2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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井上:他の質問にいってもいいですか? 「仕事をする上でこれだけは譲れないものはなんですか?」。
マッコイ:そんな難しい質問をしますか?(笑)。
仕事をする上で譲れないのは、「総合演出をする」ということです。例えばディレクターさんはいっぱいいますけど、若い時はロケディレクターとかコーナーディレクターとか、番組の中のワンコーナーを担当するところからスタートするわけです。でも僕はもうこの歳になってきたから、そこはできないわけなんですよ。
総合演出にこだわるというのは、「全部を演出させてくれるんだったらやる」ということです。
井上:それぞれに指示を出して……。
マッコイ:そうです。例えば「Aさん、こういうの撮ってきて」、「Bさん、こういうの撮ってきて」、「Cさん、こういうの撮ってきて」と言って3人のディレクターさんに撮らせて、番組全体をトータルで演出できるというポジションじゃないとできないですね。
井上:もし私がディレクターのAさんだった時に、「こういう絵を撮ってきてください」と言われたらもちろんそれは撮るけど、自分なりの「こういうのもいいかな」という味を出したいなと思うのではないかなと思うんです。それはオッケーなんですか?
マッコイ:オッケーですよ。それが信頼関係なんですよ。
マッコイ:総合演出は「群れない、ぶれない、逃げない」という3要素があると思っていて、「群れない」というのは、好かれようとする総合演出って絶対失敗するんです。総合演出は「怖い、近寄りがたい、しゃべりづらい」でいいんですよ。
僕が番組をやったら、ここにいるディレクターは僕に近寄りがたくて、しゃべりかけもできない。それくらい怖くていいんです。そうなると総合演出は群れなくなります。孤高の一匹狼じゃないとだめなんです。
それからぶれちゃだめなんですよ。例えば「明日は野球をやるぞ」と言ったら「野球なんて今流行っていないし、数字なんか取れるのかな」と他のスタッフは絶対に思うわけです。
でも総合演出は「野球だから」と言い通してぶれちゃいけないんです。企画を野球でやると言ったら、その自分を信じて野球企画を押さなきゃいけない。ぶれない気持ちもないとだめなんです。
「逃げない」というのは、数字が悪いとか演者さんと揉めるとか、番組を作っているとそういったことも絶対出てきますから、その時に逃げちゃだめなんですよね。
「いや、僕が行ってくるからいい」と盾にならないとだめなんです。それも含めて全部トータルで見せてあげないと、下のディレクターたちはついてこないんです。だから「あの人は言ったことをやる」という男気もそうだし、愛情とか、その人の背中を見てディレクターたちはついてくるんです。
井上:かっこいいですね。
マッコイ:いやいや、かっこいいことではないです。当たり前のことを言っているんです。
マッコイ:総合演出をできていない人が多いのかなぁって。逃げるし、群れるし、すぐ作家さんに「ちょっとご飯行きましょう」とか。すぐタレントさんのケツにちょこちょこと行って「なんかおもしろいことをやりましょうよ」と言うんです。おもしろいことを何も考えていないんです。考えているやつは群れないですから。
井上:「自分がこうだ」、「これがいいんだ」という(自信)がめちゃくちゃあるからできることですよね。
マッコイ:そうです。「これで勝負したい」と言って引かないですからね。いくら大御所が来たって、「これがおもしろいと思っているのでやらせてください」という力を持っています。だから譲れないのはその(総合演出という)ポジションですよね。1からロケディレクターをやってくれと言われたら、それができなくなりますね。
井上:そういう立場にいて、責任もあるじゃないですか。もちろん数字もあるし評価が付いてくるものだと思うんですけど、プレッシャーはないんですか?
