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石川善樹氏トークイベント(全2記事)

仕事の終え方、おろそかにしていませんか? 石川善樹氏が提唱する「1日の振り返り」の重要性

予防医学研究者の石川善樹氏の著書『仕事はうかつに始めるな』の刊行記念イベントが青山ブックセンターで開催されました。とくに「いかにして1日を終えるか」に着目し、振り返りのためのチェックポイントについて語りました。

仕事のはじまりとおわりをすばらしいものにしよう

石川善樹氏:今日いらしている方はたぶん僕と同世代の方が多いと思うんですが、やっぱり1日のほとんどの時間を仕事に使っていて、仕事がイキイキできないと、人生つまんないだろうなというのがあって、それで仕事に関する本を書き始めたんです。

この本は結局何が主旨かというと、仕事のはじまりとおわりをすばらしいものにしようというのがテーマなんですね。途中は山と谷があればあるほどおもしろいと思うんです。始まりと終わりさえよければ、もう途中何があってもきっとOKだろうと思っていますね。

僕の予想は、世の中に出ているほとんどの知識は、途中の話が多いと思ったんです。仕事をする過程においてどうしたらいいのか、いかに考えるか、いかに休むのかという話が多いなか、もっとピンポイントに、始まりと終わりさえ無理矢理よくすると。これさえよければもうハッピーだというのが主旨で。

ということでこの本(『仕事はうかつに始めるな』)は、いかにして始め、どう行うのか、いかにして終えるのかという3点があった時に、とにかく始め方と終わり方の2つが大事だろうと考えたんです。それで、一番重要なのに一番おろそかにされているのが終え方だと思ったんですね。

仕事はうかつに始めるな ―働く人のための集中力マネジメント講座

とはいえ、私もそうですが、、だいたい、ダラッと仕事を始めて、フワッと仕事を終わる人が多いんですよ(笑)。

(会場笑)

本当にダラーッと始まって「あ、時間だ! 青山ブックセンター行かなきゃ!」って(笑)。

(会場笑)

イチローは昨夜寝た時間から振り返る

イチローも、うかつには終えないですよ、あの人。試合が終わった後30分間ちゃんと振り返るらしいですね。ロッカールームに座って30分間。普通の選手だったら、試合中何をどうやったかを振り返るんですよ。「あのプレーがよかった」とか、「あのあたりがダメだった」とか。

イチローはすごいですよ。「昨日何時に寝たっけな」というところから始まるらしいんです。ここからずっと振り返るから、そりゃ30分くらいかかるんですよ。

僕らが子供の時習った言葉で言うと、「復習」ですね。予習と復習ですよ。ちゃんと「こうやって1日やるぞ」という予習と、復習をしないと次のところにいかないんですけれども、みなさんどうですか? 仕事を終える時に、ちゃんと終えてますか? それともダラッと終えてますか? 横にいる方とちょっとお話してみてください!

(会場会話)

はい、ありがとうございます。たぶんね、これもちゃんと考えたことがない人が多いと思うんですよ。僕も考えたことなかったんです。本を作るっていいですね、考えますから(笑)。僕はどうやって終えたらいいんだろうかという、「終えるときのチェックリスト」を作ったんですね。本にはたしかコラムでチラッとだけ書きましたが。

というのは、最初僕は「いかにして始めて行うのか」というところに焦点がいっていたんですね。本を作る最後の方に気付いたんですよ、「いや、実は終わり方が一番重要だ」と。結果としてはその部分はあまり掘り下げて書けなかったのですが、たぶん1人1人違うと思います。

僕はなんだかんだで「終えるときのチェックポイント」を作るのに1年ぐらいはかかりました。その話をしたいと思うんですが、これをやらないと今日と同じことを明日やることになっちゃうんです。

だからちゃんとチェックして次の日につなげるためにチェックポイントをつくりました。面倒くさいんですけど、よりよい明日を送るために時間をかけて作りました。

その日に「考えたこと」と「感情」をチェックする

まず1つ目のチェックポイントは 「今日、自分はどう考えたか」ということです。そもそも自分はどう考えているのかという現在地点がわからないといけない。現在地点を知るためには、考えるということの全体図の中で、自分がどこにいるのかがわからないと、どこにも行きようがないんですね。

だから、考える力をブラッシュアップするためには「そもそも考えるってなんだっけ」というところから、自分が今日どう考えたかを考えなきゃいけなくて、まずこれが相当ややこしいんですね。だから時間がかかるのですが。

本の中の第4章に「考えるとは何か」という話が出てくるんですが、なんであんなことを書いたかというと、これは振り返りのためのチェックポイントなんです。2つ目のチェックポイントは感情ですね。自分は今日どういう感情を経験したか。僕がとりあえずチェックしているのが喜び・興味・誇り・満足・愛です。

