2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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新條隼人氏(以下、新條):自分の本音を他者がどう見るかもそうだし、それが実現しなかったら不安だから踏み出さないケースも、もしかしたらありえる?
池原真佐子氏(以下、池原):あると思います。でも、踏み出さない・踏み出せないのは、内省が薄くなってしまっていることと、あとは本音に沿った選択肢を出せていないからだと思います。
先ほどの5つのステップの2つ目で、一番つらい板挟みの時期。ここがたぶんしっかり内省すべき時間だと思うんですよね。ひたすら自己と対話する。その次に、きちんと本音に沿った選択肢を洗い出してみる。そうすれば、踏み出さずにはいられなくなると思います。
ちなみに私が最近すごく大事だと思うのは、本音に沿って出した選択肢の中から一番難易度が高いと思うものから試すということです。
新條:難易度の高いものから?
池原:例えば、たいていの人は簡単そうなところから徐々に難易度を上げて積み上げていこうとするじゃないですか。でも、一番上がダメで下に落としていくほうが、たぶん成功の確率って高いというのを、昔記事で読んで、それを今やるようにしています。
新條:積み上げでやっていくと、書いたもののなかで一番したいことは、実は遠ざかってしまうのかもしれないですね。
池原:杉本博司さんをご存知の方はいますか?
(会場挙手)
世界的に活躍しているすごく有名なアーティスト、芸術家の方です。
彼が無名だった頃、単身でニューヨークに渡ります。普通、無名だったらまず最初は近くで展覧会をやって、認められたらちょっと大きなホールでやって……と考えるじゃないですか。彼はいきなり自分の作品をMoMAに持っていったんです。それですんなり置かれた。
新條:なるほど。
池原:彼の「なんで下から行くの? 一番トップから攻めて、ダメだったら落としていったほうが効率いい」という記事を読んで「あっ、これだ」と思いましたね(笑)。なので、選択肢の中で一番難しい、高いと思うものからチャレンジしていくと、成功確率は上がりますし怖いもの知らずになりますね。
新條:さっきの話なんですけど、本音を言えない要因として、実はパッと思い浮かぶのは他者かもしれないけど、自分のブロックのほうが大きい可能性もありうるんですか?
ちなみに池原さんの場合、親御さんとの話というよりは、転職をどう折り合いをつけたんですか? 最終意思決定者というのは……。
池原:もう「反対されてもする」と決めていました。ただ母親も父親も、けっこう防御力が高くて(笑)。実家に帰ると「転職すると損する」みたいな本が山積みされていました……。
(会場笑)
私の机の上に10冊ぐらい(笑)。でも、これは親ブロックだと思って。自分の人生に責任を持つのは自分。ここで親の期待に負けたのなら、私の意思もそこまでだということで、親ブロックを打ち破って乗り越えてきました。
新條:なるほど。やっぱりそのあとって、変わりました?
池原:変わりました。
新條:なんかすごいマクロレベルと、さっきの転校したいけどできないから親御さんの意思にも反してご自身で意思決定したというところが大きく違うなと思うんですけど。そのあと、なにが変わるんですか?
池原:私がなぜ転職をしたいのか、どう生きていきたいのかを本音で話し合い、伝えました。そうすることで「この子は本気だ。そして1回決めたら動かないんだ」という認知が親のほうにも出てきました。
その後、会社員をしながらシンガポールに通うと決めた時も、起業するときも、もう「あっ、そうなんだね、頑張ってね」という一言で終わりました。一度大きな意思決定と行動をすると、周囲もそれ以降はなにをしても認めてくれるようになるんだなと気づきました。
「本音を言えない」とは、たぶん相手を信用していないことと一緒だと思うんですよね。自分が本気でやりたいこととか、本当にいいとか悪いと思っていることを伝えると相手が嫌いになるっていうことは、相手への信頼が不足しているということ。
相手を信じて「自分はこう思う」って伝えるようにしています。そうすると、友達とかの中でも、本音で言えるシーンが増えてきたように感じますね。
新條:本音ブロックの要素って、まさに他者との関係性、もしくは想定できる「この人にこう言われるんじゃないか」という。さっきの(本音を)折られた時の話と、自分の「それはできないんじゃないか」みたいな自信のなさだったり、確信のなさだったりがあると思うんですけど。
今の話で、他者への信頼ってまさにそうだなと思いつつ「自分が自己開示しないから相手も本音を出さないよ」ということもあります。これは、どうやってブレイクスルーするものなんですかね?
