2024.10.10
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司会者:「ヒットアプリの裏にある『メモ』」と題しまして、パネルディスカッション形式でお届けします。それでは登壇いただきます。モデレーターは、フラー株式会社代表取締役CEO渋谷修太です。パネリストをご紹介いたします。SHOWROOM株式会社代表取締役社長の前田裕二様。続きまして株式会社幻冬舎編集者の箕輪厚介様です。では、お願いします。
渋谷修太氏(以下、渋谷):よろしくお願いします。フラー株式会社の代表取締役、渋谷です。本日はお集まりいただいてありがとうございます。さっそくですが、最初のセッションですね。
おそらく本日もいろんな方が期待や注目をされてお越しいただいたかと思いますが、タイトルは「ヒットアプリの裏にある『メモ』」ということで、SHOWROOMの前田さん、そして幻冬舎の箕輪さんとお送りしていきたいと思います。よろしくお願いします。
前田裕二氏(以下、前田):よろしくお願いします。
箕輪厚介氏(以下、箕輪):よろしくお願いします。
(会場拍手)
渋谷:実現してうれしいです。最初に「#AppApeAward」でハッシュタグが出ていたと思いますが、ぜひツイートして、会場のみんなで盛り上げていけたらなと思います。登壇者のご紹介をさせていただきます。まずは僕について軽くご紹介させてください。フラー株式会社の代表取締役をしております。
フラーという会社は2011年に始まりまして、今7年経ったところで、僕もちょうど去年30歳になりました。今日のApp Ape Awardの原点というか、「App Ape」というアプリの分析サービスをやっていまして、今日、去年一番流行ったアプリを表彰するというイベントがございます。
われわれは、モバイルのデータを集めてそれを上手く生かして、ヒトの幸せを創る。そういうミッションで会社をやっております。
渋谷:大きく分けて2つの事業をやっています。1つが今日お集まりいただいているApp Ape Awardの「App Ape」というプロダクトです。
簡単に言うと、どのアプリがどれくらいのユーザーさんに使われていて、どういう人に、いつ使われているか。そういったアプリの視聴率情報のようなものを提供することで、いろんなアプリの開発会社さんやそれを支援する会社さんを手助けするというプロダクトです。ぜひよろしくお願いします。
おかげさまで、ユーザー数はどんどん順調に伸びています。
去年までは日・韓・アメリカの3ヶ国のデータを提供していたのですが、今はどんどん増やしていまして。今年中にはドイツ・インド・インドネシア・ブラジルなど、おそらく20ヶ国くらいまで拡充して、いろんな国のマーケットのデータが見られるようになるかと思います。
多くのクライアント様にご利用いただいていて、今日もいろんなお客様をお呼びさせていただいているのですが、引き続きよろしくお願いします。これがApp Apeです。
もう1つ、軽くご紹介すると、アプリの過去のご利用データを基にアプリ開発をする事業もやっていて、まさに「ヒットアプリを作る」という事業をやっています。
「Netflixがデータを基にオリジナルコンテンツを作るようなものの、アプリ版をやりたい」ということでやっていて、その一番の成功事例が、スノーピークさんというアウトドアブランドのアプリです。
われわれがこれを開発させていただいていまして、おかげさまでレビューもすごいです。僕らは基本的に「レビューも4以上になるアプリを作る」ことをミッションにしてやっています。
前田:1つ聞いてもいいですか? アプリを共創するうえで、レビュー数がKPI、ということでしょうか?
