2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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木村和貴氏(以下、木村):先ほどは「どういうシチュエーションがいいか」という話だったんですけど、続いてはみなさんがご提供されているサービスで、相性のいいコンテンツはありますか?
最初の説明にもあったとは思うんですけれども、ビジネス書が向いているのか小説が向いているのかとか。どういうのが向いていて、どういうのはまだ改善の余地があるといったものがあれば伺いたいです。これも大賀さんからお願いします。
大賀康史氏(以下、大賀):なるほど。なんだか見事に自分のサービスの紹介になってしまいそう(笑)。なのでちょっと引いていくと、読書にもいろんな目的があると思うんですけど、例えば自分を高めたい、学びたいという目的があったとするじゃないですか。
いろんな本を読んで私が知ったのは、人によって脳の構造は違うらしいんですね。目で見て学ぶのが得意な人は、読むのが得意な人です。それから、聞いたり話している声を自分で聞いて学ぶ、耳から学ぶのが得意な人がいます。あとはすごく体験に寄っている人。結局は3つの組み合わせなんですけど、得意分野が人によって違うらしいんです。
ちなみに私は読んで学ぶ派なんですけど、これは人によって違うんだろうなと思うんですね。先ほどの話じゃないですけど、シチュエーションに合ったというか、その人に合ったコンテンツを選んでいけばいいような気がしていて。
あとはその人の個性とシチュエーションに合ったものを選んでいけばいいと思うんです。コンテンツは多様な形態があっていいと思っています。
flierは目と耳で体験はこれからなんですけれども、まずは目と耳を狙っていって、比較的長い時間よりは短い隙間時間を狙っている。本の要約でだいたい10分で1冊の内容が把握できて、もしそれが欲しければ買いますから。
デパ地下の試食みたいなもので「ちょっとよかったな」となったら自動的に買うんですよ。flierで紹介すると、Amazonのランキングなどがものすごく上がります。
結果的には読書に向いていったり、別にそのまま次の本の要約にいったりというかたちになるので、自分に合ったものを選ばれたらいいのかなと。flierは偶然目と耳、あとは隙間時間をメインに取っているコンテンツです。
大賀:ちなみにflierは体験もやっていくんですけど、コミュニティをこれから強めていこうと思っていて、2019年から「flier book labo」というコミュニティをやっているんですよ。いわゆる読書会の延長みたいなものです。
ちょっと変わっているんですけど、読書会にハードルがあるとしたら、その本を読んでから行かないといけないという、強迫観念みたいなものがありませんか? ちょっといいことを言わないといけないとか(笑)。そういうものがあるじゃないですか。
でも、flier book laboの中では要約を読んでくれば参加できるんです。参加するエントリーのハードルをものすごく低くしているんですね。そこでみんなでワイワイ盛り上がる。
例えば『LIFE SHIFT』で、「100年寿命があったらどうしよう」という話でみんなでワイワイ盛り上がって、「よかったね」「やっぱり本を買って読もう」みたいな。
そんなふうに逆の流れを作っている感じなんですけど、flierとしては、みんなでワイワイ議論するような場も作っていかないといけないかなと思っていたりします。
木村:そういった意味では本のジャンルというよりも、要約というかたちになることで読むハードルがグッと下がる。それよってコミュニティを作っていったり、そういう体験のほうに移していくのに非常に向いているというところですかね。
大賀:目的に合ったことを。
木村:ということですね、ありがとうございます。大西さんはいかがですか?
