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心に従うリーダーシップ〜ビジネス成功の鍵は禅にあり〜(全4記事)

低迷していた広島カープ投手の年俸を4倍にした秘訣 禅のコーチングを受けるアスリートが増えている理由とは

坐禅や瞑想、マインドフルネスを実践するビジネスリーダーが増えている今。本イベントでは一見矛盾するようにも思える禅とビジネスの深い関係について、臨済宗大徳寺派願修寺住職の岩山宗應氏と、株式会社シマーズ代表取締役の島津清彦氏が語ります。禅や仏教を正しく理解し坐禅を継続することが、ビジネスの成功につながる理由とは。本記事では、ビジネスと仏教を行き来する「半僧半俗」の島津氏の取り組みについてお話しします。

前回の記事はこちら

会社経営から禅の指導まで行ってきた島津清彦氏

島津清彦氏(以下、島津):ということで私も、あらためて本当に簡単に自己紹介をさせていただきたいと思っております。「半僧半俗」って書いてあるんですけど、要は半分出家得度(仏門に入り、官府から下付される許可証を受けて僧尼になること)している修行僧であり、いわゆるビジネスとか経営者という俗との本当に真ん中にいるような感じなんですね。

経歴はここに書かせていただいているとおりで、ざっくり言うとピタットハウスやOZmagazineをやっている、当時はまだ社員が100人か200人ぐらいだった時にスターツグループという会社に新卒で入りました。今グループ社員約9,000名、(国内外のグループ)企業90社、上場もしている会社なんですが、そこで25年勤務して、2つの会社で社長をさせていただきました。

1つはM&Aでグループ入りしたビルメンテナンス会社で、まさに企業再生、メンバーと一緒にトイレの清掃から始めたみたいなところです。もう1つはTVCMもやっているピタットハウスの社長でしたが、東日本大震災で自宅の新浦安の戸建てが被災しまして、それを機にがらっと価値観が変わって、独立起業したのが今から11年前ですね。

2012年にエイッとピタットハウスの社長を飛び降りて、しかも(今やっているのは)不動産ではございません。人事とか経営のコンサルということで、不動産では営業マンとしてずっとトップだったんですけど、まったく違う人や組織に関する仕事に歩み出しまして。

ほぼ同時期に不思議なご縁で青森の住職との出会いがあり、出会ったその日その場所で弟子入りをお願いして、(住職は)目を丸くされていましたけども、これは運命的な出会いだとやはり思っています。

その後ソニーから突然連絡が来て、ソニー不動産(現SRE不動産)の立ち上げに2年間参画した時期もありますけれども、基本的にはこのコンサルの仕事として、禅を取り入れたコーチングや研修などをやっております。

心理的安全性を日本に広める

島津:この禅メソッドアカデミーというのは、「1人でいろいろやっていても、なかなか世の中に浸透していかないな」「やはりきちんと伝えられる仲間を作ろう」と思い、2018年に始めました。「禅で目覚める、禅を伝える、禅を活かせる人をつくる」ということで立ち上げて今ちょうど10期で、これから11期を募集するところです。

その同じ年の2018年にZENTechという会社を立ち上げました。禅を組織に入れていく時に、先ほどおっしゃっていただいた「心理的安全性」という概念を伝えています。主に大企業に向けて、行動科学やテクノロジーをもって、心理的安全性をちゃんとトレーニングとプログラムで実装できるような取り組みをしている会社です。

おかげさまで今もう(社員が)40人ぐらいになって、私は去年に若い優秀な2人の経営者に代表のバトンを渡しました。『週間東洋経済』で「心理的安全性超入門」と大特集号が出るぐらい、最近は心理的安全性という言葉もずいぶん浸透してきましたけども。

当時はまだそういうことを提供する会社がなかったので、僕らの掛け声としては、「心理的安全性で日本におけるオセロの角を取る」と言って、とにかく本当に第一人者というか、リーディングカンパニーになるぞと走っていたんですね。

別に大きい会社を作ろうということではなくて、本当にギスギスした風土を風通し良くするために、心理的安全性の概念やツールを使って組織を活性化していこうと思い、立ち上げました。

おかげさまで自らリーディングカンパニーと謳いながら、本当にいろんな企業さんに提供させていただいております。ただ、私自身は今はもう代表ではなく取締役ファウンダーということで、より「自由な」と言うと怒られちゃうんですけども、自分の修行を極めていきたいということで。

