2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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小島英揮氏(以下、小島):うまく回ってきたコミュニティ。どういうことが起きるかと言うとこんな感じです。
まず、勉強会でコンテンツが生成されます。懇親会でネットワークがちゃんとされて、ソーシャルや色んなウェブサービスで情報が見つけられる。例えば、クラウドで悩んでいてサーチしたら、「あ、こんな勉強会をやってるんだ。次行ってみよう」とこんな感じになるわけです。
この場があると、我々は非常に楽で、ここに1回行くと必要な情報のフィードが出来るし、フィードバックも得られる。例えば、勉強会に50人のディベロッパーが来る場があったとします。もしこのコミュニティという器がなければ、同じことをやろうとするとこの50人に会わなくてはいけません。大変ですよね。
しかし、場があれば、情報のロードが一回で済むし、その時こうですね、ああですね、と直にやりとりできる。非常に素晴らしい。この場があることで、うちの場合は、今までクラウドに興味あったんだけど触る機会がなかったとか学ぶ機会がなかった、という人が来れるんです。来てくれると我々と繋がります。この場がなければここにたどり着きません、この人達は。
これをコミュニティ成長のトライアングルと言っていますが、この場がちゃんと育てば、我々とのコミュニケーションがすごくうまく行きますし、どんどん人が吸い寄せられてきます。ひとつのメディアみたいになります。このトライアングルが出来ると、どんどんコミュニティが大きくすることができます。
もっと欲張ると、こんなことが出来ます。東京にコミュニティがあります。大阪にコミュニティがあります。九州にコミュニティがあります。北海道にコミュニティがあります。これを繋ぐとどうなるか。そうするともっと大きなムーブメントが出来ます。我々がやるのは、一緒になにかをやるというきっかけをつくる、それをファシリテートする。規模が大きくなりすぎたら、会場をサポートするだとか、そういうことをやるわけです。
例えば、今年の3月15日にあったイベントで、「JAWS DAYS」というイベントがありました。イメージ画が書いてあるのですが、全国の支部の人が一か所に集まって、ライトニングトーク、発表、デモ、そういうことが出来る場を用意しました。これは土曜日でしたが、集まる過程からエクスペリエンスを提供しようということで、大阪、名古屋、仙台から東京に行くのに夜行バスを用意しました。
さすがに、これは我々がお金を出しました。前の日に皆さん仕事が終わって、仙台、名古屋、大阪の勉強会に出て、勉強会を一回経験して、その後一杯飲んでからバスに乗って朝、東京に着く。朝すごく早く着くので一回大江戸温泉に着けて、お風呂に入って頂いてから会場に来て頂くという風にやりました。無謀な人がたくさんいますね。大体七十人くらいツアーに参加したのですが、フィードバックは大体一緒でした。「リクライニングシートが欲しかった」と。
(会場笑)
バスをちょっとケチったんです(笑)。自分が乗らないもので、安いのでいいんじゃないかと。今の世の中、リクライニングしないバス、そんなので高速移動しないですよね。体がバキバキになった、って言っていましたね(笑)。でも楽しかった、とも言っていました、はい。これはエクスペリエンスなので、大事なことです。
「JAWS DAYS」のイベントのライトニングトークがあって見ている人はお酒飲みながら見てるんですね。大体、(写真に写っている)会場は600人くらいです。このイベント、コンテンツは完全にコミュニティサイドでつくっています。それでやったセッション数が50を超えています。50セッション、アマゾンの人間が色々用意してやろうとすると、その工数とか準備とかだけで大変なことになりますけど、これが出来てしまう。
レジストレーションが1300。実際の参加率もよかったです。1000人以上の方がいらして。このライトニングトークとパーティは600人くらいの方がいらして。更に、金曜日にバスに乗って、土曜日大きいイベントがあって、まだ帰しません。
日曜日に、これは我々のオフィスですが全国のコミュニティリーダーに集まってもらい、今困っていることとか上手く行っていることとか、情報をシェア、レベリングをする場を設けました。もともと気を付けてセンスの良い種の方に集まっていただいているので、このように同じ器に入れるとすごく議論が生産的です。