大西智道氏(以下、大西):ブンゴウメールだと、配信しているコンテンツの著作権の関係もあって、今やっているのは文学作品だけなので。向いている・向いていないの話は少し難しいんですけど(笑)。
今までやった中でおもしろかったのは、最初にご紹介したコラボ案件で、ALTER EGOという文学ゲームとコラボさせてもらったとき、やっぱり作っている側がものすごく文学好きの方だったんですよ。
実際の選書自体もゲームを作られたすごく本好きな方が選書してくれて、毎月コメント付きで本を配信してくれて。私が今メインでやっている配信とはまた別でやっていたので、ぜんぜん違う選書軸というか、本に詳しい方が選んでくれて本を届けてくれるところがすごく受けて、やっぱりおもしろかったですね。
コンテンツ自体はもう著作権が切れている古いものばかりを配信しているんですけど、その選び方やそれに対する解釈というか、コメントを足してもらうとまた新しいコンテンツとして楽しめるのがおもしろいなと思って。
木村:そうなると、選書していることが1つの価値というか。いわゆる美術館で言えばキュレーターみたいな存在ですよね。どの絵を持ってくるかというものに近い感じですね。
大西:今、実際無料プランでは私が選んだ作品を強制的に読むというものをやっているんですけど、それが意外とよかったらしくて。逆に実験的に有料プランで好きな作品を読めるというのもやったんですけど、そっちはなかなか使ってもらえなかったりというのもありましたね(笑)。
木村:確かに、逆に選ぶほうが難しかったりしますからね。与えられたほうが楽なことも多いのかな。
大西:体験としても新しくておもしろかったと。そっちに価値を感じてもらったのかな、という学びを最近得ました。
木村:けっこう出会いを作る場としても向いていそうな感じですね。なるほど、ありがとうございます。久保田さんはいかがですか?
久保田裕也氏(以下、久保田):誰かが選んでくれるという意味だと、聴き放題を始めてから、今は個別の販売も並行してやってるんですよ。
とりあえず聴き放題に入ってみて、「どれでもいいからとりあえず聴いてみるか」という感じで利用ハードルが下がってから、個別の売りも伸びていて。読書に関していうと、そこのハードルを下げるところなのかなと思っていますね。
コンテンツのジャンルとなると、意外にも、なぜかものすごく分厚い本などが売れるんですよ。たぶんですけど、そういう人たちはきっと、その本をすでに持っているんですよ。
だけど読めないんです。400ページとかの本があるじゃないですか。「これは良書です」と言われて2,100円くらいするやつを買っちゃって、部屋に積んであるような。その積読の本と同じものを買っている人がまあまあいて。
うちは自分たちで作っているので、制作費はすごくかかります。制作時間も全部で十数時間とかになるんです。でも、「これ、すごく聴かれるのでぜひお願いします」という感じでマーケティングをやっている人間はお願いするんですよ。聴き放題にそういうのを入れると、やっぱり聴かれるんですよね。
あとはすごくライトな内容のもので、「こうなりたい」という自己啓発作品。もしかすると本だと少し買いづらいのかもしれないですね。聴かれやすい傾向があります。
先ほどのニュースなどとはちょっと別の切り口ですけど、嫌な上司とうまくやっていく話とか(笑)。「なんでこれが売れているの? すごく聴かれているね」というときに、「この間、聴き放題に新作で出したんですよね」という感じで。
そして、それがずっと聴かれていたりするんですよ。
大賀:ちょっとお伺いしたいんですけれども、10時間を超えるような長い本があるじゃないですか。みなさんはそれを倍速で聴かれたりするんですか?
