2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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日比谷尚武氏(以下、日比谷):じゃあ、酒居さん。
酒居潤平氏(以下、酒居):はい。僕はユーザベースという会社のグループ会社、株式会社FORCASでマーケティング部門を担当しています。
ユーザベースという会社をご存じの方も、少しいらっしゃっていただいているかもしれないんですけれども、「NewsPicks」という経済メディアであったりとか、「SPEEDA」という企業情報のプラットフォームをやっていたりする会社です。
そこの3つ目の事業として、2年半ぐらい前に「FORCAS」というB2Bマーケティングのサービス、SaaSプロダクトを立ち上げました。僕は2017年にFORCASにジョインしまして、マーケとインサイドセールス部門の立ち上げに従事してきました。
今回「カンファレンスの仕掛け方」というところで、自分自身のイベントとの関わりでお伝えしますと、もともと僕は金融機関で働いていて、今とは全然関係ないことをやっていたんです。
その後、Webマーケの世界に入って、前職では日比谷さんと同じころにSansan株式会社で働かせてもらってまして、そこのマーケ部門でカンファレンスの企画運営の担当を始めたというのが、けっこう大きなターニングポイントです。
そこでやっていたのが、Sansanが主催する「Sansan Innovation Project」というプライベートカンファレンス。それを2年目から担当することになりまして。1年目はちょうどここの虎ノ門ヒルズさんでやらせていただいていたんですよね。
そのとき僕は、まさか自分が担当するとは思っていなかったんですけれども、その後2年目からはヒルトンお台場東京のフロアを貸し切って、3,000人ぐらいのイベントを最初はやって。
その後は大阪とか福岡、名古屋とかそういった地方で500から1,000人規模でイベントをつくっていくみたいな。そういったかたちでやっていました。それがカンファレンスに関わり始めたきっかけですね。
酒居:今はイベントをマーケティング施策の一環として実施していて、特にオフラインイベントに力を入れていて、だいたい100人から300人ぐらいのイベントを月間2、3回くらい開催してます。
日比谷:(笑)。100人から200人規模を、月間2、3回? 3回もあるってことですか?
酒居:そうですね。今月は4回あるんですけど(笑)。
日比谷:毎週ってこと?
酒居:そうですね。やっています。明日もちなみに150人ぐらいの規模でやるんですけど。
日比谷:それ、毎回テーマが変わるんですか?
酒居:テーマ、変わります。
日比谷:じゃあ、コンテンツも呼ぶ人も、イベント別に。
酒居:毎回変えてますね。なので、僕は基本的に企画や登壇者アサインを担当していて、あとは運営のメンバーと一緒に3、4人ぐらいでやってます。
松林大輔氏(以下、松林):3人でやってるってすごくないですか? 僕、ちょっと倒れそうになりました。それを聞いて。
日比谷:すごいですよね。
松林:「できんの?」みたいな。
酒居:みんな大変だと思います(笑)。あと、これ以外に、20人から100人ぐらいの小規模なセミナーも週に2回ぐらいやっていて、会社全体で言うと……。
松林:(笑)。
日比谷:計算がよくわからないです。
酒居:月間10本ぐらいで。去年だと、僕も含めて3人で100本ぐらいイベントをやっていました。
日比谷:今日は1,000人規模のカンファレンス……。
松林:これは特殊ケースですからね。こんなんね。ちょっと(笑)。
酒居:あんまりご参考にならないかもしれないんですけれども。今回お話しさせていただくのは、そのようなイベントとは別で企画したものですね。
酒居:7月24日に、この虎ノ門ヒルズさんで『SaaSway Conference』という、SaaSの企業が一堂に会するカンファレンスを開催しまして、当日は1,300人の方々にお越しいただきました。
これは、SaaS業界では現時点で最大級規模のイベントかなと思っています。あともう1つ特徴的なのは、業界では珍しく有料のイベントで、お1人1万円で集客させていただいたというかたちになります。
世界観などの作り込みに力を入れて、ラウンジの設計だとか、Box, inc.の(共同創業者兼CEO)アーロン・レヴィさんにご登壇いただいたりとか。SaaS業界を代表するリーディングカンパニーの経営者の方々に集まっていただいてご登壇いただいたというようなイベントになりますね。
……というかたちになりますので、よろしくお願いいたします。
日比谷:おもしろいですね。前段のやつはどちらかというと自社セミナーですよね。100人~200人規模の。
酒居:そうです。
日比谷:営業セミナーに近しい。とはいえ、売り込みじゃなくて、もうちょっと業界の話題になるような、知見の高まるようなことをやるんでしょうけど。
酒居:そうですね。
日比谷:対して、こちらの「SaaSway」はどちらかというとSaaS業界全体を盛り上げるというものを、1社でやったという。
酒居:そうですね。もちろんスポンサーさんにもご協力いただいていますけど。やっていますね。
日比谷:自社ブランド単独のカンファレンスじゃなくて、業界カンファレンスみたいなことをやっちゃうわけ?
