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セッション5「クリエイティブな仕事がしたい」のクリエイティブとは何なのか?(全5記事)

新R25編集長・渡辺将基氏ら、3名のクリエイターが本質に迫る “クリエイティブ”って一体なに?

かつてない大きな変化を迎えている現代社会において、キャリアを考えるすべての人に向けたイベント「ONE CAREER SUPER LIVE」が、2020年5月22日に開催されました。本記事では、セッション5「『クリエイティブな仕事がしたい』のクリエイティブとは何なのか?」を公開。arca CEO/クリエイティブディレクター・辻愛沙子氏、グッドパッチ代表取締役社長/CEO・土屋尚史氏、新R25編集長・渡辺将基氏をスピーカーに迎え、ワンキャリア取締役 最高戦略責任者・北野唯我氏が話をうかがいます。

クリエイティブって一体なに?

北野唯我氏(以下、北野):みなさん、こんにちは。ワンキャリアの北野と申します。ONE CAREER SUPER LIVE、ROOM X。ここからはスペシャルトークを広げていきたいなと思います。

テーマは「『クリエイティブな仕事がしたい』のクリエイティブとは何なのか?」という、めちゃめちゃ本質的なテーマです。

たぶんクリエイティブに興味がある人も見ていると思うんですが、「ちょっと自分はどうなのかな?」と思っている人も安心してください。

このトークでは「クリエイティブってそこまですごく深刻に考えなくていいんだよ」「こういうことなんだよ」とか「ファーストステップはこうなんだよ」というところもお話を聞いていけたらなと思っています。

今日はめっちゃ豪華なゲスト……と言っちゃってプレッシャーをかけていますが、お三方をお招きしております。よろしくお願いします。

一同:よろしくお願いします。

北野:じゃあ、お三方のことを知らない方もいらっしゃるかもしれないので、最初に自己紹介にいきたいなと思うんですが、まずは辻さんからよろしいですか? 

三者三様のクリエティブ

辻愛沙子氏(以下、辻):よろしくお願いします。辻 愛沙子と申します。私はarcaという会社をやっておりまして、ふだんは広告クリエイティブがメインの領域になります。

ただ、広告クリエイティブが一番わかりやすい言葉ではあるんですけど、例えば飲食店のブランドの立ち上げのクリエイティブをやったり、店内の内装やお店のネーミング、コンセプトなどを作ったりしています。

あとは新規事業を作ったり、とにかくいろんなものを企画して作る仕事をしています。よろしくお願いします。

北野:よろしくお願いします。では、土屋さん、お願いします。

土屋尚史氏(以下、土屋):はい。みなさん、こんにちは。株式会社グッドパッチの土屋と申します。

グッドパッチは今、いわゆるUI・UXといった領域のデザインを手がけている会社で、今オフィスが東京とベルリンとミュンヘンにある、わりとグローバルなデザインカンパニーです。

(創業から)8年で、全体でだいたい200名ぐらいの従業員を抱える会社に成長しています。企業のビジネス課題をデザインの力を使って解決していく会社です。よろしくお願いします。

北野:よろしくお願いします。では、渡辺さん、お願いします。

渡辺将基氏(以下、渡辺):新R25の編集長をしております、渡辺と申します。よろしくお願いします。新R25を見てくれている方がもしいたら、ぜひコメントをいただけるとうれしいなと思っています。

学生さんにもけっこう見ていただいていますけど、ターゲット層は20~30代のビジネスパーソンが中心で、記事と動画というかたちで、ビジネスパーソンをやる気にさせるようなコンテンツを出すメディアを運営しています。

このテーマで呼ばれるのは初めてなんですけど、僕が出られるぐらいなのでクリエイティブというのはたいした話じゃないんだな、とわかっていただければと思っていますので、ぜひよろしくお願いします。

