2024.10.10
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コンビニや駅など、さまざまな場所に設置されているモバイルバッテリーシェアリング「ChargeSPOT」。全国の設置数が40,000台を越えた今、「ChargeSPOT」の創業者である秋山広宣氏が開発秘話を明かします。本記事では、競合他社と差別化を図るための施策や、自社の強みを活かした事業展開について語りました。
秋山広宣氏(以下、秋山):一番最初のローンチは2018年になります。この2018年のローンチは、先ほど申し上げた「失敗を絶対に繰り返さない」という思いでいましたので、まずは僕が日本に帰ってきて社長の座に就きました。そしてその当時を見ていただきますと、しょせん4年半ぐらいのサービスローンチです。
ここで着目いただきたいのが、2018年にまったくもって知られていなかったものを認知、そして習慣化させていったこの4年を我々は非常に誇りに思って、自分たちでも自負してここまで進んできております。ただ、その背景にはそういった悔しさもある。じゃあ、今回PRを打つ場合には大々的にやろうと思いました。
まず2018年に「PICSPOT」(ピックスポット)でやっていたSHIBUYA109、東急さんですね。「まずは109に1台置かせてください」と。そして渋谷のTSUTAYAさんに1台置かせてもらいました。
これにより、2台でどこでも借りられてどこでも返せる日本初のモバイルバッテリーシェアリングサービスとして、『WBS』にて紹介いただきました。
『WBS』のインタビューで「我々は年間で7,500台、まずは1年間やるんです」と言ってスタートをします。それが2018年4月17日でした。そして経過(のグラフ)を見ていただきますと、テレビCMがあります。この間、我々は資金調達もしてきました。
資金調達のラウンドは3回ありました。シリーズA・B・C。我々のビジネスは、調達したお金があれば、すぐに台を買わないといけないという特徴でスタートをしました。
秋山:細かいお話をしますと、軌道に乗ってからセールス&リースバックというモデルができて、キャッシュフローが良くなっていくんですが、そこまでは大変でした。ですので、常にお金がない状況の中でテレビCMも打つわけですね。
実は我々が2018年4月にスタートした3ヶ月後に、類似の企業が8社出てきます。そことどう差をつけるのか。
ここで、自分の経験を生かすことが一番だと思いました。遡りますと、僕は20代はエンタメの世界にいました。そこにはもちろんクリエイター、IP、コンテンツが紐づいてくるわけです。ここらへんでブランディングで勝負しようと決め、世界的に人気のキャラクターのIPを使ってテレビCMを打ちました。
当時の株主さんとも侃侃諤諤(かんかんがくがく)話し合いをしてきましたが、その当時すでに我々の株主だった「POCKETALK(ポケトーク)」のソースネクストさんの松田(憲幸)社長からもらったアドバイスを「そうだ!」と思って、モデルにした背景があります。
松田社長が言っていたのが「ソースネクストは、一番伸びようとした時に持っていた資金の3分の1は広告にかけた」と。こういった、思い切るタイミングが必ずあるとおっしゃっていました。
その後、上場までのプロセスはまだまだあるんですが、「この時かなぁ」と思ってここで大勝負をかけています。これはなかなか数値化できないんですが、結果として「あぁ、あのキャラクターの青いバッテリーでしょ」と定着したのではないかなと思っています。
秋山:その後いくつか、大変な山はありました。コロナで利用率が9割落ちます。幸い、その直前で資金調達ができていたので、(スライドに)「主要コンビニに展開」とありますが、この間に買っていただいたのがファミリーマートさんだったんですね。
「まんぼう(まん延防止等重点措置)」、そして緊急事態宣言で、3ヶ月ぐらいなかなか外に出られなかった時に、ただただファミリーマートさんに設置台を増やしていっていただきました。
そして、いざ(コロナ禍が)明けた時には、「なんか見たことがない台があるなぁ」とつながっていったのも、非常に時を味方にできたのではないかなと思っています。
最終的には、セブン-イレブンに入ったのが決定的でした。上場1年前の2021年ですけれども、そこから100万回レンタルに入っていって、2022年の上場までにつながった。簡単にこういう流れでございます。
今現在は、コンビニ、鉄道、空港、球場、カラオケ、レストラン、カフェ、ホテル。こういったところが非常にメインです。我々が「オセロの4隅」と言っているプライオリティの高いところが、コンビニ、鉄道、そしてカフェ、ホテルですね。国内に4万900台あります。
