2024.10.10
将来は卵1パックの価格が2倍に? 多くの日本人が知らない世界の新潮流、「動物福祉」とは
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ヘンリー・ブロジェット氏(以下、ヘンリー):最近50歳になりましたね。
ジェフ・ベゾス氏(以下、ジェフ):はい。
ヘンリー:人生に対して、見方は変わりましたか?
ジェフ:いいえ、特に。今もオフィスに元気よく通っていますよ。自分の生活を気に入っています。子供が4人いて、妻は私を今も愛していると言ってくれています。その点はあえて疑わないようにしています。
(会場笑)
毎晩食器を洗っています。そうすると妻が僕を好きになってくれるのが目に見えてわかります。変ですよね。
ヘンリー:私もやりますよ(笑)。
ジェフ:確実に言えます、僕がやっている中で最もセクシーな仕事だと(笑)。
(会場笑)
ヘンリー:あなたについての本が最近アマゾンで発売されましたね。(『ジェフ・ベゾス 果てなき野望』※ブラッド・ストーン著)もう読まれましたか?
ジェフ:ええ、読みました。
ヘンリー:感想は?
ジェフ:あまり長々とコメントするつもりはありませんが、最初の半分は、初期のアマゾンの企業文化をよくとらえていると思います。とてもよく書けていました。
ただ、本の中で私の業績が過大評価されていることも言わなければいけませんね。アマゾンの社歴において、重要な役割を果たした人は他にももっとたくさんいるのですが。彼らについてはわずかな記述しかなく、中にはまったく触れられていない人もいました。たぶん私もいつか本を書いて、彼らの業績をしっかりと伝えなくてはいけませんね。
ヘンリー:あなたの奥さんは、この本に対して長い抗議コメントを出していますが……とてもよく書けている文章です。その中で彼女は、「私の夫はこんなんじゃないわ!」と言っています。どちらが正しいんでしょうか? 自分について書かれたものがあるというのは大変ですね。
ジェフ:まさか君は、僕がこうやってステージの上に座って、「僕の妻は間違っています」と言うとでも思っているの?
(会場笑)
ヘンリー:なるほど(笑)。
ジェフ:ヘンリー、それはちょっと……何を言わせるつもりなんだ。
(会場笑)
ヘンリー:彼女が抗議したポイントは何だったんでしょう?
ジェフ:彼女は初期のアマゾンをよく知っていますからね。君もかつて有名人だったし、今もそうだけど、昔の証券アナリスト時代のほうがよく知られていた。
有名人になると、自分について間違ったことを言われるのに慣れます。メディアを通して有名人のひととなりを知っていると思ったら大間違いです。
私にも何人か有名人の知り合いがいます。ビル・ゲイツがいかにすばらしい父親か、みなさんご存知ないでしょう。私は知っています。それが伝わらなくてとても残念です。
一般の人々、私の妻のような人たちは、あまりそういう経験がありません。私としては……「そんなのどうだっていいよ」という感じです。
ヘンリー:なるほど。
ヘンリー:あなた自身は、どんな父親ですか?
ジェフ:僕? そうだな……。
ヘンリー:退屈な父親? ワーカホリック?
ジェフ:いや、そんなことはありません。私には男の子が3人と女の子が1人います。一番年上の子が14歳です。彼がスマートフォンを手に入れたのはクラスで一番後でした。
今も彼によく文句を言われますよ。クラスでスマホを持っていない最後の一人になった時、彼はクラスメイト全員にメールを送ったそうです。「あとまだもう1人いる」とね。
(会場笑)
子供たちはみなそれぞれ性格がまったく違います。とてもおもしろいです。仕事で出張することはほとんどありませんが、子供たちとはよく旅行に出かけます。私が今日このステージでやっているような仕事をふだんほとんどやらない理由の1つは、家にいるのが好きだからです。
もちろん会社にいるのも好きです。出張ばかりしていたら、オフィスが恋しくなると思います。オフィスをあけているのは自分の時間のうち20%か、もしかしたら10%以下だと思います。なるべく出張をしなくてすむように自分の仕事を管理しています。それが私の好みだからです。
アマゾンのシニア管理職にこう言ったことがあります。「あなたは管理職なのだから、仕事環境を自分の好きなように決められる。だからストレスは普通よりも少ないはずだ」と。
もしシニア管理職がストレスで参っていたら、彼らにはこう言います。「不満をためこむべきじゃない。何が問題になっているかつきとめるんだ。問題がわかったら、それが得意な人か、喜んで解決してくれる人を自分のチームに引き入れるんだ。そうすればその人たちが状況を立て直してくれる」
私はいろいろな意味で運の良い人間です。人生において、宝くじのような幸運を何度も引き当てて来たと思っています。アマゾンの成功や、経済的な話に限りません。何度もラッキーな巡り合わせを経験してきました。
私の両親は2人とも、私のすばらしいお手本です。祖父もそうです。母は17歳で私を生みました。「私みたいなことをやっちゃダメよ」と母は私によく言いました。彼女にとっては想定外だったようです。
(会場笑)
祖父は妊娠した母を高校に通わせ続けるのに苦労しました。高校生で母親になるのは、1960年代のニューメキシコ州アルバカーキでは難しい選択でした。父は働き者でした。彼はエクソン社で33年間勤め上げました。
人生には、多くの巡り合わせがつきものです。中でも大きな運命の分かれ目は、子供の頃のお手本が誰だったかという点です。ですから、私も子供たちにとって良いお手本になるように心がけています。
ヘンリー:ワシントンポスト紙の件についてお訊きします。私がこのインタビューをすることになった時に、ワシントンポスト紙のほうが私に訊いてきたんですよ。彼らへの答えになるかわかりませんが、お尋ねします。どうしてワシントンポスト紙を買ったんですか?
