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シナリオ・センター 2017年9月26日(全6記事)

顧客の気持ちを動かすカギは「セリフ×ト書×柱」 脚本制作のプロが明かす、営業トークのロジック

「チーム全体での成果を上げていくというためにどうすればいいのか?」。ログミー営業部のこんな要請を受けたシナリオ・センターの新井氏。9月27日、営業部の4人にシナリオや脚本制作の視点から営業トークをどう展開すればいいのかをレクチャーしました。第2回目となる本パートでは、トークを組み立てていくロジックについて、実際にシナリオを作ってもらいながら説明しました。

ロト7のCMから学ぶ「逆から始まる」の使い方

新井一樹氏(以下、新井):例えば恋愛ドラマで、最後2人がくっつきます、幸せに結婚するというお話があったとして、初対面からすごい好印象で、初めてのデートがすごくいい感じで、付き合うことになりました。

友達に紹介したら「すごくいい彼氏・彼女だね」って言われて、親に紹介して「反対されるかな?」と思ったら、ご両親も喜んでくれました。結婚式当日、幸せそうに結婚式場で……フラワーシャワーを受ける2人。1時間半、1,800円の映画。……クソでしょ?

(一同笑)

「なんだそれ?」って思うじゃないですか。「どっかでそろそろ不倫する奴が出てくるんじゃないのか?」みたいな話ですね、今だったらね。

というふうに、「好き好き」じゃ話が成立しないんですよ。だから恋愛ドラマでも、最悪な第1印象からはじまったりするじゃないですか。ですよね? 逆から始まるっていうのがセオリーなんですよ。

これ、例えばですね、(ノートパソコンを手に取って)ちょっとこのためだけに用意したんですが、よくできたCMなんかも同じ仕組みになっていて。ロト7のCM、すごいわかりやすいので、一例として観てもらいたいんですけど。妻夫木くんと柳葉さんのやつですね。あの第1話。たぶん覚えてる方多いかと思うんですが。

(ロト7のCM動画が流れる)

観たことあるじゃないですか。このテーマは「ロト7をやってね」で、「あ、これ、8億円も当たるんだったらやってみたいな」って観てる人に思わせたいわけですよね。

自分のテーマを相手に伝えるためのロジック

新井:じゃあ、最初どうやって入ってるかっていうと、柳葉さんが「ロト7知ってます?」って聞かれて「知らないな、興味ない。おまえの夢は金で買えるのか?」と、全部逆から入ってるんですよね。逆から入っているのに、最後柳葉さんがやってて、そこを見られちゃって「えーっ」みたいな。印象に残ってるじゃないですか。

これがもし妻夫木くんがこっそりやってても、印象に残らないんですよね。「興味ない」って言ってた、柳葉さんががやるので、「おもしろいな」と思っちゃうわけです。

というふうに、営業もドラマも自分のテーマに対してアンチから始まるよと。ドラマはアンチから始まるし、営業もアンチから始まるんじゃないの? お客さまとしては、最初から「ほしいな」「すごいほしい!」って思ってるんじゃなくて。

「これを導入したら、どうなんだろうか?」とか「いくらするんだろうか?」って、期待もあるけどためらいもあるじゃん、というところから始まるよね。営業とシナリオ、構造としては実は一緒じゃん。

シナリオには、じゃあ、どう組み立てれば自分のテーマをきちんと相手に伝えられるのかっていうロジックがあるんですね。営業の世界って、そこがフワッとしてるんですよね。センス任せになっているというか。ロジックになってないんです。

じゃあ、このロジックがない人がどんな営業スタイルになるかっていうと、例えばよくあるのが、媒体資料とか持って一生懸命説明してるだけで、お客さんの反応をぜんぜん見ないとか。必要な項目をとにかく聞き出そうとするみたいな、なんか尋問っぽくなっちゃって、だんだんお客さんがしゃべらなくなっちゃうとか。

シナリオ・センターではセンスだけでなく技術を伝える

新井:ロジックがないと、お客さんの気持ちを動かすために、一生懸命説明してどうにか説得しようとするんだけど、お客さんには必ず期待もあるけどためらいもあるので、ためらいが解消されないかぎりは、「うん」とは言ってくれないよねということなんです。

じゃあ、どうやってこのアンチテーゼからテーマに変えることができるのかというのを、ドラマから紐解いていきたいと思いますが「そもそも、なんでおまえがそんなこと言えんだ?」というのがありますよね。けど、うちはシナリオ・センターっていう、シナリオライター養成学校なんですね。

