2024.10.10
将来は卵1パックの価格が2倍に? 多くの日本人が知らない世界の新潮流、「動物福祉」とは
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司会者:僕が語ることじゃないけど、僕なんかも、まわりの後輩とかもみんなそういう(ふと疑問に思うことに敏感になる)ことを言ってて。気にしていなければ普通に通り過ぎてしまう日常のことを、どれだけ「あれ?」って思えるかだと。
「違和感に敏感であれるか」みたいなことは、もっと早い時からそういう癖がついてたら、いろいろなことに気がつけるかもなと……。編集の仕事でも、そういう企画を考えることとか、わりと近いのかなと思います。
鈴木芳雄氏(以下、鈴木):そうですね。だから、企画の出し方に直結するんだけれども、例えば、常に何かを考える時に、「AとBの対比で考える」とか。あるいは、「同じ種類のものを2個ずつ並べるとどうなるか」とか。「似ているものを2つ以上並べると、なんか意味が出てくる」とか、そういうことを常に考えてるんですね。「なんでもベスト5」みたいな。
例えば「おいしいトマトを5個言えるか?」とか(笑)。常にね、人に示す時に、そういうアウトプット……情報の入れ方と出し方を自分の中で整理して、自分の興味のある情報を入れて、人にそれをおもしろがってもらうためにどういうふうに出すかみたいなことは、すごく考えてるわけです。
鈴木:例えば、美術の話をさせてもらうと、「国宝って、きっといいものなんだろうなあ。でも、どこから見たらいいの?」ということを特集でやる時を例にします。日本の国宝って、1,000点以上あるんだけれども、どういうきっかけでそれを覚えて、それが入り口になって、さらに美術に興味を持てるかを考えた時に……とりあえず、なんでもいいから5個ずつ覚えてみる。
日本の国宝の絵を描いた画家は、みんなも知ってる「雪舟、俵屋宗達、狩野永徳、尾形光琳、長谷川等伯。この5人だけ覚えればいいよ」ということをどんどん言い切ってみる。本当は情報はもっと持ってるんだけど、出す時にどう整理して、どう切り取って出すかみたいなことを常に考えてる。
そこに、さっき遠山さんも言ったことに近いかもしれないけど、楽しみを見出してね。「こう言ったら相手に届くんじゃないか?」とか「わかってもらえるんじゃないか?」とか、「興味のない人も、多少興味の度合いが上がるんじゃないか?」とか。
トムさんが言ったみたいに、それを癖にするんだよね。だから、作業とか、やらなきゃダメだとか、仕事と思うと、「うーん、明日までに考えなきゃ」となってしまう。そうじゃなくて、考える癖です。どれだけおもしろい癖を持ってるか、そういう感じだよね。
遠山正道氏(以下、遠山):よく例に出すのが、会社へ入って、社員旅行をしようとなったとします。「じゃあ、トムさん、社員旅行の幹事ね」と言われて「マジ? 最悪」って思うのも自由だし、「うーん、じゃあ、今までにない最高の社員旅行にしちゃうもんねー」っていうのも自由で。
例えば、俺がそうなったとしたら、例えば吉田さんっていう部長がいて、社員が15人ぐらいいて、熱海に行く。そして、熱海で温泉に入って、酒を飲んで、いい感じになったところで、ふすまがバンッと開くと、吉田部長の奥さんと子どもが登場する。
「なんでカズコがいるんだ!」みたいな(笑)。そして、「吉田部長、いつもお疲れさまでーす!」と言って、家族と部下で楽しむ。「なんだこれは〜」とか言いながら、ポロッとなって、コミュニケーションが良くなる。
だから、「えーっ、幹事、最悪だな」って思うかどうかの違いです。そこでアイデアを考えたら、まわりを巻き込んで、奥さんにこっそり電話してさ。でも、1人3,000円ぐらい費用を足すだけでそれは実現できるわけ。
そういうことをやると、その部長も「なんか遠山っていうのは、指示したことに対して、ただ返してくるだけじゃないやつだな」となるはず。「そこになんらかの、彼なりの価値を乗っけて返してくるやつ」みたいになると、仕事の印象もよくなるし、楽しいし。
「自分だったらどう返す?」といった、さっき言ったような癖みたいなものをつけておくと、その人らしさみたいなのが出るはずです。
司会者:僕もさっきの話で遠山さんにうかがいたいんですけど、受け身だった時代がありましたと。その受け身をやめて、前のめりになりました。そこで1つ転換してるんですけど、その受け身の時代よりも、だんぜん仕事はおもしろくなりましたか?
遠山:ぜんぜん違いますよね。そのきっかけの1つで、「電子メールのある1日」という物語を書いたことがあるんですね。
鈴木:「スープのある」じゃなくて?
