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第935回 仕事に役立つABC『リーダーは弱みを見せるべきか?』(全1記事)

リーダーは「弱み」を見せるべきか? “ポロッとこぼした本音”がメンバーに与える影響

日本最大のビジネススクール「グロービス経営大学院」が、ビジネスパーソンに向けて、予測不能な時代に活躍するチャンスを掴むヒントを配信するVoicyチャンネル『ちょっと差がつくビジネスサプリ』。今回は、リーダーが弱みを見せることの是非について考えます。 ■音声コンテンツはこちら

リーダーは弱みを見せるべきか?

熊谷翔大氏:今日は「リーダーは弱みを見せるべきか」がテーマです。職場でリーダーやマネジメントの立場であるあなたは、「メンバーの前で弱みを見せていいんだろうか」と、一度は頭をよぎったことがあるのではないでしょうか。

そもそもリーダーはチームのメンバーを束ねて、モチベートして成果を出すプロセスにおいては一番の中心人物です。もちろん責任も伴います。そんな役割・立場ですので、ある意味で自然と「強いリーダーでなければならない」と考えてしまうことがあるはずです。

その強いリーダーが、果たして不安や自分が苦手なことを口にしていいんだろうか……。そんな問いを考えてみたいと思います。私自身もリーダーの立場で、このことについて何度も考えていますし、まだはっきりとした答えは出ていません。なので、いろんな人が言っていることや書いていることを、頭に入れるようにしてきました。

すると、おもしろいことに「リーダーは弱みを見せるべきではない」と言う人と、「リーダーは弱みを見せたほうがいい」と言う人、どちらもいるんですよね。おそらく、どっちも正解なんだと思います。私自身も「自分なりの考え方はこうだな」というのが少しずつ見えるようになってきたと感じています。

ということで今日は「リーダーは弱みを見せるべきではない」、「リーダーは弱みを見せたほうがいい」という2つの考え方に対して思うことをお話しいたします。

メンバーの不安に共感するリーダー

まず「リーダーは弱みを見せるべきではない」という考え方も一理あると思います。リーダーが不安や愚痴や自分が苦手なものについていつも口にしていると、メンバーにも伝染して不安になってしまいます。それが続いたり頻度が高くなってしまうと、チームの雰囲気や成果にも影響が出てくるのではないでしょうか。

またリーダー自身が周囲から信頼を得られていないと、「あのリーダー、なんか頼りないな」という認識に変わってしまうので、それは避けるべきですよね。そんなふうに考えていくと、やはりリーダーは弱みを見せないほうがいいんじゃないかなと私も感じています。

一方で、「リーダーは弱みを見せたほうがいい」という考え方について、あなたはどう思いますか? 私はこれからのリーダーにとっては非常に重要な考え方なんじゃないかなと思っています。

というのも、リーダーとメンバーの間においても、お互いの思っていること、感じていることは言葉にしないとなかなかわからないですよね。阿吽の呼吸とか、空気を読むとかは正直無理だと思います。

そしてこれだけ変化が大きく早い世の中で日々仕事をしていて、不安を感じない人なんていないですよね。リーダーが弱みを見せないと、ある意味でメンバーの不安な気持ちに共感することはできないんじゃないかなと思います。

その共感について、鮮明に記憶に残っている経験があります。私が前職のメーカーで人事の仕事をしていた時のお話です。めちゃくちゃ忙しい時期に、当時の私からすると立場が3つくらい上の上司の方と残業中に話をしていて「熊谷、最近どうだ」って聞かれ、思わず「ちょっとしんどいです」と言ってしまいました。けっこうストイックな職場だったので、言った瞬間「ヤバい」と焦ったんです。

するとなんとその上司も「俺もマジでしんどいわ」みたいな感じで、本音を言ってくれたんですよね。ちょっとびっくりした気持ちと、少し気持ちが楽になった記憶があります。

弱みというか、人間らしいところをポロっと見せてくれたことで、当時の私にとっては励みになったなと。「この人、信頼していいんだな」と感じたことを鮮明に覚えています。今のお話は私の経験談なんですけれども、時々弱みも見せて、周囲にしっかりと共感する。そんなリーダーのほうが「一緒に前を向いてやっていこう」と思ってもらいやすいんじゃないかなと考えています。

リーダーの救いになるメンバーからの声かけ

ということで、両面の考え方からお話しさせていただきました。私自身の今の結論としては、「時折リーダーも弱みを見せたほうがいい」と考えています。完璧な強いリーダーなんて世の中にはいませんので、人間らしく良い意味で自己開示していくのが大切だと思います。

最後に、リーダーが弱みを見せる上で1つだけ大きな問題があります。それは「弱みを見せるのは本当に勇気がいる」ということです。やはり「弱みを見せて何か思われたらどうしよう」と、やりきれない不安を感じる経験は、私にもすごくあります。だからこそ、これを聞いているあなたにお願いがあります。

もし自分のリーダーに対して「もうちょっと弱みを見せたらいいのにな」と感じているようであれば、ぜひストレートに「〇〇さん、もうちょっと弱みを見せたらどうですか」と、はっきり言ってあげてください。リーダーにとってはこの上ない救いの言葉だと思います。

そしてリーダーを務めるみなさん。悩ましいこともたくさんありますが、時には不安や愚痴も吐きつつ、人間らしくいきましょう。きっと弱みを見せられるリーダーこそが、これからの時代は求められるんじゃないかなと思います。それでは今回はここまでです。

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