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企画を通すコツ・ヒットを産むヒント 1億人・総クリエイター時代の歩き方(全2記事)

「ちょっとだけ変な努力をずっと続ける」 ヒットメーカーが教える、アイデアを出せる人の習慣

ビジネスを前へと動かす、経営者やマネージャーの方々の挑戦を応援する1Dayイベント「Biz Forward 2020」。ビジネスインサイトを生み出す「Inspiring」、明日へと進む力を身につける「Biz Hack」、いつでも前向きにココロを動かす「Fun」の3つのテーマに沿って、さまざまな講演やワークショップが開催されました。本パートでは、毎日放送プロデューサーがヒット企画を作り出すための思考法を明かしました。

「ちょっとだけ変な努力」を続ける効用

林智也氏:総クリエイター時代でも自分はおもしろいものを考えつかない、というときに、もっともっと簡単で、僕が実践しているクリエイターになる方法は、これです。

ちょっとだけ変わった努力をずっと続けてみる。僕は、最初はすごく真似ごとだったというか、真面目なサラリーマンでした。今もそうですけど。「このままじゃテレビで勝てないな」と思ったときに、女性誌を毎日読むようにしました。

『anan』、『STORY』、『25ans(ヴァンサンカン)』とかを根こそぎ取り寄せて、それを毎日読み続ける。たいした時間はかからないです。そうすると、僕みたいなアメフトをやっていたお兄さんが、「『anan』が3~4週間前から急に50ページぐらいかけて睡眠特集をやっている。現代の女性は寝られないのか」となる。

そうやってずっと読んでいると、変化を感じられるようになってくる。ああ、こういう情報はみんながほしいのではないかな、というところに早く到達する。「雑誌を読め」と言っているわけではないです。変な努力に毎日の力を使うというのが、とってもとっても重要というか効果が高い。

僕は今、子どもの弁当を毎日自分で作っています。これは家に早く帰れないので、こういうことでもしないと奥さんと不和になってしまうというのも、もちろんありますが(笑)。

でも、これは非常に効果が高いです。弁当を作るのはまぁ、できないことはないですが、ちょっと変な、やりそうにないことをやる。毎日、英単語を3つ覚えるという積み重ねも、もちろんすごく力になりますが、ちょっとクリエイティブに1個やってみる。

奇をてらっていなくていいです。今さらだけど、川柳を1つ書いてみるとか(笑)。たまに伊藤園に応募する、とかでもいいし。

僕みたいに、自分のキャラにないことを1つやってみる、というのを積み重ねるとなかなかよくて。

弁当の例だと、何がいいかという話のツールになります。褒めてほしかったら、「あんた偉いね」と言ってもらうことも可能だし。すべての世代の人に「弁当を作っています」という話はすごくいいツールになる。

キャラにないことが1個あると、職業に関係なく「林さんはどんなことが好きなの?」というふうになっていきます。これはすごくいいなと思っていて。毎日ちょっとだけ変わったことを続ける、というのがいいなと。

チーム作りは「できること」と「やりたいこと」で考える

次です。ちょいちょい家族の話を入れますが。(スライドを指して)これは何年か前の正月に、僕の義理の兄に教えてもらって、実は自分も利用しています。

これはたぶん自分を見つめ直すために、何ができるか、何がほしいか、何をすべきかという、何をしているかと何をしていたかの先に、あなたはありますよということで。たしかにそうだなと。それをこういうグラフで教えてくれたのを言っているだけですけど、チーム作りに非常にいいなと思って、プロジェクトのたびに整理しています。

何をしたいかって、すごく大事なことですね。今していること、してきたこと。経験やできることと、どうしていきたいかということの先に、すべきことが見えてくる。

これは自己啓発のために、非常に重要でいいなと思います。僕は自分でこれを咀嚼して、物作りのときにすごく意識しています。みなさん、自分ができることを「すごいね」とか「いいじゃん、それ」と言ってくれる仲間と仕事をします。

話したことわかります? もうすでにできていること、していること、過去について「あれを当てた」とか言うのは最たる例ですね。

(スライドを指して)この図で何がわかるかというと、今の何が自分に足りないかとか、自分に実現可能なことに気がつくはずです。みなさんがチームを作るときに、自分の賛同者や反対しない人、支配できる人、言うことを聞く人を入れがちですよね。僕もそうですけど。

自分がちょっと変な努力を続けることと全部つながってくることで、自分を見つめていって、何かプロジェクトをするというときに、「こういうことをしたいけど、ここにこれが足りないよね」というのが、だんだんと真ん中に出てきます。

それができる人間と組めばいいというのが、僕のチームの作り方の考えです。

イエスマンではなく、「責任を共有できる人」と組む

僕だけが絶対に正しいかはわからないですけど、他の人と僕が仕事で差をつけたいときに、「あの人は自分の言うことを聞く人とばかり組む」という人は、あんまり怖くないと。

「あいつとあいつが混ざるとやばいぜ」というのが、本当はいいチームなのに、いざ自分でやると、自分の自信の問題だったり、時間がかかったりということで、そこを避けがちというのが……。そこがプロデュースしていくうえで、すごく大事なんじゃないかなと。

