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年商30億になるまでに失敗した10のこと(全4記事)

5〜10万円の低単価案件の受注をやめたら労働生産性が劇的に向上 相見積もり案件には提案書を出さないことで見えた“意外な効果”

起業から10年で売上30億円を達成した株式会社koujitsu。今回は同社代表の柴田雄平氏が売上30億円になるまでに経験した「10の失敗」を語ったセミナーの模様をお届けします。マインドとスキルのバランスの重要性や、会社全体の一体感が低下した原因と対策などが語られました。

前回の記事はこちら

業務振り返りを強化するKPTシートの効果

柴田雄平氏(以下、柴田):人材育成の失敗についてもお話しします。上司と部下のコミュニケーション不足やオンボーディングが機能しなかったことが挙げられます。リモートワーク環境も影響し、上司が顧客案件に集中するあまり、部下とのコミュニケーションを取る時間が不足していました。


これを改善するために、上司と部下が週1回30分の1on1を強制的に設け、オンボーディングのステップを可視化しました。



また、コミュニケーションのツールとして、KPT(キープ、プロブレム、トライアル)シートを導入しています。



「K」は「Keep」、つまり先週やって良かったことを継続することを記録します。「P」は「Problem」、自身や顧客に関する問題点を書き出し、それに対してどう解決するか、アドバイスを交えながら選択肢を検討します。「T」は「Trial」、つまり今後どう改善し、どのようにアクションを起こすかを考えます。

これを週ごとに繰り返し、課題解決に向けた行動を明確にしていきます。このKPTシートは、僕がCOOやCMOとして関わっている10社ほどの会社のほぼすべてで採用しています。

一番のメリットは、その場で問題を解決できるだけでなく、長く続けることで、1年前や2年前の自分の悩みを振り返ることができる点です。何が当時悩みだったのかが可視化され、2~3年後にはその悩みが今では「こんなに小さかったんだ」と気づけることもあり、とてもおもしろいと思っています。

もう1つは、Notionを活用して可視化を進めた点です。



すべての業務やプロジェクトが見える化され、新人育成もスムーズに進むようになりました。その結果、入社から約半年で月に1,000万円の粗利を出す社員が出てきたり、1年目で1億円近い粗利を出せるようになる社員も増えており、とてもありがたい状況になっています。

案件獲得経路の多様化で成長を加速

6つ目のポイントは営業面です。以前は、案件獲得の99パーセントが僕の紹介によるものでしたが、これは会社の成長を制限するリスクがあると気づきました。



顧客獲得の経路が不明確だったため、それを可視化し、明確化することに取り組みました。



また、営業リソースが不足していたため、自社のマーケティング活動を強化し、リード獲得の経路を整理する必要がありました。具体的には、自社メディアやホームページ、LP(ランディングページ)、メルマガなどの活用、セミナーの実施、協力関係を持つネットワークの強化を進めました。例えば、メルマガには3,000~4,000件のリストがあり、それを活用することを考えています。また、アイミツさんとの契約を通じて、制作の依頼も受けています。

さらに、僕たちは「代理店」と呼ばず「パートナー」として、さまざまな会社と連携しています。



例えば、人材紹介会社や、これまでマス広告のみを行っていた企業とのパートナーシップを築き、自社の足りないリソースを補完するかたちで、マーケティングや事業戦略、制作を一緒に進めています。また、自社オウンドメディアも運営しており、社員がマーケティングの勉強がてら記事を書き、実務に反映させる場として活用しています。

定期的にメルマガの配信も行っていて、ホームページには「お役立ち資料」が多数掲載されており、これが定期的に更新されています。その結果、月に10件以上の相談がWebからコンスタントに入る状態を維持しています。



X(旧Twitter)の影響力についても言及していて、「社長のところに直接DMで相談が来ないようにしよう」と考えていたものの、SNSでの影響力が増すと、それに関係なく問い合わせが来ることが多くなったと感じています。

僕が関わっている会社やコンサルティングをしている会社でも、社長や幹部、部長以上の人たちがSNSで影響力を持つことは重要だと思っています。もちろん、良い面と悪い面はありますが、悪いことのほうが少ないと感じています。

社員が安心して働ける職場環境の整備

僕たちは、3社を合併して急速に100人規模の組織になったため、代々木にオフィスを新設しました。これまでリモートワーク中心だったので、オフィスの存在をあまり気にしていませんでしたが、合併後は事業部間のシナジーが生まれにくくなりました。元々別々の会社で文化も異なっていたため、連携がうまく取れていなかったのです。



そこで、事業部ごとに会議体を分けることにしました。また、部長のポジションを明確に設け、社長、役員、部長、メンバーといった階層を整え、部長の役割を言語化し、個人としての人格と法人としての役割を明確にしました。



他事業部との連携強化のため、部長同士の1on1を定期的に行い、制作がマーケティング、マーケティングが広告塔の役割を担うなど、ランダムにバディを組んで業務を進めるかたちにしています。

