2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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小霜和也氏(以下、小霜):(ターゲットに広告を露出するアプローチ手法など、)こういうものに限らず、僕のやり方は他にもまだまだたくさんあります。
ここから今日のテーマに入ってきますが、運用や配信など、そういったものの外で、コミュニケーション全体の側面支援、認知の着火点みたいなことになるのがWeb PRと言われれるものかなと僕は認識しています。
例えばこういうカーセンサーのCMがあります。
小霜:この声は竹内力さんなんですけど、6タイプがあり、いろんなクルマ風の人がいて、特徴のある声のタレントさんとか声優さんを使っているんです。それをネタにWebのPR記事として取り上げてもらうところから始めたCMなんですね。配信もやりましたけど、基本的にはWeb PRから始めるみたいなことをやった例です。
ちょっと変わったものとしては、これは「零ICHI(ゼロイチ)」というノンアルビールのテレビCMです。
15秒のテレビCMなんですけど、Web用にはこういう動画があるんですよ。
(Web CM動画が流れる)
これは全部で190万回ほど再生されたと聞いてます。でも、もともとがプロモーションから始まっているんですよ。
博多大吉さんたちは酒飲みとして有名なので、彼らをプロモーションに起用しようみたいなことから始まった。それが紆余曲折を経て、やっぱりおもしろいコントの動画をつくるべきだろうみたいな話になった。それで突然僕らのクリエイティブチームがやることになったんです。
それでどうしたかというと、彼らのSNSに載せたんですね。そうするとそこから拡散していって、半年ぐらい経って気がついたらすごい再生数になっていた。これもある種、彼らをインフルエンサーとして活用した例として、PRという範疇になると思います。
僕の中でちゃんと解釈できてないのですけど、こういうWeb PRをもっとうまく捉えれば、先ほどお見せしたようなWeb広告の効率化はさらに進むんじゃないかなと思っているんです。
しかし僕、PRについての知見がそれほどないものですから「その辺どうしましょうかね」ということで、今日は本田さんに聞きにきた感じなんです。
本田哲也氏(以下、本田):じゃあ本田のパートいきたいと思います。
結論を先に言っちゃうと、博多大吉さんもインフルエンサーとして機能したと思う次第なんです。しかし、いったんPRの話ということで。今回、小霜さんも本を出されたんですけど、7月1日でしたかね?
小霜:正式には6月30日です。
本田:6月30日。
小霜:戦略会議の決算の関係で。
(会場笑)
本田:僕も4月に戦略PRの新しい本を出しました。
先ほど控室で小霜さんとも話したんですけど、もともとは2009年に出しまして、8年ぶりに書いたんです。なぜ8年ぶりに書いたか一言でいうと、ど真ん中の2011年や2012年ぐらいにSNSが浸透した。すごくシンプルに言っちゃうと、ビフォアSNSとアフターSNSみたいな感じですね。
今日のデジタルPRみたいな話にも繋がってくるんですけど。今日来ていただいている方へデジタルPRの話にいく前に「そもそも戦略PRってなんだっけ」ということで簡単に事例を1つご紹介したいと思います。
前の本でも今回の本でも、戦略PRとは空気をつくったり、購買する理由をつくったりすることだと言ってます。最近のわかりやすい事例はベビーカーですね。
ピジョンさんというメーカーのベビーカーです。もともとの背景をご説明すると、ベビーカーの市場で、ピジョンさんはベビー用品は強かったんです。
しかし、ベビーカーの市場は、アップリカとコンビでほぼ8割の市場があり、ピジョンはちょっと弱かった。それをなんとかしようということで、ここに今出てます「Runfee(ランフィ)」という新商品のベビーカーを出しました。
新商品はやっぱり差別化しなければいけないので、先行しているというか、「市場を相当握っているアップリカさんとコンビさんとどこが違うのか」という話になるわけです。そして結局、決定的に彼らと違うポイントはなにかというと「タイヤがでかい」ということでした。直径16.5センチという話だったんですけど、「16.5センチ」だけ言われても誰もわかりませんよね。
一般的なタイヤの直径は13.5センチなんです。……すごくマニアックな話ですが。これはなぜかというと、工事車両みたいに車輪が大きいほうが段差を乗り越えられます。
そこをしっかりと考えられていたのは非常にいいことなんですけど、これを例えば広告で「でかい車輪」など、そういうことを訴求してもまったく響きません。さらに言うと忙しいお母さんは聞く耳を持たないということで、先ほどの空気づくりや買う理由をいかに世の中につくっていくかという戦略PRをやったんですね。
本田:そしてなにをやったのか。タイヤが大きいことを訴求しても響かないので、PRの考え方として「なぜ大きなタイヤが必要なのか」と、世の中的に関心があることを結びつけるというやり方をします。
そこで目をつけたのは、大きなタイヤじゃないと乗り越えられない段差みたいなところを実際に「ガン!」とベビーカーが乗り越えたときにどれぐらいの衝撃が掛かっているのかという実験をやりました。
これは「世界初」かもしれないですね。ほかに誰もそういう実験は考えないですよね。そういったものをやったところ、専門家の人間工学の先生たちの協力をいただいたんですけど、非常にキャッチーなメッセージが出てきました。それは「自動車の急ブレーキの5倍の衝撃がかかる」ということが実証されたんですね。