例えば、さっきの活躍している人って、本音のコミュニティがすでにできているみたいな感じとかも含めて、他者との関係性みたいなものがあります。自分からできる一歩目って、なにがあるんですか?
池原:1つは、自分の夢を実現しているなど、同じような熱量を持っている人とまず一緒にいるということだと思うんです。
人って、残念ながら世の中の全員とわかり合うことはやっぱりできないです。持っている価値観も違うし、大切にしているものも当然違う。それは違っていいことです。だからこそ、自分が素敵だなとか、いいなと思う人たちのところへまず行く、出会う。
そこで本音を出し合っていく。ちょっと出して拒否されたら、それはもう仕方がなかったと思って、そこを引きずらない。10人いた中で1人、すごく本音で話せる人と出会えたら、その関係は奇跡だと思って大切にする。
新條:じゃあもっと具体的な話で、例えば上司に対して、「これは私が本音を開示してないから少し信頼関係が築けていないのかもしれない」ということで、一歩踏み出してみるじゃないですか。それがたまたま相性が悪い、もしくは自分の本音がリジェクトされてしまうような時って、どうしたらいいでしょうか?
池原:まず上司に対しては、おっしゃったとおり、相性が悪かったんだなと「自分のせいにしない」は大事です。
もちろん、自分が悪かったなどの点があれば反省すべきですが、本音を話して拒否されたのであれば、自分が至らなかったとか、自分が悪かったとか、自分に価値がなかったなどと、自分を責めない。たまたま相手が機嫌が悪かったのかもしれないし、価値観が違ったのかもしれない。自信をなくす要因にしなくてもいい。
1回ダメだったら5回言ってみればいいだろうし、5回言ってダメだったら、きっとその職場は合わないのかもしれないから次の道を探すという考えもあるかもしれません。
新條:そこはある種、自分を追い詰めずに、広く選択肢を持った上で、とはいえ自分から働きかけなきゃそれって得られないようなものに対して、最善を尽くそうと。自分の本音を自分でブロックしてる場合に関しては、それはさっきのステップの話に尽きるんですかね?
池原:今日はみなさん、家に帰ったらぜひやっていただきたいことがあります。本当に本当に、自分が誰にも言ってないけど「これやってみたい」という本音は、きっとあるはずなんですよね。些細なことにしても、それをまず紙に書いてみる。
書くときに「私、こんなこと書いちゃってる……」と、手を引っ込めちゃうことがあると思うんです。それを引っ込めずに出し切って、まず書いてみる。それを私は「自分の夢を廉価版にしない」とよく言っているんです。
例えば「100万部ベストセラー作家になりたい」という夢だとしたら、書くときに「100万部ってちょっとおこがましい感じがするから、10万部にしとこうかな」とか(笑)。そういう単位を1つ落とすような廉価版を書かない。自分に対しては夢は等身大のままで自分に認識させておく。それがまず1つ。まず自分で認識する。
新條:じゃあまさに、「自分はこうしたい」って思っているのと、別の人格じゃないですけど「今、自分を抑えそうになっている自分がいるな」みたいな……。
池原:必ずいるんです。必ず、自分を抑える自分がいる。コーチングではサボタージュと呼びますが、冒険しようとする時に止めにくるネガティブな自分。
新條:それを客観視できるだけでも、少し状況が変わるかもしれないんですね?
池原:「今サボタージュが出てきた」と気づいたら「ちょっと黙っててね。ちょっとこれを書く間だけは静かにしてね」と言って、止めてみる。これがテクニックだと思います。
新條:ちなみに書かれたのって、仕事とかキャリア以外のものも書いてました? 「池原バージョン」だと。
池原:池原バージョンでは、けっこう書きました。
新條:趣味とかライフステージの話とかも、全部書いて?
池原:28歳の時は、本当にどん底でした。その時に「もう怖いものはない」と、あらゆる恥ずかしい本音を「夢ノート」に書いたんです。「こういうことしたい」とか。当時の私にはもう追いつかないようなことをいっぱい書いたんです。それが、今は全部叶っている。
脳っておもしろいもので、一度認知すると、それにつながる道やチャンスを自動的に探すんですよ。なので、たぶん折々に触れてそういう匂いがするチャンスを、私はすんなり受け取ってきたんだと思うんです。書いたから、自分の本音を自分で認識してるからかなと思います。
新條:最後に2つ。「夢ノート」はあとで更新もしました? 例えば「29歳バージョン」みたいな。
池原:夢を付け加えていきました。
新條:なるほど。なんらかのスパンでそれを見て振り返って……みたいな感じなんですかね? 「私、こんなこと言ってたなぁ」みたいな。そこの本音を出したあとのオペレーションというのは?