秋山:そして海外におきましては、香港では3,200台、そして台湾では8,300台、タイでは600台。(地図上の)薄い青の国ではフランチャイズ展開をしています。そして、日本・中国・香港、この濃い青のところが直営です。
中国はもう群雄割拠で、いろんなプレイヤーがいます。先ほど、日本でもスタートして3ヶ月で(後発の会社が)8社出てきたとお話をしました。中国でも20プレイヤーぐらいいて、合計500万台ぐらい置いてあるんですね。ある意味レッドオーシャンです。
ただ先ほどの学ぶところ、そして置いてきたところ、日本で進化させたところが我々になります。
中国では、もうプレイヤーがめちゃくちゃいます。そして日本で言う「PayPay」みたいなペイメントシステムは、(中国では)「WeChat Pay」ないしは「AliPay」の2つがメインです。
みんな安いかどうかだけで考えていて、まったく別のビジネスをしています。オペレーションも非常に悪いです。そういったところは置いてきました。そして日本で同じような轍を踏まないようにサービスを進化させていきました。
我々の今後のビジョンですね。(スライドの図の)左下に「『ChargeSPOT』の成長」という矢印が伸びています。我々が今やっているのは、設置台数を増やしていくこと。要するに、設置のプライムロケーションを増やしていってユーザーを獲得する。
今、ダウンロード数は約600万を超えました。「WeChat」「PayPay」「d払い」「au PAY」の中のミニアプリにも参加させていただいています。こういった、手慣れた電子決済からもお使いいただけるものを足しますと、1,000万(ダウンロード)を超えてきております。
秋山:我々のアセットは、オフラインにハードウェアがある。そして、携帯(スマートフォン)のことをセカンドデバイスと呼んでいます。携帯というセカンドデバイスに、1,100万人以上にお使いいただいている。
ここの母数をさらに増やしていきながら、1人あたりのARPU(アープ:1ユーザーあたりの平均売上)を上げていって、場所の価値を高めていく。ここが我々の資産(アセット)で一番大事なところだと思います。
ただし、それを拡大するだけでは終わらない。実は上場の時にも「『ChargeSPOT』という名前で上場したほうがいいのではないか」という議論も社内でありました。「いやいや、INFORICHでいこう。我々はインフォメーションにリッチである」と。
これもおもしろいんです。統計上数字で出ているんですが、アメリカからのタイムマシンビジネス(海外で成功した事業モデルをいち早く日本で展開する手法)VS中国からのタイムマシンビジネス。
過去の事例を見ても、中国のはほとんどが成功していて、アメリカからのタイムマシンビジネスはなかなか成功していない現実が日本にはあります。ご参考までに、またぜひお調べいただけたらと思います。
秋山:例えばTikTokとか、こういったプラットフォーム、インフルエンサービジネスもそうですけれども、我々もその延長に乗っかっているわけです。さらにこれを展開することによって、(スライドの)1・2・3ができると考えています。
1個目は、マーケティングソリューション。2番目は、場所を軸にした、いわゆるゲーミフィケーション。この後も少し触れますが「ShareSPOT」というものもやっています。そして3番目には、日本でも海外に紹介されていない、知られていない、匠技、巧みなサービスがまだまだあると感じています。
我々が橋になってそれを紹介する。さらには中国に限らず、我々の「ChargeSPOT」経済圏で作り上げたネットワークからの情報をもとに、また輸入できるタイムマシンビジネス、そして越境ビジネスを考えています。
具体的には、先ほど申し上げましたとおり、①のサイネージです。サイネージは今、実際に広告のアップセルとなっております。さらには2022年、ほぼ半年先輩の上場会社であるunerry(ウネリー)社さんとは仲良く展開をしています。
我々の(「ChargeSPOT」の)台の中は、単なるシェアリングの機械ではないです。すでに中にはunerryさんのソフトウェアビーコンが入っておりまして、人流のデータが取れています。さらに通過した方々にプッシュ通知が打てる。こういったものも、アップセルの1つのプラットフォームとしていきたいなと思っているところですね。
秋山:また、①の2つめに触れさせていただきますと、我々はグローバルにサイネージを持っています。こういったサイネージもすべてコントロールをしておりますので、グローバルクライアントにもリチャージしていける。
②ですが、「ShareSPOT」が「ChargeSPOT」の延長上にあります。「ChargeSPOT」は、立ち上がった時にはそんな強いチームではなかったです。コロナの時もそうですが、もちろん1個1個弱点を見つけては補っていきました。