酒居:そうですね。僕らもそれこそ、松林さんが最初に始められたときと一緒で、FORCASは30人ぐらいでこれをやったんですね。実際、イベントのメンバーは僕を含めて4人ぐらいでやったんですけれども。なので、ヒーヒー言いながらやりました。
日比谷:それは大変でしたね。ちょっとその辺の具体的な話はここら辺までにしていただいて。
日比谷:私の紹介もしちゃいますね。私はパラレルワークで、かなりいろんなポジションを平行してやっているもので、何から説明したらいいのかよくわからないんですけれども。
わかりやすいところでいうと、3年ぐらい前まで酒居さんと同じくSansanという名刺関連のサービスの会社にいました。そこでマーケティングや広報部門の立ち上げを創業時からずっとやっていて、後半は渉外担当として外交官的な感じで、外とやりとりをするという役割をしていました。
3年前に辞めまして、独立して。Sansanとは今でも関わっているんですけれども。
独立した段階で松林さんと出会って、at Will Workの理事として活動もしていますし。他にもイベント絡みだと、なんだろう。日本パブリックリレーションズ協会という業界団体があって、そこの発信や広報委員をやってみたりとか。PR Tableという、PRに関するスタートアップの操業に携わったりとか。
イベントだけに限らずですけれども、企業や団体が世の中に発信したり、組織と外の世界とのコミュニケーションをどうするかという、コミュニケーション設計みたいなところを専門にしていて。
それを、とくにスタートアップとか行政につなぐところで、今は活動しているところです。
なので、お二人とは縁もあるし、イベントやカンファレンスも、僕も大小いろいろとやっているので。どっちかというと身内でもあり、僕も僕でノウハウを聞きたいから、ちょっと引き出し役としてやらせてもらおうかなと思っています。
日比谷:じゃあ、ちょっと前振りが長くなったけど。ドン。これ(今回のトピック)ですよ。いよいよ本編に入っていきますけれども、ちょっと詰め込みすぎて(スライドの文字が)見えないかな。
大丈夫かな。見えます? カシャッと撮って手元で拡大して見るみたいなパターンもありですよね。
松林:あー(笑)。これ、赤い色のところが、この前話したやつだよね。けっこう、「どの質問を聞きたいですか?」みたいなのをやって。みなさんに声をかけさせていただいて。
日比谷:とくに聞きたいってところだったから、ちょっと優先で赤くしたんですよ。(全開は)そこも話しきれなかったんだけど。でも赤いところは今日初めて来る方もいるから、ササッとなめつつも、まんべんなく聞いていきます。
ここでSli.doが出てきますので、みなさん。もしこれを見て「私ここのところ聞きたいんだけど」とか、例えばさらっと話して終わっちゃったところで「もっと聞き込みたい」っていう場合は、このSli.doに投稿してください。
いきますかね。一番最初に、「ここを話したいんだけど」って、さっきお二人が言っていたじゃないですか。「テーマがある」って。そこのところからいきなりいっちゃおうかなと思って。
松林:なんでしたっけ。
日比谷:なんでしたっけって(笑)。
酒居:松林さんが言ってたやつですよ(笑)。
松林:あー、そうそう。今すごくカンファレンスをやる企業さんが増えていっている。
ご検討されている企業さんとかも多いんですけれども、実際やって思うのは、認知活動というか自分たちの伝えたいメッセージを伝えるのに、すごくいい方法だなと思っていて。それがこの3年ぐらいで、(カンファレンスを)やる会社がグッと増えていっているんです。
増えた分、そういう会社も増えて認知が上がったんですけれど、このスライドに入っている6番の「コンセプト作り」とか内容の作り込みというのが、すごく重要になってきているよねという話がけっこう盛り上がってたんですよね。
