2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
経営者力診断スペシャルトークライブ:上司としての悩みを一掃する! Z世代を育てる・人を動かす・転職で成功する、上司コミュニケーション術(全6記事)
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井上和幸氏(以下、井上):みなさん、こんばんは。本日は「上司コミュニケーション術」ということで曽和さんをお迎えして、上司としての悩みを一掃する1時間半にしていただければと思います。
若手に対してもあるでしょうし、総じて人を動かす立場のみなさまでいらっしゃいます。それからキャリアに関して、転職に関してご興味をお持ちの方も多くいらっしゃるので、その側面からのお話もできればと予定しています。
今日はアフターファイブの時間を楽しんでいただきながらも、明日からのヒントをいろいろ得ていただく時間にできればと思いますので、よろしくお願いいたします。繰り返しになりますが、本日は人材研究所代表の曽和さんをお迎えしています。よろしくお願いいたします。
曽和利光氏(以下、曽和):みなさん、こんばんは。人材研究所の曽和でございます。本日はどうぞよろしくお願いいたします。
井上:今日は本音トーク炸裂でいきましょう(笑)。曽和さんはリクルートでご活躍のあと、ライフネット生命やいくつかの会社での人事責任者を務められた後に、人材研究所を創業されました。
たぶんみなさんも、曽和さんに関してはいろんな情報をお持ちかなと思います。人事コンサル全般を手掛けていらっしゃったり、採用のほうでは新卒・中途合わせていろんなご支援をされていらっしゃって、僕もいつも勉強させていただいています。
曽和:とんでもございません。井上さんとは、僕の最初の共著(『知名度ゼロでも「この会社で働きたい」と思われる社長の採用ルール』)を書かせていただきました。
井上:もう、光栄です。
曽和:それで本の世界でもいろいろ書けるようになったので、もう本当に大恩人ですね。
井上:(笑)。ありがとうございます。
曽和:緊張しておりますが、よろしくお願いいたします。
井上:いえいえ、よろしくお願いいたします。相手役は私、井上が務めさせていただきます。
井上:今日は、曽和さんの新刊をお読みになって参加くださっている方も多くいらっしゃるのかなと思います。
すでに読んでいただいたり、今日聞いた後にまた読んでみようかなという方もいらっしゃると思いますが、ベースになっている課題やテーマ、考え方があるので、今日は曽和さんにそのあたりのお話や、もしかしたら本には書いていないようなお話もしていただこうと思っています。
ではさっそくですが、曽和さん、1つ目としてZ世代に目が行く方が多いんじゃないかなと思います。非常に印象的で僕も思ったんですが、『部下を育てる上司が絶対に使わない残念な言葉30』では各章ごとに、部下にあたる方や相手になる方が、上司の方を見てどう思っているかというところから切り込んでいます。
「わかっていないなぁ」「まどろっこしいなぁ」「責任感がないなぁ」「古くさいなぁ」「頭が固いなぁ」とか。
曽和:僕も言われているかもしれないんですが(笑)。
井上:我々もそういうところがある(笑)。
曽和:私の会社の(従業員の)7割ぐらいは20代なので。
井上:若いですね。
曽和:「こう言われたら嫌だな」と思いながら、まさに自分を振り返りながら書いた本でもあります。
井上:確かにありますよね。「端的に話しましょう」とか言いながら、自分でもたまに「話がまとまっていないな」と思うことも、やっぱりあるんですよね。
井上:参加者の方から事前に質問をいただいているので、さっそくなんですが、その話から入ったほうがいいかなと思います。本の帯や告知のところにこのトピックが挙がっているんですが、今日参加いただいている方はどうでしょう?