渋谷:レビューは1つのミニマムというか、「4以上にしましょう」というものを確保して、KPIはお客さんと共に創ることにしています。なので「共創事業」と呼んでいて、「このケースだとユーザーを1年でxまで増やそう」というものです。
KPIを(お客さんと)一緒につくらないと、(方向性が)おかしくなってしまうんです。なので分析を足していって、どんどん使いながらつくっていくのがミソかなと思います。
前田:なるほど。Netflixさんで「ここで人がすごく離脱している」「この瞬間、みんなのエンゲージがすごく上がった」とデータを分析して抽象化した、ビッグデータみたいなものですね。それをスノーピークさんのマーケティングに取り入れて、離脱率を下げたり、チャーンレートを下げたりするということなんですね。
渋谷:そうです。例えばポイント機能は、「こういうアプリが上手くいっていて、よく使われている」ということを見られるとか。「チェックインはこういう作りだといいね」「アプリ内の決済はどういう動線にしたらよく使われるか」などというものをデータを見てやっています。
一番特徴的なのは、お客さんにもカスタマイズしたApp Apeのようなダッシュボードを提供して、週次で数値を見ながらPDCAを回すことですね。
前田:フラーが取れるものとしては、まずは定量情報だと。そこに人間が解釈を加えずに別のアプリでまたヒットを出す、ということはできないので、人が頭を使って考える。
なので、「将来的にはこの仕事をまるっとAIに任せていこう」という発想ではなくて、基本的にはちゃんと営業担当のコンサルタントやその事業の担当など、人間が介在している。そして、その人間がヒットアプリからいろいろなことを抽出してこっちに持っていく、という解釈の転換みたいなことをやっているんですね。
渋谷:おっしゃるとおりです。一番大事なのは、データを見ただけではヒットしたことの掛け合わせになってしまうんです。ただ、ミニマムでみんなが欲しい機能は確かにあって。
「店舗のアプリならこの機能だよね」というのはベーシックで担保して、その中でスノーピークだから必要な機能を入れています。例えばキャンプ用品を売っているので、取扱説明書的なものが見られるようになっているんですよ。テントの組み立て方を動画で見られたり。服だったら買った後に着方(を説明することは)そんなに必要ないんですけど、テントには必要です。
なのでベーシックな部分は、絶対に必要だと思っているものをデータでコンセンサスを取りながら、オリジナリティなところになるべく時間を使うようにする作り方になっています。
これはこの後のお話にもつながっていくところなので、僕のご紹介はこの程度にさせていただきたいと思います。では、続いて前田さんよろしくお願いします。
前田:SHOWROOMの前田と申します。SHOWROOMというライブ配信サービスをやっていて、ちょうど去年このアワードで賞をいただきました。ありがとうございました。
渋谷:ものすごく伸びていましたからね(笑)。
前田:いえいえ、まだまだ足りないです。SHOWROOMの運営をしつつ、個人として『人生の勝算』という本を今日ここに来てくださった箕輪さんと一緒に作って、とにかくたくさんの人に届ける努力をしてきています。
そういった意味では、軸が2点あるのかなと思って。1つは「なぜ僕が本を(事業に)掛け合わせるか」ということなんですけど、本を出すことによって、アプリにものすごくプラスがあった。でも、この観点で話しているケースは少ないと思うんですよね。「本を出すことで、事業にどういうインパクトがあったか」は意外と語られていないんです。
本は基本的にtoCですよね。企業向けの事業をやっている人からは、「本なんか出してもしょうがないんだよ」という声もあるんですけど、僕はぜんぜん違うと思っていて。toBでもその裏側にいるのはC(カスタマー)であり、基本的にBtoBでBに売り込んでいく時、「この人と仕事をしたい」と思うのは結局人間だと思うんです。
その時に「この本を呼んですごく感銘を受けました」「共鳴しました」ということが、すごく大きなコラボレーションの種になるケースもあります。ほかにもいろんな要素があるんですけど、今日一番伝えたいポイントは「本を出したことが事業・アプリ・サービスに多大な好影響を与えている」ということ。
