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情熱大陸プロデューサーに学ぶ挑戦する生き方とは@ASAC(全5記事)

部下が上司にガッカリする瞬間とは? チーム『情熱大陸』をまとめるリーダーの心得

2016年6月15日、青山スタートアップアクセラレーションセンター(ASAC)のイベントスペースで、情熱大陸プロデューサー・福岡元啓氏とトーマツベンチャーサポート・斎藤祐馬氏による対談「情熱大陸プロデューサーに学ぶ挑戦する生き方とは」が行われました。福岡氏は、チーム『情熱大陸』を1つにまとめる際の苦労やリーダーとしての心得を紹介しました。

『情熱大陸』のターゲット層

斎藤祐馬氏(以下、斎藤):せっかくなので会場の方からご質問でも。じゃあ、どうぞ。

参加者1:先ほど「共感を得る」というところで、マスメディアにおける共感ポイントは、私のビジネスのシーンとは違うのかなと思っていて。

例えば、ビジネスでプレゼンテーションして、やっぱりいっぱい予算を取りたいですし、いろんな方から共感を得たいので、誰に対してのプレゼンなのかをものすごく意識するんです。

小学生なのか、中学生なのか、高校生なのか、おじいちゃんなのか、おばあちゃんなのか、男性なのか、女性なのかによってメッセージを変えていこうと思っているんですけれども。

マスメディアは、毎回視聴率を取らないといけないので、すごく多くの方を意識していらっしゃると思うんですね。そのときに、誰に対してどういう意識で作っていらっしゃるかを聞いてみたいです。

福岡元啓氏(以下、福岡):『情熱大陸』に関して言うと、普遍的な部分に訴求してるので、実はそこまで意識はしていません。ただ、もし意識するとすれば、時間帯的に遅い時間で、やっぱり大人が見る番組なんですよね。

以前、視聴率調査があったときに、男の40代、50代が最も好きな番組の1位に『情熱大陸』がなったことがあって、それはどういうことかというと、アサヒビールとマツダがスポンサーの番組で、やっぱり男性が好きな番組なのかなと。スポンサーはちょっと置いておいて、そういう部分はあるかもしれないです。

ただ、番組作りにおいて男性にウケるように作ろうということはぜんぜん意識してません。例えば先週やった放送は、30代女性の視聴率が断トツでぶっちぎってるんですよね。

やっぱりその回ごとにやっていくだけなので、『情熱大陸』に関して言うと、誰に向けてと言うのはさほど意識しないです。

ただ、例えばAKBの誰かが出たりしたら、たぶんAKBのファンは見るから、それ以外の人がどういう作りにすれば「AKBのファンじゃないけどおもしろかったね」と興味を持ってもらえるのかというのは意識します。

テレビの世界でいうと、本当に時間帯とその枠がどういうところを狙ってるかによって変わってくると思います。『情熱大陸』でいうと、そこまで意識しないという答えになっちゃうんですけど。

例えば、朝の情報番組だったらどうかとか、夕方のニュース番組だったらどうかというと、お父さんが帰ってきてないので、やっぱり主婦向けに作りますということなんですね。

参加者1:どうもありがとうございます。

芸能界が騒然となった『情熱大陸』の神回

参加者2:自分も映像を制作する会社を経営していて、やっぱり福岡さん自身がものすごい情熱のある作り手だと思うんです。

みなさん社員がいらっしゃる人は、自分の作りたいイメージとか、目標についてきてくれないとか、いろいろあったりして、もがくことがあると思うんですけれども。

チーム・情熱大陸がすごくうまくいってるから長寿番組が成り立つのかなという印象があって、そういうチームマネジメントのお話をうかがいたいと思います。

福岡:今でこそ普通にペラペラしゃべってますけど、6年ぐらい前に着任したときはけっこう大変でした。スタッフは99パーセント僕より年上なんですよ。それでどうやってやっていくかというときに、スタッフは「リーダーがどれだけ一生懸命やってるかな」「リーダーがどれだけ腹括ってるかな」というのをすごい見るんですよね。

それでいうと、まず僕が着任して間もないころに、「サバイバル登山家」という放送をしたんですよ。

どういう放送かというと、その人は銃を1つ持って山の中に入っていくんですよ。それで、自分で食料を調達するんですよ。それで、2週間ぐらいして帰ってくるということを好き好んでやってる人なんですけど。

その人はなかなか獲物にありつけずに、どんどんどんどん痩せこけていくんですけど。最後に鹿を見つけて、銃でバーンって打って、鹿を仕留めるんですよ。それで鹿を見て「焼肉だー!」って叫んで、崖を降りていくんですよ(笑)。「ようやくだよ。やっと肉にありつけるよ」と。

でも、山の神が怒ったのか、最後にその人が滝から滑落するんですよ。それで血まみれになって、ぶるぶるぶるぶる震えて、カメラマンに「助けてくれてありがとう」とか言いながら、命からがらバスに乗って帰っていくという番組だったんですけれども(笑)。

(会場笑)

それは普通でいったら放送できないです。ただ、なんでもやってやろうと思ってたんです。さっきの挑戦の話じゃないですけど。『情熱大陸』も長く続いていた番組なので、僕が着任したときというのは、やっぱりなにかが必要な時期だったんですね。

