2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
伝える力【話す・書く】研究所所長であり、 ライティングサロンも主宰する山口拓朗さんに学ぶ 「伝わる文章」の実践的ノウハウ(全7記事)
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高橋朋宏氏(以下、高橋):山口さんはお仕事としてライティングをされていて、外に発信されている文章もいろいろあると思います。発信していないけど書いている文章もあるんですか?
山口拓朗氏(以下、山口):最近はあまり書いてないんですが、今自分が主催をしているライティングサロンの中で、毎週お題を決めて文章を書いているんですね。お題は僕だけじゃなくていろんな人が出すので、何が来るかわからないんですよ。
「あなたの好きな色は?」とか。今日も月曜日で、ちょうどお題が提示された日なんですけれども、今回は「香り」について書くんです。ふだんは考えないし、別に仕事とは関係ないことなんだけど、それを考えることによっていろんな気づきがあるんですね。
色なんて、別にふだんは「自分がどんな色が好きか」を考えないし。「なぜ好きなんだろうか」とも考えないけど、あえて考えることによって自分のことを少し知ることができる。自分の情報の中の何万分の一かもしれないけど、知ることができる。「あぁ、自分ってこういう感性なんだな」「こういうことを色に求めてたんだな」と。
あるいは「なんでこういう色が好きなのか、なんとなく理由がわかってきた」とかね。そういう気づきを得る、学びを得ることができるので、そういったエクササイズを、毎週仲間と一緒にやっています。
自問自答する練習でもあり、自分のことを知る練習でもあり、それを人に伝える練習でもあるということですね。
高橋:なるほど。「山口拓朗ライティングサロン」と検索すれば出てくるんですね?
山口:そうです。そのまんまのネーミングなんですけど(笑)。
高橋:今、サロンの会員は何人ぐらいいらっしゃるんですか?
山口:70人ぐらいですね。
高橋:おぉ~、すごいですねぇ。
山口:すごく個性的なメンバーが集まっていて。僕も彼ら彼女らから影響というか刺激を受けています。すごくおもしろい文章を書かれたり、おもしろいテーマで書いたり、おもしろい活動をされている方もたくさんいるので。コミュニティとしても、すごく活性化している場になっています。
高橋:YouTubeとかClubhouseとかもそうですけれども。今しゃべる力が要求されるというか、しゃべる力を持っている人が優位に立てる時代になってきてるとは思うんですけど。でも一方で、ネットの情報のほとんどは文字ですよね。
山口:そうですね。
高橋:そういう意味で「書く力」は、このネットの時代においては重要ですよね。
山口:そうですね。避けては通れないと思います。やっぱり15年前、20年前って、文章力がないことを隠しながら生きていけた時代だったと思うんですね。けど、今の時代はやはりインターネットがあり、SNSがあり、もっと言うとチャットやメールでやりとりをする時代なので。
やっぱり文章が書けないと、そもそも誤解されたりとか、ミスとかトラブルにつながりやすいんですよ。相手のことを傷つけたり、怒らせてしまうこともありますよね。だから、すべての人が文章力と逃げずに向き合って、ちゃんと磨いていこうと考えたほうがいいかなとは思っています。
高橋:文章力は後天的に身につけることができる、ということですよね。
山口:そうですね。文章力というか「才能」って言われるんですけど。僕自身の体験として、もともと上司にひどく怒られて、書いた文章を突き返されながら書いてきたタイプなので……。
高橋:右に同じで(笑)。
山口:(笑)。やっぱりそこは自信を持って、才能ではないと言えます。
もちろん、文芸的な作品の発表などで、その人なりの「才能」を輝かせることはあると思うんですけど。いわゆる一般的に書く文章においては、スキルとしてしっかり磨いていけるものなので。今自信がない方とか苦手な方も、基本をちゃんと学べば、ある程度書けるようになると思っています。
高橋:これが正しいかどうかはわからないんですけど、経験上、最初から文章の上手な人って、たまにいたりするじゃないですか。
山口:いますね。
高橋:でも、その人がどれだけ成長していくかっていうと、最初文章が苦手だった人のほうが、右肩上がりになるんじゃないかなと。
山口:そうですね。落差としては大きいですよね。「この人1年間ですごく成長したな」という方も、サロンの中でもいます。そこはすごくうれしいところですし。
僕の本の読者の方からもいろんな声をいただくんです。中には1行も書き出すことができなかったという方もいるんですけど、「長文をすらすら書けるようになりました」みたいな声をいただくと、あぁやっぱりちゃんと向き合って文章力を磨いていけば、みなさん書けるようになるんだなと感じています。
高橋:そうですよね。文章が少しでもよく書けるようになることで、少なくとも自分でビジネスをしている人だったらめちゃくちゃ役に立ちますよね。
山口:そうですね、めちゃめちゃ役に立ちますね! やっぱり今は文章を書くことで、自分の商品やサービスを広めるとか、認知してもらうとか、それこそセールスまでできるわけなので、書ける人と書けない人の差とは相当大きいかなと思います。
会社内においても、文章が書ける人と書けない人では書ける人のほうが重宝されるし、期待もされるし、いろいろなことを任される確率が高まるので。農耕時代は鍬をちゃんと使える人が重宝されたと思うんですけど、今の時代は文章を書ける人が重宝されると思います(笑)。
高橋:(笑)。すごくわかりやすい例え。自分のビジネスに役立つ文章を磨くためにという点で、山口さんの本の中ではどれが一番おすすめですか?