ビジネスと仏教を行き来する「半僧半俗」の活動

島津:ちょうど実は10年経って、本当に同じタイミングかと思ったんですけど。私は曹洞宗なんですけど、臨済宗のレオさんとも接点を持たせていただいて、曹洞宗と臨済宗の座禅の微妙な違いとか、あと天台宗の止観という瞑想や真言宗の阿字観瞑想とか。独特の急速に覚醒を追求する瞑想法とか、いろんな宗派の住職の方ともいろいろと学ばせていただいたりしています。

あと最近は修験道。もともと日本には仏教が入る前に神道があって、八百万の神がいて自然を崇拝するアニミズム、すべてに魂とか精霊が宿っているから物を大切にする考え方がありました。その中で、自然の中に自分の体を完全に没入させる、山伏みたいな修験道を、実は山形と滋賀の三井寺でかつてやったことはあるんですけれども。そういったことも含めて自分なりにちょっと修行を極めていきたいなと。

岩山宗應氏(以下、岩山):すごいな(笑)。へぇ。

島津:本もいろいろ書かせていただいて、曹洞宗の駒澤大学さんで講演させていただいたり、あとすべての宗派が統合された仏教系の学長会議で、本当に足をガクガク震わせながら、こんなところでなんで私がと思いながら、禅と経営というテーマで(講演をさせていただいたり)ですね。「いいんですか?」みたいな。

岩山:いやいや、もうそれはもう抜擢ですね。

島津:一生懸命話をさせていただいたりして、僕にもある意味お役目があるのかなと思って、そこ(ビジネスと仏教)の行き来をするような活動もさせていただいております。

禅の指導で、アスリートの年俸が4倍に

島津:そして最近のトピックといたしまして、アスリートのみなさんに禅の指導をさせていただいております。特に広島東洋カープ、今年は阪神が優勝しましたけど、阪神ファンのみなさん、おめでとうございます。(カープの)矢崎拓也くんという投手は、慶応を出てドラフト1位で7年前に入団したんですけど、その後4年間2軍でずっと低迷していたんですね。

たまたまレオさんのメンタルコーチの山家(正尚)さんのご縁で出会いまして、仏教に興味があるということで指導させていただきました。すると去年はリリーフで防御率1.82、メディアにも出ていますからお伝えすると、年俸が700万円から2,800万円にバーンと上がりまして。今年は最終的にはクローザーになって4勝0敗24セーブということで、本当にこの禅の効果が出ています。

そして彼が本当にすごいなと思うのは、「島津さん、次の試合、負けにいきます」と。「負けにいきます」と言ったら、普通監督から怒られないですか?(笑)。

つまり今年は怖いぐらいに勝ち続けていたんですね。その時に「ちょっとこれは負けを経験しないと、バランス的にやっぱり不健全だ」ということを言って、要はセーブしようとしたんですね。そうするとまた勝っちゃったりするんですけども、そういうまさに禅的な境地に行っていて。

そこからのご縁で、また慶応出身のヤクルトの木澤尚文選手とか、バスケットの広島ドラゴンフライズの岡崎修司GMとか、アスリートのみなさんにも禅を広めさせていただいております。

岩山:すばらしいですね。

島津:いえいえ。でもいつもバタバタして、おそらく私はけっこう動き回るので、1日1回、2回しっかりと止まること(の大切さ)を本当に日々実感しています。

選手たちに伝え続けた「結果を手放す」大切さ

岩山:またアスリートの禅指導というのは、けっこうプレッシャーですね。私はちょっとそんな風に感じますけど、どうなんですかね。やはり数字の世界でもありますから、結果が出ないと、というところがあるんですかね?

島津:私自身はプレッシャーはないんですね。ただやはり選手たちは、「結果を手放せと言われても」というのはけっこうあったりしますよね。そこでいかに手放すかをきちんとお伝えしていかないと、やはり結果につながらないんですよね。

例えば技術とか、その体を作って明日という時に一時的に勝つことはできても、持続させていくことって(難しい)。結局、最終的には心身一如、体と心が一体一如の状態をキープしていくかというところなんですね。だからたまたま矢崎くんはこういうかたちで結果が出ましたけれども、みんな果たしてそれができるかというのは、正直なかなか難しいところもあると思います。

岩山:そうですね。

島津:ええ。でもクライアントさんがふだんの生活の中でどこまで座禅を実践して、自分自身をちゃんと制御するかは、やはり直接的にコントロールできない世界なので、ひたすらその真理を伝えていく。そこに本人がいかに気づいて変わっていくかだけですね。

岩山:いやぁ興味深いです。ありがとうございます。

島津:ということであっという間に1時間経ちましたけれども、もしご質問がありましたらマイクをオンにして声を上げていただいてもよろしいですし、チャットに書いていただいてもよろしいかと思います。

今日は「心に従うリーダーシップ〜ビジネス成功の鍵は禅にあり〜」ということで、リーダーとかビジネスとかマネジメントみたいなテーマでこの2人でお話しをさせていただいているんですけれども。「今日、どうしてもこのへんを聞いてみたいな」という方がいらっしゃれば。

そうしましたら、ちょっとまた前に進めさせていただきたいと思います。レオさん、何かありますか?