僕にとっての喜びは創造した時ですね。新しいものが作れた時や新しいことを学んだ時です。たとえばさっきお話した箸の置き方。なんで日本では横で、中国や韓国では縦なのか、それを学んで今日みたいにシェアできた時に、僕はすごく誇りに思うんですね。

人類の偉大な知恵をまたみなさんと分かち合えたなと。満足を覚えるのはバラバラにやっていることが統合された時ですね。あとは愛。慈悲って言うんですかね、今日はちゃんと苦しんでいる人のことに想いを馳せることができたかなと。

これはごく一部なんですけれども、もちろんこれ全部を感じるというのはおかしな1日ですね(笑)。忙しすぎるんです。でもザーッと見て、1つもなかったなという日は改めた方がいいですし、ありすぎる1日っていうのは焦点が定まっていないんですよ。

これはポジティブな感情しか並んでないですけど、ネガティブな感情でもチェックリストを作っているんですね。ネガティブ感情を感じてない日っていうのは、たぶんチャレンジしてない日ですから。

「今日、私は善き人であっただろうか」

最後のチェックポイントは人格ですね。

「今日、私は善き人であっただろうか」と。人って本当に忘れっぽいですね。僕はオフィスにチェックリストを貼っているんですよ。出る時に見られるように。貼っていないと忘れるんですよ。

2ヶ所ぐらいに貼ってあって。というのは、お腹が空いていたりすると、早く帰りたくなるんですね(笑)。1枚目の紙が目に入らないことがあるんですよ。そういうことが何回かあって、2枚貼るようになったんです。

やっぱり弱い人間ですから、毎日イチローのように振り返りに30分もかけられないんですよ。でも、パッと見てサッと振り返るというだけでも、ぜんぜん違うだろうなと思っているんですね。こうした仕事を終えるときのチェックポイント、みなさんだったらどういうものを作る気がしますか? ちょっとまた2、3人でお話してみてください。

(会場会話)

はい、ありがとうございます。チェックするとすぐ気付くんですね、「自分はぜんぜん善き人でないな」ということに!(笑)。もう毎日気付くんですよ。ビックリしますよ!(笑)。

(会場笑)

ダークではないですけど、普通なんですよ。僕の名前は「善樹」ですが、「善」というのは「善い」という意味なんですよ。

(会場笑) 

善いまでいかなくて「普通(ふつ)樹」ですね。毎日「自分はなんて普通なんだ」ということにビックリしながら過ごしています。うかつにこういうチェックポイントは作るもんでもないなと思ったんですが(笑)。

でもそうやっていると、やっぱり「明日こそは」と思いますよね。僕は繁華街のすぐ近くに住んでいるのでときどき朝、全裸で叫んでいるおじさんに遭遇するんですよ(笑)。昔だったら「何してんだ」とか思っていましたが、最近は「善き人だったらこの全裸のおじさんにどうするかな」などと考えるんですよ(笑)。

(会場笑)

そういう発想ってなかったですね。「自分がもし善き人ならどうするだろうか」というのは、こういうチェックポイントを作ったから、考えるようになったわけで。そういうのをちょっと振り返るということなんだと思うんですね。

イケてるオフィスはみんな似ていて落ち着かない

もう1つ、本に書ききれなかった内容について今日はお話したいと思います。

そう、快適なオフィス環境の話を考えたんですね。僕は予防医学の研究をしているので、その観点からオフィスを考えてくださいとよく言われるんです。いろんなベンチャーとか、いろんな大企業のオフィスに行くんです。そこで僕が思ったのは、どのオフィスも全部似ている。イケてると言われるオフィスほどみんな似ていて。カッコいいんだけど、落ち着かないんですね。

「なんでなんだろう?」と思って。クリエイティビティを考える時は建築を考えるといいとよく言われるんですね。「創造性の王様は建築である」と言われるんですが、空間をどうデザインするかの練習をすればするほど、クリエイティビティは高まると。

僕の母はちっちゃい頃から家のインテリアを変えまくっていた人なんですよ。「ちょっと善樹手伝って」とか言って散々移動した挙げ句、結局元に戻すんですね。

(会場笑)

「これ意味なかったじゃん!」と言うと、「お母さんの内装、配置が改めて素晴らしかったなということがわかるでしょ!」と言うんですよ(笑)。で、「肩を揉んで」と。それで僕は肩を揉むんですよ。で、疲れるんですね、疲れて「もういい?」と言うと、「今やめるんだったら始めからやってもらわなかったのと同じよ!」と(笑)。

小さい頃からそういう母を見てたんですが、自分がレイアウトを考えるという発想がなかったんですね。

今回ちょうど集中力の本を書くにあたって、本当はこの話も書きたかったんですが、締切が近かったんですね(笑)。

それで次の本に入れましょうと。なのでその内容を一部ここでお話します。

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