を上梓されています。2018年と2021年の間には、コロナという世界を揺るがす大きな出来事がありました。コロナ禍を経て、世の中の「当たり前」や価値観にどのような変化が起きたと思われますか?
川下和彦氏(以下、川下):いろいろなことが変わったと思いますが、個人的にはめちゃくちゃ過ごしやすくなったなと思っています。
「がんばろう教」じゃないんですが、子どもの頃からみんな「がんばれ、がんばれ」と言われてきて、がんばらなきゃいけないし、がんばることが正しいと思って生きてきていたと思うんです。でも、そもそもその“宗教”から抜け出すことができるんだよ、抜け出してみませんか? という投げかけで、2018年に本を書いていたつもりです。
でもやっぱり、世の中に染み付いた固定観念ってなかなか変えられないなと思っていて。それはそれで(『ざんねんな努力』は)一定数売れていたと思いますが、アスコムさんに「コロナを経て、再度新書を出しましょう」とおっしゃっていただいて。
今は固定観念はだいぶ剥がれやすくなったというか、「がんばらなきゃいけない」「がんばることが正しい」ということに対して、(コロナ禍を経て)「今までやってたことは正しかったんだっけ?」と思う人が増えたような気がしますよね。
川下:毎日がんばって朝早く起きて、満員電車で押し潰されるようにして通勤する。通勤が不可欠な職場はありますが、本当に全員がそうする必要があったんだっけ? とか。例えば都会で働いている人だったら、片道で1時間〜1時間半、往復だと1日に2時間とか3時間を移動に使っているわけですよね。
でも、必ずしも職場でなければできない仕事をしている人は、「移動時間をもっと有効に使えたんじゃないだろうか?」という気づきがあったと思います。コロナをまたいで、「猛烈にがんばる」「がんばるって正義だよね」と思ってたことが、果たしてそうなのかな? という疑問を持てる時代になったのかなと思いました。
私は今、新規事業の開発に携わっていますが、いろいろな方にインタビューをしていても、比較的若い時から時間の豊かさや自分の健康状況に気をつけている人が増えてるなと思っています。守りに入ってるというよりも、「いいコンディションを作っていたい」というか。自分の体もいい状態でいたいし、その体を持った上でいい時間を過ごしたいなという人が、すごく増えてる気がしますね。
とにかく、この「がんばろう教」のためにがんばったり、褒められなきゃ……というタガが外れたのかなとは思います。
――ある意味、コロナ禍はいい転換期だったのかもしれないですね。
川下:そう思いますね。多大なるマイナスはあったとは思うんですが、一方でいいこともたくさんあったんじゃないかなと思っています。
――2022年もコロナ禍が続いてはいますが、気持ちを切り替えるためにも、1月には新たな目標を立てた人も多いと思います。これもある意味、「がんばろう教」に囚われているのかもしれないですが、挫折せずに目標をやり遂げるポイントはありますか?
川下:こういう言い方がいいのかわからないんですが、新年の抱負は抱いた時点で負けなんじゃないかと思うんですよね。要するに、抱負って大きなものなんですよ。大きなことを掲げた瞬間に、そこまでの道のりの遠さを感じちゃったりして、「自分にできるのかな?」「もう無理かも」と思っちゃうんです。
実現できない抱負を抱くぐらいなら、目先の目標をものすごく粉砕して、小さな小さな行動計画を立てて、まずは1個やってみる。実行できたら(その日のカレンダーに)シールを貼るでもいいので、最初はすごく小さなことを繰り返してやればいいと思うんですよね。
夢が「岩」くらいの大きさだとすると、その岩を動かさなきゃいけないと思っちゃうからだめなんです。石ころぐらいだったらできるんじゃないか、石ころがだめだったらもっと小さな「砂」に分解するくらいの考え方で日々の目標に向き合うのがよいです。
最初は「こんなちっちゃなことをやってて意味あるんだろうか?」と思うぐらいのことでいい気がしています。それを続けていると、そのうち「あれ、毎日続いてるじゃん」と、やれている自分に気づくので、その自己効力感はすごく大きいです。
続けているうちに「こんなの楽勝だな」となってきたら、もうちょっと大きなことをやっていけばいい。とにかく、抱負を抱いてかなり先のことを考えてしまうから、みんな挫折するんです。足元のものすごく小さなことをやってみると、そのうちできている自分を「すごい」と思い始めます。
