2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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徳力基彦氏(以下、徳力):僕も高広さんのプレゼンを聞いていて思ったんですけど、BtoBにおけるマーケティングとセールスって意外とすごい硬直化しているケースって多いなと思うんです。
大昔ってBtoBって本当、マーケティングの選択肢がなかったんですよね。見込み顧客に遭遇する確率がめちゃめちゃ低いから、やるっていったらコンベンションに出展して、とにかく道歩いている人を引き込んで名刺もらう。僕もあれ何回かやったことあるんですけど、めっちゃ大変じゃないですか。
しかも全然意味がない名刺が大量に集められちゃうんですよね。「お前勉強してこい」みたいな新人社員が、送り込まれてて声かけられたからたまたま止まるみたいなケースが多くて。一方で、目的があって来場してる人はそれ目的にきてるから、関係ないこっちが声かけてもなかなか振り向いてもくれないし。
がんばって大量に名刺200枚とか集めたんですけど、何の意味もない、という経験を何度かしました。とはいえ、それを藁にもすがる思いでやらないと、他に選択肢がなかったんだと思うんですよね、ネットがない時代って。BtoBの担当者に知り合おうとして会社に電話しても、コールセンター側で切られるに決まってますから。
それがネットのおかげで直接コンタクトできる手段が増えたことによって、根本的に、BtoBのマーケティングを考え直すチャンスが来てるんだと思うんですよね、BtoBの営業マンで個人でソーシャルメディア使いこなして、見込み顧客とめちゃめちゃ繋がれてる人とかいると思うんですよね。
でも、その一方で結局マーケティング部署の活動は今まで通りの習慣でプランされた、毎年同じイベントに出展してその後ダイレクトメールが常識、みたいになってるから、ここの乖離はすごいあると思うんですよね。僕も結局、NTTから転職してベンチャーで、前の会社とか、今の会社で見込み顧客を集めるときに、いわゆる教科書的な出展とかやってみたんですけど、あまりに、成果がでないと言うよりは、無力感で、終わったときがよくあるんです。
勉強会はどっちかっていうと、究極的には、高広さんとか小島さんがいっているように、売り上げにつなげるためなんですけど、すぐに売り上げにはならないので、うちの社内でもたぶん、勉強会って売り上げにあまりつながってないんじゃないかなって、営業の人間は思ってると思います。
長い目で見ると確実につながっている自信はあるんですけど、社内の活動として証明するのは難しいんですよね。たまたま僕が前に社長をやってて、僕が好きだから僕のためにやってるので続けられる。でも普通の会社だと「これ、売り上げにつながってんの?」って聞かれたら「つながってませんね」ってなっちゃう。そうすると「やめちまえ」ってなりやすい。
すごい長い目で、それこそHubSpotみたいなやつで履歴とか取っとくと「今回注文してくれた人、2年前の勉強会にきた人ですよ」みたいなのがあり得るんですけど、「獲得」と「育成」って分けた場合、今のイベントってほとんど「獲得」なんですよね。BtoBで獲得なんて簡単にできるわけないと個人的には思うんですけど、実際には人間として信じてもらえて初めてキャッチをもらえるんだと思ってます。
そこに乖離があるのを感じるんですよね。僕もNTTで法人向け営業の営業マンやってた時代があるんですけど、営業の基本ってまず雑談じゃないですか。仲良くなってなんぼで、しゃべってもらえてなんぼで。そんな感覚が営業の現場ではあるんですけど、いわゆるB2Bマーケティングの獲得重視の世界と現実が世界とは乖離しているのは感じます。
僕がそれでうまくいっているかと言うと、そんなにうまくいっていなくて、Web広告研究会の広告主の方々からは、「徳力さんって会っても全然仕事の話しないけど、もうちょっと売り込んだほうがいいんじゃないか」って逆に心配されるくらいの状況なので、それはそれで問題なんですが。
でも、やっぱり一人そういう勉強会とかが好きな人がいると、それによってすごいヒューマンネットワークがつなげられる可能性があって、それがさらにアマゾンの小島さんみたいな人だと、これをさらに、子から孫に伝播する能力を持っていて、というのは可能性を感じるんですよね。
