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ダイヤモンド社書籍オンライン 和田裕美×陰山英男対談(全2記事)

「脳は書いた瞬間に動く」ビジネスマン必見の効率的なインプット法

営業が結果を出すために考案された『和田裕美の営業手帳』、生活と仕事を充実させながら人生の質の向上を目指す『陰山手帳』。ともに手帳を進化させてきた和田裕美氏、陰山英男氏が手帳の役割や意義について語ります。ビジネスの世界でもデジタル化が進むなか、あえて手書きで情報を記録する意味とは?(この記事は「ダイヤモンド社書籍オンライン」のサイトから転載しました)。

情報を集めるにはWeb、整理は手書き

和田裕美氏(以下、和田):最近はスケジュール管理をWebでする人が増えていますね。

陰山英男氏(以下、陰山):なにを隠そう僕も一部はWebを利用しています。あちこちに出張に出ることが多いので、スタッフと連携をとるためにはそうせざるを得ないのですよ。オンライン上で次々と予定をアップデートしていきたいので。

和田:スケジュールだけじゃなくて、そもそも紙に書くという行為すらしなくなったという声も聞きます。

陰山:ほお。

和田:なにか思いつけば携帯のメモ機能を使って、新聞や雑誌で良い記事が見つければ写メで撮る。書記はホワイトボードを写メで撮るし、取材もボイスレコーダーにデータ録音するからそれほどメモはとらないという人もいらっしゃいます。ITを駆使して、アナログ的なことをしない人が増えているのかなって。

陰山:どうだろう。デジタル派もアナログ派も両方いるように思いますね。僕は、なにか考えたりするときにとにかく「書く」人です。

和田:私もそう! 基本的にメモ魔ですからね。

陰山:なにかテーマがあって、それにまつわる情報を集めるときはWebを活用するのだけど、それらの情報を整理するときはスクリーン上では絶対無理ですね。

和田:それはなぜ?

陰山:たとえば、新しいカメラを買うことにして自分にぴったりの商品を探すとします。人物撮りならどれが向いているかとか、カメラの性能をあれこれ調べ始めるとだいたい1週間くらいかかります。僕は凝り性なのでとことん極めないと気がすまないのですよ。

和田:陰山先生は、なんでも本当にお詳しいですからね。

陰山:そうやって調べごとをしていると、インターネットエクスプローラーのタグがズラリと並ぶわけです。だから、必要なことは手書きで書き出します。

和田:うんうん。

陰山:考えるべき観点が5~6個ならいいんだけど、「画質としてはコレだよね」「テレビで映して見るならコレだよね」と、数十個に及ぶ観点で考察しようとすると、カメラのボディは2つ、レンズは4つみたいなことになって、絞り込めなくなっちゃうのですよ。だから体系的に紙に書き出して決断するわけです。

和田:陰山先生、カメラの本が書けちゃいそうですね。

陰山:うん、ギリギリいけるかもしれないなあ。

デジタルとアナログを掛け合わせて情報を管理

陰山:情報を管理するとき、僕はデジタルとアナログを上手に掛け合わせるといいと思っています。以前友人に、「やみくもに子供の写真を撮るのではなく、心をフィルムにして焼き付けることが大事なんだ」って言われて、言葉通りに撮影を控えていた時期があったのです。

和田:「瞳のシャッターを切る」なんて話をするタイプの人ですね。

陰山:それそれ(笑)。でもね、人は忘れます。やっぱり写真で残しておくことは大事なのですよ。繰り返しアルバムを見て徹底反復すれば忘れないのですよね。

和田:映像があれば、そのときの雰囲気や会話までリマインドできます。

陰山:そう。過去の記憶というのはいい加減ですから。写真をデータで残しておけば日付は残るしGPS機能で位置情報を残すことも可能です。記録として大変優れているし、これは手書きの手帳にはないメリットですよね。

和田:おっしゃる通りです。

陰山:僕は、家族の記録をどう残していくかの大転換期がきていると思っているのです。和田さんは、撮りためた写真をどうやって見ますか?

