2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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山田裕嗣氏(以下、山田):こんばんは。令三社の山田と申します。みなさん、今日はありがとうございます。よろしくお願いします。簡単に私の自己紹介とピム(・デ・モーア)のご紹介等をしたいと思います。
令和3年(設立)なので令三社という社名になっていますが、そこの代表をしています。山田と申します。今回、Corporate Rebelsの1冊目の本の翻訳をさせていただいたので、その縁で今日はこの場を作らせていただいております。
ピムとヨースト(ヨースト・ミナー:Corporate Rebels共同創業者)とは、2年ぐらい前からいろいろと関わりを持たせていただいています。そこからのご縁で、今回この本の翻訳もしました。
簡単にご紹介すると、彼らは2016年から世界中のいろんな新しい進化型の組織を自分たちで訪ね歩いています。そしてブログポストを書いたり、Corporate Rebels Academyというものを作ったりする活動をしています。
僕が彼らに会ったのは2022年頃です。あまりに彼らの活動に感銘を受けたので、去年1年間ひたすら真似をしました。日本国内で進歩的な新しい経営をしているところを50社ぐらい訪ね歩いて、自分で記事を書きました。
実践に触れることのパワーを僕は彼らからすごく学んだので、その縁もあって、いろいろと活動させてもらっています。
僕から簡単にこの本のご紹介をさせていただきます。今日は1時間しかなく、通訳も兼ねてなので、本を読めばわかることはあまり扱いません。本の内容の先にあるようなアップデートの部分を、ピムにいろいろと聞いていきたいなと思っています。
山田:この本は簡単に言うと、大きく2つの特徴があります。まず1つ目です。彼らが2016年から2020年までの間に尋ね歩いた、いろんな進化型の組織には8つのトレンドがあります。彼らはそれをサマライズしていて、この8つになっています。
僕が日本語で作り直したスライドを見ると、こんな感じです。
利益からパーパスを中心に考えるとか、ピラミッド型の組織からチームのネットワークにするとか。8つのトレンドに分けて書かれています。これは全部が必要ということではなくて、彼らが100社~200社を見た中で感じたトレンドを整理しているものです。
この本の特徴の2つ目は、彼ら自身がすごくたくさんの企業を訪問しながら、実際に自分の目で見て、肌で感じたことが書かれている点です。全部で8つのチャプターがあるんですけど、それぞれ大きく2社ずつぐらい、具体的に掘り下げて取り上げています。
それ以外にも全部で30社前後ぐらい、いろんな企業が登場します。理屈とかトレンドだけで語るんじゃなくて、「このトレンドについては、Patagoniaではどうだったか」とか、「Spotifyではどうだったか」とか「Buurtzorg(ビュートゾルフ)ならどうだったか」とか。生の事例と共に語ってくれるのが、すごくこの本の特徴になっています。
この本を読んでいただく中で、そんな生々しさを味わっていただけるんじゃないかなと思います。2016年から2020年まで彼らがやったことを書いたのがこの本です。日本で出版されたのは2024年なんですけど、その4年間で彼らもすごく進化をしていて、たくさんの実践をしています。
今回はあまり本の中身には触れないので、彼らの前提がわからないことが若干あるかもしれないんですが。どちらかというと、今の彼らの生々しさとかリアリティに触れていただく時間にできればなぁと思っております。
ここからは基本的に、僕は通訳者側としてしゃべることが多くなるので、進行は廣瀬さんにお任せをしながら、ご質問があればチャットに投げていただければと思います。では廣瀬さん、こんな感じでよろしいでしょうか。
廣瀬信太郎 氏 (以下、廣瀬):はい、ありがとうございます。一応私の紹介もしますと、RELATIONS株式会社にいます。2023年7月にオランダに行って、ピムとは会えなかったんですけど、共同創業者のヨーストと会いました。