自分の幸せを追求する欲深さを持つ

岩山:参加者のみなさまが「結局どうやったらもっと幸福に生きられるか」というところに尽きると思いますので、みなさん欲深く、なんでもけっこうですので聞いてください。よくお坊さんは小欲とか無欲であるべきって言われることがありますけれども。

お釈迦さまのお話ですけど、王子さまであんなパレスに住んでいてなんの不自由もないけど、「それでも足りない」と。それが仏教の原点となったわけですから、やはり欲深いというのは決して悪いことではありませんので。参加者さまのみなさまも欲深くご自身の幸せを徹底的に追求して、なんでも聞いていただければ、できる範囲でお答えしたいと思います。

島津:ありがとうございます、ぜひ。今おっしゃった「幸せになりたい」という欲求がすごく大事かと。そもそも「ビジネス成功の定義とは?」というのを、今スライドで掲げているんですね。今そういう話にもつながっていくかなと思ったんですけども、次のスライドに「しあわせはいつも自分のこころがきめる」と。

岩山:タイムリーでしたね(笑)。

島津:今日はぜんぜん打ち合わせをしていないんですけど、ちょうど今そのワードが。幸せって今すごく研究されていますし、ウェルビーイングみたいに言われたりしていますけど、成功ってほかの人と比べて測ったり、大きいことは良いことだみたいな風潮がありますけど、そうじゃないと僕はすごく思っていまして。

結果はもちろん結果なんですけども、本当にその成功って個人個人が自分で決めていくことで。幸せになるために本当に強い欲求を持って行動していくことがすごく大事というか、「違っていいんだ」というのは今すごく感じています。それで「しあわせはいつも自分のこころがきめる」という、相田みつをみたいな感じですね(笑)。

体を使って「今の瞬間」を自覚する

岩山:(笑)。でも私なんかも、なんのために座禅をしているのかは、なかなか見つからなかった期間も長かったので。まぁいろいろあると思うんですけど、1つはまず「今の瞬間」を深く自覚すると、「足りているんだ」という自覚がやはり内から出てくるんですね。

これを自分の体をもって座禅を通して具現化していく。だからビジネスや人生、この命の成功がどこにあるのかは全部通ずるものがあると思うんですね。この次のスライドで書いたように、やはりそれを決めるのはもう外じゃなくて内側なんですね。

外部からの影響によって内側が変動してしまうと、もう何も安定しない。「今日はハッピー、明日はアンハッピー、これを言われたらハッピー、これを言われなかったらアンハッピー」とか毎日ローラーコースターなんですよ。

島津:(笑)。

岩山:本当にもう起伏が激しくて。しかしながらこのビジネスや人生の成功について「成功してもいいし、しなくてもいい」と受け入れられるほど今のこの瞬間を愛することができれば、それはいいと思いますしね。

じゃあどうやったらこの瞬間を愛することができるんだというと、やはり「今OKですよ」って。「今OKじゃない?」じゃなくて「今がOKなんだよね」と(思いながら)深く、体をもって練習していく。その体をもってやれるのがやはり禅の良いところなんですね。

島津:教えとか精神、経典だけじゃないのが禅のポイントなんですよね。

岩山:大ポイントですね。もう信仰はいりません(笑)! その体を使ってください(笑)。

島津:もう体、自分教ですと(笑)。

岩山:しいて言えば、本当に私は「ご自身のことを信じてください」と伝えていますね。だから体をもって反復動作をする。素振りやバスケットボールと一緒で、ステップワンツースリーを踏んで、そしてシュート。

最初はそれを頭の中でやりますけど、だんだん慣れてきたら無心でできるようになります。やはり座禅も最初は姿勢が「あぁじゃない、こうじゃない」といろいろありますけど、慣れてきたらもうバスケのシュートと一緒でスーッと座れるようになるんです。

この前おもしろい記事を読みまして。「ビジネスの成功とはなんですか?」という問いに、「子どもたちが30歳を過ぎても家に遊びに来ることです」って言っていたんですね。「あぁ、なるほどな」と。だから(幸せの定義は)みんな違うんですけど、やはり自分の心が今のこの瞬間をどれだけ愛することができるか、そこは大きいと思います。

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