前田:もう1つが「本の売り方というマーケティングの話を抽象化すれば、アプリとマーケティングは同じ文脈で語れることが多い」ということです。これは編集者の中でも箕輪さんが図抜けて上手いと思いますが、コミュニティを持っていて、それを毎度きちんと盛り上げて本というプロダクトをしっかり届けていく。
これと同じことを、アプリでもやっていかないといけないと思うんです。箕輪さんが考えるコミュニティづくりのやり方や「コミュニティとはなんぞや?」みたいな話ができると、今アプリのグロースに取り組まれているみなさんにも、すごく示唆があるんじゃないかと思っていて。
この2つの点を通じて、僕が最大化にトライしているものに、SHOWROOMというサービスがあります。生配信サービスなんですけれども、とにかくエンゲージメントが高いのが特徴です。なぜエンゲージメントが高いかにはいろいろ理由があるんですけど、次の3つが基本背景になっています。
エンゲージメントは、いわゆる横の幅ではなくて、見ている人の深さを考える概念。これがすごく深いんです。具体的に言うと、1ユーザーあたりのコメントの数や滞在時間、ギフトを投げる数など。ただ見ているだけでなく、コンテンツに深く入り込んでいるユーザーがすごく多いんです。
横幅だけでも、ダウンロード数が400万件超えたところですが、CMなどもやっていないので、ノープロモーションで400万件までいっているのは、それなりによくやっているのかなと思います。
とはいえ、400万件は決して自慢したいポイントではありません。どちらかというと、きちんと収益を出せているかどうか。月間で1,000万円以上の売上を立てている演者がいたり、アクティブで深く濃いユーザーベースを持っていたりするところです。
SHOWROOMで物販機能・ライブコマースを始めて、局所的ではあるものの、これの勢いがすごくて。この間も乃木坂46の子がSHOWROOMで写真集を売ったんですけど、30分足らずで3,000冊を売って、Amazonランキングでその瞬間一気に1位になってトレンドにも入りました。これも、エンゲージメントの話、ですね。見ている人がすごく「深い」んです。
渋谷:なるほど。レコメンデーションがエンジンではなくて、人間からなされるということですね。
前田:まさに。「どうして洋服を買うんですか?」という理由は究極的にはそこというか、「異性からスタイリッシュと思われたい」「モテたい」というのは、全洋服の購入ニーズを平均した時にけっこう大きく出るはずなんですよ。
渋谷:確かに。意思決定をプッシュしていますよね。
前田:そう思います。ただ、そのマーケットは、まだ誰も刈り取れていないというか。本当はリアルな店舗に行っても、例えば僕ら男性であれば、女性が女性の観点で必ずレコメンドをしてくれるわけでもないですよね。
でも、それをネット上でやれば、刈り取れていない市場が新しく作れるのではないかなと思ってやっています。CVR(Conversion Rate:コンバージョンレート)がすごく高くてびっくりしているんですけど、エンゲージメント、視聴者を単なるビューワーとせずに「その場に存在している」と感じてもらえるような、アイデンティティをしっかり感じられるUIを大事にしています。
最近、SHOWROOMにおける匿名性を、「匿名2.0」「半匿名」と言っていて。匿名な場所なんですけど、名前があり、姿があり、そこに関係性がある。いわゆるセカンドアイデンティティをネット上にしっかり作って、そのセカンドアイデンティティを承認してもらいたい、という目線でユーザーが場に参加してくるので、エンゲージメントが高いんです。
渋谷:なるほど。匿名というか、そこに新しく人格がいるということですね。
前田:はい。匿名上の実名みたいになっています。そこのエンゲージメントを高める設計によって、高さを保ちます。モバイルアプリ動画の中ではありますが、Netflixを超えて収益トップになっていて、なんとか成長してきているような状況です。
渋谷:これは本当にうれしいですよね。僕自身も日本人なので、日本発のサービスでNetflixを超えるのはすごく夢があります。
前田:(ユーザーの)幅ではなくて深さに目を付けたところが、大事なポイントだったなと思っています。UIで上手く深さを引き出せるように工夫しました。僕らが(この事業を)やっていて得た1つの大きな学びは、インターフェース次第でユーザーのエンゲージメントがものすごく変わるな、ということでした。
渋谷:いやあ、素晴らしいお話ですね。
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