(習慣化することは)滑車でいうところの加速がついているような状態です。最初に滑車を押す時には多少の「意思エネルギー」がいるんですが、滑車は走り出したら惰性で進むじゃないですか。自信がついてくるとやらないほうが気持ち悪くなるので、それができたら続くと思います。
川下:ちなみにオリンピック選手って、「親がオリンピック選手だったから目指してた」という人もいるんですが、みんなが最初からオリンピックを目指しているわけではないそうです。目の前のことをやってたら、「あれ、こんなできるようになったじゃん。じゃあ国体を目指そうかな」「オリンピックを目指そうかな」という感じで、どんどんオリンピアンに近づいていくと聞いたことがあります。
高い目標を立てているんじゃなくて、目先のめちゃくちゃ小さなことをやってたら、できている自分に気づいて、いつかは自信を持ってもっと高いところに行っているんだそうです。よくイチローさんなんかもそうだと言われますよね。だから、「あえて抱負を持つな、抱くな」というのが僕のメッセージです。
ーーそもそも「抱負を持つな」ということですね(笑)。先ほども、今までの固定観念をリセットするのにはいいタイミングだというお話がありました。他にも何か、これからの時代において「手放したほうがいい意識」はありますか?
川下:「がんばらないと結果が出ない」というのは思い込みだと思うので、そこは手放してもいいんじゃないのかなと思いますね。「結果がすべてだ」と言うと、ドライで結果主義みたいに思われがちなんですが、そういうことではなくて。
「がんばる」って、けっこう意思エネルギーを使っちゃうんですよね。学術的にも証明されてるのですが、意思エネルギーは有限で、ゲームで言うマジックポイント(MP)のように、使えば減っていくものなんです。ですので、たくさん使えばすぐに底を尽いてしまいます。
でも、実は意思エネルギーを使わないでうまく体を動かす方法があるんです。「意思エネルギーを使っちゃって、結局何もできなかった……」ということではなくて、まだみんなが知らない、人の体の動かし方を覚えて結果に結びつけるコツをつかむと、すごくハッピーになるよと言いたいです。
川下:意思エネルギーって、何度も同じ行動を繰り返して無意識にそれができるようになると、どんどん使わなくて済むようになってくるんですよ。人間の体は不思議なものです。
昔、理科で「等速直線運動」を習ったのを覚えてますか? 滑車を動かそうとして、最初は押すじゃないですか。これは物理エネルギーが必要なわけですよね。摩擦がなければそのまま滑車が進み続けるのと一緒で、初めてのことをやろうとすると意思エネルギーを使います。
滑車の上にものすごく重い石が乗っていたら、押すのにすごくエネルギーがいるじゃないですか。そうしたら「あぁ、もう動かない」とあきらめて、すぐに「もうやめよう」と思っちゃいますよね。
だけど、小さな石ころが乗ってるだけだったら簡単に押せますよね。それでも最初は押す力がいるんですが、何回か押したらそこから先はずっとまっすぐ勝手に進み始めます。それと同じで、人間の体も「自動操縦モード」に切り替わるタイミングがあって、同じことを繰り返してると体がその感覚を覚えるんですよね。
なので、意思エネルギーを使わなくても体が勝手に動くようになる。意思エネルギーは限られているということと、人間が同じ行動を繰り返すうちにオートモードになることを知っていることが大事だと思います。それを知っていると習慣を身につけるのが早いです。でも、みんな意外と知らないし、信じてくれないんですよね。
多くの人が、意思エネルギーはいくらでも湧いてくるものだと思っているし、毎日同じことをやるにもすごくエネルギーが要ると思っている。だけど、考えてみてください。みなさんは「今日は右から歯を磨くぞ」と思って歯磨きをしてないですよね。それは、すでにオートモードで歯を磨いているんですよ。
人はすべての行動を自分で判断していると思いがちですが、それは幻想です。1日の行動で「意識して判断しているもの」は意外と少なくて、かなりの時間、人間の体は勝手に動いてるんですよ。
――習慣化によって行動をオートモードにできれば、意思エネルギーを節約して、もっと有益に時間を使えるようになりますね。
川下:まさに。僕も朝起きて、ゴミを出して洗濯をしてるんですが、もうオートモードですから。毎日やることを決めて無意識でやっているので、疲れないんです。
――とはいえ、自分で決めた目標や課題の着手をつい先送りにしてしまう人は多いと思います。ゴミ出しや洗濯をやらなきゃと思っていても、朝になるとなかなか起きられないなど……。そういった課題の先送り癖を直す方法はありますか?
