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苦手な部下への正しい接し方がわかる~ハラスメント予防とマネジメント術~(全3記事)

融通が利かない、指示待ち……「苦手な部下」にはどう接する? 部下の4タイプ別に見る、対人疲労を減らす指導のヒント

業務において指導やマネジメントは不可欠ですが、苦手な部下とのコミュニケーションをどう取るべきか悩む人も少なくありません。本イベントでは部下とのコミュニケーションに焦点を当て、ハラスメントにならない接し方のポイントや苦手な部下マネジメント方法を紹介。タイプ別・世代別の特徴を元に、適切なコミュニケーションを取るポイントを解説しました。

前回の記事はこちら

苦手な部下に対してどのように接するか

奥津直樹氏(以下、奥津):One人事の田中さまから、「苦手な部下との接し方」等の話をしていただきます。田中さま、どうぞよろしくお願いいたします。

田中幸史氏(以下、田中):奥津さん、ありがとうございました。ここからは、私からお話しさせていただきます。先ほど奥津さまからご説明のあった、上司と部下の関係や「叱る」という点について、私自身も反省する点が多々あるなと、非常に興味深く拝見させていただきました。

私からは「苦手な部下へのマネジメント・育成術」というタイトルで、人材管理、人材分析などの観点からお話しします。

はじめに自己紹介です。あらためまして、One人事株式会社 HRテックアカデミー長の田中幸史と申します。本日はよろしくお願いします。長らくアウトソーシング業界にいまして、業務の見える化を中心に業務コンサルをやっておりました。そのあとはカスタマーサクセス、UI/UX、CRM的なコミュニケーション周りを主にやってきました。

現在はHRテックアカデミー長として、人事業務全般に関する研究やプロダクト改善や、こういったセミナー活動を通じて人事DXの普及を推進しています。

当社は「One人事」というサービスを提供しており、人事評価や従業員のエンゲージメントを高めるような、いわゆるタレントマネジメントシステムを展開しています。

機能としては、人事評価、目標管理、スキル管理などがあります。人材配置や人材育成、離職防止を可視化して、クラウドで業務効率を上げながら、戦略的に人事周りをデータ化しています。また、人事評価を省力化するシステムも提供しています。

人間は大きく“4つのタイプ”に分類される

田中:今回のセミナーは「苦手な部下のタイプと対処法」ということで、まずはお話しさせていただきたいと思います。米国のある有名な研究者の方が、米国の約200万人を対象に調査したデータには、人物タイプはだいたい4つに分かれるということで、そこから抜粋してご紹介します。

まず1つ目のタイプですが、一番左にある青色の「堅物タイプ」が全体の19パーセントです。特徴としては、「優秀だが融通がきかない」「すべきことを大切にしている」。親しい同僚や先輩、部下で、なんとなく「こんな方かな」と頭に浮かぶ人がいるかと思います。

2つ目が緑色の「指示待ちタイプ」で、これが41パーセントと一番多いです。特徴としては、「言われたことしかやらない」「誰のためにするのかを大切にしている」。

3つ目の黄色が「変人タイプ」で、24パーセントです。このタイプは、「いちいち質問してくる」「すべき理由を大切にしている」といった特徴があります。

4つ目のピンク色が「わがままタイプ」で、これは全体の17パーセントです。基本的にこのタイプは、「自分の思いどおりにしたい」「自分がやりたいかどうかを大切にしている」という特徴があります。

この4つのタイプで一番多いのは指示待ちタイプです。次に変人タイプ、そして堅物タイプ、最後にわがままタイプです。私自身は管理されるのが苦手なところがありますので、どちらかというとわがままタイプかと思います(笑)。

みなさんも自分自身、もしくは部下の方はどういったタイプなのかなと、なんとなく共感いただけるところがあると思います。

タイプ別・部下への対処法

田中:右側に世代・年齢層とありますが、タイプに加えて「Z世代」「ゆとり世代」「団塊ジュニア世代」「バブル世代」があります。私は団塊ジュニア世代なのですが、世代によって考え方や価値観が違ってくるところがあります。

それを踏まえた対処方法が書いてあります。堅物タイプの方には、「優先順位をはっきり示す」「大げさすぎる説明をしない」ことが有効です。

指示待ちタイプの方には、「適度な責任を与える」「あまりにも大きすぎる目標は設定しない」といった対処方法があります。

変人タイプの方には、「質問されても基本的にイライラしない」「必ず丁寧に答える」「プラスαの説明を加える」といった対処方法があります。

そしてわがままタイプの方には、「指示をしないで見守る」「メリットを強調しながら選択や管理そのものは本人に任せる」といった対処方法があります。

あわせて、世代・年齢層の特徴を書いています。Z世代の特徴として、「安定志向」「多様性の意識が高い」「同調志向がある」が挙げられます。次にゆとり世代の方は、「プライベートを優先する」「打たれ弱い」「合理的な思考」。

団塊ジュニア世代は私の世代ですが、「ストレス耐性が高い」「保守的な姿勢」「コンサバである」「メンタルは強いが自信がない」ということで、なんとなく当てはまっているかなと思います(笑)。

バブル世代の方は、「パワフルである」「高級ブランド志向」「コミュニケーション能力が高い」といった特徴があります。このへんも、なんとなく共感いただける部分があるかと思います。

「個人のタイプ」と「世代」に合わせた指導が必要

田中:基本的には、個人のタイプと世代に合わせたアプローチが必要です。上司の方は4つのタイプの部下に対して、優先順位を示したり、適度な責任を与えたり、プラスαの丁寧な説明をしたり、メリットを強調して、ある程度本人の自主性に任せるといったアプローチを、おそらく無意識レベルでやっている方もいらっしゃると思います。