遠山:その前に。三菱商事と言えどもね、俺が入った時って、机の中にそろばんが入ってたんですよ。信じられないと思うけど(笑)。
鈴木:そろばんってわかる? パチパチパチって。
遠山:パソコンとかもなくて、ホストコンピュータの入力機が1台あるだけ。96年くらいかな、世の中でパソコン通信が流行ってきたのを知って、「これはすごいことになるな」と思って、三菱商事も早く電子メールを入れなきゃいかんと思って。
鈴木:96年なんて、Windows95があるんだから……。
遠山:もっと前かな? だから、それにはまずパソコンを置かなきゃいけないと。商社の中でいうと、情報システム部というのはあんまり力がなかったりして。やっぱり営業……稼いでいる自動車部の部長とか、そういう人に「なんで電子メールがないのかね?」「なんでパソコンがないのかね?」と言ってもらうのがいいと思ったので、「電子メールのある1日」という物語を書いて。
鈴木:だいたい「電子メール」っていう言葉を使わないもん。メールとかですよね。「Eメール」だって使わないよね。
遠山:昔は電子メールって言ってたの。それで具体的に、未来から過去を見返す物語になっている。今は電子メールがあるおかげで、麻雀のメンツを揃えるのにも、仕事をしてるふりをしながら20人ぐらいすぐ集まる。昔はね、「電子メールがなかった時は、内線電話で連絡してたのが懐かしい」みたいに書いてある。それを書いて配ったんですよ。
そうしたら、それが一人歩きしていって、最後には、当時の三菱商事の社長まで伝わって、社長に呼ばれて説明したんですね。それは「頼まれてもいない仕事」という言い方を今はしてるけど、別に上司から言われたわけじゃなくて、「電子メールすごいな。これは商社にも絶対にあったほうがいい」と思って、自発的にやったわけです。
それが、私にとっては三菱商事の中でのプチ成功体験というか(笑)。それがむしろ、唯一の成功体験みたいな感じ。やっぱり自分で気づいて実行して認められるとうれしいので、そういうことをちょこちょこやり出す。自分なりのアイデアで。
トム・ヴィンセント氏(以下、トム):「電子メールのある1日」のエッセイのおかげでそれができたんだけど、失敗した例もあるじゃないですか。「やってみたんだけど、ぜんぜん会社が……」って。
遠山:それはあるでしょうね、たくさん。
トム:「こうやると会社って楽しそうやな」と思うけど、「じゃあ私、お茶を全部ルイボスティーに変えます」って言ったら、部長にボコボコにされる場合もあるかも。
(会場笑)
鈴木:ボコボコにはされないけど(笑)。
トム:「そんなことにお金を使ったらあかん!」とか言われて。だから、必ず自分のほうから何でもかんでもおもしろいことを提案するべきというわけじゃないんだけど、でもやってるうちに「ここなら隙間があるかも」って(気づける)。たぶん、そういうことじゃないかな。
遠山:そうですね。
司会者:29歳を過ぎて30代の話になっちゃうんですけど、質問をいただきました。遠山さんのことなんですけど「33歳で自分の望んだ転機だったわけですが、その後、上昇中に、例えば挫折や停滞はなかったんですか?」と。あったと思うんですけど。
遠山:忘れちゃうんですよね。例えば、本に書いてたんだけど、Soup Stock Tokyo1号店ができて、それを持ち帰って、三菱商事で会社を作りたいって言ったんだけど、それがぜんぜん通らなくて、たらい回しにされました。
本には「日比谷線で3回泣いた」と書いたんですよ。それ、本に書いてあるから「あっ、そう言えばそうだったよな」って思うんだけど、書いてなかったらもう忘れてる。だからたぶん、一般的に言う挫折みたいなことも、楽しんだと思う。
司会者:3人のインタビューをさせていただいたんですけど、一番遠山さんに……。「どんな苦労があって、どんな挫折があったんですか?」みたいなことを聞きたかったんですけど。
遠山:その時はもう、私は「自分ごと」になってるんですよね。だから、人生のこういう時は、何をやっても楽しいんですよ。うまくいかなくても。うまくいかないことも、自分でやっている話だから、「そういうのは失敗って呼ばない」っていう感じ(笑)。
司会者:まとめちゃいけないかもしれないですけど、なんとなく「主体的に」という言葉がいいかどうかはわかんないですけど、受け身でいる間は、なかなかぶつからないかもしれない。あるいは楽しめないかもしれない、ってことですかね。
遠山:そう言っちゃうと「えー?」って感じかもしれないです。だけどうちの会社では一人ひとりが「自分ごと」という感じになってるんですね。
だから、「遠山さんがいいって言ったからやりました」というのは、一番カッコ悪い感じになってる。「お前は、それをどう考えてんのよ?」みたいなことです。だから、みんながそういうモードになるといいんだけどな。
司会者:その違い、大きいような気がしますね。
遠山:もともと組織に属してないと、自分でやるしかない。