いい意味で「気持ちはよくわかるよ」とか、「君はどうしたいの?」。リクルート用語でも「お前はどうしたい?」がありますけどね。
曽和:リクルートの場合は「お前はどうしたいんや?」みたいな(笑)。
井上:「お前は」って言葉、きついですけどね(笑)。
曽和:そうそう(笑)。
井上:詰問されますけどね。「君はどうしたいの?」「まずはやってみて」とか、逆に「わかった、わかった。やっておくよ」「よし、がんばってみろ。俺が責任を取ってやるから」とか、あると思います。
これ、わりと肯定的にというか、上司やリーダーとして部下の方を励まそう、支援しようということで使っている方は多いと思うんですよね。曽和さん曰く、これが令和時代はすべてNGということなんですが、ぜひこのお話を。
曽和:そうですね。1つは、本の作りというのもあるんですが、これらの言葉がどんな状況でもダメということではもちろんないんですよね。
ただ、私はいろいろな人事コンサルティングをしたり、自分でも今もマネジメントをやっていますし、マネジメントに苦労されている会社も見ていたりすると、実は逃げやマネージャーの逃避の心が中にあって、それをこういう一見するといい言葉でくるんでいる。
井上:なるほど。
曽和:実はそれをメンバーは見透かしている、みたいな構図が多いんじゃないかと思って。要は、どっちかというとホラーストーリーみたいなところを書いたつもりなんです。だから、別に言葉尻だけを捕らえて「気持ちはよくわかるよ」「君はどうしたいの?」って言うのがダメというわけではなくて。
例えば「気持ちはよくわかるよ」というのを、日々の部下の行動や考えをきちんと観察していたり、信頼関係がある上で言ったら、すごく良かったりすると思うんですよね。
曽和:最近は特にプレイングマネージャーも増えたり、リモートワークになったりして、「お前に何がわかる」って思われるような状態の関係の中で、「気持ちはよくわかるよ」と言ったら、「わかるわけないだろ!」みたいな感じになるというか(笑)。
井上:(笑)。
曽和:例えば最後の「俺が責任を取る」にしたって、本当に最後の最後まで面倒を見る方もいると思うし、その覚悟が伝わっている上でだったら、何も問題ないどころかすばらしいと思うんです。メンバーを守るために上と戦ってくれていた歴史があるのかどうかとか、「責任を取る」とはいったい何のことか? ということですね。
例えば土下座奉行みたいな感じで、「『すみませんでした!』って謝ってくれても、別に僕たちはうれしくないんですけど。どうせ評価が悪くなるのは僕でしょう?」みたいな状況だとすると、すごくきれいな言葉であるがゆえに揺り戻しが大きい感じかなというのが、まずはこの本全体に言えるコンセプトです。
一つひとつの言葉というのは、本を買っていただくと「その心は」というのがわかるので見ていただければと思います。最初に、ちょっと長くなっても1つずつ説明をしても大丈夫ですか?
井上:大丈夫ですよ。
曽和:「わかってないなぁ」って思われるいろんな言葉を出しているんですが、基本的には十把一絡げで、例えば世代論で語るとか。特に最近だと「Z世代は……」みたいな話で、世代論ってよく出てくると思うんですが、あれってすごくアンビバレンスというか。
Z世代のことをわかろうと思って勉強すればするほど、彼らに対してのステレオタイプが出来上がっていって、本当は1to1で見なきゃいけないのに、「Z世代だからお前はこうなんだろう」みたいになっちゃうわけですよ。
井上:(笑)。
曽和:動機は「わかりたい」だから、善だと思うんですよ。
曽和:もう私も53歳ですから、なんとなく若い世代のことはわからないこともあるので、それをわかろうと思っていると、最大公約数で見てしまってステレオタイプになってしまう。
これ、実は外国でもそうだと思うんですね。今時だと外国人の方と一緒に働いている方もすごく多いと思うんですが、例えばベトナムの方や中国の方やアメリカの方と働いていると、その国の文化を勉強しようと思うじゃないですか。
「インド人ってだいたいこういう人だよね」みたいな感じで思っても、インド人は14億人いて、いろんなインド人がいるわけですよね。
井上:「みんな数学ができる」みたいなね(笑)。
曽和:そう。サッカーが下手なブラジル人とかもぜんぜんいると思うんです。例えば、僕も転職してライフネット生命に行った時に、「リクルートから来たってことはおもしろいやつなんだろう」みたいな感じで見られていたんです。