また、タイプに加えて世代別で見ると、Z世代の方には適度な距離感を持ってコミュニケーションを取っていただく必要があります。

またゆとり世代は、叱るよりも褒めてあげる。団塊ジュニア世代には承認欲求を高めるようなアプローチをしたり、バブル世代には価値観を褒めると言いますか、ヨイショする感じでコミュニケーションを取ります。

タイプに合わせたアプローチ、世代に合わせたコミュニケーションとして、気配りや配慮、遠慮、根回し、声掛け、タイミングと、いろいろあるかと思います。

同じ空間にいれば、人との接触や目、耳、肌感覚といった無意識レベルで対応できている現実もあります。とはいえ現在の労働環境は、コロナ禍を含めて大幅に変化しているとみなさんも感じていただいているかと思います。

適切なコミュニケーションのカギは“仕組み化”

田中:1つ目は「仕事」です。コア業務が増大していて、情報量が圧倒的に多くなっています。業務の自動化で、コミュニケーションツールも含めていろいろなツールが非常に浸透してきています。どちらかというと、決断・判断が増加していることが挙げられます。

2つ目は「人材」です。私の職場もそうですが、年齢・世代がバラバラです。また、外国籍の方も非常に多いなど、多様性が前提の職場も非常に増えてきています。

3つ目は「組織」です。リモートワークが一般化されている業種も多くなってきていますし、会社組織もパーパス経営や健康経営、脱売上至上主義にシフトしつつあります。

そんな労働環境の変化の中で、従来どおりのリアルコミュニケーションを前提として、個人のタイプに合わせたアプローチや世代に合わせたコミュニケーションを行うことは、上司側からするととても大変で、逆に自分が疲れてしまいます。

もしくは本来のコア業務が増えてきているので、そこにパワーを使いたい、時間を使いたいという部分があるかと思います。それを踏まえて、「仕組み」を取り入れることについてお話しします。まず、仕組みを取り入れるメリットは2つあります。

1つは「対処療法」です。これはルール化や行動管理など、いわゆるマイクロマネジメントです。コミュニケーションの量を増やすことで会議や面談が増えます。デメリットとしては、管理工数が増えることがあります。

もう1つの方法は「根本治療」です。これは自己管理や自己成長、セルフマネジメントです。仕組みを取り入れてログを残すことで、行動履歴やテキストメモが増えてきます。デメリットは、習慣化するまでに、入力漏れも含めて指導が増えることです。

「面談」に対して警戒心を抱く人も

田中:いずれもシステムや仕組みを取り入れながら、コミュニケーションの量を確保することが重要だと思います。そこで仕組みを取り入れる手法として、タレントマネジメントシステムを活用する方法とメリットをご紹介します。

1つ目は、「日々の目標管理を会話のきっかけにする」です。苦手な部下との日々のコミュニケーションは、なかなか構築できないところがあります。

また、苦手な部下との雑談や声掛けも苦手で、「面談」という名前がつくと、警戒感が増して身がまえてしまうことがよくあると思います。これを「目標管理」というかたちで、業務にかこつけてフランクにコミュニケーションを取ることも重要かと思います。

2つ目が「定期的なコミュニケーションをシステムに頼る」です。みなさんも、日頃はコミュニケーションツールを使っていらっしゃると思いますが、昨今はテキストチャットでも十分に伝わります。また、自身が設定した目標であれば、セルフマネジメントの意識が働きます。システムだとログが残りますので、振り返りもできます。

3つ目が「人の管理を見える化できる」です。システムでログが残ると、直接聞かなくてもわかったり、上司の方もログさえ見れば、ある程度把握できたりします。情報がオープンになりますので、基本的に公平さにもつながります。

時系列で行動履歴がわかってくると、その原因や要因について、本人と上司と部下だけの共有ではなく、全体の情報共有にもなります。

上司から部下に対して具体的な指導ができたり、振り返りや行動履歴ですべてログとして確認できたりするので、「本人も自分自身のセルフマネジメントが可能になる=仕組みが整う」状況になります。こういったところに、非常にメリットがあると思っています。

離職に直結する対人疲労を減らすために

田中:まとめです。人事課題もそうですが、会社全体の課題としても、退職だけは避けたいというところは課題の1つだと思っています。そこで「本当の退職理由は以下のうちどれですか?」というアンケートデータをご紹介します。

建前と本音というところで、退職理由がいくつかあると思いますが、こちらは本音の退職理由のアンケートです。やはり一番多いのは、「人間関係が悪かった」が全体の28パーセントです。

そのほかは「給料が低かった」「社風や風土が合わなかった」「評価・人事制度に不満があった」「待遇が悪かった」とありますが、退職理由として圧倒的に多いのは「人間関係が悪かった」です。やはり対人疲労が離職に直結します。これは部下だけでなく、上司もそうだと思うんですね。

上司と部下の関係の中で、コミュニケーションを原因とした対人疲労が離職に直結するということです。それが、ハラスメントであったり、「指導してくれなかった」という不満を引き起こす可能性があります。

関係性が濃くなってもダメですし、薄すぎてもダメです。システムや仕組みを取り入れていただくと、ちょうどいい塩梅が非常にうまくいくのではないかと思っています。

組織や会社に合わせたハイブリッドなマネジメントスタイルを確立するうえで、リアルコミュニケーションを大事にするなど、濃度は各会社さまで違ってくると思います。ただ、いずれにしても、セルフマネジメントを促進するところについては、システムや仕組みが非常に有効になると考えています。

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