酒居:そうですね。
日比谷:それは酒居さんも言ってましたけど、そこを最初にいきますか? ちょっと(スライド上の)トピックの順番が、イベントを設計するときの時系列に必ずしも沿っていないから、ちょっとわかりにくいですけれども。
日比谷:このコンセプト作りが実は一番ド頭にくるところですよね。
松林:これはけっこう重要やなというのが、今になって(思う)。最初イベントをやるときは僕らも、「なにか大きなイベントをやりたい」という気持ちや「情報を発信する場が欲しい」みたいな感じで、「自分たちの認知にもつながるし」といってやったんですけれども。
目的を曖昧というか、そんなに明確にせずにスタートして。当時はよかったんですけれども、今は被り合っているところが多いじゃないですか。だから、「KPIをどう考えますか?」とか「どれぐらい営業につながるんですか?」とかけっこうよく質問を受けるんですよね。相談を受けるときに。
でもそこから設計すると、すごくおもしろくないイベントになる傾向がけっこうあって。実際他の人がやっているイベント、自社のイベントもけっこう気をつけたりもするんですけれども、イベントの内容がおもしろくなくなってしまう傾向にあるので。
(コンセプト作りが)そこそこ重要やなという。そんなところですね。
酒居:そうですね。実際、僕が企画するときとかに大切にしているフレームワークとしては、最初に2つあって。
まず1つ目に、まずは最初にそもそもの目的設定、「なんでこれをやるんだっけ」というところをしっかりと自分たち自身で認識するというところ。
それがないと、結局そのあとの設計もできないですし、振り返りもできないという。目的のところは、みなさんもちろん考えられると思うんですけれども、そこをできるだけいかに明確化できるかが勝負だなと思っています。
あと、コンセプト作りというところで言うと、その後の目的で終わるんじゃなくて、その後のテーマに落とし込むというテーマ作りがすごく重要なんじゃないかって思っています。ここでいうテーマとはカンファレンス全体のテーマ設定ですね。
日比谷:コンセプトとテーマって何が違うんですか?
酒居:抽象的なコンセプトを具現化して、より具体化したものをテーマとして考えてます。例えば僕らの場合、目的を設定したときに2つの観点があって。
ビジョン的な目的で言うと、僕らはSaaSが大好きで、「SaaSの世界観をもっと広げていきたい」というものがある。あとマーケティングの観点で言えば、「SaaS業界のマーケットをもっと広げていきたい、成長させていきたい」というものがあったんですよね。
それを達成するためのテーマとして、「日本のSaaSシフトを加速させる」というテーマをつくりました。
日比谷:キーフレーズみたいな、スローガンみたいな。
酒居:そうです。カンファレンスのスローガンですね。
テーマというのは、旗だと思っていて。みんなに、「ここがゴールだよ」とか「ここにみんな集まろうぜ」と掲げる、大義の旗だと思っているんですよ。
日比谷:大義ね。
酒居:なので、そのテーマが曖昧なものになってしまうと、結局どこに集まればいいのかとか、誰に来てほしいのかがわからなくて、目的を自分たち自身で設計しても、結局それにあった形作りがけっこう難しくなってしまうかなと思っています。
日比谷:例えば、その今の話を受けると、at Will Workなんかは新しい働き方の考え方というか……。
松林:働き方の選択肢。
日比谷:働き方の選択肢。なんで俺言えないんだろう(笑)。「働き方の選択肢を広げる」というのがテーマだけど、例えばそれが目的だとしても、個人の働き手の人に来てほしいのか、企業の人事部に来てほしいのか。