こういうやり方をしているんだけど、それをそっちでもやったほうがいいんじゃない? これをこういう風に悩んでいるんだけど。じゃあ、一緒にそれを解決しようじゃないか、みたいな話がどんどん出てくる。この結果生まれたイベントも結構あります。
例えば、複数のイベント会場をネットでつないで、お互いコンテンツをひとつの勉強会、まとめるのが大変なので半分半分にしよう、と。例えば、大阪と福岡で繋いで。そうするとスピーカーが半分ずつで済むんです。それで質問する人は二倍になるので、これはいい、ということでその勉強会を運営したりしています。
コミュニティ成長のためのアイテムです。小物ですが、結構大事です。ロゴ、大事です。JAWS。もっと言うとサウンドロゴも大事ですね、ジョーズという響き。単にアルファベットの短縮形で、なんとかユージーとかありますけど、あまり耳に馴染まない言葉とかが結構あったりするじゃないですか。それよりも覚えやすいサウンドロゴ的なものが良いです。
このジョーズというのを名前にした時のエピソードがあります。色んな案がありました。AWS-UGがいいじゃないか、とかですね。とにかく並べただけ、というのが結構あったんですけど。その中の一つがこのJAWS-UG。
これ、すごく音が良くて、海外でも響きやすいなと。で、シアトルのほうに聞いてみたんです。それいいんじゃないの、と言われました。どの名前にするか、って時にちょっとだけ神の手を出して、「アメリカではジョーズってのがウケが良かった」ってポッとだすと、「じゃあそれにしましょう」ということになって決まりました。
じゃあ、マークもそれにちなんだものがいいよね、ということでサメのマーク。日本っぽいということで富士山がモチーフになっていますが、そういうところからコミュニティを表すマークをつくっています。ハッシュタグ、情報拡散に欠かせません。すごく大事です。コミュニティに関係あることは、全部「#JAWSUG」で流しましょう、と。特別なイベントの時は、イベント用のタグをつくりましょうということで。今#JAWSUGが非常に幅を利かせています。AWS、オフィシャルのハッシュタグをつくりたいのですが、大体#JAWSUGってつけられちゃうんです。なので、これは諦めてAWSというハッシュタグは公式には持っていません。#JAWSUGで流すようにしています。
そしてレコグニション。さっきコミュニティの色んな活動に直接お金を払ってはいけないと言いました。ロックスター、こういう人になりたいな、というのを作り出す。そのひとつに、権威付けじゃないですけど、ちゃんとレコグニションをすることは凄く必要です。アマゾンでは「AWSサムライ」というロゴ付で、この人はすごくコミュニティにコントリビュートしているんだよ、ということを毎年アワードで出すようにしています。
そうすると、例えばアワードもらった人が北海道とか沖縄のコミュニティの人だったとします。その界隈では有名だけれども、ちょっと離れたところだとその人を知る機会がなかった。でも、このアワードに選出されることによって、あぁあの人すごいんだ、という風にどんどん皆さんのリスペクトを集める。こういう構図をつくることで、すごくコントリビューションして頂いている方に、お金ではなくリスペクトというものでリターンする仕組みにしています。
当然、皆が納得する人を選ばないと、制度そのものがおかしくなってしまうので、ここは厳格にやっています。我々のパートナーさんでコントリビューションしている人もいるのですが、その人達は出張費で行ったりしているので、そこはポイントマイナスしてその人達はアワードをもらうにはあれなんじゃないか、ということで調整したりしています。
ずっと話をしてきましたが、なんだかんだで、ディベロッパーだけの話じゃないか、って思った方もいらっしゃると思います。でも、私が一番お伝えしたいメッセージは、同じレベルの人であればコミュニティは色んなところでつくることが可能ということです。
実際、今我々の周りで何が起こっているかと言うと、エンタープライズJAWS、E-JAWSというものがあります。これは大企業の情シス部長さん達の集まりです。我々がクラウドビジネスを日本で始めてから約5年、色んな会社さんが使っていますが、それでも企業の情報システムでクラウドを使うというのはかなりアーリーアダプターです。悩みが多いです。