だから「別にいいや」と思ってバーンと出したんですけど。やっぱり放送したら、それはそれはいろんなことが起きました(笑)。

だけど、それを見た現場の制作者たちは「ええやん!」みたいな感じにやっぱりなってくれたんですよ。「この人腹括って出してくれるし、やってやろうよ」みたいな感じになったというのが1つありました。ただ、サラリーマンとしては褒められたものではありませんが。

千原ジュニアさんとか、ほかの芸人さんとか、水道橋博士さんとかがTwitterやほかのテレビ番組で「この間の情熱大陸見た?」「すごすぎるな」みたいな感じになって。それでまた少し番組が盛り上がったんですよね。新陳代謝するというか。

リーダーとして、どういう方針で番組を作ろうとしてるのかを示すことが1つのポイントだと思うんです。

現場のスタッフに「サラリーマンだな」と思われないこと

もう1つはやっぱり「サラリーマンだな」と思われると、スタッフはぜんぜんついてきてくれないんですよね。「土日だから休みます」とか「今日は家族と予定入っちゃってるんでダメです」みたいな感じになると、やっぱり途端にテンション下がるんですよ(笑)。

僕が土曜日とかにナレーションを録ってるというのも、一生懸命さを示したいというのも1つあって。みんなが現場ですごく編集を頑張っているので、どうしても間に合わないときは日曜日の午前中にナレーションを録ってるときもあります。

そうすることで「それぐらい僕はこの番組をよくしたいと思ってるし、君と一緒にいい番組にしたいんだ」ということが伝わりますよね。「家族の予定が入ってても来てくれるんだ」とか。本当は『情熱大陸』って木曜日に納品しなきゃいけない番組なんですよ(笑)。

(会場笑)

それを無視して「土曜日までやるよ」と。「俺、本当は土日休みだけど」とは言わないですけど。現場の人たちはわかってるじゃないですか。「こいつ休んでねえな」と。それで「また明日から次のテレビが始まってるな」とわかってる。

「毎週毎週こいつヒーヒー言いながらやってるな」となると、だんだん「まあこいつ、俺より年下だけど一緒にやってやろうかな」みたいな感じになっていくんですよね。

やっぱりその時間が大事で、そうやって信頼関係を作るのに2、3年はかかりましたね。だから、この人はこういう方針でバーンってやるというのと、一緒に汗をかいてやってくれるかという2つがあります。

あとはいろんな本にマネジメントのことがいろいろ書いてあると思うんですけど、僕はそういうのはわからないので、感覚でやっちゃってるんですけど。その2つがあればマインド面は整理できるんじゃないかなと思います。

もちろん僕のやり方に共感してくれる人もいましたし、立ち去っていく人もたくさんいました。でも、共感してくれている人が多いので、今こうやって続けられてるのかなと思いたいですけどね。

ビジネスには信頼できる右腕が不可欠

結局ビジネスって、本当に信頼関係でしかないんですよね。ビジネスということだけでいうと、条件が合う人とだけで普通にできると思うんですよ。それが当たり前だし。

ただ、僕がなにかやるときには必ず信頼関係を大事にします。そういうふうに言うと、すごく軽く見えるかもしれないですけど。

やっぱり最後は、「この人が裏切るか、裏切らないか」のところに集約されていくんですよ。そういうときに信頼できるやつと組まないと結局ダメだということが、最近すごくよくわかってきました。

仕事の進め方で2つあって、1つは、自分の窓口を広げるためにどんな人とでも付き合っていきましょう。仮に自分が嫌いな人、合わない人だとしても、その人に能力があれば、その人と組んでのぼっていきましょうと。

いいところだけを取ってやっていけば成立するし、自分の好き嫌い、合う・合わないで判断すると可能性を狭める。だから、いろんな人とやっていきましょうと。

もう1つは、コミュニケーションが合う、自分の思ってることが阿吽の呼吸で伝えられて、信頼関係ががっちりしていて、その人と組んでいけばうまく進んでいける。自分の思いがきっちり誤解なく伝わっていって、しかも絶対裏切らないやつ。

この2つがあって、両方のやり方があるのはよく知っているんですが、すごく迷ったんですよね。

みなさんはどっちで仕事をしてるか聞きたいんですけれども、窓口を広げようとして、ちょっと嫌だなと思う人とでもやってる人はどれぐらいいるんですか?

(会場挙手)

意外と少ないんですね。じゃあ、信頼できる右腕と組む方はどれぐらいいらっしゃるんですか?

(会場挙手)

後者が多いですけれども。『情熱大陸』をやっていて気づいたんですよ。とくにスポーツでうまくいってる人。

柔道の井上康生は、全日本の監督になったときに、自分の右腕になる後輩や同僚を集めました。柔道の実力としてはもっと上手な人もいるのに、あえてそういうコミュニケーションを大事にして集めました。

星野(仙一)監督も必ず自分の発想をきっちり伝えられて、信頼関係を築くということをすごく大事にされていました。

両方とも合ってると思うんですけど、やっぱりつながりの中で信頼関係を作っていけないとなかなか難しいんですよね。

実は『情熱大陸』はオープンコンペで誰でも企画を持ち込めるのですが、初対面の人の企画をその場で通すということは0です。やっぱり何回かその人とやり取りをします。それで、「この人大丈夫かな?」と。

企画としてはむちゃくちゃおもしろい企画かもしれないです。でも、怖くて簡単に通せないですね。何回かコミュニケーションしないとわからないですね。だから、やっぱり裏切らない人と組めるようになることが大事なのかなというのは1つ思います。

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