ジェフ:そうですね……まず最初に、新聞社を買収しようと思って探していたわけではなかったんです。市場や通りを歩いていて「新聞社売ります」という看板が出ていたわけではありませんからね。
(会場笑)
最初に仲介者を通じて連絡を受けました。そしてドン・グレアム(当時のワシントン・ポストCEO)からこの話を持ちかけられたのです。アマゾンと彼とはもう15年以上の付き合いです。
電話を受けた時とても驚きました。こう言いましたよ、「どうして私が、新聞社を買う候補者に挙がったんです? 新聞事業のことなんて何も知らないのに」。それが一番の懸念でした。
ワシントンポストを買収すると決定するまでにいくつかの関門をくぐりました。1つめは、「買収対象は重要な機関か?」これは疑いの余地なくイエスでした。私がこの会社を救いたいと思った理由でもあります。
2つめは、「見込みのある状況か?」という関門でした。どこかよそに手渡すわけにはいきませんから。刷新してから1年ほど立ちますが、より楽観的な展望が見込めると感じています。ポスト紙の将来について、私は大きく期待しています。
インターネットが引き起こした根本的なビジネスモデルの崩壊による、財政的な苦境というのはどこの新聞社も同じです。かつては、新聞社を所有するというのは、お金の印刷機を持っているようなものでした。それぞれの町にある新聞社は、巨額のお金を生み出していたのです。
そのビジネスモデルはもう成立しません。世界はすっかり変わってしまいました。現在の広告業界は新聞以外にも大衆に訴求するさまざまな方法を持っています。この話題だけで何時間も話せるくらい、興味深い話です。
ジェフ:インターネットは伝統的な新聞事業を根本的に破壊してしまいました。ですから私たちは、多くの新しい試みや実験を行わなければなりませんでした。ドンと私は何度も話し合い、私は彼にこう言いました。
「私は新聞のことは何も知らないけれども、インターネットのことはよく知っている。インターネット業界でどういうふうに会社を動かすべきなのかも知っている」
財政的な進路と合わせて、それが私のポスト紙に対するアプローチであり、買収した理由です。ポスト紙を買収することができて良かったと思っています。新しいことをたくさん学びましたし、とてもワクワクしています。
素晴らしいチームに恵まれています。買収する前に調べたことの1つでもあります。新聞事業については何も知りませんでしたから、「良い編集者はいるか? よし!」というふうにチェックしました。
ポスト紙は過去6年間経営を縮小してきており、収益は減少し人員も削減していました。ですからまだ良い人材が残っているのかを知りたかったのです。買収してニュース編集室に入っていったら、従業員がヘロヘロになっているのを見たくはありませんでしたからね。それを修正するだけの自信もありませんでしたし。
技術チームを含めて、素晴らしい人材がいること。そうそう、シャイリーシュ(ワシントンポスト紙)が、「老犬に新しい芸を仕込む」というようなタイトルで話をします。シャイリーシュと話しましたが、彼は素晴らしく優れた人間です。ポスト紙におけるリーダーシップの良い例です。ポスト紙は本当に良い人材に恵まれています。
ヘンリー:どうしてそんなに楽観的でいられるんです? 新聞の未来に対しては誰もが悲観的ですが。
ジェフ:私が楽観的でいられるのは、オンライン読者層の変化を見ているからです。数字は良い方向で伸びています。
ポスト紙は、全国的かつ国際的な評判を得ていますが、商品としては地元ニュースがメインです。もともとそういう意図でやってきていました。かつてはそれが賢いやり方でした。そのおかげで、ポスト紙は過去何十年間にもわたって大きな成功をおさめてきました。
しかし、私たちはそれを変えようとしています。ワシントンDCエリアの地域ニュースを報道し続ける一方で、アメリカ合衆国の首都にある新聞社として恵まれたポジションを活かし、全国的かつ国際的な新聞として再生させようとしています。
ニュース編集室もその方針に喜んで従ってくれています。ポスト紙のような企業を、ニュース編集室を抜きにして、ビジネス的な側面からだけで改革することはできません。
行列のできるレストランを20年間経営していたのに、最近客足が遠のいてしまった。その時に、シェフを抜きにして経営を立て直すのは不可能です。全員一丸となって事に当たらなければなりません。彼らの働きにとても感動しています。
ヘンリー:残り時間も少なくなってきました。今日出た話題以外で、最後にひとつ質問させて下さい。ロケットを作っているそうですね?