川下:たぶん、課題をかなり大きく捉えているからだと思います。「いつかやろう。でも大変だよな……」って、いきなり気疲れしちゃうというか。大変なものに着手するのはエネルギーがいるので、大変じゃないレベルまで噛み砕く。「まずはこれだけやろう」というものを、ものすごく小さく切り刻む。
アフリカには「ゾウを食べるのなら一口ずつ」ということわざがあるそうですが、大きなゾウを思い浮かべるとすぐに無理だって思ってしまいますが、「これ、何の肉だっけ?」とわからないくらい小さくしてから食べればいいんだろうなと思います。それで、とりあえずやってみる。
やってみたら案外、「なんでこんなに重く捉えてたんだっけ?」みたいなことだったりもするので、(目標は)ものすごく小さく切り刻んだ上で着手するのがいいのかなと思います。
――新年の抱負を抱いて挫折してしまうのも、目標を大きく捉えすぎているが故の失敗かもしれませんね。
川下:そう思います。別の例えをするなら、ゲームのボスキャラがあまりに強すぎると「今は無理だけど、いつか倒そう」っと思っているうちに投げ出しちゃったりしますよね。でも、ボスキャラもバラバラにしてちっちゃな敵だと思えば、1匹ずつ倒していくのは別に大したことないなと思います。
それを毎日やっていると、そのうち「おぉ、こんなに倒せたんだ」ってなると思います。いきなりボスだけを見たら「絶対に無理」とか、ゲーム自体をやめようと思ってしまうものです。ですから、習慣化のコツはできるだけ小さく分解してやり始めることです。
川下:ダイエットがいい例なんですが、ダイエットのゴールを聞くとほぼみなさんが「10キロ痩せる」とか「20キロ痩せる」とおっしゃいます。そうすると習慣化ではなく、無理やり断食したりして、減量体重というゴールを達成した瞬間にリバウンドしちゃうんですよね。
でも、本当のゴールは体重を何キロ減らすかではなく、太りにくい体を作ること。要するに、行動を続ける習慣を定着させることなんです。筋トレするなり、お昼ご飯のカロリーを減らすなり、決めた習慣を続けられる状態を作ること。それをその後もずっとやり続けられるようになることが、本当のダイエットだと思うんですよ。
だから、「習慣を定着させること」がゴールですよね。体重をゴールにした瞬間に、いったん痩せたら(あとは体重が)戻っちゃいますし。習慣が作れていないことが多い気がします。
――例えばダイエットの場合、「小さな努力」はどのくらいの大きさの努力を指すんでしょうか?