普通の人と違う切り口で見たとき、生まれる価値

北野:いやいや、そんなことないですよ。お三方の話ですごく注目してほしいと思うのが、やはりみなさん年齢が若いことだと思うんです。多くの産業では、わりと年齢が高くて経験も豊富な人のほうが前戦に出て活躍するようなこともあります。

でも、やはりクリエイティブの領域とか、まさに成長しているところのクリエイティブを担われているお三方というのが特徴かなと思っています。そこの話を聞けるのをすごく楽しみにしています。

最初なんですが、やっぱり「クリエイティブってそもそもなんやねん」「どういうことやねん」と。答えはないものだと思うんですが、お三方の解釈を聞きたいと思います。これは誰からいきますか? 

土屋:絶対1番バッターでいきたくないやつや。

(一同笑)

:どうぞ、どうぞ。

土屋:なんで僕や!(笑)。僕!? 

北野:じゃあ、すみません。土屋さんからいきましょう。

土屋:クリエイティブとはなにか。本当に考えたこともなかったですけどね。自分自身のやっている仕事がクリエイティブかと言われると、ちょっとわからないなというのもあります。クリエイティブな仕事がしたいと思ったときに、みなさんがどういう想像をするか、僕もわからないですけれど。

1つは広告代理店で働きたいとか、今までなかったものを生み出したいのかということはあると思います。僕自身は起業家なので、この「起業」という行為自体はすごくクリエイティブだなと思うし。

どう定義すればいいのかわからないけれども、いくつかのクリエイティブな仕事やクリエイティブなことは、ある物事に対して普通の人たちとは違う切り口で見たときに、ものすごく価値が出る。こういう見方でぜんぜん違うところから新しい価値が生まれることは、1つのクリエイティブだなと思っています。

これは刹那的なクリエイティブもあるし、長期的なクリエイティブという考え方もあるなと思っています。その時点では、それはぜんぜんクリエイティブではないんだけれども、長期で続けたらものすごく……。

例えばそれを10年続けた先に、もう誰も追いつけないぐらい創造的なものになることもあったりするので。やっぱり時間軸の話もあるかなと思います。

北野:確かに。(僕が)矢沢永吉の言葉で好きなのが「ダサいことってあるよね」「でもそのダサいことってなんなの」と。なんでかというと、「ダサいこともずっと続けていたら、かっこよくなるじゃん」ということを言うんですよ。

:あー。

届けるべき人に情報や考えを届けるための工夫

北野:それは本当にそうだなと思うので、けっこうおもしろいなと思ったんです。お二人はどうですか? クリエイティブな仕事とは、言うたらなんなんですかね。じゃあ渡辺さん。

渡辺:僕は、新R25のクリエイティブ枠で呼んでいただいているという前提で話しますけれども。

北野:もちろん。

渡辺: 結論は、なんというかゼロイチではないなという気がしますよね。クリエイティブというのは、ゼロイチを想像しやすいんですよ。だけど、僕らがやっていることは、まったく新しい考え方自体ということではなくて。

世の中のどこかには、誰かに届くべき考え方や情報があると思うんですけど、それがなかなか届かない。本当に情報量だけが増えていって、人が減っているんですね。1人当たりが消費するべき情報がとても増えているので、届かないんです。だから、クリエイティブというのは、届けるべき人に情報や考えを届けるための工夫という感じですね。

北野:なるほど。昔、渡辺さんとお話ししたときに、新R25を設計するとき、本当にこのコメントとか、デザインやUX、UIに1ピクセル単位まですごくこだわっていたという話をされていて。

:へー。

渡辺:初めはそうでしたね。

北野:そうですよね。だから、その辺りが新R25のクリエイティビティというか。これまでにあったようで、実はなかったところを表現しているのかなと個人的には思います。

渡辺:ありがとうございます。

みんなが放置しているものに光を当てられる

北野:じゃあ、辻さんも。どうですか? 

