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組織にいながら、自由に働く。「組織のネコ」という働き方編(全2記事)

昭和の枠を越えられない会社が「組織のネコ」を病ませる 個を引き出す、組織の「イヌ・ネコ・ライオン・トラ」の役割分担

「VUCA時代の人材をいかにして定義・育成し、組織で生かすか」をテーマに、NTTビジネスソリューションズが開催したイベントに、『「組織のネコ」という働き方』の著者で、指示命令のない自律自走型の組織文化・チームづくりを探求する仲山進也氏が登壇。前半では、組織における4つの動物「イヌ・ネコ・ライオン・トラ」の特徴について語られました。

前回の記事はこちら

昭和の枠を越えられない企業が「ネコの人」を病ませる

仲山進也氏:というところで、イヌだのネコだのと言ってきましたが、(スライドの)この10項目は組織のネコ度チェックです。

みなさんにチャットに「何個当てはまります」と書いてもらおうと思ったんですけど、「あと5分です」ってさっき出たので進みます。

これ、何個当てはまったらイヌで、何個以上がネコですのように厳密には作っていないんですけど、ポイントは、10番の「同調圧力をかけるのも嫌い」です。同調圧力をかけられるのは、イヌもネコも嫌だと思うかもしれないんですけど、いざ自分が管理職側に回った時に、「社長の指示だから」みたいな伝え方を、イヌの人はしてしまいがち。ネコの人は同調圧力を自分がかけるのも嫌すぎるので、ちゃんと理由とか説明しないと気持ち悪い。

10番に当てはまるかどうかで、イヌっぽいかネコっぽいかはけっこうわかると思います。なお、ネコがイヌみたいに働くと、自分の本来のプレイスタイルに合ってないから、しんどくなりやすいです。

この動物4タイプの分布イメージを考えてみましょう。さっき4象限を等しい面積で描きましたけど、実際に生息している数のイメージを表すと、ざっくりこんな感じかなと。

イヌが多数派。トラがマイノリティーで「変わり者」と思われがちです。

この真ん中半々なのが、たぶん自然に近い状態ではないかと思います。ということは(スライドの)台形の部分は、本当はネコなんだけど、イヌとして働いている。「働くとはイヌとして振る舞うことである」みたいに思い込んでいたり、教え込まれたために、本当はネコなんだけど、イヌの皮を被って働いている「隠れネコ」という人たちではないかなと思っています。

隠れネコが昭和98年型の会社で働いていると、言われたことをちゃんとやってもぜんぜん結果が出なくて、自分が何のために働いているのか意味がわからず、メンタルダウンし始めます。最初に、モヤモヤし始めるのが隠れネコではないかなと考えています。

イヌの皮を被って働く「隠れネコ」が増えた理由

では、なぜイヌが多数派になったのかを考えてみます。昭和の高度経済成長の頃、この図のS字カーブでいう成長期のところに当てはめて考えてみると、見えてくるかなと思っていまして。

昭和の主な事業は製造業で、でっかい工場を作って、みんなで役割分担をしてミスなくきっちり動かすと会社のパフォーマンスが上がるというタイプの仕事だったので、一度ラインができたらひたすらマニュアル通りにやるのが、「ちゃんと仕事している」ということになったわけです。

その点、「あなたの仕事はこれです」と言われた時に、ネコが「この作業は何のためにやるんですか?」と言っても、「とりあえず手を止めるのやめてくれないかな」と怒られたりするわけですよね。

なので、当時はたぶんネコの人もイヌとして振る舞ったほうが会社が儲かって、自分の給料も増えて、結果的に幸せになりやすかったから、ネコもイヌの皮を被って仕事をするのが普通の状態で。

