2024.12.24
ビジネスが急速に変化する現代は「OODAサイクル」と親和性が高い 流通卸売業界を取り巻く5つの課題と打開策
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堂上研氏(以下、堂上):新規事業を生む組織の仕組みについて、企業の中でどうなったらいいのかを、守屋さんを含めいろんな事業を作ってきた方たちに10年間ぐらいヒアリングさせていただいて、僕なりにまとめた一枚絵です。
一番大事なのは、組織としてどんな事業を生むのか。これは守屋さんともよく話をしていたんですが、いわゆる博報堂の第二創業になるのか、それとも周辺事業でソリューションに近いものを生むのか。これは、もう考え方がぜんぜん違うわけですね。
例えば、10年後に10億円の営業利益を出すような事業を生むのか、それとも3年後に数千万円の事業を生むものを生むのか。ぜんぜん違いますよね。時間軸も含めて、社内で会話している人たちが意思統一ができていない中でスタートすると、やはりなかなか新規事業が生まれないというのがジレンマでした。
もう1個が、この3つの三位一体の話です。僕の中で一番大事だなと思うのが、経営陣がコミットメントすることで、権限移譲をしてもらえる環境をどう作れるのかが重要です。
「事業を作れ」と会社の中で言われて、新規事業の組織ができました。「出島組織を作ったぞ」と言っている感じかもしれないけれども、権限移譲されないと、稟議を上げるとか、常に上長に確認をするとか、いわゆる大企業病の1つで「稟議に3、4ヶ月かかります」みたいな。もうスタートアップの事業には追いつかないわけですね。
そういったことがあるので、やはりトップダウン型はめちゃくちゃ重要だなと。経営陣のコミットメントはめちゃくちゃ重要です。
堂上:佐古さんから冒頭でお話がありましたが、ピッチャー役(イントレプレナー)、企業内起業家と言われているものがなかなか生まれないというところで、それこそ専業のプロがどういうふうにみんなが仲間になっていくかという話があるんです。
守屋さんに言われて「そうか」と思ったのが、僕らは博報堂の中で「企業内起業家」を探していたんですが、そうするとなかなか生まれてこない。「社内にいなかったら外から連れてくればいいじゃん」って普通に守屋さんに言われて、「あっ、そういうことか」と。
ミライの事業室は、社内でやっていたものに外の人間がどんどん入っていって、ミックスカルチャーを作るかたちでやらせていただいていました。僕らも外から来た人たちから影響を受けて一緒にやっていって、そこのピッチャー役が育っていく仕組みができあがってきました。
今日はピッチャー役をメインにお話を差し上げますが、もう1個重要なのがキャッチャー役と言われているインキュベート役ですね。山の登り方がぜんぜん違うのです。僕らは広告屋というプロ選手だけれども、全く違う業種のことは分からない。
スポーツで例えると、サッカーのプロが、野球や卓球をやっているかもしれない。そんな全然違うスポーツを始めるには、その専業のプロと、守屋さんのような起業のプロが必要になるということがわかったのです。
もう1個が社内のプロ。稟議の上げ方とか、「社内ではこうやるの?」みたいなものをやっていくことがめちゃくちゃ重要じゃないかなということに、僕はたどり着いた感じですね。
佐古雅亮氏(以下、佐古):そうですね。
佐古:うかがうと、ミライの事業室という組織が5年間経って、こういう三位一体の組織体制を作るんだという組織のマネジメントもやっていらっしゃる。世の中では、「出島戦略をきちんと遂行している会社である」と思っている方がたぶん多いと思うんですよね。その中で、今回創業に至るわけじゃないですか。
堂上:そうですよね。
佐古:「なんでか?」っていう(笑)。
堂上:僕自身が、もともと事業をやりたかったという意志の話は大きくて。どんな事業だったら自分で作りたいかということについて、守屋さんが10年間近く「堂上さんは何をやりたいの?」と、問いを投げかけてくださって。
守屋実氏(以下、守屋):延々と聞きましたね。
佐古:そうですか。
堂上:僕は毎回「世の中をウェルビーイングにするような」っていう、フワッとした話をするわけですよ。そうしたら守屋さんは「解像度を上げないとダメだよ」みたいな話になってました。そういう会話をずっとさせてもらって、これが5年ぐらい続きましたよね。
守屋:長かったですね。
佐古:そうなんですね。
堂上:長かったんですよね。
堂上:僕は組織やマネジメントの仕組みを作るのに時間を費やしてきたので、そういう意味では、組織の中でどうやったらいいのかという相談をずっとさせてもらっていました。守屋さんから「堂上さん、そろそろ事業の話をしようよ」という話をいただくわけですよ。
事業の話をしようと思って、イントレプレナーになるような起業家たちが社内でだんだん芽が出てきて、彼らを守屋さんに紹介させていただいたりして相談する。
けれども、そこで「事業はなかなか生まれない」みたいなことが起こってきた中で、僕らは「イントレプレナーになれる要素はどういうものがあるのか?」というのを、ちょっと言語化してみたんです。
やはり事業は人がいないと作れないもので、その人の意志がめちゃくちゃ重要だったりするんです。「広告会社の代理店病」って僕は呼んでいたんですが、クライアントのために何か企画や構想するのはめちゃくちゃ得意なんだけど、構想で終わってしまうんですよ。
事業にしようと思った時に、実証実験で終わってしまう。いわゆるPoC貧乏みたいになってしまうようなことがずっとあったんですね。
その時に守屋さんからいつも言われたことが、「堂上さん、諦めちゃダメですよ」。これは諦めないという話なんですが、最後までやりきれるとか、人を巻き込むことができるとか、主体性を持つ。やはり僕らって、受け身になってしまうことが多かったりしたんですよね。
