2024.10.10
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社会の大変動に対抗し、新時代の組織づくりと経営戦略の本質を掴むことを目的に開催されたカンファレンス「SmartHR Next 2023」。本記事では、オープンワーク株式会社の社長・大澤陽樹氏とSHIBUYA109 lab.所長の長田麻衣氏が登壇したセッションの模様をお届けします。毎月200人の15歳から24歳の若者と話してわかったことや、人事に必要な視点などが語られました。
大熊英司氏(以下、大熊):今度は長田さんにZ世代の傾向と対策を教えてもらおうと思うんですけど、実際に触れ合いながらってことですが、どうですか?
長田麻衣氏(以下、長田):私は毎月200人の15歳から24歳の若者とお話をする仕事を2017年からやっています。
基本的には109の中で声をかけて、インタビューも週に1回くらいさせてもらっています。1,000人くらいのLINEのネットワークもあって、その子たちには社会人の子たちもいるので、「働き方についてどういうふうに思っているか」とか「就活生はどういうふうに企業を見ているか」を聞かせてもらうお仕事をしているんですね。
その中から見えてきたのは、「働く」にひもづく価値観としては「デジタルネイティブ」。先ほどの口コミとかもまさにそうなんですけど、SNSで事前に「この企業はどうなのか」とかを情報収集していくことが当たり前になっている。
あとは、常にSNSで友だちと緩くつながっているので、周りの目に対する意識が非常に強い。後ほど出てくるんですが、周りとの調和をけっこう重視する。1人だけ目立って活躍するよりも、「みんなでちょっとずつ成長していこうね」というマインドがけっこう醸成されているのが、デジタルネイティブならではだなというのがあります。
そして、「失敗したくない」。いろんな消費においてもキャリアにおいてもあるんですけど、常に周りからどう思われるかを気にしていて、周りから見て失敗と思われたくもない。
世の中の状況がコロコロ変わっていく中ではあるので、1人だけ失敗しないように、リスクを分散したり、企業の選び方も慎重になっているなというのがあったりしますね。
もう1つが「固定概念に縛られない」。これは入社後にもけっこう関わってくる。1つの問題に関してもSNSで常にいろんな考え方があって当たり前だし、何が正解とかないよねというところ。調和を大事にしているので、1人を攻撃するような、傷つけることをしたくないという気持ちが非常に強い。
家族の関係性や高校の部活とかの関係性を見ても、年をとっている人が偉いとか、上下関係をあまり当たり前と思っていなかったり。部長だったら絶対というのもあまりない。カースト制度というよりも、わりとサークルみたいな感じのフラットな関係の中でチームワークを作っていくことがけっこうあるなと思っています。
これは先ほどの情報収集のところで、消費の部分になります。「新しいブランドや商品を知るのはどこですか?」と聞いていくと、3位のテレビを抜いて、上位にはSNSが出てくるんですね。
InstagramとXとYouTubeが一番になってきている。男女差はあるんですが、基本的にはSNSで最初に新しいものを知るのが当たり前になっていますね。
次のポイントが、さっきの調和の部分です。周りの目をすごく気にしているというところで、日々私たちもいろんなテーマで話を聞いていると、「周りからこう見られたくないから、こういう服は着ない」とか「こういうサービスを使わない」とか。
逆に「こう見られたいからこういう場所に行く」とか、周りの目から見て自分がどうかというところでいろんな行動をしていたりする。周りの目の意識は、他の世代よりもZ世代は強いなというのはあります。
もう1個は、失敗したくないというところで情報収集を入念に行っていることです。就職活動においても口コミはすごく大事にされています。
それこそ、何か消費をする時も自分がこれがいいと思って買うというよりも、他者がこれをすごく評価していて、「ということは、これはいいものだ。だから買おう」という流れが買い物についてもすごく多い。
企業を選ぶ時にも、わりと家族だったり友だちにも評価が良くて、SNSの中の自分と同じフィールドで戦っている就活生にとっても評価が良いと、そこに行くことがすごく正解だよね、となっている。
「正解ってことは失敗につながらないよね」となっていくのはあるんじゃないかなと思いますね。