「どんだけのもんやねん?」というところなんですが、一応ですね、連ドラだったら7割ぐらいがうちの出身の人たちが書いてまして、NHKだと朝ドラの『ひよっこ』だとか、あと日曜、今の大河ドラマの『直虎』だとかですね。映画で今度やるやつだと、一番近いのが佐藤健くんがやる『亜人』とか、はい。

そういう作品を出身ライターの人が書いていてうちの場合はそれぞれが持っているセンスを活かすための表現技術を身につけてもらうことで書けるようになる、という仕組みなんですね。

なので、シナリオ・センターで教えてる技術っていうのは、まあ、視聴率だと10パーセントが1,000万人なので、1,000万人の人の気持ちを動かして、「来週も観よう」とか、「明日も観よう」「あ、これ、おもしろかったな。友達に言おう」、って思ってもらうためのロジックなんです。

それをふだん、講座でプロのシナリオライターになりたい、シナリオ書いてみたいという人たちに教えているんですけども、実は同じロジックは、目の前のお客さんの気持ちを意図的に動かしていくための会話の組み立てにも使えるということなんです。

シナリオが書ければ「相手の立場で考える」の意味がわかる

新井:じゃあ、実際にこのシナリオっていうところにいきたいと思うんですが、でもね、難しくないんです。どんぐらい難しくないかって言うと、シナリオ・センターは小学生にシナリオを教えに行ったりするんですが、小学生からシナリオは書けます。なので、ぜんぜん難しいと思わなくていいですね。

シナリオがまず書けるようになったらなにがいいかって言うと、秋元さんから出た「相手の立場で考える」っていうことの意味がわかってきます。じゃあ、まずシナリオの発想をちょっと体験してもらいたいと思うんですけども、すごい簡単です。昨日食べた晩ごはんを思い出してください。それだけ。思い出せますか? 思い出せないってなると、また別の話になってくるんですけど。

(一同笑)

思い出せます? はい。じゃあ、秋元さん、なにを食べました?

秋元:サムゲタン風のスープ。

新井:サムゲタン風のスープ? ……それは何なの? サムゲタン風……。それ、1人で?

秋元:彼女と家で。

新井:家で。おー、いいですね。叶内さんは?

叶内:火鍋ですね。

新井:火鍋。あの、こういうやつ?

叶内:そうです。河井くんと一緒に。

新井:一緒に火鍋屋さんで。本間さんは?

本間:うどんですね。

新井:1人で?

本間:彼女の家で。

新井:彼女の家で。いいですね、みなさんけっこう幸せですね。

(一同笑)

はい(笑)。今思い出した時に、頭の中でうどんとか、火鍋とかって、文字で出てきてないと思うんですよ。「あれ、なにを食べたかな?」っていう時に、頭の中に一瞬その食べたものをこう、映像で思い出してるんですよね。サムゲタン風のスープ、「あー、あれだ」って思って文字に変換してるんですよね。

なんか人間の脳って9割方、映像優位って言われてて、映像でパッと思い出して、それを言葉に変換するらしいんですよ。その映像がパッと思い浮かべばもうシナリオは書けちゃいます。それをシナリオの要素に分けていくと、「柱」と「ト書」と「セリフ」っていう3つになります。

シナリオの要素は「柱」「ト書」「セリフ」

新井:柱っていうのは場所と時間。なので、彼女の家で食べたとしたら、柱は彼女の家、リビングみたいなですね。で、夜。ト書は、「2人の前にうどんが並んでいる」っていう、その食事の風景を書いて。セリフで「おいしいね」とか、「これ、もっとゆず入れたほうがおいしそうだね」っていうのを言っている。その会話を書く。

この柱とト書とセリフの3つだけで、頭にイメージした内容を整理していけば、シナリオは書けちゃいます。場所と、そこでなにをしてたか、なにを言ったかっていうことですね。

ちょっとそれを実際に体験してもらいたいと思って、時間が短いんですが、5分程度で簡単な設定をしてありますので、シナリオを書いてみてください。2人の男女の再会のシーンなんですけども、ミナミユウコさんっていう27歳のOLさんがいて、半年後に結婚が決まっていて、これから婚約者と待ち合わせて式場に打ち合わせに行くところだ、と。