Corporate Rebelsの活動とか、このあと出てくるアカデミーの話をいろいろ聞きました。なのでけっこう前提を知っている状態で問いかけをするので、「もっとこれを知りたいんだよなぁ」ってことがあれば、チャットに記載していただければと思います。
ではさっそくピムさんから自己紹介と、Corporate Rebelsの紹介をお願いします。
ピム・デ・モーア氏(以下、ピム):今日はみなさんありがとうございます。Corporate Rebelsの共同創業者のピムと申します。先ほど(山田)裕嗣が紹介してくれたみたいに、世界中のいろんな進化型の組織を訪問しています。
我々は、職場がもっと楽しくて心地良い場所になることを目指しています。そのために、実際に訪問してリサーチをすることと、それをブログポストに書いたり、アカデミーのコースにしたりして世の中に発信をしています。
廣瀬:はい、ありがとうございます。1冊目の『コーポレート・レベルズ: Make Work More Fun』について、今のピムから見たこの書籍の価値を、あらためて紹介いただけますか。
ピム:旧来的なトップダウンやヒエラルキーのない組織のあり方を世に示したことが、まず1つの価値なんじゃないかなと思います。
この本はすごくストーリーテリング的に書かれています。なので、実際に我々が訪問して感じたことを追体験していただけるのが、この本の特徴なんじゃないかなと思います。この本の大きな功績は、実例に触れて書いていること。
こういう新しい組織とか楽しい組織のことを話すと、「理屈ではそうだけど、現実にはできないよね」みたいな反論があったりするんですけど、「新しい組織や楽しい組織ができます」という理論ではなくて、実際にそれがあると示せたと思います。
廣瀬:ありがとうございます。書籍を出すまでに企業の支援にもチャレンジされてたと思うんですが。ビジネスモデルがない中で、書籍を出すまでにどんな挑戦をされてきたのか、聞いてもいいですか。
ピム:ビジネスモデルを想定せずに立ち上げたので、とにかくいろんな組織を見に行こうというアイデアを起点に始めました。そのあとで具体的なやり方を考えたのが、まずスタートとして良かったかなと思います。
働いていて多少の貯金もあったので。「どうすればお金を稼げるか」という思考を入れずに、とにかくラーニングにフォーカスして最初の活動ができたのは、すごく良かったと思います。
最初に少し苦戦していたのは、どうやって企業にインタビューをさせてもらうか。その許可をどうやったらもらえるかという問題がありました。それと、どうやってインパクトを大きくしていくかにも、試行錯誤がありました。
一方で、変わらずにできたこともあります。「どうやって新しい組織から学んで、それを世に広げるか」というコンセプトはブレさせなかったし、それで最初からいろんなメディアに注目してもらったり、世に出ていくこともできました。
そこがブレないまま自分たちでやってこられたことは、僕らとしてはよくできたことじゃないかなと思います。
廣瀬:ありがとうございます。その書籍を出す前後に、(企業に)コンサルティングもやられていたと聞いたんですが。そのあたりではどんなことが起きてたのか、聞いてもいいですか。
ピム:情報をシェアしたり、ワークショップ的に伝えることはやっていたけれども、コンサルティングはそんなにやっていません。
そういうチャレンジをいくつかしている中でも、必ず最初のコンセプトに戻ってきました。学ぶこと、それを世にシェアすること、その周りにコミュニティを作ること。「そこをやりたくて始めたんだ」というところに戻っていくのを、ずっと繰り返してきました。
廣瀬:ありがとうございます。おそらくそれが、今やってらっしゃる、Corporate Rebels Academy(コーポレート・レベルズ・アカデミー)とか、Rebel Cell(レベル・セル)とかKRISOS(クリソース)の活動だと思うんですけど。この3つを知らない人たちもいると思うので、どんな活動か教えていただけますか?