小島さんのあれを真似するの、すごい大変だと思うんですけど、実は営業活動とか人間関係づくりに近い活動をBtoBのマーケティングのメインに持ってくるほうが、効率がいいかもしれないと。でも、これを証明するのはすごい難しくて、みたいなのが、今ちょうど過渡期なのかな。さっきの高広さんがいっていたようにデータをちゃんと分析すると、絶対でてくると思うんですよね。
うちとかも、ソーシャルメディアの初期の頃とかに名刺交換をした人たちと、そのとき「仕事やりたいね」っていって流れたんだけど、3年ごしで成就しました、みたいなケースも良くあるんですよ。これ、その年にコンバージョンとってたらゼロなんですけど、でもこの活動してるから今がある。そういうBtoBだからこその難しさがある気がしますね。
マーケティングが持ってる長い期間のファネルを営業の人たちに理解してもらう必要があると思うんです。最近だいぶ良くなってきたなと思うのは、トラッキングできるようになってきてるんですよね。
昔は、さっき徳力さんがおっしゃったように、「昔あった人、今案件になってますよ」ってトピックでしか証明できなかったんだけど、たとえばSalesforceとかSFAを使ってる人だったら、いつのキャンペーンで入った人で、その人は何回イベントにきて、最終的に案件になったかをちゃんとトラッキングできるんですよ。
ファクト(事実)を出していくと合意が得やすいですよね。長いファネルってちゃんと有効に動いてるんだと。認知度があって、デマンドジェンがあって、リードジェンとアウェアネスがあって、意外と営業の人ってあんまりデマンドジェンって理解してくれない。自分のことに関係あるって思ってもらう時間が結構長いんです。
徳力:足が長い(笑)。
小島:足長いですよね。うちもよく新しいメンバーに話すときに、アウェアネスとデマンドジェンの違いを結構話すんです。たとえば女の子に「フェラーリって知ってる?」「知ってます」「ほしい?」「ほしくない」。男の子に「シャネル知ってる?」「知ってます」「欲しい?」「欲しくない」。アウェアネスとデマンドが違うんですね。
だけど今、証明できるようになってきている。少しずつね。そこのギャップがまだ多いのかなと思います。BtoCみたいにそのとき良いと思ったら買えるものと、担当が良いと思っても社内の稟議を通さなきゃいけないとか、クラウドみたいに通そうと思ってるんだけど抵抗勢力がいるとか。BtoBだとこういうの全然、フローが違うので。その辺りまでまだ過渡期なんですかね。
そこを埋めるところに、大なり小なりイベントの使い方があるんじゃないかと思っていて、ステージのいろんな人に、それは勉強会かもしれないし、お客様向けの説明会かもしれないし、興味がない人向けの雑談かもしれないし。
そういう色んな入り口、ファネルの要所、要所、ポイント、ポイントにいろんな形のイベントがあっていいんじゃないかなと。イベントをやるコストが今下がってきているので。それが今できつつあるというように思います。
今お話しいただいたように、だんだんやりやすくなってきているとか、だんだんロジックがたてられる材料が増えつつあるみたいな流れはあると思うんですけれども、その辺に対して何かコメントをいただけないでしょうか。
高広伯彦氏(以下、高広):たとえばHubSpotみたいなツール、これ一週間前まで扱ってる会社にいましたけど、
(一同笑)
実は、あまり大々的には言ってないんですけど、EventRegist(イベントレジスト)とHubSpotが連携できるようにしてあるんですね。それでなにが分かるのかっていうと、たとえばEventRegistのサイトにきて登録した人のデータがHubSpotにそのままインポートできるようになったとか。
あるいは、EventRegistの当該セミナーのページにきた人というのをちゃんとトラッキングできるようになっていて、既存の見込客の中で申込みページに来たんだけれどまだ登録してない人だけ抽出して、またアテンションのメールを送るとか、そういうことがちゃんとできるようになっているんです。
イベントの集客っていうのがマーケティング全体の中のどこに位置づけされるのかっていうことなんですけど、イベントって今まで、イベントに向かってみんな動き出して、会期が終わると祭りの終わりのようになる。