池原:いったん書いてしまったら、私は忘れるようにしていました。書くと無意識に覚えているので、あとは目の前のことに集中する。「こうだった」というのは、私はあまり引きずらないので、そこはもう忘れて未来を心配しすぎない。今に集中するということを積み重ねていくと、いい方向へ進むことが多いですね。
新條:なるほど、ありがとうございます。
新條:もしよろしければ会場から、ご質問がありましたら。
質問者1:おはようございます。質問があるんですけど、乗り越えるべき違和感と、あと自分で変化を起こさなきゃいけない違和感の見極め方の違いみたいなものはありますか? 例えば、仕事を3年していて、なんかここは違うなと思っているけど。でも「あと2年続けたらもっと楽しくなるよ」と言われることは多いと思うんですけど。その違いはなんですか。
池原:ありがとうございます。タイミングって絶対わかると思うんですよ。なんとなく人から言われて「そうかなぁ」と思っている時は、たぶん決断ができていない時。でもたぶん、その違和感がもっと強くなって、もっと「ないな」と思った時は、人からなにを言われても、もう腹は決まると思うんですよね、勝手に。
ただそれをわかるためには、ふさんから「自分がなにを感じているか」に繊細になっておくこと。「私、すごい嫌なんだな」「今日すごく疲れてるんだな」「すごくこれがうれしいんだな」を繰り返していくと、心の声を敏感にキャッチできます。
自分で自分の一番の理解者になるということかな。それを毎日意識していると、「これは辞めろっていうサインだ」も察知すると思います。
質問者1:じゃあ第一段階で違和感を感じる。そこに敏感になっていくと、もう耐えきれない違和感に?
池原:というふうにつながるケースもあるし、それがスーッとなくなって「やっぱりここだった」と当然戻ることもあると思うんです。そういう時は、「今はそこじゃなかった」ということだと思います。
質問者1:それってどれくらいの期間、考える時間を持てばいいんですか?
池原:個人差がそれぞれあると思います。一般的には、最初の第1ステージから最後動くまでは、3〜5年周期でおとずれる。そこで動く人、動かない人は当然いると思います。ただ、3年~5年周期でなんらかの自分の価値観は変わっていきます。
質問者1:ありがとうございます。
質問者2:ありがとうございました。まさに私はすごく苦しんでいるところにいまして。さっきのフェーズの話で1、2、3、4みたいな話があったと思うんですけど、自分と対話するところから、選択肢を出すみたいなところへの抜け方というか。
コーチングを学んでいて、けっこういろんな人に聞いてもらいながら苦しんでいるんですけど、それがなかなかスコンとはまる自分の本当に大事な価値観とか、使命みたいなものに腹落ちしないことにけっこう焦っています。
そうすると、わりと選択肢を心の中から書き出して、試してみることで抜け出そうとしている自分がいたりするんですね。池原さんはどういうふうにそこを抜け出したのかなというのがすごく聞いてみたいです。
池原:私もどん底で、本当につらい時期もあって。友人は私のそういう時期も知ってると思うんですけど(笑)。やっぱり人って苦しい状態が嫌なので、焦って動こうとするんですよね。だから第2フェーズを早めに切り上げ、第3フェーズへ飛ぼうとするんです。
でも、まずは第2フェーズでしっかり落ち込む状態をことは、他者と距離をとることだそうです。
あと、1つ参考になるかなと思うのが、「レジリエンス」「復活力」です。人の心は1回折れても、なんらか自然回復するじゃないですか。レジリエンス研究によると、どん底からフッと浮き上がる瞬間は悩みとはまったく関係ないことをしている時です。
代表的なのは、音楽、、エクササイズと、日記などのライティングと、あとは瞑想。なので、一番つらい時は、まず1人になって、あまり考えすぎずに目の前の音楽、食べ物とかに集中してみる。そうしているうちに、フッと浮き上がる瞬間があって、そこでゆっくり選択肢を洗い出してみるのがいいかもしれませんね。
私もそうだったなと思います。1人で山を登ったりしてました(笑)。
質問者2:ありがとうございます。
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