それでお気づきのように「16.5センチだよ」と言っても「なんですか?」となるんだけども、「お母さん、いつもガッタンとなっているあの衝撃は、自動車の急ブレーキの5倍の衝撃がベビーカーに掛かってます」というと急に話が変わりますね。
そしてPRなのでメディアに取り上げられたり、あとはブロガーさんやインスタグラマーさんも取り上げるというか投稿してもらわなきゃいけないというときに「16.5センチ」はニュースにならない。
しかし、今の話だとニュースになるんですね。ここまで戦略PRをやってから新商品を発表し、計画以上に売れました。
構造的に言うと、他のベビーカーだと「軽いのが売りです」「ファッショナブルなのが売りです」とやっているときに、「大きなタイヤがうちは売りなんだ」とやる。
その大きなタイヤにはすごくニュース性があって、非常に食いつくことであれば広告だけでもいいかもしれない。そこをプロモーションをしていればいいんだけども、そうでない時は逆にそういう理由を「なぜそういうものが必要なのか」を世の中に啓発していく。
これが戦略PRでいうところの「空気をつくる」「買う理由をつくる」です。その結果、物が売れる。こういう話ですね。
これは1つの例なんですけど、今日はそういう意味でいくと、よりSNS時代やデジタル時代というのがお題になります。
本田:個人的にはデジタルPRって……すごく今クライアントさんも業界も興味関心があるところなんですけど、これに関しては2つの話に分かれています。
その2つがなにかというと、デジタルにおける「パブリシティ」の話と、デジタル上の「インフルエンサー」です。どちらも非常にPRに関係するのですが、ちょっと分けて考えていかないといけないなと思ってます。
一つひとつちょっとお話すると、デジタルパブリシティは、先ほどWeb PRという言葉を小霜さんは使われていたました。Webやネットなど、デジタルになった時に、いかに情報を露出させるか。今でもそうなんですけど、どうやってテレビに出すか、新聞の記事にさせるかとはまたちょっと違ったアプローチや考え方が出てきます。
デジタルパブリシティの考え方にはいろいろあると思うのですけど、個人的に今後PR的に重要になってくると思っているものがあります。
「ばったり」の法則と言っているんですけど、アドテクがかなり進化したので、みなさん相当狙われていますし、私も狙われています。もうご自身のタイムラインを見たら……他人のタイムラインとたまに比べるとおもしろいですけど、相当みなさんに最適化された情報が流れてきているんですね。
アドテクによって狙われるというか、ターゲティングされ過ぎる弊害があります。人間の心理的には、あまりにターゲッティングされた情報ばかりが降ってくると「うざいな」「もういいよ」が起こります。
PRはもともとプッシュというよりはプルというんですけど、広告やプロモーションの考え方よりは、より自然に包囲網する。先ほどのベビーカーもそうなんです。
そういう発想がある。そうすると、ネット上の情報露出でPR的に気を付けないといけないのは、すごく意図的に見えてはダメなんです。「私は偶然これを見たかな」と思わせることなんですね。
これはある種のメディアの進化と呼応しています。みなさんはBuzzFeedとかもよくご覧になると思うのですけど、あれは「分散型メディア」と呼ばれてます。
これはYahoo!さんみたいな考え方とは違っていて、「ポータルにとにかくPVを稼いで、そこにいっぱい情報を載せてくれる」ではなく、「分散型メディア」というのはなにが分散していくかというと、「記事やコンテンツをソーシャルの海の中に放り込む」ということなんですね。その一つひとつが読者との出会い。そして消費され、見られ、全体的にメディアとして成長していく。
本田:こういう分散型メディアが増えてくると「ばったり型コンテンツ」が大事になってきます。(スライドを指して)これは日本じゃなくてオーストラリアの例なんですけど、広告業界の方がもしいらっしゃればカンヌとか広告賞もとっているので知ってるかもしれません。「MEET GRAHAM」というオーストラリアの交通安全キャンペーンで、ひと言で言うと「交通事故を生存できる男」というキャンペーンでして。
(写真を指して)今出てきて気持ち悪いですけど。交通安全局が長年PR的に言ってきた「スピードを落としましょう」「交通安全しましょう」というのは、使い古された、聞き飽きたメッセージです。これをいかにターゲッティングしようが、ドライバーに届けようが、PR的には効かない。なにをやったのか。
交通事故のデータがいっぱいあるので、そこを逆手に取る、ここを強化すると「交通事故で絶対に死なない男」を作れるという、かなり飛び抜けた発想なんです。そして、映画の特殊メイクをやるようなクリエイターと組んでつくっちゃったということですね。
「運転に気をつけましょう」というメッセージは、ある種コモディティ化してます。みなさん、鮫洲あたりの自動車教習所の部屋に閉じ込められて見せられるムービーとかありますけど、あれは免許を更新しないと困るから見ているだけで、あまり響いてないかもしれないですね(笑)。
それをこういう形でPRする。そうすると「ばったり型」になる。自分のタイムラインにいきなり交通安全メッセージじゃなくてこれが流れてきたら、と想像してください。「なんじゃこれ!?」となって、ちょっとシェアしたくなったりします。
サイトに飛べばメッセージがあり、結果的に交通安全のことが理解できるという。情報の接触としては「ばったり出会う」というパブリシティのやり方が重要になります。
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