ジェフ:はい。
ヘンリー:宇宙に行こうとしている。イーロン・マスクやリチャード・ブランソンのような、他の億万長者たちと同じような傾向ですね。
まず最初に、あなたが宇宙に惹かれる理由は何ですか? 次に、あなたの宇宙プロジェクトは他の人とどう違いますか? 最後に、リチャード・ブランソンについてどう思いますか? 彼が事故に遭ったせいで宇宙事業に対する気持ちが冷めた人も多いようですが? 宇宙についてあなたの考えを聞かせて下さい。どんなビジョンを持っているんですか?
ジェフ:まずはじめに、そして最も肝心なことですが……。夢中になるというのは、何かを選んで、それから没頭するのではありません。気がついたら夢中になってそれに没頭していた、そういうものなのです。
私が5歳の時、ニール・アームストロングが月に降り立ちました。彼の宇宙への情熱と探究心は私の記憶に深く刻み込まれたのです。宇宙へ行くことは、大切なことだと思っています。なぜそれが大切なのか、理由はたくさんありますし、私はそれが大切だと信じています。
人が好奇心を持ち、未知のものを探究したがるのは、生き残るための知恵だと考えています。私たちの祖先のうち、それほど好奇心が旺盛でなく、探検することが苦手だった人たちよりも、より多くの食料や過ごしやすい気候などを求めて山の向こうを見に行った人たちのほうが、ずっと長生きしてきました。
私たちは、進化の過程でどんどんパイオニアになってきたのです。それは良い進化です。いつどうやってかを予言することはできませんが、新しい世界は古い世界を救うための方法を見つけ出します。そういうふうにできているのです。私たちは新たな開拓者を求めています。宇宙へ移住する人を必要としているのです。
ジェフ:宇宙事業に対する私のビジョンとしては、何百万人もの人が宇宙空間に居住し、働いている姿を見たいと思っています。未来を考えた時に、それはとても重要なことだと考えています。
単純に、好きだからというのもあります。何かを変えていくことが好きですし、テクノロジーも大好きです。技術者の人たちを尊敬しています。彼らは素晴らしく優秀です。現在350人ほどの技術者を抱えています。
現在、垂直離着陸機を建設中です。通常のロケットと同じように発射されますが、バック・ロジャースのロケットのように、後部から着陸するのです。
当面の目的は宇宙旅行です。軌道飛行機も設計中です。史上最も成功した使い捨て型ロケット発射機、アトラスVの新しいバージョンにエンジンを提供するという契約を結んだばかりです。ボーイング社とロッキード・マーティン社のジョイントベンチャー企業です。
彼らの機体はロシア製のエンジンを使っていましたが、ウクライナの情勢に伴いエンジンの供給が不安定になってきたので、ロシア製のエンジンに代わって私たちにエンジンを供給させることを決めたのです。
とてもワクワクする試みです。素晴らしいチームです。彼らは良い仕事をしており、とても楽しいです。
ヘンリー:いつごろになるのですか?
ジェフ:わかりません。準備ができ次第ですね。設計も気に入っています。ロケットは自動操縦が可能です。試験プログラムの間はずっと、自動操縦で離陸させ、飛ばせ、着陸させました。なので、テストパイロットが要らないのです。開発段階としてはありがたいことです。
乗組員の乗るカプセルは完全な安全圏脱出構造をしています。アポロやソユーズといったかつてのロケットが備えていた脱出システムです。
スペースシャトルは、人の乗る飛行機としては初の、脱出システムのない飛行機です。これは大きな過ちだと思っています。脱出システムは必要です。私たちの機体は完全な脱出構造を備えています。
今開発しつつある設計を気に入っており、とてもワクワクしています。でもこのプロジェクトは、予定を急がせたり手抜きをしたりできるたぐいの事業ではありません。
私たちのモットーは、「Gradatim Ferociter」。ラテン語で「一歩一歩大胆不敵に」、というものです。一歩ずつです。
ヘンリー:ありがとう、ジェフ。お話できて大変光栄でしたし、楽しかったです。
ジェフ:ありがとう。
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