ここ10年ぐらい、僕はチームリーダーになることが多いです。そのリーダーをするときに、人に答えを考えてもらっても楽しくないと思うので、僕は責任を共有できる人とプロジェクトを組む。

だから、夢やお金ももちろん必要ですし、大事ですけれども、チームを支配しちゃうとすごく失敗する。自分にできないことができる人に、「俺の言うことを聞いて」と言っても、聞いてくれないです。自分にできないことができる能力者だから。

能力者を束ねていくときに何が必要かというと、「こういうことを目指しているけど、この責任を負ってくれないか」と言うと、意外と力を発揮してくれる。できない人ほど、今ある能力を必死で活用しようとするけど、そうではないという話です。

今までしている話もずっとそうで、コップの水の大小は確かにあります。才能ですね。コップの水がこれくらいの並みの人と、ものすごくでかいバケツみたいな才能のある人がいる。

でも、その中で「こうしてやろう」「ああしてやろう」ということばかりしている人は、さっき言ったように、競合でいうと怖くないと僕は思っていて。それを支配せずに責任を共有して、なんか組んでくる人がいい。自分の言うことを聞く人を、そのコップの中に入れていくのではなくて、外とつながれる人が、やっぱりチームとしては強いのではないかな、と思って働いています。

当たる企画を考えられるようになる習慣

明日から何が変わるかはちょっと存じ上げませんが、こういうことをやっていると、意外と企画というものは簡単に……。

まとめると、「自分が興奮できることはなんだろう」「みんなが今ほしがっていることはなんだろう」という、2つの輪が重なるところを考えること。よく考えると、今当たっている企画はそういうものなのかな。

ここで(自分の)好きと、「みんなが求めるものをこうやって合わせていくといいですよ」という、最初の話に戻ります。「自分にないものを持つ人をチームに入れて、責任を与えてやっていくと意外といいよ」と。

自分のことでいうと、人を支配するのではなくて、人に惹かれるには、自分を磨いていないといけない。自分を磨くのはすごく大変じゃん、と思うけれども、実は毎日ちょっとだけ変なことを続けていると、エピソードには事欠かないです。

そこをちょっとやっていると、「ああ、おもしろいことを常に考えている人だな。インプットがずっとロンダリングされている人だな」というイメージから、実際にそうなっていきますので、すごくおすすめだという話です。

よい企画にはアイデアと愛がある

さて、ここからはワークショップなので、みなさんと一緒にいろいろ考えていきたいなと。会議などで番組を作ろうというときに、僕がよくやるんですが「こんなのがおもしろいよね」という話をいくつか紹介した後に、みんなで答えてみようと。

今日は何をするのかというと、まずUHA味覚糖というお菓子会社ですね。これはマネーフォワードさんの社長室の方の力も借りて、「こういう(僕のワークショップのお題に出す)ことができないか」と言ったら、「めちゃくちゃおもしろいから声かけてみます」と言ってくれて。

あと、コンタクトレンズのメニコン。この2社が新しい企画をぜひ考えてくださいと。みなさんとワークショップで考えますということで、許可をいただきました。それで社長にまで届くそうです。

だから、自分の会社の儲けにはぜんぜんなりませんけど、ただちょっと楽しいかと思って(笑)。みんなで編集の練習とかしても、僕もおもしろくないし、ぜんぜん違うことをやるほうがいいかなと思って。

だからその実演を5人1組ぐらいになって、この後やっていこうかなと思っています。いきなりだとハードルが高いけど、みなさんの意見も聞きたいですし。

よい企画を考えるときに、僕がよく話すおもしろいエピソードがあります。これは都市伝説です。実際に調べると「そんなことは言っていない」と言われたので、放送はしていないですけど、事実なんてどうでもよくって。よくいわれる味の素の売り上げを倍にした方法を、社長がみんなに「考えろ」と。そうするとある社員が、「味の素が出てくる容器の穴の大きさを2倍にするべきだ」と言ったと。

まあ、嘘か本当かはいいです。だけど、すごくおもしろいなと。アイデアの目線と愛があると思った次第です。

アイデアは思いもしないところから生まれる

僕が読んだ本で、アイデアの本質だと思ったのは、スタンフォードの経済学部の授業の話で、5ドルのお金を2時間で可能な限り増やせと。例えば、スタンフォード大学の周りには、めちゃめちゃ混むレストランがたくさんあるけど、そこに代わりに並ぶことで、「並んでくれてありがとう」ということでお金を取ります、というのが第3位。

第2位が、自転車登校者に対して(タイヤに)自転車の空気を入れます。ただ、それを寄付で返す。もう10年ぐらい前だと思いますが、SDGs的な寄付でそれを集めます。そうすると、その対価になるであろう、1回やったら100円とか、1ドルとかよりも多くのお金が集まる。