マッコイ:あります。ゴールデン番組を15年ぐらい総合演出でやってきましたけど、裏番組にドラマとか、とんでもない化け物がいっぱいきていたので。本当に野球の監督になった気分で「今週はどうやって戦おう」とか「どうやって数字を上げるんだろう」とか、常にプレッシャーとの戦いなんですよね。
さっき言った「群れない」というのは、群れたら弱くなるので、だから常に1人でいる。数字が悪い時でも、自分で考えて自分で結果を出すしかないので。もちろんAPさんとか作家さんとかと、「こういう人をキャスティングしてくれ」とか「こういう企画を考えているんだけど、どうかな」と話すのは「群れ」には入らないですよ。
決断する時とか番組のことを考える時に、必ず自分のやりたいことを貫く。決断するのは怖いですけど、番組が終わっちゃうかもしれないので。でも、ゴールデン番組を1個終わらせたぐらいの総合演出のほうが強いんじゃないかなと僕は思いますけどね。
井上:その強さを維持するのって難しいですよね。人間って認められたいという欲求が絶対あるし、ちょっと弱音を吐きたいなとか、そういう部分があると私は思うんです。そのコントロールというか、自分の心の整理はどうされているんですか? それともまったく思わないんですか?
マッコイ:僕は業界人と一切つるまなかったので、今51歳ですけど、20代前半の頃からTVのディレクターとか局員さんとか作家さんとかと、プライベートでは一切遊びませんでした。友だちは洋服屋さんとかバイク屋さんとか、芸人さんとか。そういった趣味の仲間と遊んでいたので。
井上:そこでオンオフというか、心のモヤモヤをスッキリしていたんですね。
マッコイ:そうですね。切り替えていたので、逆にそれがよかったと思いますね。プライベートの友だちのほうが、新鮮でリアルな情報がバーッとくれるので、それを企画にドンと持っていったりもできていました。普通の業界人とつるんでいたら、そういう発想にはならなかったんです。オンオフの世界を変えていたのはよかったのかもしれません。TVの世界にいるからTVの人と遊ぶということは一切しなかったです。
井上:私もいろんな企業さんにご連絡をいただいて、ありがたいなと思うんですけど、やっぱり見てくれる子は普通の女の子だったりとか男性の方だったりするんですよね。今ってコメントもそうだし、DMとかも、すぐダイレクトに1視聴者からのリプライがわかるじゃないですか、そこをけっこう見てはいます。
ただ、そこに全部あわせちゃうとさっき言ったようにぶれちゃって、それでできた動画を見ると「なにこれ」となっちゃうので。そこのコントロールを、いつも自分に戻しながらやっています。
マッコイ:本当に、ぶれたら終わりなんですよ。僕はありがたいことに、若い時にいろんな人からヒントをいただいて。僕にとって石橋貴明さんは恩人の1人なんですけども、やっぱり若いディレクターは番組でいろんなことをしようとするんです。僕もそういう時期があったんです。保険をかけていろんなことを積み上げたという。
だけど僕が30代の時に石橋さんから衝撃的な言葉をもらったんです。「お前の演出は幕の内弁当なんだ」と。「幕の内弁当はいくら美味しくても記憶に残らないだろう。おいしいラーメンとかおいしいカレーのほうが『あそこのカレーライスがうまいんだよ』と記憶に残るだろう」と。
「企画もそうだよ。詰め込みすぎると、一つひとつのおいしさを潰してしまって記憶に残らなくなるから『今日はラーメンを食べよう』、『今日はカレーを食べよう』ぐらいでいいんだよ」「シンプルイズベストで、シンプルに企画を考えてみろ」と。ここから僕の演出人生はガラッと変わて、そうしたらヒットを生めるようになったんですよね。
『男気ジャンケン』も常にシンプルですし、『モノマネメドレー選手権』も常にシンプルです。みなさんに知っていただいているヒット企画のポイントは、そういったところにあったのかなと思いますね。
井上:人との出会いが大きいと、そこからのフィードバックがより大きくなりますね。
マッコイ:でかいですね。一流の人はそれなりのオーラもありますし、近寄りがたくて怖いんです。でも一流の人と向き合って戦わないと一流にはなれないんですよね。だから「一流は一流を育てる」という理論はあるなと思いましたね。怖いから。
井上:マッコイさんにもオーラがありますよ。
マッコイ:いやいや、僕なんて山形のあれですから。
井上:私は父が山形なので、毎年さくらんぼとかぶどうとか食べています。
マッコイ:「佐藤錦」「紅秀峰」ね。甘さと酸味のバランスがすばらしいよね。
井上:行ったことないんですよね。
マッコイ:ないんかい!