久保田:あ、みんな倍速です。
大賀:なるほど、そうしたら読むよりも速いかもしれないですね。
久保田:実は僕がこの事業をやっていて思うのは、「聴く」という行為自体が実はすごくハードルが高いんですよね。読むよりも圧倒的にハードルは高いんですよ。わかりやすいのは、テレビの市場規模とラジオの市場規模はぜんぜん違うじゃないですか。
なんでだろうと考えたら、みんないろんな理屈をつけますけど答えは簡単で、聴くのはすごく難しいんですよ。聴き続けるのはより難しいんですね。だから聴き続けやすくする仕組みづくりがすごく大事で。
でも、その仕組みを作るとずっと聴いてくれるんです。聴き続け始めるとどうなるかというと、「遅い」と思い始めるんですよ。
大賀:慣れてくる。
久保田:わりとヘビーに使っているユーザーさんにアンケートを取ると、だいたい2倍から2.5倍で聴いていますね。そうすると2時間くらいになるので、単行本を読むスピードとほとんど変わらなくなるんですよ。
そういう使い方をしている人がわりといます。かなりヘビーユーザーに定着してくると、そういう使い方をする人が多いですね。
久保田:なので、今はアプリの速度調整機能をメーターのように微調整できるようにしていて、0.5倍速から4倍速まで変更可能です。0.5倍速を入れているのはTOEICの語学学習やリスニングの教材なども売っているので、速度を落とす需要もあるので。
最初は通常速と倍速の音源を売っていたんですけど、「通常速は遅いし、倍速は速い」と言われて。 そこで「だったらアプリを作りましょう」となって、自分の好きなスピードで、0.5倍速から4倍速まで0.1刻みで調整できるように今しています。やっぱり2~2.5倍の人が多いですね。
木村:いや~、おもしろいですね。時間の調整ができるといろんな使い方があるなと思って。ちょっと昔話ではあるんですけど、僕は野球部に入っていて。学校の敷地内にちょうど1キロのマラソンコースがあって朝や部活後の自主練で5周10周と走るんですけど、曲を聴きながら走るんですよ。
ちょうどいい感じのタイムで終わる曲を選曲してやっていたんですけど、スピードコントロールができると「この本が読み終わるまでに走り終えよう」みたいなことも……。
久保田:そうそう! そういうのが簡単にできます。
木村:できますよね。おもしろいなと思いました。あとは確かに積読系ですよね。実際に買ったけど読めなかった本を、耳でなんとかインプットしようというのはちょっとわかるなと思って。
久保田:音はすごく受動的なメディアなので、モチベーションはあるんだけど、自分からは気が進まないようなものに対しては異常に強いんですよね。
木村:確かにそうですね。わかりました。
大賀:ちょっとflierの話をさせていただくと、先に要約を読むと本を読むスピードがものすごく上がるという効果もあるんですよ。flierの要約を信じてもらえれば、幹を理解しておくと「あ、ここは大事なところだからゆっくり読もう」「ここは事例だからちょっと早めに読もう」とか。
そういう強弱がつけられるので、2倍くらいのスピードで読めたりするとよく言われます。テキストの中の世界でも、読み方によってはけっこう工夫ができるのかなと思います。
木村:ちなみに今ふと思ったんですけど、ミステリー小説も要約みたいな感じなんですか?
大賀:最近世界的なヒット作の要約を打診されることがあって。最近だと、もともとフランスの小説なんですけど、『三つ編み』という小説があって。
これはすごくおもしろい作品なんですけど、インドとかいろんなところにいらっしゃる3人の女性の運命が最後に交差していくというすごい小説なんです。でも、要約は小説に関してだけは結論は書かないです。小説だけは(笑)。
あとやらないと決めているのは村上春樹の作品とか。ああいう、表現を変えたらそれは冒涜であるというようなものはやらない。要約なので必ず表現は圧縮しているんですよね。そこで味わいがなくなってしまうような作品はやらないです。節度をわきまえて運営をしています(笑)。
小説に関しては、「ストーリーはわかるんだけど最後の結末はどうだろうか」みたいな感じで終わっていくように。そのほうが小説の良さを奪わないかなと思っていて、できるだけやらないようにしています。
木村:ありがとうございます。個人的にすごく気になって。「結末がすぐにわかっちゃった」みたいなのをちょっと想像していました(笑)。もう時間がけっこう過ぎてしまったので……(スライドを指して)どうしようかな、こっちかな。
木村:ビジュアルコンテンツ。例えばYouTubeとかInstagramとか、そういうビジュアルコンテンツがすごく出てきていますよね。その中で、本ならではのテキストや言語ならではのコンテンツの強み、良さ、魅力みたいなところを、簡潔に一言ずつお伺いできたらと思います。