井上:(笑)。
曽和:「僕、リクルートではつまらないほうでした」みたいな感じでした(笑)。
井上:そんなそんな(笑)。真面目にいろいろと理解しようとした時に、逆にステレオタイプで見てしまうことがあり得るってことですね。
曽和:そうですね。動機が善なのに、そういう落とし穴があるというのが1つ目です。
曽和:「まどろっこしい」というのは、特にこの20年ぐらいで、マネジメントの中では「自由と自己責任」という言葉がすごく使われるようになってきたと思うんですね。これも全部そうなんですが、動機は善だと思うんですよ。要は、自分でやりたいことをやってみるけど、責任は取る。
ただ、これも私が見ている会社でよく起こっていることなんですが、「守破離」という言葉があるじゃないですか。最初は型を守って、徐々に自分らしさを出していって、最後は離れてオリジナルスタイルを作る。
やはりこれにはステップがあって、最初の型みたいなものを示してあげないうちに、いきなり「もう自由にやってみろ」と。さっきの「とりあえずやってみてよ」もそうだと思うんですが、型にはめるということ自体が、なんとなく時代的にはネガティブな感じがしますよね。
「言われたとおりに、まずはこれを繰り返したくさんやってごらん」みたいなことは嫌がる世代なんじゃないかな? というのも、全部動機は善だと思うんです。でも、型がない中で「自由にやってみろ」と言ったら、向こうからすると単に足が止まるだけだと思うわけなんです。
昔、リクルートの採用のキャッチフレーズで「自由に生きなさいという脅迫に負けるな」というものがあったんですが、まさに「自由にやっていいよ」というのは、若手からすると脅迫みたいな感じになってくるわけですね。だから本当は、まずは型にはめてあげるというか、「いったんこのやり方でやってごらん」とやってあげる。
曽和:もうちょっと言うと、今みたいな変化が激しい世の中では、「自由にやってごらん」と言っているマネージャーにも腹案がないケースがあると思うんですよ。自分もわからないから、「イチから十まで指示してごらん」と言われてもできない。自分も腹案がないくせに、「自由にやってごらん」と言うのは仕事放棄だと思うんです。
井上:(笑)。それはつらいですね。
曽和:本来ならば、自分でもできるし、イチから十まで何をすればよいかを指示することもできる。その上でまだ「じゃあ、やってごらん」と言うんだったら、できると思うんです。山本五十六の「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ」みたいな感じで、「やってみせ」みたいなものがないのに、そういうことを言っている。
だから本来ならば、最初の最初はイチから十まできちんと「こういう順番でやるんだよ」って言語化や形式化して伝えなきゃいけないのを、「とりあえずやってごらん」と言う。それで、やったことやアウトプットに対してああだこうだケチだけつける上司って、今はものすごく嫌われるんですよね。
井上:そうでしょうね。
曽和:そうですよね。特にリモートワークで、机を横で並べてやることがなかなかできない、いわゆる非同期の働き方というんですか。時間も空間も違う中でチームワークでやらなきゃいけない時には、言語化の重要性はすごく重要になってきていると思うんですね。
井上:なっていますね。
曽和:そうすると今言ってきたように、最初は言葉でイチから十まで「こういうふうに行動してごらん」と言って型を見せた上で、それに慣れてきたら「あとは自由にやってごらん」という指示の仕方をしなきゃいけない。
なのに、何も腹案を持っていないくせに自分でやらせて、来たものに対しては「いやぁ。なんかぴんと来ないんだよな」とか、ぴんと来ないっていうよくわからない言葉で返すと、向こうも「いや、ぴんと来ないって何だよ。それが違うっていうんだったら最初から言ってくれよ」みたいな。
井上:そうですね。
曽和:だから、ここらへんにコミュニケーション上のまどろっこしさを感じることが多いと思って、いくつかの言葉を並べたのが2つ目ですね。
井上:なるほどですね。
曽和:これをやっているとだいぶ長くなっちゃいますが(笑)。
井上:まだ大丈夫ですよ(笑)。
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