2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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伊藤羊一氏(以下、伊藤):最後は自分の軸みたいなところ。「軸を持て」とかよく言われるじゃないですか。「でも軸ってなに?」みたいなことで、最近私が気づいたのは、それは自分の過去・現在・未来だなと。
要するに、大事なのは未来じゃないですか。「未来はこうしたい」ということなんですけど、それは現在を大事にしているから「こうしたい」と思うわけなんです。
「未来を考える」「志を持て」とかよく言われるんですけど、やっぱり志だけを考えてもダメで。志を考えるにあたっては、今自分が大事にしていることがつながってくるわけですよ。そしてそれがつながっていると、説得力があるんです。
そうすると現在を考える必要がある。そして「現在の自分が大事にしていることはなんだっけ?」を考えるときには、過去の自分につながってくるわけです。
「今一番大事にしていることなんですか?」と一人ひとりに聞いてみると、全員違うことが出てくるわけですよ。同じようなことを言っていても、細かく聞いていくと一人ひとり違うわけです。ここにいる約70人の方たちが全員違うんです。なぜならば、それぞれ違う人生を歩んでいるからなんですね。
今日この瞬間に僕らは経験を共有しています。今日の経験においては似ている部分があるかもしれないですけど、辿ってきた人生が違うから考えていることが違うんです。
そうすると、自分の過去を振り返ることによって「俺が大事にしている思いは、なんでこうなんだっけ?」というWhyを知ることができて、そこからの未来につながります。想像するときは、「今俺が大事にしていることはこういうことなんだけど、それで未来はこうなる」というSo whatを考える。ここがつながっていることがすごく大事です。
過去は現在につながり、現在は未来につながる。ということで、みなさんの過去・現在・未来、自分自身の経験を振り返り、今考えていることを知り、未来に対して想いを馳せること。これを僕は軸と呼ぶんじゃないかな、と最近思っていますね。
伊藤:どうしてこれを「0秒で動け」に関して言っているかというと、僕は自分の過去・現在・未来を毎日振り返って考えているんですよ。「今俺がこうしているのはなぜか?」「今こういう思いがあるからだ」「過去にこういうことをやってきたからだ」と、常に考えているんです。
そういった軸を自分の中で明確にしようとする行為を無意識にやっていて、なにか事があると、そこにあててみるんですよ。あててみると、答えめいたものが出てくるんです。
僕自身の軸は過去・現在・未来のつながりのことで、これがしっかりしているとなにかがあったときにパッと自分なりの答えが出せる。
そういうことをかなり最近意識していますね。だからここを鍛えると0秒で動けるというか、動きやすくなる。こんなことがあるんじゃないかと思います。
じゃあ、「現在の延長線上にしか未来はないのか?」というと、基本はそうなんですよ。現在の積み重ねが未来になっていくわけですからね。でも、「違う未来を作りたいんだ」「俺は大逆転したいんだ」というときは、今からの経験を変えていけば違う未来に踏み出すことになります。
だから今と違う未来を作りたいのであれば、今日から経験を変えてみるのがいいのかなと思っていますね。
尾原和啓氏(以下、尾原):でもあれでしょ、さっきの伊藤羊一さんの話だと、違う経験を踏むことによって違う未来が見えるわけだけど、実は違う未来を見ることでその未来に合った自分のルーツというものがあることを発見しているんですよね。
伊藤:うん、結局はあるんですよ。だって「そこに行きたい」という思いも、自分の経験から来ているわけなのでね。ここはそういうふうにつながっている。今までフォーカスしてきた過去を思い出して、「だから今こうなっているのか」と振り返ってみると、やっぱりつながっているんですね。
尾原:変化の時代にはこれも大事な要素で、変化の時代では迷いなく進めることが大事なわけです。迷うというのは、あれかこれか考えること。だから迷うわけですよ。