で、コウイチさんとは3年前まで恋人同士でしたと。そのミヤタコウイチさん、29歳のサラリーマンはですね、デザイン会社の営業です。ユウコと付き合っていた頃はデザイナー志望だったけど、今は夢を捨てました。クライアントから契約を打ち切られて、帰社するところ。

という、ミナミユウコさんとミヤタコウイチさん。その2人が、表参道の交差点、夕方。交差点で信号待ちをしていると、隣にミヤタコウイチさんが立ちました。お互いの顔を見て「あっ」となりましたと。3年ぶりに出会って、さあどんなやり取りをするのかというのを、好きなように書いてもらいたいと。これだけです。

はい、なんかわかんないことありますか?

秋元:セリフを書く?

新井:セリフと、できればト書も書いてもらえると。例えば、「悲しそうな顔で」とかっていうのはト書になりますね。「うれしそうに」でもいいですし、「携帯を見ながら『ひさしぶり』って言う」とかでもなんでも、仕草とか動作みたいなのを書いて、考えてみてください。

難しいと思われがちだが、書いてみると楽しい

秋元:タイトルも?

新井:タイトルもできれば考えてみてください。まあ、5分ぐらいですかね。ちょっと体験と思って。

河井:左側になにを書くんでしたっけ?

新井:そのセリフとかト書とか言う人の名前です。「ミヤタ」って書いて、そのセリフを書くっていうかたちです。

河井:わかりました。

(参加者、シナリオを書きはじめる)

新井:時間もあるんで、あと1分ぐらいで書けるところまで。

秋元:ストーリーができたのに、書ききれない!

(一同笑)

新井:本当は時間をしっかり取れるとより楽しいんですが。さあ、じゃあちょっと時間になるので、相当途中だとは思いますが、案外楽しいでしょ? 書いてみると。

秋元:楽しいねえ。

(一同笑)

新井:そうなんですよ(笑)。せっかく書いてもらったので、こう、2人組でどんなのになったかを共有してもらいましょうかね。「ミヤタ、なんとかかんとか。ユウコ、なんとかかんとか」みたいな感じで、ちょっと共有を2人で向き合ってやってください。お願いします。

叶内:交換する?

新井:交換じゃなくて、自分のやつを読み上げる。

叶内:あー、そういうことね。

新井:はい。読み上げてください。

(シナリオを共有)

シナリオを書いている時の頭の使い方

新井:はい、ありがとうございます。今ちょっと共有をしていただいたんですけど、2人で同じ設定で書いてもらいましたけど、同じ内容になってました?

秋元:逆。

新井:あ、2人は逆。こちらはどうでした?

本間:違いますね。

河井:そうですね。

本間:なんか自分、距離感が違う。

新井:河井さんのほうが遠い感じで設定してましたよね。さん付けで呼ぶとか。

本間:さん付け、名字。

叶内:あー、3年の月日。

(一同笑)

河井:本当はト書で書こうと思ってたんですけど、まあ、なんて言うんですか、こう、よどみみたいな。ミヤタさん。

新井:よどみ?(笑)。

河井:名字で呼び慣れてないけど、名字で呼ばなきゃいけない、みたいな。

新井:あー、なるほどね。

河井:的な感覚を入れたかったんですけど、それをなんて書いていいかわからなくて。

新井:ちょっと言い直す感じとか、「ユウ……あ、ミナミさん」みたいな、こう違和感がある感じで呼ぶような感じを出したかった。

河井:そうです。

新井:いいですね。はい。これ、なんで今シナリオを書いてもらったかっていうのが、実は大切なんですけど、1つ目は、シナリオを書いてもらった時の頭の使い方なんですね。

っていうのは、シナリオを書いてる時に、ミヤタのセリフを書く時はミヤタの立場でセリフを書いてましたよね? それに対してユウコのセリフ書こうと思ったら、ユウコの立場でセリフを書いて。

それに対して「ミヤタはどう言うかな?」って、ミヤタの立場のセリフ書いてっていうふうに、まずそれぞれの立場になってセリフやト書を考えてたと思うんですよね。

リアクションをそれぞれの立場で考えるっていうことを、シナリオを書いてる時にしてたと思うんですね。それがまず重要なんです。それは初めてシナリオを書くみなさんも、プロのシナリオライターもやることが同じです。頭の中でそれぞれの立場になって、セリフを書いていく。

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