事業部間の連携がうまく進むと、結果として売上が自然に上がるようになりました。例えば、「このクライアントはここで困っているから、マーケティング部に相談していい?」といった連携が頻繁に起きるようになり、それだけで年間の売上がかなり向上するケースもありました。これが実現するだけでも非常に大きな成果だと感じています。

次に挙げるのが、労働環境の失敗です。フルリモート体制が広がり、社員に加えて業務委託のメンバーも世界中に広がってしまいました。その結果、昼夜を問わず連絡が絶えず届く状況になり、知見の共有や資料の集約が十分に行われず、SlackやChatworkが絶えず鳴り続けるという、社員が休めない状態になってしまいました。

これは問題だと感じ、ある程度ルールを定めることにしました。コアタイム自体は特に設けていませんが、日本のタイムゾーンに合わせた働き方にするという方針を取りました。会社が小規模だった頃には就業規則が不明確で、全員がアクセスできる資料の集約場所もありませんでした。そこで、明確な就業規則を作成し、データベースを整備することにしました。



具体的には、「22時以降は会議や仕事の連絡を禁止する」「Google Driveやカレンダーをきちんと使用する」「SlackやChatworkを整理して、無駄な連絡を減らす」などのルールを導入しました。また、服装や髪型については特に規制を設けていませんが、TPOをわきまえた振る舞いが求められることを前提としています。相手のことを考え、適切な対応ができるようにしてもらっています。

これにより、社員が安心して働ける環境が整い、離職率が大幅に低下しました。この点は非常に大きな成果だと感じています。

「何でもできる」が他社との差別化を阻む

差別化の課題についてですが、これは非常に難しいところで、何でもできるというのは一見良いように思えますが、実際には良し悪しがあるんですよね。僕たちの課題は、他社との差別化ができておらず、リード獲得がしにくい点にありました。他社と比べて明確な特異性を打ち出せていないし、特定の商品やサービスに集中できていないという問題があったんです。

そこで、サービスメニューを分解し、顧客のニーズに応じてサービスを切り分けることにしました。



例えば、マーケティング事業部では施策に特化したサービスメニューを作成しました。具体的には、経営戦略、マーケティング戦略、SNSマーケティング、ECサイト運用、SEO対策、Web改善・分析、新規事業開発・企画、コンテンツマーケティング、広告運用、LPO(ランディングページ最適化)とEFO(エントリーフォーム最適化)など、複数に分けました。

さらに、Web制作とシステム開発も事業として明確に区別し、営業戦略を立て、EC開発とシステム開発をそれぞれ分けました。ラボ型開発、受託、SESの準委任、そしてコンサルティングのように細分化し、組織図も作成して「こういうメンバーがいる」というかたちで役割を明確にしました。

この取り組みは非常に効果的で、半年ほどで約3,000万円の売上につながる成果が出ました。特に、役割やセグメントをきちんと切り分け、自分たちのソリューションをBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)的に提供することで、新しい顧客や案件に結びつけることができました。

これにより、もともと抱えていたクライアント以外にも、BPOの課題を小規模に持ち込む新しい企業からの売上にもつながった事例がいくつもあります。

5〜10万円の低単価案件の受注をやめたら労働生産性が劇的に向上

最後のポイントになりますが、労働生産性と利益率の失敗について、ここを非常に意識しています。労働生産性の向上に向けて、僕たちがどう判断基準を持っているかという点です。これまで、案件獲得に関してはノリと勢いで進めていた部分があり、判断基準があまり明確ではありませんでした。

特に低単価の案件が9割を占めていた時期がありました。今では改善されていますが、昔は5万円や10万円といった低単価の案件を必死でこなしていました。これは、立ち上げ時から長くお付き合いのあるクライアントとの関係が続いていたためです。僕自身がすべての案件に関わっていた時期もあり、ビジネスというよりはボランティア的なかたちで続けていたことがありました。



このような状況を改善するために、受注する案件の基準をしっかりと定め、最低契約料金を引き上げました。工数や原価管理も含めて、販売管理費のコストを見直し、案件獲得の判断基準を明確にしました。

具体的には、他社と相見積もりを取っているような案件には積極的に提案しない方針を取り、提案書の作成もしないようにしました。また、最低契約料金を30万円以上に設定し、低単価の案件は減らすようにしました。単に案件の数が増えるだけでは、組織全体が疲弊するため、絞り込むことにしました。

さらに、TimeCrowdさんと連携して、誰がどのように働いているかをすべて可視化しました。



このプロセスによって、「ムダな時間がある」ということが明らかになり、それを排除することで生産性を向上させる取り組みを進めています。このようにして、労働生産性の改善が進み、組織全体の効率が向上しています。

ボランティア的なかたちで続けていた低単価案件を整理した結果、労働生産性が劇的に向上しました。上期はあまり良くなかったのですが、下期には200パーセントほど向上し、今では300~350パーセントぐらいを見込んでいます。



僕たちは、給与から営業利益を基に労働生産性を計算しており、この指標での管理がわかりやすいと思います。

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