川下:人によって負荷は違いますが、疲れてる時や忙しい時でも毎日続けられるぐらいの負荷がいいと思います。腕立て伏せ20回が平気な人はそれをやればいいと思いますし、「20回だと毎日やるのはしんどいなぁ」と思う人であれば、まずは5回とか3回でもいいと思います。
カロリーの制限を考えた時に、がんばっちゃう人は何をしているかというと、いきなり「(食事は)朝食だけ」「リンゴしか食べない」ということをしていたりします。これって、けっこうな我慢をしなきゃいけないですよね。
我慢には意思エネルギーがいるわけで、極端に辛抱したり、「これからリンゴじゃないものは食べないようにしよう」ということにも、我慢しようとする意思エネルギーが働いているわけです。そうすると3日、なんなら1日でも「もう無理っす」となりますよね。
例えば、朝と夜はお付き合いもあるから最初は普通にご飯を食べます。お昼を抜くのもまだヘビーだなと思った時は、炭水化物だけは減らそうとか。これぐらいのことでも、たぶん効果は出てくると思うんですよね。最初は我慢しなくていいレベル、忙しくても疲れていてもできるレベルの努力をする。
川下:執筆もそうですが、「毎日ブログを書く」と言っても、いきなり2,000字とか4,000字から始めても、続けられない時がありますよね。「今日は酔っ払っちゃったから書けない」とか。でも、1,000字だったら「出掛ける前にさっと書けばいいや」って。目安は、いいコンディションじゃない時でも毎日続けられるぐらいの負荷を設定するのがいいと思います。
そのためには、なるべく同じことを同じ時間に繰り返す。これを「リズム化」と呼んでいます。筋トレを毎日する人に「夜にやればいいですか? 朝にやればいいですか?」と聞かれるんですが、私は朝を推奨しています。なぜなら(睡眠によって)意思エネルギーが回復して満タンの時だから。
例えば、朝6時に起きて6時15分まで腕立て伏せをすると決めて毎日やると、恐ろしいぐらい何も考えずに体がそうしたくなるんですよね。そうなれば勝ちじゃないかなと思っています。
やると決めたことを「今日は日中にできなかったから、家に帰って夜にやろう」と思うと、仕事やプライベートでですでにたくさん意思決定をしていて(夜には)意思エネルギーが枯渇してるので、「今日はまぁいっか」ってなっちゃうんですよね。なので、何かを習慣にしたい人はできるだけ朝にやるのがすごく大事だなと思います。
あと、できるならば、最初のうちは同じことを同じ時間に繰り返してやると、早い段階で自動操縦になりますよ。
――なるほど。ここまで習慣の作り方をうかがってきたんですが、逆に「やめたい習慣」に悩んでいる人も多いのかなと思います。「スマホをだらだら見て1日が終わってた……」といった、やめたい習慣を手放す方法はありますか?
川下:けっこう私もやるんですよね。例えば、正月に「テレビに飽きたなあ」とスマホをずーっと見てたら、恐ろしいほど時間を使ってたことがあって。なので最近は、スマホを見る時間を意識的に減らそうと思っています。
私の部屋は2階にあるんですが、朝起きて、まずはスマホを持たないで1階に行って洗濯したりゴミを出したり、ご飯を食べる時は絶対にスマホを見ないようにしてるんですね。ここでも、小さく意思エネルギーを使っているんですよ。ただ、ずっと「スマホを持たない」というすごく我慢しなきゃいけないレベルじゃなくて、近くにあるとどんどん誘惑をしてくるものを遠ざける工夫をしています。
身の回りに誘惑はいっぱいあると思うんですが、スマホはいい例で、まずは近くに置かないことがけっこう大事なんですよ。なぜなら、近くにあると誘惑を拒むために意思エネルギーを使ってしまうので、なるべくそうならないような環境作りをする。
あるアーティストが言っていたのですが、受験勉強をしている時にはベッドを部屋から外に出してしまったそうです。ベットが側にあるとつい睡魔に負けてしまうからで、今のスマホの話と同じですよね。
「タバコをやめたい」という時も、タバコが近くにない状態にする。もっと言うと「お酒をやめたい」「減らしたい」という時も同じですよね。飲む人がいっぱいいる環境に行かないようにするとか(笑)。
以前は職場で誘われると、飲み会を断るのも難しかったかったと思いますが、今は在宅ワークも増えて、夕方から夜にかけて会社にいる時よりもお誘いを断りやすくなっているようにも思います。そういうことの繰り返しで(習慣をやめることは)できる気がしました。
――最初は「食事中は近くにスマホを置かない」程度にとどめて、あまり極端なことから始めないほうがいいんですね。
川下:そうだと思います。だんだん誘惑を遠ざけていけばいいと思うんですよ。そうじゃないと、中毒症状みたいになると思うので。まずは食事の時間だけ部屋に持ち込まない、そのうち午前中は触らない、でもいいと思います。「意外とメールが来るんで……」と言うけど、本当に緊急対応しなければならないことなんて、そうそうないとも思いますしね。
スマホは人の時間を奪い合うようにできています。「どんどん俺のために時間を使え」と、アプリの向こう側から世界の叡智がどんどん意思エネルギーを吸収しようとしてやってきてるんです。それぐらい強敵ですよね。だからスマホとの付き合い方を考えるのは、習慣達成につながるくらいの影響力があるかもしれないですね。
――行動は小さく、マイペースに努力を継続することが大事だと思うんですが、「がんばらないこと」と「怠けること」を履き違えないためのポイントはありますか?