はたまたその人事サービスをやる人に来てほしいのか、政策関係者に来てほしいのか、ぜんぜんアプローチの内容が(変わってくる)。おもしろいですよね。
松林:そうですね。だから1年目のときと、次にうちがやるイベントとは内容が変わってきて。
日比谷:変わってきてるんですね。
松林:コンセプトが違うので。人数もそうだし、参加する人は、次(のイベント)で言うと「経営者を呼ぼう」という。会社の経営をもっと変えていって、会社側から変わっていくようなイベントをやっぱりやっていかないといけないよね、という方向性なので。
それに設計も寄っていますね。だからちょっと変わっています。それでぜんぜん変わっていく。
日比谷:それはやっぱり、そのコンセプトが……。
(スライドを指して)今、「コンセプト作り」と、そのために「どういうコンテンツにするか、どんな登壇者を呼ぶか」という、トピック6番7番あたりのつもりで聞いているんだけれども。そうすると、編集者みたいな感じですよね。
松林:そう。ここはチームでけっこうディスカッションした方がいいと思うんですよね。
日比谷:7番のあたりですよね。コンテンツ、どういうセッションを設けるかとか、どういう内容を散りばめて、どういう人にそれを語ってもらうかみたいな設計を。
松林:そうなんですよ。昔は「イベントやろう」と、イベントをとりあえずやるって感じでもよかったんですけど。
(今は)カンファレンスが増えてきているので、こういうところがけっこう重要視されていて。
実際、僕らイベントをやっている人間がイベントに行くときも、そのコンセプトとか誰が登壇するかというのを、かなり重要視するようになってきましたよね。って、さっき(楽屋で)盛り上がってたんですけど。
日比谷:目が肥えたっていうこと?
松林:そうです。
酒居:今までは、それこそ誰が出てるかとか、どういう登壇者がいるかみたいな、登壇者で集客ってけっこう……。
松林:そうなんですよ。「ホリエモンが来る」みたいな。あんまり個別で名前を出すのはあれですけれども、そういう「誰々が来る」とか、「いい場所だから来る」みたいなね。それだけ、というのがありましたけれども。
酒居:今って、それこそ「誰と誰がどういうテーマで話すか」とか、そこの組み合わせ、コラボレーションで、どういう話ができるだろうというわくわく感で、「じゃあ行ってみようかな」となったりだとか。
みなさんの興味とか自分自身もそうなんですけれど、「それだったら行こうかな」みたいなところって、今までの表層的なところからもうちょっと深掘りしたところに変わってきているんじゃないかなと思います。
日比谷:それってその、2人が目が肥えているからとか。おそらくSaaSのイベントはすごくいっぱいやっているし。
ちょっと今年に入ってからは落ち着きましたけれども、やっぱり働き方改革(というテーマは)……まあブームと言っちゃいますけど、2~3年ぐらい続いた中で、いろんな人がカンファレンスやイベントをやっていたから、みんなも飽きてきた、ないし目が肥えてきたというところもあるのかなと思いますけど。
やっぱりそうはいっても引きの強い登壇者とか、話題の人が来たら「じゃあ、行こうかな」というのはどうしてもありますよね。その辺はどう、天秤にかけるんですか? そこでもやっぱりコンセプト重視?
松林:コンセプト。コンセプトを絶対に先に置いたほうがいいと思いますね。
ぜんぜん違うお話になってしまって、目的が達成されないとか。軽い感じの人が来てしまって、ぜんぜん違うターゲットの人に認知をしてしまうみたいな。そういうのになりがちというか。
イベントをやったこと自体が満足になってしまう、みたいなかたちになるんちゃうかな。
日比谷:確かに、その通り。
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