1位の学生は、「100人ぐらいが出ていた授業のレポートが2週間後に提出される予定です。その情報を買いませんか」と。「この後、世界をリードしていく経済学を勉強する、若き優秀な人材のアイデアです」と言うと、スタンフォードの周りのあらゆる中小企業が買うと。そして莫大なお金になったという、なんともアメリカンドリーム的な話もあります。

思いもしないところからアイデアって生まれるな、という話ですね。

では企業のCMを考えてもらうので、みなさんも今考えてください。UHA味覚糖の新商品です。新しいグミを考えようと。ちなみに今1番売り出しているのは、リリーフランキーがCMに出ている『さけるグミ』という商品です。なんとなく、イメージはわかりますよね。

みんなが大好きなグミですけど、たぶんおじさんとか男性客も増やしたいと。さけるチーズ的に売ってみる、というのもなかなかおもしろいなと思います。そうやって新しいグミを考えていきます。

もしくはメニコンの場合。今新聞とかに載っているサブスクリプション(定額制)で、1ヶ月に1回届きますよという、配布システムとか。だけどこの後、競合がたくさん出てくるだろうということで、それをさらに拡大させるアイデアをみんなで考えていく。この2つのどちらかをみなさんに選んでもらって、それをみんなで考えていきましょうかという(ワークショップです)。

各企業のメッセージが込められた正月CM

それを考えながら、場つなぎで僕が正月におもしろかった話をしますね。箱根駅伝を見ながら、CMを見て、さっきのインプットロンダリングの話じゃありませんけれども、これはおもしろいなと。あらゆる企業が非常に力を入れて、正月のCMをやってくる。

視聴率30パーセントぐらい取っているから、みなさんも見たかもしれないですけれども、例えば大スポンサーのサッポロビールというところは、箱根駅伝を走っている人たちを映して、そのあと、なんてことない僕らみたいなおじさんを出してくると。小学校時代の写真に変わります。

小学校時代は僕の先を走るやつは誰もいなかったと。それが中学高校になると、だんだん僕の先を走る人のほうが多くなっていったと。箱根駅伝は、夢の舞台ですと。僕はその舞台には立てないけれども、こうやって仕事をがんばっているシーンが映る。素敵で、非常に清潔感がある。

一方で、トヨタ。僕は自分の車もトヨタですし、大好きですけどね。社長と香川照之さん。歌舞伎役者の(市川)中車さんですね。2人で、助手席と運転席に乗っていて、「社長! 社長はどんな車が好きですか!」「ガソリンの匂いと、ブーンとアクセルを踏むのが好きなんだよね! でもハイブリッドの音もしない。あれもいいね」。

トヨタはこんなことを考えている、あんなことを考えている、もう1分ぐらいのCMの中にものすごくいろいろ詰めこんでいる。それがいいなと思う人もいますが、僕は妻と2人でトヨタの車に乗りながら、そのカーステのところで見ていて、「なんか上からだな(笑)」と思ったわけです。

そんなことを感じながら、まあ、インプットロンダリングして、いろんな会議でしゃべるという話ですけどね。

敏腕プロデューサーも涙した箱根駅伝のCM

ソフトバンクは、もう東京五輪のCMかと思いました。八村塁が出て、大坂なおみが出て。今うなずいていらっしゃる方もいるので、見た方も多いのかもしれないですね。

これはこの夏、2020年、日本はえらいことになりますよというCMかな、と思って見ていたら、最後にぽんとソフトバンクって出るから、まったく企業のCMをしていない。通信が速くなるということも言っていない。電話はどこでも言っていない。だけど非常にインパクトが強くて、ああ、トヨタと正反対の売り方をするなと。これもアイデアだなと。

そんな話を聞きながら、どんなグミがいいかなって、考えてもらえるとおもしろいですけど(笑)。

そんな中、僕がぽろっと泣いたCMがあります。ハードルを上げちゃいますが、セコムのCMです。

箱根駅伝を走るみんなが……。(観客のみなさんが)うなずいている。見たと言うことですね。走っていて、「僕は箱根駅伝を応援しません」と、一言目のナレーションで出るんですね。めちゃめちゃいいなと。いきなりつかまれる。何を言い出すんだろうと。

「なぜなら」とはナレーションでも言わないですが、沿道で、(走者とは)反対向きになって、警備員が沿道から乱入者が出ないように守っていますよ、みたいな。すごく素敵な笑顔で。

ああ、そうか、(僕たち視聴者は)箱根駅伝を当たり前のように見ているけど、この人たちは見られないのかと。だけどこうやって、仕事をしているのだと。すごくいいなと思って。

そこからもう何も言わずに、ナレーションもなし。テロップだけで。これは間違えるとだめなので、ちゃんと言いますけど、『一生に一度の、今日を守る。』という、非常にさわやかなテロップが1行出る。

そして、最後に、セコム。SEなし。音なし。すごいなと。

こんなことをワークショップで考えましょう、というのではないですが、まあ、いろんなリーディングカンパニーがありますよね。だけど、やり方っていろいろあるなという話です。

アイデアは難しいし、10分や15分で考えつくものじゃないけど、みんなでちょっとだけ考えてみましょう。そういうクリエイターの癖をつけてやってみませんか、というお話でした。

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