山口:そうですね。今日はちょっと持ってきてないんですが……。『買わせる文章が「誰でも」「思い通り」に書ける101の法則』という本は、いわゆるセールスライティングという技術について網羅して載せています。
高橋:なるほど。買わせるんですね。
山口:すごいいいタイトルがつきましたよね。編集者さんがつけてくれたんですけど、「買わせる」って最初聞いた時は、すごいことだと思いました。けどこれ自体は、キャッチコピーとしてすごくインパクトがあるなと思っています。
高橋:ちょっとまた専門領域の話になってしまうんですけど、編集者は物を売っていかなきゃいけないので、セールスライティング的な文章の書き方の技術が必要になるんです。いわゆるキャッチコピー的な世界ですね。一方で、本は文章そのものが商品だと思っていて。小説はそうですよね。
山口:そうですね。
高橋:それ(本の文章)と、本を売るための文章は、似ているんだけれどもだいぶ違うと思っていて。
山口:違いますね。確かに。
高橋:本の内容、本の原稿がセールスライティング的になると、なんか逆に感情を揺さぶられるんだけれども、ちょっとなんか……。うん。
山口:いや、それはありますねぇ。私はもちろんしたことないですけど、そういうセールスライティング的な書き方がされている本も、世の中にはありますよね。
これは個人的な感覚ですけど、いい印象は受けない。本は本の中で1つのテーマがあり、コンセプトがあり、読者に伝えたいメッセージがあるんでしょうから。そこを伝えるためにセールスライティングが必要かというと、必要ではないと思うので、分けて考えないといけないかなと思います。
高橋:セールスライティング的な文章というのは、ちょっと言い方がよくないかもしれないですけど、チラシの文章ですよね。
山口:そうですね。
高橋:そのチラシの奥に、商品があって。
山口:まったくタイプが違うというか、やっぱり文章としてはぜんぜんものが違いますよね。この本で伝えている文章術は、いわゆるチラシにも使えますし、Webサイトでの販売ページとか、あとはメールマガジンとかで物を売りたいといった時にも使えると思うんですね。
高橋:そうですね。僕が何を伝えたかったかと言うと、「文章」と一言で言ってもいろんな文章があって、その目的別に合わせた文章術の本を使ったほうがいいと思っていて。
山口:本当にそのとおりですね。やっぱり目的が違うので。私の本の中でも最初の準備のところで、「文章を書く目的を明確にする」と伝えているんですね。
やっぱり目的によって、書き方というか必要なものはまったく変わってきますから。そこをしっかり考えないと、ちぐはぐな文章になってしまったり、まったくずれた文章になってしまいます。そこはちゃんと考えなきゃいけないかなと思います。
高橋:みんな伝わる文章を書きたい。下手でもなんかあれでも、日本語だから基本は伝わるんですよね。伝わるんだけれども、よりちゃんと伝わる、よりストレートに伝わる、誠意を持って伝わると。文章自体で伝わり方が変わるんですね。
山口:変わりますね。
高橋:その文章の伝え方を極めていくためにやっていくべきファーストステップはなんでしょうか?
山口:うーん、極めていくためのファーストステップ。
高橋:その段階にはいろいろあるとは思うんですけど。はい。
山口:そうですね。「フィードバックをちゃんと意識する」ということですね。例えばFacebookに書きましたという時に、書いて終わりじゃないわけですよ。書いたものがどういう反応をされたのかなってことですよね。
みなさんも経験があると思うんですけど、何か自分が書いた投稿にめちゃめちゃコメントがついて、いろんな人がいろんなことを書いて、なんか自分が思った以上に盛り上がったみたいなこともあると思うんですね。
その時には、「なんでそうなったのかな」と考えることですね。一方で自分では反応が欲しくて書いたんだけど、まったくいいねがつかないとか、まったくコメントがつかないこともあるわけですね。それはやっぱりなんでなんだろうかって考えないといけない。
だからフィードバックがどういうものだったのかということ。第三者の読んだ人からの反応は一体どういうものだったかに対する意識をもっとちゃんと持って、「自分が書いた文章は世の中にとってどういうものだったのか」ということに対して自覚的になる。そこから始めるといいと思うんですね。
山口:文章だけじゃなくて、会話でもそうなんですよね。会話をしていても、自分が話したことによって相手が喜んでくれたのか、なんかつまんなそうにしているのかという、反応をちゃんとわかっていないと、結局、相手がつまんない顔をしているのに気づかないと、1時間ぐらいずっと自分勝手なことをわーっと話して。
相手は1時間も、「もう勘弁してくれよ……」と思っているんだけど、それに気づかない。この感覚は文章にも絶対出るものだと僕は思っているので。自分1人で完結させないで、フィードバックをちゃんと見ていくということです。いいも悪いもちゃんと見ていくことが、文章力を上げるためのファーストステップとしてやっていただきたいことかなと思います。
高橋:なるほど。今お話を聞いていて、個人個人、「あ、あの人そうだ」とか頭に浮かんだと思うんですけど(笑)。文章にもあらわれるということですよね。
山口:(笑)。そうですね。
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