司会者:そうですよね。話が飛んじゃうんですけど、20代とか30代と、わりと悶々としてきていますが、せっかくだから20代がどうだったかだけじゃなく、40代、50代についても教えてください。
遠山:私は絵の個展をやって、Soup Stock Tokyoを始めて、会社を作った。だから、ずっと楽しかったんですね。そして、なんか落ちてますよね、最近。それは、一瞬上がっちゃった感じがして。もう全部(社員に)任せたりして、うまくいっている感じがして、ヒリヒリ感がない(笑)。でも今、人生で一番楽しいって感じです。
「The Chain Museum」という新しいビジネスを始めたんですよ。なんで楽しいかというと、よくわかんないの。この「チェーン店」と「アート」って、かなり相容れない言葉を組み合わせて、「The Chain Museum」という言葉がまず思いついて、「じゃあそれをやろう」みたいな(ことです)。
どうしたらいいかなんて、もちろん何もない。しばらくしてから「そういえば、マネタイズってどうするんだっけな」とか、そんな感じ。ないものを今、一生懸命やっているので、すごく楽しいんですね。
司会者:この流れでおうかがいしたいんですけど、トムさんも、鈴木さんも、今どんどん上を向いている。仕事とか、取り組んでいることとか、どんなモチベーションかを少しだけ。まず、トムさん。
トム:すごい人生だね、こうやって見ると。今は最高です。仕事が最高にうまくいっているかというと、実はちょうど今のこの瞬間は、別にそうではないんです。けっこう大変なの、今は。でも人生は最高。50歳超えてから、やっと、自分の行きたかった道が「これだったんだな」ということに(気がついて)たどり着き始めている気がしています。
でも、これを見てみると、30代はすごく良くて。会社員をやっていて、取締役で。
Web、インターネットというものがバンバン世の中に出てきて、日本の中でネット業界に入って。すごく運が良くって、日本の大手企業の仕事がどんどん入ってきて、ニューヨークとか、世界中を飛び回って、インターネットのWebデザインのトップのほうで活動をしていました。
トム:だけど……僕、組織がダメなんです。7〜8年ぐらいやってると、「やっぱり僕は、会社の中では無理だな」と思って、どうしようと思って、会社を辞めて。
小さい子どもも2人いるし、奥さんもいた。当時の奥さんね。僕、その後にどん底になったことがあったんですけど(笑)。それで、自分で会社を作ってみて、2年間やったんだけど、完全に失敗したんですよ。40歳前後で、すごく大変だった。
その時は人に投資してもらって、他人のお金で会社を作ってしまったんです。2年間やってみると、ぜんぜんダメ。ビジネスの能力がないから、僕は。お金のことはかなり下手くそなので、やってはダメなことをやってしまった。人のお金で何かをするのは最悪だとわかって、すごい貴重な人生経験でした。
その後、その会社は潰れてしまって、僕の銀行口座の中に残ってる100万円で今の会社を作った。そこからどんどんおもしろくなってきました。
この人生の中でどん底になってるのが、すごく大きな仕事がパーになって、同時に、僕の家庭が崩壊してしまって(笑)。崩壊すると同時に、一番大事な仕事が同時に、偶然に……。偶然なのかはわからないけど、なくなって。もう「どうしよう?」という時期があったの。
でも、それがなかったら、たぶん今はない。こういうどん底が……(遠山さんの)「3回電車の中で泣いた」ということもあるけど、本来はどん底なんだけど、僕はどん底かっていうと……。いろいろ大変でしたよ、仕事も私生活もボロボロになって。でも「あ、そっか。それでも、やっていけるな」という勇気をもらって、今はもうバーンと上を向いています。
そこで、すごく整理整頓できたんですよ。仕事も含めて、自分の人生を。僕はさっき言ったとおり、人生と仕事は分けられないと思っています。何のために仕事をしてるかを考えたときに、生活するために仕事をしてるとなってくると、その仕事は生活の一部。
トム:「こういうふうに仕事したいなあ」「こういうふうに暮らしたいけど」というのは、20代からそれができるかっていうとそんなことはなくて。それに向かって、僕の場合だと大きな失敗を何回もするわけ。そして、今はこうなってるという感じです。
遠山:トムさんって、いま住んでいるのは滋賀県だっけ?
トム:そうです、滋賀県。
遠山:トムさんは、ご家族で、滋賀県のすごく古い民家に住んでるんだけど。何の由縁もないんだけど、突然移り住んで、その3日後ぐらいには、町内会のお祭りの組合みたいなのに入り込んでたんだよね(笑)。
トム:1ヶ月で、地元のお囃子を覚えて。
(会場笑)
トム:囃子笛も吹きながら。地元の祭り、でっかい祭りですよ。小さい町の大きな祭りでで、めちゃくちゃ楽しいですよ。
遠山:もう1ヶ月で村の人気者になっちゃって(笑)。どっぷり両足浸かってね。本当に人生楽しそう、今。
トム:楽しいよ、めっちゃ楽しい。
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