和田:ええと、パソコンですかね?

陰山:ですよね。あとスマホとかね。僕はテレビで見ます。

和田:テレビにつないで大きくして見ると面白いですよね。大画面で、家族で見るのですか?

陰山:そうそう、好きなこと言ってワイワイできますから(笑)。大画面で見るとタブレットなら見えない粗が見えてくるわけですよ。色がきれいに出ない、ぼける、粗くギザギザになる……とか。カメラよりもレンズの実力がもろ出ちゃうのですよ。とりわけ最近の良いレンズは実際よりもきれいに見えます。

和田:はあ、だんだんと話がマニアックになってきました(笑)。

陰山:少し話がそれましたが、人の一生はハードディスクですべて残せるということ。記録として残すと、思い出にふけるのもいいし、データとしても使えるわけですよね。カメラやビデオカメラをどのように使い、それをどう残していくのか。

和田:大切なことかもしれませんね。

脳は書いた瞬間に動く

陰山:とはいえデジタルのデータだけ残しても、柱になるものがないと後になって過去データを探すのが大変です。いくつかのキーワードが書かれたアナログデータはやはり必要。

それでいうと手帳はなかなか捨てませんよね。データとして結局は残していくわけです。デジタルとアナログを掛け合わせて統合的に記録を残していくことで、情報の質はさらに豊かになると僕は思っています。

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和田:手帳は記録を残すための柱になるということですか?

陰山:基礎データになるのですよ。先ほども言ったように、人はコンピュータを見ながらでは、迷うことはできても悩めないんです。書くと悩むんですよ。

和田:違う脳を使っているからでしょうか?

陰山:脳は書いた瞬間に動くのですよ。

和田:なるほど! 「入力じゃなくて書く」ということですね。

陰山:そう。僕は、講演会でも冗談でよく言うんですけど、「メモしていただいてありがとうございます。でも家帰って見ないでしょ?」って。そうするとドーッとうけて。そうだ、そうだとみなさん共感してくださる(笑)。

和田:はは、わかります。

陰山:「そういや、いつも書いているけど振り返って見ないな」「なんで見ないのだろう?」と疑問を持ったところで、解説してあげるのです。

要するに人間の脳は、聞いているだけだと動かないし覚えられない。だから、「良い話聞いたな、覚えておこう」と思った瞬間に、メモをとるのです。このままだと忘れてしまうというのを本能的にわかっていますので。

いらない情報はデリートしていく

和田:メモをとった時点で記憶できていてもしばらく経ってメモをみてみると、これなんだっけってすっかり忘れていることがあります(笑)。

陰山:それはね、価値がない情報だったということですよ。それは忘れていい情報だし、あまり気にする必要はないと思いますね。

和田:なるほど。陰山先生は、色んなことにすごく凝りますよね。先日お会いしたときは、九谷焼にはまっていらして、かなりお詳しい。なんでも深堀りする姿勢は素晴らしいと思います。

陰山:あはは! そうでしたね。つい熱弁してしまいました。

和田:なんというか、現代人は、SNS見たり、テレビやネットのニュース見たり、毎日膨大な量の情報を入れ過ぎですよね。そのわりに、上澄みの部分だけ拾っている感じであまり頭に記憶できていないように思います。

陰山先生はなぜそこまで専門性が高いのですか?

陰山:なんでだろう。今言われて僕も疑問に思いました。単にオタクなだけですから……。ただ、興味があるうちは苦しむほどに調べるのだけど、ある程度満足したらすべてあっさり忘れます。だってもういらない情報でしょう?

和田:そうか、いらない情報はデリートしていかないと。

陰山:そりゃそうですよ。でなきゃ、新しい情報を覚えられないでしょう。

和田:断捨離に似た考え方ですね。情報の整理がすごくじょうずだなと思います。断捨離できずに、頭の中で情報が散らかったままだと、美しいものを感じる心まで失われる気がします。

例えばご自分でお撮りになった写真に感動したり、九谷焼を見て美しいと感じられる陰山先生は心も健全なのだなと。良いお話をありがとうございました。

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