大賀:はい、簡潔に。動画はやっぱり効率的だと思うんですよね。目でも見えるし音も入っているので、すごく効率的なメディアかもしれない。でも、やっぱり流れはずっと見るというか、与えられたものをずっと見ていくという比較的受け身のアクションなのかなと思っていて。
私は本を読むということは、考え事をしている時間も含めて読書だと思っているんですね。すごくゆっくり読んで、「自分のビジネスに照らすとどうかなぁ」「この間あれが書いてあって、これと組み合わせるとこんなことが言えるなぁ」みたいなことを考えているときが一番尊い時間だと思うので。
私は読書において、読むペースは大事じゃないと思っているんですよ。そういうペースもそのタイミングごとに変えながら主体的に読んでいくのが、私は本だと思っていて。
なので、それぞれの良さがある。ただ動画は読書を代替するものではないし、例えば要約の読書も本1冊の読書を代替するものではないと思うんです。本1冊を通じて体験する考え事の時間までは再現できないと思っているので、そこはまったく違うものなのかなと私は思っています。
木村:確かに小説とかもそうですけど、絵がないぶん自分の頭の中ですごくイメージする。自分の中で世界がどんどん広がっていくので、そういったテキスト情報だけじゃなくて、その裏にある頭で思考する部分というのは確かにな、と思いました。
大西:大賀さんのお話で、実際に読んでいない時間でも考えている時間がすごく尊いというところにものすごく共感しました、今日ネタとして持ってきたんですけど、どこに入れようかなと悩んでいたやつを今入れます。
「読書ってなんだろう」「本を読むってどういうことだろう」みたいなことを考えるときに、めちゃくちゃおすすめしたい本があって。『読んでいない本について堂々と語る方法』という本なんですけど。
(会場笑)
ふざけたタイトルなんですけど、ものすごくおもしろいんですよ。「本を読むことってなんなんだろう」というところから変えてくれるような本です。そもそも読んだ・読んでいないの二分法じゃないよね、みたいなところからすごくおもしろくて。
つまり、今日僕の話の中で唯一覚えていただきたいのは、この本が素晴らしいということですね(笑)。いらっしゃっている方は絶対興味があると思うので、読むとおもしろいと思います。
木村:読んでみます。ありがとうございます。みなさんメモは大丈夫ですか? じゃあ久保田さんお願いします。
久保田:本ならではの強みは、本はやっぱりいろんな意味で知の集積だと思うんですよね。その絶対量が一番大きいのが本だと思うんですよ。動画の脳への刺激は瞬間風速なんですよね。
どういうことかというと、僕は学生のときにあんまり働きたくなくて、「なんで働かなきゃいけないか」を考えたくていろんな会社に潜入して仕事をしていて。ユーザーコンサルティングの会社に潜入していた時期があって、たまたまその会社の人がアクセンチュア出身だったんですよ。
大賀:お、アクセンチュア出身です。
久保田:そこで通販サービスのユーザー解析みたいなことをしていて。通販をよく買っている方が映像を見ている様子を分析していたら、人間はやっぱり情報量が増えてくると口が開いてきて瞳孔が開いてくるんですよ。
通販は空いている時間に差し込まれてると思われがちなんですけど、あれは人間が疲れている時間なんですよ。意思決定能力が落ちてる時間にそういう刺激の強いものをバシバシ入れるんです。
例えばコンプレックス、「痩せたくないですか?」「英語をしゃべれるようになりたくないですか?」「こんな世界はどうですか?」というのをやっていくと、どんどん瞳孔と口が開いてくるんです。
これは脳が停止しているんですね。で、意思決定をするじゃないですか。意思決定をして買ったあとに「なんでこれをやっちゃったんだろう」と思うんですよ。それで使わなくなって捨てるんですけど。
大賀:だから通販は深夜なんですね。
木村:すごくやっていますよね。
久保田:そうなんですよ、本当にすごくうまくできているなぁと思って。かたや本はそういうことがないじゃないですか、自分から読み進めなきゃいけない。聴くのもそうです。やっぱり脳に余白があることがすごく大事なんですね。インプットがあって、それを基に考える余白があるから本はおもしろいわけですよ。
それ以外のエンターテインメントでそういう環境があるかというと、そんなにないんですよね。
木村:なるほど、本は能動的なインプットなんですね。ありがとうございます。
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