:はい。お二方が言っていたこととかなり近いと思うんですけど、例えば最近は政治や社会課題などもそうですし。さっきおっしゃっていた「情報があまりにも過多だから」というのもそうですし。

世の中には、難しいものとかわかりにくいもの、ぱっと見で伝わりにくいものがたくさんあります。1店舗しかない飲食店だけど、多くの人に知ってほしいとか、情報を届けるため・知ってもらうためのハードルはけっこうたくさんあると思うんですよ。わかりにくいから。

規模の小さいものまで含めて、そういうものを1人でも多くの人に伝える工夫がクリエイティブのなせることなんじゃないかなと思っています。

さっきおっしゃったみたいに、もちろん領域にもよると思うんですよね。そもそも事業を作ることもクリエイティブですし、チームビルディングも広く見たときにはクリエイティブだと思うんですが、私は手法としてのクリエイティブに希望を感じているんです。

なので、私がやっていることだと「invent a hack」という言葉があります。「その手があったか」みたいな意味の言葉を使ったりするんですけど、例えば私がやっている「Ladyknows」というジェンダーをテーマにしているプロジェクトがあるんです。

まずジェンダーなどの大きな社会課題があります。例えば健康診断のイベントをやったんですけど「健康診断を受けましょう」と言われても「(大事なのは)わかっているけど受けないよね」というところがあると思うんです。

「じゃあどうやったら、ちょっとでも受けてもらえるようになるんだっけ?」と考えると、例えばデザインの力とか空間やコンテンツを楽しくするとか、いろいろなアイデアがあると思っていて。みんなが「それはそういうものだから仕方ないじゃん」と放置しているものに光を当てられるのがクリエイティブでできることなのかなと。抽象的な意味で言うとそう思っています。

課題解決の手法として、けっこう有用なクリエイティブ

北野:なるほど。1つは課題解決のクリエイティブは近い場所にあるのか。つまり「課題解決でなければクリエイティブではないのか」というところがちょっと気になりました。

もう1つが、今、世の中でクリエイティブの仕事が注目を集めているという声もあると思うんです。それに対して、実際にやられているみなさんはどう思うのか。この2つを質問したいなと思います。

どこからいきましょうか? 僕は以前どこかで、辻さんの「社会課題や社会性みたいなものもすごく大事にしている」という話を聞いたことがあるんです。そういう意味では、課題解決とクリエイティブはわりと近いのかなという気がしたんですけど、どうですか? 

:そうですね。課題解決の手法としては、クリエイティブはけっこう有用なんじゃないかなと思っているんですけれど、そもそも「課題とはなんぞや」という話で。

例えばYouTuberの方の動画はめちゃくちゃクリエイティブだと思うんですけど、明確に「社会を変える」という話とは、またちょっと違うものもあって。

でもそこには、「みんな暇していて、隙間時間を楽しむものがない」「テレビをつけても自分が見たいときに見たいコンテンツがない」という、「楽しいもの」を目的とした課題だってあるわけです。

課題解決は必ずしも難しいものやネガティブなものだけじゃないのかな、という前提ではあるんです。だけどそういう中で、課題解決にかなり有用なものがクリエイティブなんじゃないかなと信じて、今はやっています。

北野:なるほど。辻さん的には今の時代になって、クリエイティブの重要性は上がってきているなという感覚はあるんですか? 

:そうですね。上がってきていてほしいんですけれども、これも鶏と卵的な話で。例えばAppleがここまでみんなに愛されて普及して、iPhoneをみんなが使っている状態である以上、デザインの力、クリエイティビティ、余白の力がとても大事だということがわかっていて。最近、デザインシンキングということもずっと言われています。

ただ、一方で細かい機微や、すぐ数字につながらないと思われるものに対する価値は、なかなか日本の……とくに大企業の経営者の方は、必ずしもそこに対する思いが伴っていないケースもあって。

経済合理性と美しさのようなものが、まだ対立すると思われているんですよね。でも、そこはリンクしているものなんじゃないかなと願いながらやっていますね。

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