(一同笑)
井上:行きたいんですけどね。
マッコイ:行けよ! 早く行けよ!
井上:どちらでしたっけ?
マッコイ:山形だよ!
(一同笑)
マッコイ:山形って自分で言ってんのに、「どちらでしたっけ」っていう質問はおかしいだろ! びっくりしているよ、これを見ている人も。
井上:ありがとうございます。
マッコイ:……いや、こちらこそだよ!
(一同笑)
井上:続いて、「周りで活躍されている方の共通する特徴はなんですか?」。
マッコイ:僕は昔から勝手に、売れていない時に一緒に仕事をしていた連中は今でも仲間だと思っています。極楽とんぼの加藤浩次さんと山本圭壱さんもそうですし、おぎやはぎもそうです。森三中、有吉弘行さんもそうですし。
昔売れていない時にともに番組を作っていた人たちが、今もがんばってやっているのを見ると、すごくうれしいなと思うんですけど、やっぱりみんな共通して「群れないな」と思いますね。
さっきも言ったように、芸人さんっていろんなところに売れようとすると群れていくじゃないですか、(でも今名前を挙げた人たちは)ぜんぜん群れないんですよ。自分たちは自分たちで、昔のままで。
有吉は特に群れませんね。1人で寡黙に今のポジションを築いていったと思います。加藤も群れません。ああやって吉本興業に啖呵を切って「僕はそういうのが好きじゃない」と言って戦うわけですから、あれが群れている人間だったら、あんなこと言えませんからね。正義感が強いというか、全員共通していますよね。おぎやはぎも、ああ見えて実は群れませんから。
井上:正統派なイメージでした。
マッコイ:正統派ですけど、心の中にはギラッと光るジャックナイフを持っていますからね。キランと光る鋭利なものを持っています。だからおもしろいんですよね。
井上:それは売れない時から気づいていたんですか?
マッコイ:気づいています。あと全員に共有するのは「人見知り」ということです。
井上:そうなんですね、私はあまり人見知りしないのでだめだ。
マッコイ:(笑)。でも女性と男性は違いますから。加藤も人見知りですし。
井上:意外ですね。
マッコイ:意外じゃないですよ。たぶん彼は人の目を見ないですよ。と言うより、見られないんじゃないですかね。超人見知りだと思います。
井上:奥さまがすごく好きで、愛情深くてハートフルなイメージですね。
マッコイ:香織ちゃんはすごくいい人ですよ。人柄もいいし、100点満点の120点じゃないですか。絶対に偉そうにしないし、みんなに優しくて子どもたちにも優しいし、器量があって人に気を使えるし、最高の奥さんじゃないですかね。うちの奥さんは気が強いですけど。
井上:気が強い女性はお好きですか?
マッコイ:結婚してわかることもありますよね。
(一同笑)
井上:恋愛結婚ですか?
マッコイ:はい、恋愛結婚です。
井上:マッコイさんからグイグイっと? こういう恋愛の話はだめですか?
マッコイ:いやいや、僕の恋愛の話なんかしたってつまらないですからやめましょう。
井上:でも、私も「自分はこれがやりたい」と言える気が強い女の子が増えてきたのかなと思うんです。
マッコイ:気が強い女の子というか、今はSNSがこれだけ世の中に普及していて、みんな自分で個々に配信して、個々にお金儲けできるので、やり方をちゃんとわかっていれば自分1人で生きていけるじゃないですか。ということは、我が強くなりますから、そりゃ自然と気は強くなるでしょうね。
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