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~セールスイネーブルメントのパイオニアが語る。これからのセールスイネーブルメント~4社対談×質問(全3記事)

営業の“詰め会”は無駄の極み 目標と現実のギャップを埋めるマネジメントのコツ

営業力の改善や組織改革の手段として今注目を浴びている「セールスイネーブルメント」。営業プロセス全体をマネジメントし、全体最適を促すだけでなく営業のディテールまで数値で見える化し、ミッション実現のための不足事項をシステム・施策・営業研修などを通して、再現性のある売れる営業・営業人材の仕組み化を目指します。本パートでは、すでにセールスイネーブルメントを推進している4社が、これからの時代を勝ち抜く「売れる営業の仕組み化」について語りました。数字が上がらない営業に対して、どんなマネジメントをすべきなのか、会場からの質問に答えます。

マネジメントは、理想と現実のギャップを埋めること

清水貴裕氏(以下、清水):今久我さんがお話している流れでお願いしたいんですけど。さっき(別のセッションで)「詰め会」の話があったじゃないですか。詰める会。

久我:あぁー、はいはい。

清水:数字を積み上げる会ですね。昔のセレブリックスさんは、相当詰める会をしていたと思うんですけど(笑)。

今井晶也氏(以下、今井):(笑)。

清水:もちろん険悪にしたいわけじゃないので、「詰め会」の最適な方法はなんでしょうか。工夫した点とか、「詰め会」を変な雰囲気にならないようにするには、なにかいい方法はないでしょうか、という質問が。

久我温紀氏(以下、久我):詰めないほうがいいですね。

清水:詰めないんですか。そうですね、さっきおっしゃっていましたね。

久我:数字がリアルタイムに入っているから、要は裸な状態。先ほどのダッシュボードの通称は「マッパ」というんですけど、「営業を真っ裸にする」という意味と、イタリア語かなにかで「地図」という意味で。

清水:へぇー。

久我:自分たちがゴールに行き着くための道標みたいな。(真っ裸と地図の)2つを掛けているんですよ。僕、「営業が不都合なデータを隠す」というのはストレスだと思っているんですよ。「鉛筆なめなめ」(「帳尻合わせのために数字を調整する」という意味)とか、無駄の極みじゃないですか(笑)。

(一同笑)

あと空中戦も無駄の極みです。「がんばります!」みたいなやつですよね。「お前、今月大丈夫なのか!?」「がんばります!」みたいな(笑)。あれほど無駄なエネルギーはないなと思っていて。

僕はエネルギーをエコに使いたいので、不都合なものも含めて現在の状態がデータでリアルに出たら、予算と見込にギャップが出ているというのが分かるじゃないですか。そのギャップをどうやって一緒に埋めていくのか、というのがマネジメントだと思っていて。

そのために、さっきのボードの中に「営業がどこに訪問しているか」というのが分かるものがあって。「ここのお客を攻めているんだったら、こっちを攻めたほうがいいんじゃない?」みたいな会話が出来るようにしているんですよ。だから、詰めない。

メドレー流の「1on1」の極意

清水:いいですね。僕はまた違う着眼点で話ができればなと思っているんですけど、僕は新卒には普通に教えるんですよね。詰めることはしないんですけど、違うなら「違う」と言い切るんですよ。理由は、若いジュニア層メンバーに「お前はどう思う?」と聞いてもわからないんですよね、引っかかるものがないから。

コーチングして、本当は「このプロセスだったらこうやったらどうなの」と考えてあげたら「いや、これが打ち手です」と言えるのはもちろんいいんですけど、言えないメンバーも多いので。「それだったらこうしていく必要があるよね」とこちらからティーチングすることは、僕は相手によってはありますね。

山川周氏(以下、山川):今、「気づき」を自分で持てないことがけっこうあるじゃないですか。けっこうこれは「課題を本当に課題として捉えていない」というのがありません?

清水:本当にありますよね。

山川:ね。だからこれも1つ、日報に非常に近いんですけど、1on1をやるときに「自分の課題はなにか」ということを書いてもらうんですよ。その次に「それはなぜか(why)」と思考して原因を見出す。それから「どうやって(how)」施策を企画して、「なんの成果(what)」が見込めるのかという仮説立てをしていく。

そういった、PDCAみたいなワークをしたときに、やっぱり詰めたくないから、寄り添う感じで「これはなんでかな?」みたいな。こういうキャッチボールは実際にやっていますね。課題や原因がそれなら、この施策をやりきれば、こんな効果は見込めるとは思うよ。みたいな。

「やりきれば結果が出るプロセス」を設計する

清水:今のお話を聞いていて、このキャッチボールはすごく大事だなと思います。昔、(セレブリックスは)キャッチボールというよりは叩きのめすという営業だったかもしれませんが(笑)。今はたぶん、ぜんぜん違うじゃないですか。

今井:(笑)。

清水:今はどんなふうなミーティングとか数字の会議を行われるんですか?