ピム:まず言いたいのは、すべての僕らの活動は、“Make Work More Fun”。より職場を楽しくすることにフォーカスするのはずっと変わっていません。そこにフォーカスを当てながら、いろんな活動に発展させてきました。今ももちろん発展していて、それが続いています。
まず、先ほど言ってくれた3つのうちの1個目。Corporate Rebels Academyを紹介をしたいと思います。
これはオンラインのプラットフォームで、いろんなコースやコンテンツを準備しています。あとは毎月オンラインのイベントをやっていて、実践者にライブ(放送)でインタビューをしたりしています。
このコミュニティに、今世界中で1,200人が参加しています。このコミュニティプラットフォームの中では、Corporate Rebelsがコンテンツを提供することももちろんあるし、参加者同士が実際に学ぶことも行われています。
ピム:2つ目のRebel Cell。これは、本当につい最近新しく始めたことですが、1つ目のCorporate Rebels Academyともすごく密接に関わっていて、これの派生形とも言えるものです。
Corporate Rebels Academyのグローバルのコミュニティが、オンラインのプラットフォーム上にあるのに対して、(Rebel Cellは)ローカルの各拠点に立ち上げたコミュニティとしてやっています。各地域でミートアップ(交流会)をやったり、企業訪問をやったり。互いに学び合ったり、相互に支援し合う、支え合うような活動を始めたところです。
このRebel Cellに関しては、ローカルのコミュニティを作ることを意図してやっています。最初に立ち上がった2つが、(彼らの地元の)オランダと日本です。今、もう15個ぐらいがこの3ヶ月で立ち上がる予定で動いています。年内に、おおよそ30から50ぐらいのセル(コミュニティ)が、世界中の地域で立ち上がることを目指しています。
年末までに100社くらいが参加するようになっていって、各ローカルのつながりができればなと思っています。ここでは2つのことを提供しています。1つはローカルのコミュニティとして、つながって学び合える、支援し合えること。もう1つは、グローバルのネットワークにもつなげること。
ピム:まだ開催してないんですが、年に1回、グローバルでみんなで集まって、各セルの参加者が共に学び合うこともできればなと。こういった企画で、このRebel Cellという全体の仕組みができています。このRebel Cellの活動によって、本当にムーブメントが起こり始めているのがすごくいいなと思っています。
例えばCorporate Rebels Academyでは全部英語で提供されているので、言語の壁があって、なかなか日本人が学びに行けない。自分としても、日本のビジネスや組織の実践に触れることが、なかなかできていなかったんですけれども。
例えば今回、裕嗣がRebel Cellジャパンの立ち上げをしたり、本の翻訳をしたりしたことによって、言語のバリアを超えてつながっていける。グローバルと、世界中の英語ネイティブじゃない地域の人たちもつながれる可能性が高まっている。
世界中のあらゆる地域の人が、新しいやり方を実践することによって、“Make Work More Fun”、働くことが楽しくなっていく。これがムーブメントとして起こっていくのは、すごく可能性を感じることですね。
ピム:3つ目、また新しい会社としてKRISOSというものを始めています。これもかなり違ったアクティビティなんですけれども。ずっと言っているとおり、職場を楽しくする、良いものにすることを目指してやっています。
これは端的に言えば、PE(プライベートエクイティ:未公開株式)で出資をする会社です。中堅・中小の企業を買ってきて、自律的にセルフマネージできる会社に変容させる支援をする。そこの職場が良くなることを支援するためのファンドとして、KRISOSを立ち上げました。
やることはすごくシンプルで、企業を買ってきて、自律的にセルフマネジメントができる組織に変容させた上で、それを売却します。この売却先としては、原則として従業員の方々に売りたい。従業員じゃなかったとしても、働く当事者の方々が自分で意思決定に関与できるかたちで売却することを前提にしています。
そうじゃないと、新しくオーナーになった方々が、せっかく変容の支援をしたものを元に戻してしまうこともあるので。そうならないかたちで売却することを目指しています。
(企業を)買った後にやることとしては、基本的には組織構造を変えていくことから始めます。ボスやマネージャー、今まで役割を持っている人には外れてもらいます。ただ決して人を切るということじゃなくて、ポジションを降りてもらうというか、ポジションをなくすことから始めます。
そうすると、今までマネージャーだったり、何らかの役割を持ってきた人は、新しい振る舞い方を自分で見つけてもらう必要があります。それはマネージャーだった人だけじゃなくて、仕事のアライン(足並みをそろえること)の仕方や、意思決定の仕方も、(社員全員が)自分たちで見つけて変えていかなきゃいけない仕組みです。
ピム:他にもいろいろやっていて、例えば財務情報を基本的に全部オープンにします。給料もオープンにして、自分たちで給料が見える状態にした上で、給料を決めるモデルを新しく導入したりします。意思決定やミーティングの仕方とかの構造も、全部変えていきます。
そうやって働き方を変えていくことを、自分たちで実感してもらう。その中で、本当に新しい組織の振る舞い方を伝えたり、変容を手伝っていきます。
これはCorporate Rebelsのインパクトの出し方としては新しいやり方です。これまでは、先ほど紹介したブログを書いたり、アカデミーをやったりしたみたいに、リサーチして発信するやり方でインパクトを出してきました。KRISOSでは、実際にお金を出して変容させる支援をします。(企業の)具体的なところまで踏み込むのは初めてやることです。
これをやると実際にインパクトを広げられるようになるので、まず第1弾としてヨーロッパの企業を買って進めています。これがうまくいったら、今度はさらにエリアを広げていって、世界中にインパクトを届けることを目指しています。やや長い説明だったかもしれませんが、今実際に我々がどんなことをやっているかの説明になったらうれしいです。
廣瀬:ありがとうございます。とてもよくわかりました。
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