2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
リンクをコピー
記事をブックマーク
ハワード・シュルツ氏:私たちは、マイナスをモデル化する計算をしてみました。この指標で、マイナス15の段階まで来てしまったら会社は絶対に持ちこたえられないと気がつきました。私たちはそのときマイナス9の段階でした。その時点から良くなるのか悪くなるのか分かりませんでした。
ですから私たちは再び、オーソドックスではないことをすることに決めたのです。そしてまた、彼らは私を撃ち殺したくなりました。それは会社の中で最も重要な人物であるストアマネージャーを対象にした会合でした。
現状を話し、彼らの役割と責任を説明するためにどうやったら11,000人のストアマネージャーを一か所に集めることができるだろうと私は自問自答しました。旅費、食費など様々な経費がかかりますから、このミーティングをするのには3,200万ドルがかかることがわかりました。これが1時間でできるはずもありません。式典でもありません。
これを発表したとき、あらゆる地方自治体が受け入れたいと言い出しました。経済危機の只中ですから、誰も旅行などしないのです。
シアトルに様々な地方自治体が集まり、招致のプレゼンを行ないました。ニューオーリンズの人々と会ったとき、私たちの価値はカトリーナで被災した人たちと結びつけられるのではないかと悟りました。
ミーティングの前に私たちはニューオーリンズへ行き、50,000時間のボランティアをしました。本当の労働です。みんな本当に汚くなりました。彼らに私たちの良心と魂のある会社を建てたいという創業理念を理解してもらう着火剤になりました。そして私たちはミーティングを行ないました。
私は11,000人の前に立ちました。この瞬間のためにお金をかけて準備したのだと思いました。問題を話し合い、どんな協力が必要かわかってもらうための話です。
私は何を話すか、アウトラインを何人かの同僚と共有していました。状況がいかに危機的かを共有するものでしたので、これはみんなを怖がらせるだろうと懸念されました。会社の信用をなくしてしまうのではないかと思いました。しかし、私はこのとき、すべての従業員が私と同じくらいの会社に関する情報を持つべきだと強く感じていました。
だから私は状況をすべて隠すことなく説明しました。マイナス15までいったら会社は倒産するかもしれないということも、今マイナス9だということも。これが一体どういうことかということも。
また、指導者として、彼らの家族も巻きこんでしまったことを彼らに謝罪しました。しかし私はあなたたちの協力を得て、必ずや会社を立て直して見せると約束もしました。
私はみんなに問いかけました。傍観者にならないということがどういうことか。毎日何千人ものお客さんが店を訪れています。今やお客さんに対して8割や9割程度の満足度の仕事をしていてはいけない。ひとつでも間違いがあれば100パーセントの満足は提供できない。
私たちは、ストアマネージャーであるあなたたちと、全従業員をトレーニングし直した。何か少しでもおかしいと思ったことは見過ごしてはならない。あなたたちはもはや傍観者ではない。チームの一員なのだ。ものごとをごく個人的に、自分自身のこととして、自分のこととして受け止めなければならない。私たちは17,000の店舗を持っている。週に16,000,000人のお客さんを相手にしている。
しかし、私たちは17,000の店の話をしているんじゃない。1店の、1杯のコーヒーの話をしているんだ。お客さんの期待を裏切らない、あなたと、あなたの従業員の能力の話をしているのだ。それを毎日何千回、何万回も繰り返せば、会社は立ち直ることができる。
自分のこととして受け止めるとはこういうことです。成功は権利ではない。毎日のことでなければならないということです。
会社が立ち行かなくなるとどうなるか。あなたの家族の今の生活が奪われるのです。食卓に食べ物が乗らなくなるかもしれないのです。私のためじゃなく、会社のためじゃなく、他の何人もの従業員のためじゃなく、あなた自身とその家族のために、働いてほしい。自分のこととして受け止めてほしい。
私は別のミーティングで、もっと年長の人々に対して、これは歴史的な価値のあるタスクだとも言いました。あなた方に今までしたことがないことをしてほしい。しかし、私はあなたたちに私がしていないことをお願いするつもりはありません。でも、あなたが本当に状況が好転しないと信じないなら、またこの仕事の価値がわからないなら、そしてどんな理由によってでも、この仕事をしたくないと思うなら、今言ってほしい。
そして私たちは、もっとプライベートで尊敬の念を込めた会話をしました。私が1月に受け取った直接のレポートの11のうち9が6ヵ月でなくなりました。
私はこうした危機のときに、リーダーは決断力を持たなければならないと思います。なぜなら社員とその家族の運命がその手にかかっているからです。
鍵である革新は新しいレベルの良心と情熱でなければなりません。これは会社を変える力でした。