川下:がんばらないで結果を出すことは、意思エネルギーを使わずに上手に行動を積み重ねることだと思うんですよね。でも、怠けようと思ってないけど怠けちゃう人はいると思っています。意思エネルギーの使い方が下手だから、やらなきゃいけないことを想像すればするほど、「それは大変だな」と思って結果的に怠けちゃうというか。真面目な人ほど陥りやすい罠かもしれないですね。
勉強ができない子や嫌いな子って「勉強が嫌い」というよりは、実は「やろう」と思う気持ちが重すぎて、意志エネルギーを使い果たした結果として、怠けちゃってるような気がするんですよね。
川下:別の言い方をすると、怠けている人は本当にやろうとしていることに意思エネルギーを注がずに終わっちゃってるのかもしれない。
「どんなゲームをやろうかな」「どんな動画を見ようかな」など、選択するにも意思エネルギーは使うんです。だから「怠ける」というのは、やらなければならないこと以外の選択に、限りある意思エネルギーを使ってしまっているのかもしれないですね。
「がんばらない」というのは、自分を変えていきたい方向に少しの意思エネルギーをちゃんと使って、行動の積み重ねにつなげていくことではないかと思います。意思エネルギーにも個人差はあると思うんですが、「俺にはできる」「意志が強いんだ」と思っている人ほど要注意だなと思います。
体力の温存と一緒で、そもそもエネルギーはあんまりないという自覚を持つことがすごく大事です。多くの人は、がんばると無尽蔵にエネルギーが出る気がしてると思うんですが、それは間違っていると気づくことが大事かなと思います。
日本は平均教育というか、「あれもこれもバランスよくがんばらなきゃ」という感じだと思います。ただ、(それよりも)突出したものを作ればいいと思うんですよ。例えば受験科目が5科目あったら、いきなりまんべんなく5個やるよりは、まずは毎日1個だけをやることを勧めますね。
意思エネルギーを1教科だけに使い続けて結果が出てくると、今度はやり方がわかって調子に乗ってくるので他の科目をやる。日本って、1つだけの特徴が尖ってると変わり者みたいになっちゃうんですが、特技をぶっちぎりで伸ばしていくほうが実は自信もついてくるし、すごくおすすめですよ。
――「またチャレンジに失敗しちゃった」と挫折したり、「どうせできない」という固定観念にとらわれている人が、意識を変えていくためのアドバイスを最後にいただいてもよろしいでしょうか。
川下:本の中では「ガンバール国」と「ガンバラン王国」という物語になってるんですが、自分が住んでいるのとは違う、“他の国”に住んでる人がいるんだということを知ってほしいですかね。ガンバール国の常識が正しいとは限らなくて、他の国を覗いてみたら、がんばってないのに結果を出してる人がいますよと。むしろ結果を出してる人って、実はがんばってない人なんですよね。
勉強ができる人とか、涼しい顔をしてるのに結果を出している人は「地頭がいい」と勝手に思い込んでいたりしますが、決してそんなことないですよ。表面化していないからわかりにくいのですが、実はガンバラン王国の人は現実社会にもたくさんいらっしゃいます。そういう人たちは結果を出してるから、そんな人たちを見つけてつぶさに観察してみるのもいいかもしれません。
「別の“国”がある」という認識で成功している人を見てみたら、実は習慣化の達人だったりするものです。「これしか方法がないはずだ」という自分の国のルールで考えるんじゃなくて、別の国に住んでいる人がなぜこんなにうまくいってるのかを覗いてみる。そうしたら、いい答えが見つかるかもしれません。
――「がんばらない」という努力の形を知ることによって、ムダな疲れやストレスを減らせる気もしますね。がんばらずに行動を習慣化するためのヒントをたくさん得られたような気がします。川下さん、本日はありがとうございました。
川下:こちらこそ、ありがとうございました。
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