コロナの時は、そこまではもうOKと言って、ともかく「ChargeSPOT」がみんなの目につくように、そしてみんなに返せる安心感を与えるようにと1万5,000台まで増やしてきました。とことん掘って、とことん投資をしました。でもその後に、やむを得ずコロナ禍になるわけです。その時にデータをゆっくり見られたんですね。
それによってできたBIチームのデータ統計のもとに、「ChargeSPOT」を使われる場所に置いていこうということで、日本国内だけを考えますと、実は主要800駅の500メートル範囲内に「ChargeSPOT」を置いています。ただ、それだけですと主要駅から500メートルだけが経済圏になってしまう。それではおもしろくない。
我々には1,100万人というユーザーさん、アプリダウンロード者がいます。じゃあここを、シェアリングと言われるインフラにどんどんシェアをしていきたい。
そして、我々が1個のプラットフォームに投稿してしまえば、みなさんがいろんなアプリに飛んでいって、自転車を借りてみたり、傘を借りてみたり、車を借りてみたりする必要がないのではないかということで、この「ShareSPOT」を作りました。
そうすることによって、主要駅から500メートルが「ChargeSPOT」、そして500メートルから2キロメートルまでがバイク、そして2キロメートルから5キロメートルまでがカーシェア。このように経済圏を拡大していける、次にまたバンドルさせながら展開をしていくものだと思っています。
秋山:ゲーミフィケーションについて簡単に触れさせていただきます。コマーシャルを打った当時には、スマートフォン向け位置情報ゲームアプリさんからお声掛けいただきました。
「実はうちはソフトバンクさん、マクドナルドさん、セブン-イレブンさんぐらいしかやってないんだけれども、何よりもバッテリーが必要なので参加するのはどうでしょうか?」と、我々が3年間スポンサーをしていました。
それによって、ゲーマーたちの間での認知が広がったのがあります。その頃スポンサーとしてやっていたのが、ゲームの中に「ChargeSPOT」のマークが表示されます。アジア中に5,000ヶ所あるピンを回すと、タダでChargeSPOTクーポンが手に入る。
そしてそのクーポンで、電池がなくなった時に、リアルにただでバッテリーを借りられる。このオンラインtoオフラインのゲーミフィケーションを実現してきた。これも場所を持つ強さ、そしてハードウェアだからですね。
ポップアップだけをポンと置くような軽さの営業ではなくて、ここは大変だったんですけれども。今振り返ってみると、ハードウェア(場所)を持つ強さが我々の1つのストロングポイントにもなってるのではないかなと思います。
秋山:(③の)クロスボーダー、越境ビジネスです。「ChargeSPOT」は、バッテリーを、新たなライフラインにもなったこの携帯(スマートフォン)を支えるインフラだと考えております。その角度から新たな新規事業に取り組んでおります。
II Studioさんとの事業は、つい先週の(2023年9月)15日に発表しました。まだ「Apple Music」でも「Spotify」でも聞けない、今回はCHEMISTRYさんとDa-iCEさん、Novelbrightさんですかね。幅広いジャンルのアーティストさんにもご協力いただいています。
こういったところも、やっぱり過去の強みを生かすようにはしてきているつもりです。そういったアーティストのみなさんに「ChargeSPOT」のプラットフォームのみで、2週間先んじて限定的に曲を流させてもらっています。
つまり、借りたらまだ世の中に出ていない曲を聞けるようになっています。こういったことを新たな遊びとして、プラットフォームとして取り組んでいる。
Smart Retailさんは香港の会社で、Mapxusも香港の会社、Jagatはインドネシアの会社です。簡単に言いますと、JagatとはSNSのプラットフォームで人流を持っています。こういった、まだまだ日本に名前の届いていないところをバンドルしたらおもしろいのではないかと思いました。
Smart Retailは、プッシュ通知、あとはその人のデータを基に見せられる広告を最適化させることを、日本セブン-イレブンとすでに提携している香港の会社です。
Mapxusは、室内、特に大きいビルや駅に入りますと、自分がどこにいるかなかなかわからない。こういった屋内のマップを展開している香港のスタートアップです。
こういったものを一緒にバンドルしながら、紹介をしながら、そして新たなものを作っているのが越境ビジネスです。
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