例えばBtoBの場合だと、質はどうあれ獲得したリストをどういう風に加工するかっていうのが祭りの片付けみたいなもので、BtoCの場合だったら「おつかれさまでした」っていってコンパニオンと小さいビール飲むみたいな感じで。
(一同笑)
どっちにしてもイベントに山をもってきすぎだと思うんです、マーケティング全体の中で。だからいろんなマーケティング上のデータを繋いでイベントというものを改めて見ると、イベントは実は山ではなくて、あるひとつの通過点にすぎないということがもっと分かるようになると思うんです。
なので今はすごくデータで繋いでいくだとか、あるいはそれを管理するツールっていうのもぜんぶできてきているので、そのなかでイベントをどういうふうに置くのか。イベントに山をつくって労力をかけるよりも、その後のほうが大事だったりすると思うし。
BtoBに置けるイベントって、勉強会というか、超低コストなものからはじめたほうが良いと思うんですよ。ブロガーイベントとか、われわれがやる時も、できるだけお客さんに「会場設営とかいりませんから、会議室でやりましょう」って言ってるんですけど。
そもそもコストかけなければ費用対効果の話しなくていいっていうのが意外に重要だと思ってて、例えば10人くらいの勉強会なら、自社の会議室でやれるので、缶ビールとか買ってピザとか頼んで、たいしたお金かけなくても勉強会できるじゃないですか。でもそれでBtoBだと一件成約するだけで全然ペイするから、勉強会をやる気のあるスタッフが一人いれば十分まわると思うんです。
コストをめちゃめちゃ下げとけば、高広さんがおっしゃったように、じゃあこれをいろいろやって、その結果どうなるかということを試しやすい。どうしてもイベントっていうと、うちもアンバサダーサミットっていう、ソーシャルメディアサミットっていう数百人規模のをやっているんですけど、意外にでかいやつってBtoBにおいてはあまり直接案件にはつながらなくて。費用対効果の議論もややこしくなっちゃう。
それはそれで外向けの宣伝には重要なので、年に一回はやっていますけど、それはあくまでファネルの上のほうに知ってもらうための活動で、それとは別にクローズドなところで、高広さんが言うような関係を深めていく。自社の会議室の勉強会とか、Facebookグループとかでコミュニティを作るのとかであれば、連絡手段もインフラもタダ、それくらいから入っていけば良いと思うんです。
さっきのJAWS(AWSのユーザーコミュニティ)の話も、全体像としては規模がでかい話なんですけど、一個一個のイベント自体は非常にカジュアルな持ち出しのものであるはずで、そういうイベントのハードルって下げたほうが良いと思うんです。
一般的にBtoCのイベントがブランドイメージを体現するために作り込みとかすごいから、BtoBの場合も企業の方が「うちがイベントやるんだったらもうちょっとこういう看板つくって……」ってなりがちですけど、参加するお客さんはそっちを求めてなくて、どちらかと言うと自分と同じようなお客さんの悩みを聞けるとか、基本的にはJAWSと同じで、横のつながりを作ってあげるきっかけを用意する方がいいんじゃないでしょうか。
徳力:これは僕の勝手な持論なんですけど、セミナーの時代が終わろうとしているんじゃないかと思っていて、セミナーのためにわざわざ来るのってほとんど意味が薄れてるんですよ。だってログミーさんみたいなところが全文あげてくれたり、
(一同笑)
Ustreamとかでビデオでも見られる。一方通行の講義ならウェビナーとかで全然よくて。個人的に思ってる、イベントで一番大事な価値のって、横の懇親会なんですよね。中継の映像にうつらないところ、ログに残らないところ。僕、電話会社の出身なんであれなんですけど、リアルのコミュニケーションって一番情報量が多いので一番記憶に残るし、仲良くなりやすい。
電話って音声しかないし、メールとかチャットってテキストしかないから、感情とか抑揚とか全部排除される。対面って最高級コミュニケーションだと思うんですよね。今までのセミナーとかってこれを大事にしてるんじゃなくて単に言いたいことを伝えたいだけの場所で、それだったら単にサイトのインバウンドマーケティングとか、メルマガとかでやればいい。
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