2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
哲也の部屋 ゲスト:田上智子氏(全1記事)
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本田哲也氏(以下、本田):続いて、お二人目のゲストをお呼びしたいと思います。お二人目は、クライアントサイドということで、我々のクライアントでもありますP&Gジャパンさんから、田上智子さんにお越しいただいております。田上さん、どうぞ。みなさん、拍手でお迎えください。
(会場拍手)
田上智子氏(以下、田上):10周年おめでとうございます。
本田:ありがとうございます。先ほどお話ししたんですけど、最初のお仕事をした1社がP&Gさんでした。そして、今に至るまで1番大きなクライアントさんとして、何度も怒られながら……(笑)。
田上:いやいや、そのお話は(笑)。
本田:我々、鍛えていただいております。本当にお世話になっています。
田上:ありがとうございます。
本田:今日はそんな田上さんと、ここにいらっしゃっている方も興味があると思います、「クライアントとエージェンシーの関係」についてお話したいと思います。
田上:はい(笑)。
本田:関係と言っても、別にあやしい関係じゃないですね。どういった関係が健全なのか、みたいな話をさせていただければと思います。ご存じない方もいらっしゃると思うので、簡単に田上さんのバックグラウンドをご紹介いただけますか?
田上:みなさん、こんばんは。P&G広報部の田上と申します。私が会社に入った時は宣伝部的なところに配属されたんですが、2000年から製品広報を専門にして、今はもう16年、ずっと製品広報畑を歩かせていただいております。
本田:16年、ブランドPR一筋ということですね。
田上:最初の5〜6年はヘアケアを担当していましたので、本田さんとはご一緒していなかったと思うんですが。
本田:そうですね。ヴィダルサスーンのキャンペーンとかをやられてましたよね。
田上:そうですね。その後、ちょうど昨日が、うちの息子の10歳の誕生日なんですけど。
本田:おめでとうございます! クライアントさんのFacebookチェックは欠かしていませんから(笑)。
田上:ありがとうございます。今日10周年ということで、同い年ですね。
本田:同い年ですね、息子さんと。
田上:ですので、産休明けからずっと本田さんたちとご一緒させていただいているという関係です。
本田:はい、お世話になっています。P&Gさんというと、みなさんご存じのように世界最大の広告主ですから、ありとあらゆる世界中のエージェンシーさんとお付き合いがあって歴史もあるわけですが。どうですか? この10年くらいでエージェンシーとクライアントの関係って変わってきたんでしょうか? あまり変わっていないですか?
田上:う~ん、そうですね。本田さんが冒頭スピーチでお話されていた「普遍と革新」でしたっけ?
本田:そうですね。普遍と革新。
田上:普遍と革新という意味では、変わっていない部分とすごく変わった部分があります。
やはり変わっていない部分としては、弊社はとくにそうなんですけれど、PRはビジネスの戦略の中の1つと考えているので。単に露出が多ければいいとか、プロジェクトベースで考えていくということはもともとありえなかったところがあります。
ですから基本的には年間契約ですし、コンペとかをするのではなく、基本的には長期間に渡ってお互いにビジネスの戦略を理解していただくなかでPRプランを作っていくというところは、変わっていないのかなと思います。
変わったところとしては、やはりグローバルという視点が、近年のソーシャルの流れのなかで出てきたのかなと思っています。例えば、もともとは、日本のエージェンシーパートナーが隣の国と違うパートナーでもよかったところが、今はソーシャルの流れのなかで、グローバルのキャンペーンや流れをいかに一緒に考えるかというところが大切になってきています。
そういった意味で、パートナーシップが各国ではなく、グローバルベースになってきているということは、PR業界に関しては新しい部分なのかなと思います。
本田:広告やブランドエージェンシーもそうなんですよね。エージェンシーとの基本的な関係は。
田上:そうですね。ブランドエージェンシーはもともとそういうところがあったんですけど、PRはやっぱり各国でやるっていう時代が長かったんですが。
本田:PRのほうもグローバル化が……。
田上:そうですね。流れになってきてますね。
本田:確かにそれで言うと、我々はオムニコムグループですけれど、複数のグループ内のPR会社が一緒になって、ワンチームでP&Gさんの仕事をするという体制に去年くらいからなっています。
これはこれで、実はグループ内だけど、昔は競合だったPR会社とも連携しなければいけないということで、いろいろむずかしさはあるんですけど。トレンドは間違いなくそういった感じですよね。
田上:国を超えた協業。例えば、特にアジア内の場合、共通のコアの部分は日本で作って、ほかの国で展開する時はほかの国のグループ会社にやってもらうだったり。