さっきちょっと話しちゃったんですけど、これはリスク分散みたいなところですかね。本当に経済状況も不安定な中で生きているので、バランスをどれだけ取れるかみたいなところで、安定は安定ですが、リスクヘッジができることのほうが大事というところです。
収入も、例えば学生時代からアルバイトをやっている。あと先週ちょうど聞いたのが、高校生の男の子が起業したいと思っている。その理由が、高校生のうちに起業しておけば、もし起業が失敗しても、就活の時に起業したということで、経験が有利になる。
別に良ければそのまま起業でいけばいいけど、どっちに転んでも大丈夫なようにしておくという話が、まさに今日のテーマに合っているなと思っています。
起業が当たり前になってきたり、しやすくなってきているのもあって、わりと幼い頃からリスク分散のためにどうやって生きていくかを考えているというのはありますね。
大熊:失敗してもいいのにとか、もっと自分を持てばいいのになんて、おじさんは思っちゃいます。
長田:わかります。
大熊:けど、今の人たちはこういう考えをしているということなんですよね。
長田:そうなんです。失敗しようにも、情報収集ができる環境がもう整っている。自分が何かしたいと思った時に、例えばYouTuberになりたいとなったら、YouTuberで成功するとこうだけど、大失敗すると路上で迷ってしまうくらいになってしまう。
そのどっちも情報として見れちゃうので、リスクをすごく考えて冒険できなくなっている子がすごく増えているなというのは、肌感でもあります。
大熊:企業はそういうことを理解しておかないといけないということなんですかね。
長田:そうですね。とっても大事ですね。
大熊:大澤さん、今の話はどうでした?
大澤陽樹氏(以下、大澤):めちゃくちゃおもしろいですよね。なんでそんなに他人の目を気にするんだろうって聞いてみたかったんですけど、確かにSNSがあって、いろんな目で見られているから境界線がなくなって敏感になっているというのは、すごく納得感がありましたよね。
長田:そうなんですよ。
大熊:髙倉さん、どうでした?
髙倉千春氏(以下、髙倉):いやいや、すごくおもしろいなと思いました。私、前職で「新人が先生になる日」ということで、新卒の子たちに先生になってもらって、私たち旧人が教えてもらうんですけど。
大澤:おもしろい。
髙倉:一番びっくりするのは長田さんがおっしゃるように、意識や価値観の変化なんですよね。先ほどおっしゃった、権限移譲とかトレーニングとかタイムリーなフィードバックって、成長するのにすごく大事なんです。
だけど、人事として気にしなきゃいけないのは、まさに大熊さんもおっしゃった、その人たちの価値観と感受性というか、その人たちがどう思っているのか。
ここは変えられないので、それを踏まえた上で、どうやって人材育成、タレントマネジメントをやるかを考えなきゃいけないなと思いました。10代から20代全般の話を聞いて、ますますそうなんだって、今日はすごくびっくりしました。
大熊:そういった意味では難しいですよね。1人だけ能力あるから目立ちすぎても嫌だということなんですよね。
長田:そうなんです。ただ、それはマインド属性によって分けたほうがいいかなと思っています。
さっきの大澤さんのデータにあった士気を大事にするとか、やりがいを大事にする子たちは、ある程度目立っても大丈夫だったりするんです。だけど、大半の子たち、それこそ目立ちたくない子たちに関しては、みんなの前で「この前の仕事、すごくよかったよ」と言われるのもすごく嫌なんです。
大熊:え、褒められることも?
長田:そうなんです。そうすると、「自分はもっとすごいことをしなきゃいけないんじゃないか」と、次の行動のプレッシャーになっちゃうんですよ。
大熊:そういうふうに思っちゃうんですか。
髙倉:プレッシャーになっちゃう。
長田:思っちゃう子もいる。そして、そっちのほうが大半だったりする。
その子たちの目指したいキャリアや働きがいもそれぞれ多様だったりするので、「彼らの思う働きがいはどういうものだっけ」と考えて、そこにセットして企業がちゃんとアプローチを変えていくことをしないとギャップが出てしまうんじゃないかなとすごく思いますね。
大熊:よくできたら褒めてあげて、持ち上げてあげればって思うけど……。
髙倉:そうですよね。
長田:そうでもないですねぇ。
大熊:そうでもないというのはちょっとおもしろいし、それをわかって、上司がどう接するかということになっていくということなんですね。
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