それに対して「自分はここから来たからこっちに行く」というものが軸として1つあると、「あれかこれか」じゃなくて「俺はこれがしたい」になるわけじゃないですか。それが最強に整ったのが、「海賊王になる」としか言わないルフィのようなやつで。
(会場笑)
どんな苦難なときでも、彼には「海賊王になる」という選択肢しかない。だから彼は誰も行けない大海原の向こう側に行くし、『キングダム』も結局はそうです。「俺が万人将になる」「大将軍になる」という大きな目的がある。
どんな苦境のときにもそれしか選ばないから、結果的にほかが一瞬迷ったときに、自分だけが進める。だから勝ちを掴み取れるんですよね。それはさっき言ったように、変化の時代であれば(同じ考えの人が)100万人くらいいるから、迷った瞬間に遅れるということなんですよ。
伊藤:そうですね。
尾原:大事なことをもう1つ挙げると、ソーシャルの時代だということですね。ソーシャルの時代はごまかしがきかないんです。そうするとやっぱり軸を持っているやつ、自己一致しているやつに仲間が集まるんですよ。
伊藤:そうですね。
尾原:ブレていると「あいつの言ってること、なんかよくわかんねー」になっちゃう。でも、例えば「とにかく伊藤羊一さんは常に吠えているな」というのがあれば、「吠えさせたいときは伊藤羊一さんを呼ぼうよ」となる。
伊藤:(笑)。なるほど。
尾原:いい意味で言っていますからね。
伊藤:ありがとうございます。
尾原:だってこれ、壮大な背中押しの本じゃないですか。
伊藤:なるほど。だから構造化しようと思ったら尾原さんを呼ぶ、とかね。
尾原:そうそう。こういうふうに一致していると、みんなにとってのポケモンになれるんですよ。「炎のモンスターが必要なときは伊藤羊一を呼ぼう」と。で、「どちらかというと分析タイプで、小ずるく勝つミドレンジャーみたいな勝ち方が必要なときは尾原を呼ぼう」みたいなね。
伊藤:(笑)。そういうのがね。
尾原:そこはフォローしようよ(笑)。
(会場笑)
伊藤:流すことにしていいかな(笑)。
(会場笑)
よく流して、村上臣さんとかにも怒られるんですよ。すいません。
尾原:いいです。でもそれがやっぱり、まっすぐ進む伊藤羊一さんの自己一致性ということになると思います。
伊藤:一人ひとり違っているわけなので、一人ひとりが違う軸をどれだけ経験を通じて強くするかみたいな、そういうことが大事なんですね。
尾原:そうですね。一方でさっき言ったように、自分が今思っている軸は単なる可能性のある軸の1個にすぎないんです。もし別の未来を作りたいんだったら、別の未来に対する経験を作りにいく。でも、経験を積むと必ず新しい未来に合う過去の原点がなにか見つかるから、そこで軸を通し直すという。
伊藤:そうですね。僕、今回は書いていないんですけど、結局こういうふうに変えたいときは、そうやって現在の経験を積んでいくんだけど、そこに至った自分の過去は必ずありますよね。だから今こうやって変えようとしているんだという。
尾原:だって、もう変化の時代は現状の外にしかゴールがないんですよね。現状の中にゴールがあったら、そんなのとっくに解決されているわけじゃないですか。
伊藤:なるほどね。
尾原:そうすると現状の外に出ないとだめで、じゃあ現状の外に出るためには、1回自分の軸の延長線上にないなにかをする必要性があって。
伊藤:そうですね。
尾原:でもきっと1回現状の外に出てみると、自分の中に現状と交点を結ぶ過去の経験というものが必ず見つかるはずなんです。
伊藤:なるほどー。
尾原:その中で自分の軸を作り直すことが大事ですよね。
伊藤:ありがとうございます。
尾原:まあこれ、ジョン・ディマティーニのパクリなんですけれども。
伊藤:すごい。本をこう……俺が書いたのはこんなことだったのか、みたいな(笑)。
(会場笑)
尾原:「この説は〇〇が原典です」とか言っていけますよ。
伊藤:なりますね(笑)。
尾原:でもそれがすごいところなんですよ。僕はものすごい量の原典を知っていて、そのコンビネーションの中でオリジナルの軸を作っているんですけど、伊藤羊一さんのすごいところはそれを自分の経験の中から構造化されているんです。だから強いんですよね。