そういう話をずっとまとめていく中で、7番目に「鈍感力がある」という書き方をさせていただいています。イントレプレナーになっていく上で、広告屋の役員はその事業のことはもしかしたら素人なのかもしれないのに、新規事業に対してついついアドバイスをしてくださるんですね。
僕はこの5年間ぐらい、それを聞いてしまっているところがあったなと思っていて、自分自身が鈍感力を発揮できていなかったなとすごく感じました。
堂上:事業って、結局はお客さんに対して何か価値を提供して、そこでお金をいただくかたちのビジネスになっている。顧客にしか答えがないはずなのに、社内で「堂上、これはいいのか?」みたいな話になった時に、社内の声を聞いてしまう。
それはそれでアドバイスとしていただきながら、顧客の声を聞きながらやっていくことにチャレンジできる環境を、自分自身が作りたいなと思ってしまったのが大きいですね。
佐古:なるほど。
守屋:だいたい大企業って、何にもないのに大企業なわけないじゃないですか。
佐古:それはそうですね。
守屋:何か強い本業があるわけですよね。その本業だって、その会社だけがやっているわけなくて、いろんな人がやっているわけですよ。その中でも生き残って、かつデカくなっているということは、社内は本業に向けて最適にできているんだと思うんです。もう磨きに磨き抜かれた構造になっているんだと思うんですよね。
だから、そこで本業じゃない新規事業をやろうとすると、むちゃくちゃ本業の基準で語られるわけですよね。
佐古:そうですね。
守屋:だから、広告代理店は広告代理店っぽく間違うし、製造業の会社はものづくりっぽく間違うんです。本業とかなり近しいことをやっていれば本業が活きるんだけど、「違うことをやろうぜ」と言った時には、まず「違うものである」ということ(前提)がないと、どうしても本業の基準でいきますよね。
佐古:既存事業には、本業の基準や仕組みとか、そもそもの法律みたいなものがビシッと(制定)されているじゃないですか。新規事業出島を作ったとしても、どこかで同じ制約が入ってくる中でそれを突破していかなくちゃいけないとなると、相当な意志が大事なんですかね?
堂上:意志、大事ですね。
佐古:推進力というか、それこそ「なんでやりたいのか」が大事だと思います。
堂上:僕自身は十何年ぐらい新規事業に携わらせていただいていますが、それぞれ意志があって。でも、その意志はみんなばらばらだったりするわけですね。
じゃあ、そこの判断基準は何なのかも含めて、みんなクライテリア(評価基準)が違うわけです。目指すものが違っているので、なかなかうまくいかないということを感じていました。「自分がどんな事業を作りたいのか? どんな社会を作りたいのか?」ということを、僕はライフモデルという言い方をしていたんです。
「こんな社会を作りたい。それに対してどんなビジネスが生まれていくのか。そういったことをやっていこうと思っている」と、ビジネスモデルを作る前にライフモデルを作る。僕自身は「ウェルビーイングな産業を作る」ということを、1つ大きなポイントに置いたんですね。
そうすることによって、それに紐づくいろんな事業がどんどん生まれていく。100個も200個もアイデアを出して、守屋さんに「この100個のアイデア、どうですかね?」みたいなことをメンタリングしてもらいながらお話をしていました。
最後の意志で、僕は「これは飛び地でやっても勝ち目がないな」と。広告会社の周辺の事業で、インキュベーションやメディアは今まで博報堂の中で誰もやったことがないから、そこに僕はチャレンジしたいなと。そこが僕らの中で博報堂の第二創業になるんじゃないかなというところにたどり着いた。そこも、やはり意志だという感じはしますね。
佐古:ありがとうございます。
守屋:このへん、けっこう大事だと思うんですよね。どうしても「社内でやるのか社外でやるのか」ということを検討し始めるじゃないですか。
佐古:ありますね。
守屋:「というか、何したいの?」っていう。そりゃあ、やりたいことを社内でやったほうがいいんだったら社内でやったほうがいいし、社外でやったほうがいいんだったら社外でやったほうがいいじゃない。でも、やりたいことがないまま「社内か? 社外か?」と言って、みんな手段や手法をすごく勉強し始めるんですよね。
学生なのか、学者なのか、評論家なのかわからないですが、そっちに走るんです。だから今の堂上さんのように、やりたいことがあって、結果としてそれを社内でやることにしたという、この順番に行き着けたのはいいことですね。
佐古:なるほど。じゃあ、Welluluという事業を考えた時に、これは博報堂としてやり続けるより、会社として外に出てやったほうがいい事業だったということなんでしょうか?
堂上:そうですね。博報堂の中でやる事業だと、近しい事業だからこそ博報堂の中でいろいろと問題が起こったりすることがあるんですね。
例えばメディアの事業で言うと、その交渉に半年近くかかったんです。社内で話をしている時に、「お前、メディアを作るって? 我々はメディアを買ってきて、クライアントにそれをご提供するのがお仕事なのに、僕らがメディアを持ったらメディアの競合を作るのか?」という話になってしまったり。
佐古:確かに。
堂上:僕ら広告会社の仕組みで言うと、マルチクライアント制という形でやらせていただいているところもメディアを自分たちで持ちづらいというのはありました。博報堂の中では違う人間が担当していますが、同じ業種の方たちとも、それぞれ担当がいるのでケアが必要になります。
例えば、ビール会社の何かしらの記事を僕らがメディアの中で書いたとすると、違うビール会社から怒られたりするかもしれないとか、そういうリスクが既存事業の中では起こってしまう。なので、僕らとしては、外に出ることによって公共性を保つ必要があると思った。
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