そういう状態ができてから入社した人たちは、「仕事というのはイヌとして振る舞うこと」と思い込むようになって、それが常識になってしまったのかなと思います。

「イヌ・ネコ・ライオン・トラ」の役割分担

でも、そのまま昭和を引っ張っていくと衰退期に入ってしまうので、このS字カーブを乗り換えるような新しい価値を生み出すことができるかどうかが大事です。

このS字カーブとイヌ・ネコを合わせて考えると、どの時期に活躍できるかが違っています。何かを立ち上げる時ってトラの人が得意なんですよね。ネコの人はトラのリーダーと一緒に新しいことを立ち上げる仕事を喜々としてやります。

みんなでワチャワチャしながら、「このサービスは、どうやったらお客さんがもっと喜んでくれるかな」とか言いながらブラッシュアップをしていくうちに、だんだん事業が軌道に乗って、お客さん増えて、業務量も増える。

業務量が増えてくると、どこかでオペレーションが追いつかなくなってパンクして、お客さんからクレームが届くようになる。そういうことが、成長期の前半あたりに起こります。そうすると「そろそろマニュアルつくったほうがよくないですか?」という人が現れるタイミングがくるわけです。

「マニュアル? それ何? いる?」「今までもなしでやってきたからいらないんじゃない?」みたいに言いがちなのがネコです。でも、どんどん業務量が増えていって、本当にまわらなくなって、事業の成長にブレーキをかけるぐらいの出来事が起こると、この成長がうまくいかなくなってしまいます。

マニュアルをつくってきっちり回すのはイヌの人の得意技。なので、適切なところでネコからイヌへのバトンリレーをスムーズにできるような組織文化があると、このS字がスムーズに成長しやすいのかなと。

マニュアルをつくるあたりから後はイヌとかライオンの人が得意なステージになります。じゃあ、ひたすらマニュアルどおりにやればいい成熟期に、トラとネコの人はどうすればいいか。放っておくと、「マニュアル仕事つまんない」とか叫び出しちゃうので、本業がまだちゃんと利益を出せている間に、次の新しい価値を立ち上げに行く。そういう役割分担ができると、とてもうまくいきやすいのではないかなと思っています。

三木谷浩史氏という1頭のトラが始めた楽天

チームビルディングの視点で言うと、お互い「それぞれ違いがあるよね」と理解した上で、凸凹をうまく組み合わせられるといい組織ができます。ということで、頭出し的にイヌとネコの話をさせていただきました。ありがとうございました。

司会者:仲山さま、ありがとうございました。ここからは視聴者の方からいただいている質問をお聞きしていきます。質問です。「成長する企業は、4つのタイプの割合はどうあるべきでしょうか。大企業ほどイヌが多いのではないかと思いますが、いかがでしょうか?」

仲山:そうですね。僕が楽天に入った時は20人ぐらいで、三木谷浩史さんというトラが1頭いまして、他は新卒でそこそこ大きめの会社に入ったんだけど、「なんかちょっと違うな」と思って第2新卒的に転職をしてきたネコ20匹みたいな構成になってたんですよね。

事業が立ち上がってくるとイヌっぽいちゃんとした人が入るようになったので、どの割合が正解とかではなく、どういう仕事があって、どういう割合だったらちょうど良いのかみたいな考え方をするのが良いかなと思います。

あと、いただいた質問の中に、「イヌとネコを自由に行き来する人はいますか?」とありますけど、イヌがネコになる必要もないし、ネコがイヌになる必要もなくて。「それぞれ違うよね」と言って、相互理解がちゃんとできることが大事です。

ネコなのにイヌを被っている人は、健やかな状態になりにくい。着ぐるみ着て動くのって大変ですよね。パフォーマンスが出ないし。自分本来の資質をちゃんと活かすことが大事だという意味合いで捉えていただくといいと思います。

ちなみにこの話をしていたら、「ネコ被ってるイヌもいそうだよね」と言い出した人がいました。社外の意識高めな勉強会などで、「うちの会社はイケてない」と言っているわりには、会社に戻って自分から何かをしようとはしない。そういうタイプの人って、「ネコを被ったこじらせイヌだよね」という話が出てきたこともありました。

司会者:ありがとうございました。

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