まず着火剤になったのはニューオーリンズでした。追い風が吹いていたとは言いませんが、ほんの少しの風を感じました。人々が少しずつ私たちを信じ初めているのを感じました。マイナス9%から悪くなることはありませんでした。ニューオーリンズから帰ってきて、ほんの少し牽引力を感じました。
もはや情熱や良心をもつだけでは十分でなくなりました。正しい戦略を持たなければなりません。適切なイノベーションが必要でした。
一度スターバックスの問題を一歩引いたところから見てみたいと思います。消費者の振る舞いの変化と、それがスターバックスや他の様々な会社にどのような関わりがあるかを話したいと思います。
消費者の行動に対して影響を与えているものについて、私の中に3つの別々の視点がありました。私たちはこの変化を目の当たりにしています。
1つは経済的な不況です。もし景気がよくなっても、消費者の行動はすぐには変わりません。私は1年や2年で景気がよくなるとは思えません。消費の冷え込みの結果として、消費者にかかっている圧力に対して、アメリカのすべての企業は付加価値をつけることを考えなければならないのです。
2つの障害物にまたがって価値を保ち続けるということはスターバックスのような企業には難しいことです。新しい価値を築きながら、今の地位を保持しなければなりません。
2つ目は、私たちはみんなもうわかっていると思いますが、ソーシャルデジタルメディアについてです。今の企業の在り方のルールは、昔と劇的に変化しました。その変化は行ってしまった列車と同様、戻りはしないのです。多くの企業は古い市場にかける予算はありません。新しい市場を開拓しなくてはならなくなりました。
3つ目は、あまり語られることはありませんが、他の何より重要なことです。私たちは競争しています。消費者はインターネットやソーシャルメディアから多くの情報を得ているのです。消費者は値段やプロダクトのこと、便利さなどだけを見ているわけではないのです。
価値に対する選択もしています。消費者は毎日企業の倫理、価値、誠実さに基づき選択しています。従業員をどう扱っているか、社会に対してどのような役割を果たしているか。消費者は消費者と似た価値観を持っている企業を選びたいと考えています。私は企業の装飾について話しているのです。消費者とコミュニケーションをとり、社会に貢献することが何より必要なのです。
これらが3つの変化でした。
他に変化していると私が感じていたことは、これはニューヨークでも話しましたが、企業の役割です。まず、この2日カリフォルニアに滞在した話をさせてください。
カリフォルニアは約5,000万ドルの負債があり、解決策がないと聞きました。カリフォルニアで仕事をしている人はいますか? たくさん悪いものがきています。公的か内部かの違いはありますが、もしこれがオハイオなら問題はこうです。アメリカの半分の州は解決策を持っていません。そしてアメリカの3分の2の州は予算が不足しています。
予算が不足すれば、給料はカットされます。それも大幅に。ここで私は問いたい。企業の役割とはなんなのか。従業員との関係は、以前よりもっと高いレベルで価値を持たなければなりません。なぜなら給料は大きくカットされ、新しい秩序を作らなければなりません。社会的な責任について、企業は自覚しなければなりません。地域に貢献しなくてはならないということを。
しかし企業がステップアップしなければ、今いる人材は脅威にされされます。国は救う手段を持ちません。これは消費者とも関係しています。消費者は、これから企業が正しいことをしているかどうかで商品を判断するようになります。
ここ1年のうち、直近の4カ月は会社の歴史に残る死の四半期でした。2時間前、私は600人ほどのスターバックスの社員とミーティングをしました。
そこで伝えたメッセージは次のようなものです。
この2年間のできごとから学ばなければ、ひどいことになる。何を学ばなければならないか? 成功とは、当然のように与えられるものではなく、自分で生み出さなければならないものだ。毎日お客さんの期待を上回らなければならない。
人間は成功を感じ始め、危機的な状況を抜け出すとリラックスしてしまう傾向がある。スターバックスにゴールはないし、お祝いする人もいない。会社としてまた成功し始めたが、チャレンジは続けなければならない。
これまでのスターバックスを、どう引き継いでいくのか。消費者と従業員をどうやって維持するのか。セールス、マーケティングなど全ての部署に共通して重要なのは、人材です。これだけたくさんの人がいる会社を維持するための鍵は、人材にあるのだ。
また、この会社にはいろいろな技術を持った人がいます。私たちは過去に雇用の面で間違いを犯してきました。リーダーとしては誤った人材を雇ってしまったとき、それを間違いだと認めなくはありません。その人を変えるためにあらゆる手段を尽くします。
私はスターバックスにいる30年の間に何度も人が変わるのを見てきました。でもリーダーは誤った人材を雇ってしまったとき、その人を解雇する勇気も持たなければなりません。多くの人はこれができませんが、もししなければ、時間を無駄にし、その人のせいで他の人材も失い、結局新しい人を雇わなければなりません。これは多くの人によくない影響を与えます。