伊藤:それはね、明確に意識しているから。そうしないと説得力が持てないんですよ。この自分の経験はN=1かもしれないですけど、俺に関しては正解だというのがあるから自分の経験は大事にすると。
尾原:そう。さっきもちょっと話したんですけど、今はもうサイエンスではなくエンジニアリングの時代なんですよ。サイエンスというのは、すべての状況によって正解なものを探す学問なんですよね。
エンジニアリングというのは、例えば一番わかりやすい話でいうと、アロンアルファがあるじゃないですか。あれ、なんでくっついているのか未だ誰もわかっていないんですよ。
伊藤:へ~。
尾原:飛行機が空を飛ぶのは一応ベルヌーイの定理というのがあるんですが、あれも本当かどうか、まだわかっていないんですよ。ただ100パーセントに近い確率で飛行機を飛ばすことができているから、僕たちは飛行機で飛べるんです。つまりこれがサイエンスとエンジニアリングの違いなんですね。エンジニアリングは、要は再現性があればいいわけです。
伊藤:なるほど。
尾原:さらに言えば、全員に再現性がなくてもいいわけです。伊藤さんが聞いたことを自分でやってみて自分の中で再現性があれば、それで有用性なわけです。もうサイエンスまで深掘りする余裕は、僕たちにはないんですよ。
伊藤:なるほどですねー。
尾原:もちろんサイエンスはまったくグラウンドを変える学問なので、それはそれとしてきちんと基礎的にやっていく必要性はあります。でもその結果を待っているほど僕たちには余裕がないので、いかにN=1の中から再現性を作っていって、自分たちの武器を増やしていくか。そういうエンジニアリングの技法の時代なんですよね。
伊藤:なるほど。ちなみに飛行機はなぜ飛ぶかわからないという説に対して、ある学者の方は「飛行機がなぜ飛ぶかわからないというのは嘘である」と言ってね。
尾原:そうそう。
伊藤:そういう説が出ていたけど、あれを読んでみたら「結局わからない」と。
尾原:「結局わかんねー」と書いているじゃないか、お前はと。
伊藤:やっぱりわからないんだなと、最近そんな対談記事がありました。僕はこれを0秒で動こうとするときに、これをあてるとある意味答えが出てくるから「そんなふうに軸も据えよう」と、そんな文脈で使っているわけなんです。
リーダーシップの文脈でもこの話をよくしていて、結局、最終的には全員が社会をリードしていくという話になって。それは別にロケットを飛ばすとかそういうことじゃなくて、社会が良くなる、つまり誰かが喜ぶことをする。そういうことをやるリーダーになりましょうという話をしていたんです。
そのためには1人じゃできないから、Lead the People、人をリードするような存在になりましょうと。Lead the Peopleは人を巻き込むリーダーになることなので、じゃあどうしたらなれるのかというと、結局自分自身がリードされていく、自分自身が熱狂している、自分自身がこういう思い持っているというのがやっぱり大事で。
ここの前提としてLead the Selfされている、というのがあるんですけど、これは過去・現在・未来の軸をしっかり持つということなのかな。そうするとリーダーシップは一人ひとりが持つことになるんですよと、そんな話をしています。これは明確に原典がありまして、野田智義さんという人が。
尾原:あっそうなんだ。
伊藤:はい。『リーダーシップの旅 見えないものを見る』という本で言っています。彼は日本興業銀行の先輩なんです。これを僕も言わせてもらっていて。で、こんなことをやり続けましょうということで、尾原さんの解説とともに本の内容をお話ししてみました。
尾原:20分で解説すると言ったところを、既に80分です。
(会場笑)
伊藤:そうなんですよね。僕、「時間」「1分で」「0秒」とか言っていますけど。
(会場笑)
だいたいこれがデフォルトです。
尾原:まあ僕がけっこう喋っていますからね。
伊藤:途中で僕が話すより、尾原さんに逐一お話を聞きながらやりたいなと思ったので、無理やり構成を変えてもらって。ひとまず『0秒で動け』の最初から最後までを、もうこれで舐めていただいたので、これで今日読んでみると「そういうことか」と、尾原さんの顔が浮かぶ。
(会場笑)
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