シンガポールで作ったものを、日本での展開はこちらでやるといったような意味で、国を超えた協業、「国内のオムニコムグループの競合が……」というよりは、もっとグローバルな意味で協業が生まれていますよね。
そうじゃないと、世界の消費者のビヘイビアを動かすようなキャンペーンをすることは、むずかしいのかなと思います。
本田:とくにPRは、先ほど嶋さんもおっしゃっていましたけれど、当然確約がないし。人を動かすことってそんなに単純なものじゃないですからね。そして、国をまたいで、文化をまたいでとなると、相当むずかしいですよね。
と言いながら、「むずかしさをわかってください」みたいな(笑)。お互いむずかしいですよね。
田上:でも、私、3年間シンガポールに駐在してる間に、アジアの10カ国を担当して、もちろん各国状況は違うんですけれど、それまで日本でやっていたPRのアイデアで、比較的当たる法則みたいなものが自分のなかにあるじゃないですか。
それは意外とどの国でもうまく、もちろん全部うまくいったわけじゃないですけど、けっこう当たったんですよ。だから、普遍的な部分はやっぱりあるのかなという気はします。
本田:普遍的な部分。国が違えど、カルチャーが違えどみたいなものですか。
田上:そう。手法は各国で違うし、メディアのタッチポイントも違うんですけど。
本田:マスコミ、メディアのあり方もぜんぜん違いますからね。
田上:そこは各国のチームに任せつつ、アイデアの部分はやっぱり人間なので。とくに、アジア人はお母さんが子供の教育に熱心だとか、そういう普遍的な部分がすごくあるので。そういったところを上手にとらえると、日本人でも、マレーシアのヒット作が作れたりというところは肌で感じて、私はすごくPRとしては自信を持って帰ってきた感じはします。
本田:有名な「Thank you, Mom」のキャンペーンとかは、そういう意味で、本当にグローバル、全世界のお母さんのインサイトをとらえたという感じがしますよね。
田上:あとは、インサイトをとらえるところと、それをどう商売に結びつけるかというところが、メーカー側としては大事で。
本田:そこですよね。「それで売れたのか?」という。
田上:そうですね。やはりカンヌで賞を取るとか、そういうこともすごくすてきだと思うんですけど。
本田:去年のPR部門グランプリの、「Always #LikeAGirl」キャンペーンみたいな。
田上:その次の年に、PRに予算が付くかどうかは、やはり売上げが伸びないことには付けられないんで。そういう意味では私、16年間そのせめぎ合いをずっと毎年、毎年……。
本田:ブランドマネージャーさんとの戦いの日々とおっしゃっていましたよね。
田上:ブランドマネージャーというよりは、ゼネラルマネジャーとの戦いなんですけど。そのなかで「こいつにお金を渡したら、PRできっとビジネスが伸びる」と思ってもらえる結果を、毎年積み重ねていくことしかないので。いかに賞を取っても、やはり売上げが落ちてしまえば予算は付きにくいですからね。
すてきなことをやりたい気持ちと、ちゃんと売れるプランに落とし込んでいくというところの両輪で、やはり企業側、クライアントはやっていかなきゃいけないですね。
本田:両方ありますよね。
田上:PR会社さんに期待したいこととして、最新のPRの手法とか、トレンドというところではすごく頼りにしたいです。でも、丸投げしてしまうと、ビジネスとつながらなくなっちゃうし。ビジネス、ビジネスだけだと、毎年つまらないプランをすることになってしまうので、そこが両輪でやっていけたらいいんじゃないかなということはすごく思っています。
本田:そうですよね。そのバランス。ぜひやりましょう。
田上:本田さんとは10年に渡り、そういったことを。
本田:それをやるには、エージェンシーとクライアントってもちろん利害関係があるわけですけれど、けっこうフランクにふだんから話し合っていかなきゃいけないんじゃないかなと思っていて。だから、最後はやはり人間関係というところはあると思うんですけど、本当にこのいい関係を(笑)、今後もぜひ続けていただければと。
田上:ぜひ、次の15周年でもお話させていただけるようにがんばりたいと思います。
本田:ぜひぜひ。それまでに契約切られないように、がんばりますので(笑)。
田上:よろしくおねがします(笑)。
本田:本当に今日はお忙しい中、ありがとうございます。田上さん、昨日はレノアハピネスの発表会でしたし、週末はお子さんのボウリング大会らしいですね。
田上:そうですね。土曜日は誕生日ボウリング大会を主催しないといけないので(笑)。
本田:ママとしての苦労もあると思いますけれど、本当にがんばってください。田上さんにあたたかい拍手をお願いいたします。どうもありがとうございました。
(会場拍手)
田上:ありがとうございました。また、これからもよろしくお願いします。
本田:こちらこそ。田上さん、ありがとうございました。
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