今井:大切にしている文化とか、プロセス至上主義とか、そういうことは変わらないですね。結果につながらないプロセスを追うのは無意味と思っているので、「プロセス至上主義」という標語を掲げているんですよ。そういう意味ではプロセスというのは、結果に基づいて常に変えるべきですし。

42.195キロのマラソンがあったとしたら、中間地点で何時間以内に行っていなければいけないというところに対して遅れているのであれば、途中のプロセスの目標を変えなければいけないですから。

なので僕からすると、言葉としては「プロセスをやりきったけど、結果は達成しませんでした」という言葉は存在しないんですね。「だとしたらそのプロセスが間違っていたよね」という感じなので。やりきれていないんですよ。

ということも含めて、プロセスを設計するところとやりきるというところは、「俺たちは死ぬほどそこにこだわろうぜ」と。なぜなら僕らはお客さんからお金をもらってお客さんの営業をやっているんだから、「ここにウソをついたら俺たちの未来ないぜ」と。ここは強く今も持っていますし、要望します。ここはスタンスとしては変えないです。

清水:はい。

久我:完全に同意ですよ。あっ、どうぞ。

清水:あ、どうぞどうぞ。久我さんのあとに話します。

今井:(笑)。

完璧なマネージャーは存在しないからこそ、「できる人に任せる」が最良の判断

久我:いや、すごくいい話だと思って。僕も組織は計算式にするべきだと思っていて、どこのプロセスがおかしいかを、僕らも可視化するためにあれをやっていて。それがわかったら、さっき言った「詰める」という行為がなくなるんですよ。いわゆる「実行可能な変数」がどこにあるかじゃないですか。

今井:はい。

久我:そこの状態に持っていくと、「詰める」という現象が発生しないんですよね。

清水:「組織を計算式にする」、すごく難しいですね。

今井:もう1つ。それでもやっぱり僕は、ソーシャルスタイル理論で言う「ドライビング」(ビジネスライクな性格で、プロセスよりも結果を重視し、決断力に優れている)、エニアグラムの「支配者」なので。

(会場笑)

やっぱり自分の予期せぬ、自分でコントロールできない事象が起こった瞬間に、心が葛藤したり動揺したり、瞬間風速でカッとなったりすることがあるんです。ここを解決する手段が見つかりました!

清水:おぉ、ちょっと教えてほしいです。

今井:「私が見ない」ですね。

清水:見ない。はぁー……。

今井:見ることを任せる、エンパワーメントする、ですね。

清水:適切な人に任せる。

今井:コーチングしたり、詰めずに一緒に問題を解決する人にその役割を与えればいいと。これですべて解決です。

清水:大事ですね。

今井:なのでミーティングで数字が悪かったときに、「私はそれを言う権利はないんだ」というところで、下唇を噛み締めて……!

(会場笑)

清水:わかりました(笑)。

久我:それは本当にそうですよ。だから完璧なマネジメントなんて無理なんですよね(笑)。自分の足りないところとか、いいところとか、うまく使うしかないですよね。

今井:そうです(笑)。できる人に任せる、というのが最良の判断でしたね。

ストレングスファインダーやエムグラムで、個人やチームの強みを可視化

清水:こうやってけっこう営業の話を、「データドリブンだ」とか話しながらですけど。今言ったような人の強みとかを活かした教え方や進め方は非常に大事だなと思うんですけど、セールスイネーブルメント上で強みを活かした動き方とかはけっこうしますか?

今井:しますし、やっぱり可視化するのは大事じゃないですかね。

清水:どんな可視化をしているんですか?

今井:やっぱりストレングスファインダーですね。

清水:それはベルフェイスも一緒ですね。

久我:それをうち、ダッシュボードにしますから。

今井:へぇー!

久我:結果を入れていて、どういうチームメンバーの構成なのかもみんなで見ています。

清水:へぇー。じゃあチームに「この要素が強い」「戦略性がいっぱいいる」「赤色ばっか」とか、そういうのが出るということですね。

久我:そうです。見事に偏っていておもしろかったです(笑)。

今井:(笑)。

清水:会社全体で見たほうがおもしろいですよね、偏りがけっこうあって。

山川:僕がよくやるのは、それこそエムグラムをみんなでやっておいて、診断結果を元に「これは誰だ?」みたいなクイズにするのを懇親会の余興でやっていました。

今井:いいですね(笑)。

久我:さっきの「データで可視化をする」というと、データで徹底されているみたいなイメージがあるかもしれないんですけど、それはぜんぜんなくて。あれ、状態は表していますけど、例えばパラメータを変えるような動きのアイデアはいくらでもあるじゃないですか。

そこはその人の個性が生きればいいと思ってます。得意なゾーンに行けばよくて。例えばお客さん先の新規開拓をするのが苦手なヤツは、違う顧客をやらせてみて結果としてパラメータが変わったかどうか、みたいな。

そうすると、じゃあこっちの適正はあるのか、フィールドセールスはダメだったけど、インサイドセールスだとあるとき成果が出る、というのが出てきます。データを見ながらチューニングするのは必要だな、と思いますね。

清水:適材適所につながっていくということですね。そう考えるとこの仕事は幅広いですよね。ぜんぜん教育じゃなくて、「これ、HRじゃない?」というところも拾ったりしますよね。

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