例えば、調整がつかない、社内で。既存のベンダーさんと話が合わないとか。社内の抵抗勢力をどうやってねじ伏せるんだとか。色々あるんです。みんな一生懸命、一人一人が解決している訳ですが、出来れば同じ立場の人に聞いてほしいし、情報をシェアしたい。悩める者同士なんです。じゃあ、と言ってそういう人達を集めると、ディベロッパーのコミュニティとまったく同じことが起こりました。情報をシェア、「そんなやり方あるんだ、いいね!」、でどんどんその人達が情報をシェアしていって、自分の会社にフィードバックしていく。
この活動が公になっていくと面白いことが起こります。「私もE-JAWSに参加したいです」。うちの営業がリーチ出来ないお客さんがやってくる。こういう構図が出来るんです。つまり、ベンダーが来て「どうですか?」と言われるとヘジテートするけれど、使っている人の話を聞いてみたい、というのが結構あるんです。
このコミュニティが出来て、それを可視化することで、そういう場が出来る。存在そのものがコンテンツと言ってもいいかもしれませんね。こういうことが出来るので、これって技術者だけだろ、と思った方、是非この事例を見て、これ(自分のところでも)出来るんじゃないかな、と是非考えてみて頂ければと思います。
長々と話してきましたが、大事なこと。コミュニティは手がかかります。でも一度つくったら簡単にコピーされません。皆さんの資産です。実際に我々の業界で起こっているのは、アマゾンってなかなかいいコミュニティつくっているよね、と。うちもああいうの欲しいよね、と例えば上の方が担当に言うんです。でも、そう簡単に出来ないんですよ、コピペできないので。
なので、時間はかかるかもしれませんが、コミュニティベースのマーケティングですね、これにドライブして頂くと、皆さんのブランドを長い間支えて頂ける、そういったベースが出来ると思いますし、マーケティングにも強力です。あんまり気が付いている人がいないので。コミュニティってお金にならないよね、と。なので、そこが今狙い目なんじゃないかと思います。
JAWSの活動を今色々やっていまして、甲子園じゃないですけど、東京以外のところにも集まろうということで、今度仙台に日本中のJAWSメンバーが集まります。この九月にやることになっています。
ということでまとめです。今日言いたいのはこの四つです。コミュニティ、絶対的にマーケティングに有益です。これは間違いない。そしてコミュニティ形成のキモは、リーダーを見つけて、フォロワーを育てて、継続するためのファシリテートをする。イベントとデジタル、出会う場、これを共有する場、拡散するデジタル、両方がないと上手く回りません。
逆に言うと今はこれが揃っているので、コミュニティをドライブするのにいい時代だと思います。最後に「Don’t sell to the community」、コミュニティの人に売り込んじゃダメだ。「Sell through the community」、コミュニティの人を通してどう外にインフルエンスするか。こういう形でデザインして頂ければと思います。以上で私の話は終了なのですが、あと一分しかないみたいなんですけど(笑)、質問があれば。
(会場笑)
質問者:ロックスターとリーダー的な人って何か違うような気がするんです。目立つ人ってどちらかと言えば、見えにくいなと個人的には思っているのですが、どのように思われますか?
小島:リーダーの見極めはかなり気を付けています。ロックスターはかなり自然発生的です。場があったら、必ず目立つ人が出てきて、その人が目立つ場を用意する、その人が目立っていることを知ってもらう場を用意することはしますけど、誰かをスターにしよう、プロデュースしよう、とかはしません。お答えになっているかわかりませんが、場があれば必ずロックスターは出てきます。でもたくさんの人が集まらないと出来ないので。で、リーダーとロックスターは違います。
質問者:この人はリーダーだ、っていうポイントはありますか?
小島:必ず飲み会に行くようにしています。そこで人の話を聞けたり、ファシリテート出来たり、バカにされていないとか、リスペクトされているんだけど周りに気を遣えている人というのはかなり素養があります。もちろんそれだけではないですが……。そういう人がいると話をするようにしています。
質問者:ありがとうございます。
小島:今日はどうもありがとうございました。
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