会社にとって、最も重要なのは戦略ではありません。いい会社は、価値ある人材の上に成り立っているのです。みんなで同じ方向を向き、献身的に働いてくれる人が必要なのです。
この会社は大きな企業ですが、好奇心を元に創立されました。そして好奇心は、どういうわけかスターバックスのルールになりました。
健康的なレベルの好奇心を持つこと。これによって、次に起こることを予測することができます。その好奇心とリンクして、処刑する勇気もあります。うまくいかないこともたくさんしましたが、人から企業の模範になると言われるようなこともしました。インスタントコーヒーの分野の市場を大きく拡大しました。さまざまな商品を新たに開発しました。
企業がこれから目指すのはお客さんに尽くすことだけではなく、人がそこで働きたくなるような会社をつくることです。
リーダーは今日、様々な要求にこたえなければなりません。今、アメリカでは、何かを信じることはとても難しくなっています。銀行を信じること。政府を信じること。人々は、真実や責任に飢えています。その規模が大きくても小さくても、企業の社長は、人々のために立ち上がって真実を伝えなければなりません。いつもです。社員が真実を受け止められると信じなければなりません。それによって、会社全体が同じレベルで情報を持ち、企業の役割と責任を理解して、問題や朝鮮に向き合うことができるようになるのです。
私たちはみんな挑戦しています。みんな問題を抱えています。経済はこれ以上良くなりそうにありません。この辛い状況を、乗り切っていかなくてはなりません。でも、これだけいい人材が揃っていれば、この苦境も乗り越えていけると思っています。それは会社の人材と、成功を分かち合うということです。
いい企業は、ひとりの人間の上に成り立っているのではありません。少数の優秀なグループの上に成り立っているのではありません。素晴らしい人材ひとりひとりがいるからこそ、企業は輝けるのです。
ありがとうございました。
関連タグ:
2024.10.29
5〜10万円の低単価案件の受注をやめたら労働生産性が劇的に向上 相見積もり案件には提案書を出さないことで見えた“意外な効果”
2024.10.24
パワポ資料の「手戻り」が多すぎる問題の解消法 資料作成のプロが語る、修正の無限ループから抜け出す4つのコツ
2024.10.28
スキル重視の採用を続けた結果、早期離職が増え社員が1人に… 下半期の退職者ゼロを達成した「関係の質」向上の取り組み
2024.10.22
気づかぬうちに評価を下げる「ダメな口癖」3選 デキる人はやっている、上司の指摘に対する上手な返し方
2024.10.24
リスクを取らない人が多い日本は、むしろ稼ぐチャンス? 日本のGDP4位転落の今、個人に必要なマインドとは
2024.10.23
「初任給40万円時代」が、比較的早いうちにやってくる? これから淘汰される会社・生き残る会社の分かれ目
2024.10.23
「どうしてもあなたから買いたい」と言われる営業になるには 『無敗営業』著者が教える、納得感を高める商談の進め方
2024.10.28
“力を抜くこと”がリーダーにとって重要な理由 「人間の達人」タモリさんから学んだ自然体の大切さ
2024.10.29
「テスラの何がすごいのか」がわからない学生たち 起業率2年連続日本一の大学で「Appleのフレームワーク」を教えるわけ
2024.10.30
職場にいる「困った部下」への対処法 上司・部下間で生まれる“常識のズレ”を解消するには
2024.10.29
5〜10万円の低単価案件の受注をやめたら労働生産性が劇的に向上 相見積もり案件には提案書を出さないことで見えた“意外な効果”
2024.10.24
パワポ資料の「手戻り」が多すぎる問題の解消法 資料作成のプロが語る、修正の無限ループから抜け出す4つのコツ
2024.10.28
スキル重視の採用を続けた結果、早期離職が増え社員が1人に… 下半期の退職者ゼロを達成した「関係の質」向上の取り組み
2024.10.22
気づかぬうちに評価を下げる「ダメな口癖」3選 デキる人はやっている、上司の指摘に対する上手な返し方
2024.10.24
リスクを取らない人が多い日本は、むしろ稼ぐチャンス? 日本のGDP4位転落の今、個人に必要なマインドとは
2024.10.23
「初任給40万円時代」が、比較的早いうちにやってくる? これから淘汰される会社・生き残る会社の分かれ目
2024.10.23
「どうしてもあなたから買いたい」と言われる営業になるには 『無敗営業』著者が教える、納得感を高める商談の進め方
2024.10.28
“力を抜くこと”がリーダーにとって重要な理由 「人間の達人」タモリさんから学んだ自然体の大切さ
2024.10.29
「テスラの何がすごいのか」がわからない学生たち 起業率2年連続日本一の大学で「Appleのフレームワーク」を教えるわけ
2024.10.30
職場にいる「困った部下」への対処法 上司・部下間で生まれる“常識のズレ”を解消するには